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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
リタ・エインズリーは先を急ぎたい
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坂になっている地面を慎重に下っているのは、その足元までも覆う衣装を身に纏っているためか。
暗い足元に恐る恐るといった様子で坂を下っているマーカスを横目に、その燃えるような赤い髪を揺らすリタは、飛び跳ねるような気軽さでそこを下っていく。
彼女の服装は碌な鎧も身に纏っていない身軽なものであったが、その背中に括りつけられている大剣は、それを補ってなお余るほどの重量を備えているように思える。
そんなものを担ぎながら、彼女がそんな身軽な様を見せている所をみると、その聖剣が持ち主には重さを与えないという噂はどうやら、本当の事であるようだった。
「遅い遅ーい!遅すぎるよー、マーカスくーん!そんなとこ、ぴゃっと飛んじゃえばすぐだってー!」
「あ、貴方と一緒にしないでください!大体こういう所を甘く見ると、思わぬ怪我をするものなんです。慎重に慎重にっと・・・」
一歩一歩慎重に坂を下っているマーカスに、早く先へと進みたくて仕方がないという様子のリタは、その場で足踏みをしながら彼に早く早くと急かしていた。
彼女は坂を下りきった地面を指し示しては、そこまで一気に飛んでしまえば早いのにマーカスに不満を漏らしいる。
そんなリタの言葉に、自分と貴方とではその身体能力が違うと主張するマーカスは、殊更に慎重にすり足のような仕草で坂を下り続けていた。
「ぶー!!ここに来るまで散々待たされたのに、まだ待たされるのー!!早く早くー!早く先に進みたいよー!」
「そ、それは貴方がいつも勝手な事をするから・・・うわぁっ!?」
いくら急かしても慎重な態度を崩さず、ゆっくりと坂を下るマーカスに、リタは頬を膨らませると両手を振り上げて文句を叫んでいる。
彼女はこのダンジョンにやって来るまでも散々待たされたと主張するが、その言葉を聞いたマーカスはその原因は彼女にあると零していた。
事実リタがこのダンジョンへと訪れるのが、こんなにも遅くなったのは彼女の普段の振る舞いが原因であった。
リタは勇者という立場にありながら自由気ままに振舞う事を止めず、ダンジョンでの修行も途中で投げ出してしまいがちであった。
そんな彼女が急に、あるダンジョンに向かいたいと言い出しても、またどこかでサボって遊びたいのだと勘繰られてしまって仕方のない事ではある。
「と、っとと・・・ふぅ、な、なんとかなった・・・ほ、ほら見なさい!気をつけて下りないと、こういう事になるのです!」
そんな文句をリタへと零すのに注意を割かれてしまったマーカスは、足元がおぼそかになってしまう。
そうして足を滑らしてしまったマーカスはしかし、何とか体勢を立て直すとほら見たことかと、リタへと坂道の危険性について主張する。
そう声を高らかにする彼は忘れてしまったのだろうか、そうして注意を他へと割いた事で足を滑らしてしまった事を。
「マーカス君、そこ危ないよ?」
「何ですか、リタ?何を・・・うひゃあ!?」
「コケが生えてるから、って・・・遅かったかー。ごめんねー、マーカス君」
リタの親切心からの忠告はしかし、彼の注意をさらに足元から逸らす結果となっている。
彼女が一体何の事を話しているのか一瞬理解できなかったマーカスはそちらへと顔を向け、そしてすぐにその意味を悟る事になる。
洞窟の姿をしているダンジョンの湿気は、他のそれよりも潤沢でコケの葉を十分過ぎるほどに潤すだろう。
水分をたっぷり蓄えたそれに体重を乗せた足を掛ければ、それはもう見事に滑ってしまっても仕方のないことだ。
綺麗にすっ転んだマーカスはそのまま坂を下り、リタの足元まで転がってきてしまう。
そんなマーカスの姿に止められなかったかと頭を押さえたリタは、軽く謝罪の言葉を述べると彼へと手を伸ばしていた。
「ぐっ、そういう事はもっと早く言ってくれないと・・・」
「だから、ごめんって!ほらほら、手を貸してあげるから!」
「全く貴方は、いつもそうやって適当に誤魔化して。こうした事もそうですが、普段からもっと勇者としての自覚というものがですね・・・」
地面で背中を強く打ったのか、すぐには起き上がれずそこで伸びているマーカスは、もう少し早く言ってくれと至極もっともな事をリタに話している。
流石にそれについては悪いと思っているのか、重ねて謝罪の言葉を述べたリタは、彼へと伸ばした手を早く掴めとアピールするように、ふりふりと振っていた。
彼女のそんな態度にも、まだ文句が言い足りないとぶつぶつと何事が呟いているマーカスも、いつまでも横になっている訳にもいかず、その手を掴む。
その瞬間に、にやりと笑ったリタの表情を、果たして彼は捉えていただろうか。
「ふふーん!つっかまえったー!!ほらほら、先を急ぐよー!!」
差し伸べた手を、掴んだのならばもはや放さない。
マーカスの手を強く掴んで、一気にその身体を引き上げたリタは、にやりと笑うとそのまま駆け出していってしまう。
彼女とマーカスの体格差を考えれば、そんなことはとても不可能だと感じるが、そこは流石勇者といったところか、マーカスの身体は彼の意思とは関係なしにグイグイと引っ張られ始めていた。
「え、ちょ、ま、待って!待ちなさい、リタ!!そんな急に走ったら、身体が・・・!」
強かに打ちつけた背中は、急な運動に確かな痛みを訴えかけてくる。
リタによって強制的に走らせ始めているマーカスは、準備不足を痛みによって主張してくる身体に、必死な形相で一旦待ってくれと彼女に訴えかけていた。
そんな言葉を、果たして彼女が聞き届けるだろうか。
「大丈夫大丈夫!いけるって!!ほら、行くよー!!」
答えは否だ。
リタはマーカスの必死の訴えにも耳を貸そうとはせず、あまつさえその足をさらに急がそうとしていた。
そうすればどうなるか、考えずとも分かるだろう。
「ちょ、本当、ま、待って!こ、腰が、腰がぁぁぁぁぁあっぁっ!!」
背中を打ちつけた衝撃は、起き上がれば腰へのダメージとして、その正体を現し始める。
びきびきと痛み始めた腰は、いつしか真っ直ぐ立っていられないほどの激痛へと変わっていた。
それを少しでも庇おうと、マーカスはへっぴり腰の姿勢でリタから引っ張られている。
彼は何とか彼女に止まってもらおうと呼びかけていたが、それも何時しか痛みを叫ぶだけのものへと変わってしまっていた。
「あはははっ!やっぱり、いけるじゃん!ほらほら、まだまだ行くよー!!」
「ぁぁっぁぁあああぁぁああぁぁああっ!!」
腰への負担を軽減するためか、リタに引っ張られるだけであったマーカスの足は、何時しか自分の足で走り始めていた。
その様子にリタの喜びの声を上げてさらに足を急がせるが、それは彼の悲鳴のオクターブをさらに上げる結果となる。
回復魔法の使い手であるマーカスは、その気になればその痛みも自分で癒せるだろう。
しかし激痛に苛まれ、強制的に走らされている今の状況で、それを為すのは至難の業だ。
そのため彼の上げる悲鳴は、リタが目的地へと辿りつきその足を止めるまで、止む事はなかった。
暗い足元に恐る恐るといった様子で坂を下っているマーカスを横目に、その燃えるような赤い髪を揺らすリタは、飛び跳ねるような気軽さでそこを下っていく。
彼女の服装は碌な鎧も身に纏っていない身軽なものであったが、その背中に括りつけられている大剣は、それを補ってなお余るほどの重量を備えているように思える。
そんなものを担ぎながら、彼女がそんな身軽な様を見せている所をみると、その聖剣が持ち主には重さを与えないという噂はどうやら、本当の事であるようだった。
「遅い遅ーい!遅すぎるよー、マーカスくーん!そんなとこ、ぴゃっと飛んじゃえばすぐだってー!」
「あ、貴方と一緒にしないでください!大体こういう所を甘く見ると、思わぬ怪我をするものなんです。慎重に慎重にっと・・・」
一歩一歩慎重に坂を下っているマーカスに、早く先へと進みたくて仕方がないという様子のリタは、その場で足踏みをしながら彼に早く早くと急かしていた。
彼女は坂を下りきった地面を指し示しては、そこまで一気に飛んでしまえば早いのにマーカスに不満を漏らしいる。
そんなリタの言葉に、自分と貴方とではその身体能力が違うと主張するマーカスは、殊更に慎重にすり足のような仕草で坂を下り続けていた。
「ぶー!!ここに来るまで散々待たされたのに、まだ待たされるのー!!早く早くー!早く先に進みたいよー!」
「そ、それは貴方がいつも勝手な事をするから・・・うわぁっ!?」
いくら急かしても慎重な態度を崩さず、ゆっくりと坂を下るマーカスに、リタは頬を膨らませると両手を振り上げて文句を叫んでいる。
彼女はこのダンジョンにやって来るまでも散々待たされたと主張するが、その言葉を聞いたマーカスはその原因は彼女にあると零していた。
事実リタがこのダンジョンへと訪れるのが、こんなにも遅くなったのは彼女の普段の振る舞いが原因であった。
リタは勇者という立場にありながら自由気ままに振舞う事を止めず、ダンジョンでの修行も途中で投げ出してしまいがちであった。
そんな彼女が急に、あるダンジョンに向かいたいと言い出しても、またどこかでサボって遊びたいのだと勘繰られてしまって仕方のない事ではある。
「と、っとと・・・ふぅ、な、なんとかなった・・・ほ、ほら見なさい!気をつけて下りないと、こういう事になるのです!」
そんな文句をリタへと零すのに注意を割かれてしまったマーカスは、足元がおぼそかになってしまう。
そうして足を滑らしてしまったマーカスはしかし、何とか体勢を立て直すとほら見たことかと、リタへと坂道の危険性について主張する。
そう声を高らかにする彼は忘れてしまったのだろうか、そうして注意を他へと割いた事で足を滑らしてしまった事を。
「マーカス君、そこ危ないよ?」
「何ですか、リタ?何を・・・うひゃあ!?」
「コケが生えてるから、って・・・遅かったかー。ごめんねー、マーカス君」
リタの親切心からの忠告はしかし、彼の注意をさらに足元から逸らす結果となっている。
彼女が一体何の事を話しているのか一瞬理解できなかったマーカスはそちらへと顔を向け、そしてすぐにその意味を悟る事になる。
洞窟の姿をしているダンジョンの湿気は、他のそれよりも潤沢でコケの葉を十分過ぎるほどに潤すだろう。
水分をたっぷり蓄えたそれに体重を乗せた足を掛ければ、それはもう見事に滑ってしまっても仕方のないことだ。
綺麗にすっ転んだマーカスはそのまま坂を下り、リタの足元まで転がってきてしまう。
そんなマーカスの姿に止められなかったかと頭を押さえたリタは、軽く謝罪の言葉を述べると彼へと手を伸ばしていた。
「ぐっ、そういう事はもっと早く言ってくれないと・・・」
「だから、ごめんって!ほらほら、手を貸してあげるから!」
「全く貴方は、いつもそうやって適当に誤魔化して。こうした事もそうですが、普段からもっと勇者としての自覚というものがですね・・・」
地面で背中を強く打ったのか、すぐには起き上がれずそこで伸びているマーカスは、もう少し早く言ってくれと至極もっともな事をリタに話している。
流石にそれについては悪いと思っているのか、重ねて謝罪の言葉を述べたリタは、彼へと伸ばした手を早く掴めとアピールするように、ふりふりと振っていた。
彼女のそんな態度にも、まだ文句が言い足りないとぶつぶつと何事が呟いているマーカスも、いつまでも横になっている訳にもいかず、その手を掴む。
その瞬間に、にやりと笑ったリタの表情を、果たして彼は捉えていただろうか。
「ふふーん!つっかまえったー!!ほらほら、先を急ぐよー!!」
差し伸べた手を、掴んだのならばもはや放さない。
マーカスの手を強く掴んで、一気にその身体を引き上げたリタは、にやりと笑うとそのまま駆け出していってしまう。
彼女とマーカスの体格差を考えれば、そんなことはとても不可能だと感じるが、そこは流石勇者といったところか、マーカスの身体は彼の意思とは関係なしにグイグイと引っ張られ始めていた。
「え、ちょ、ま、待って!待ちなさい、リタ!!そんな急に走ったら、身体が・・・!」
強かに打ちつけた背中は、急な運動に確かな痛みを訴えかけてくる。
リタによって強制的に走らせ始めているマーカスは、準備不足を痛みによって主張してくる身体に、必死な形相で一旦待ってくれと彼女に訴えかけていた。
そんな言葉を、果たして彼女が聞き届けるだろうか。
「大丈夫大丈夫!いけるって!!ほら、行くよー!!」
答えは否だ。
リタはマーカスの必死の訴えにも耳を貸そうとはせず、あまつさえその足をさらに急がそうとしていた。
そうすればどうなるか、考えずとも分かるだろう。
「ちょ、本当、ま、待って!こ、腰が、腰がぁぁぁぁぁあっぁっ!!」
背中を打ちつけた衝撃は、起き上がれば腰へのダメージとして、その正体を現し始める。
びきびきと痛み始めた腰は、いつしか真っ直ぐ立っていられないほどの激痛へと変わっていた。
それを少しでも庇おうと、マーカスはへっぴり腰の姿勢でリタから引っ張られている。
彼は何とか彼女に止まってもらおうと呼びかけていたが、それも何時しか痛みを叫ぶだけのものへと変わってしまっていた。
「あはははっ!やっぱり、いけるじゃん!ほらほら、まだまだ行くよー!!」
「ぁぁっぁぁあああぁぁああぁぁああっ!!」
腰への負担を軽減するためか、リタに引っ張られるだけであったマーカスの足は、何時しか自分の足で走り始めていた。
その様子にリタの喜びの声を上げてさらに足を急がせるが、それは彼の悲鳴のオクターブをさらに上げる結果となる。
回復魔法の使い手であるマーカスは、その気になればその痛みも自分で癒せるだろう。
しかし激痛に苛まれ、強制的に走らされている今の状況で、それを為すのは至難の業だ。
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