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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
勇者達の冒険は今始まったばかり 3
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「うむ!しかし、私が殿を交替してやってもいいのだぞ!そちらの方が面白そうだ!」
「よろしい、ですね」
「う、うむ。分かったのだ・・・」
アビーがエヴァンへと問題ないかと尋ねたのは、主従としての形式的なものであろう。
しかしエヴァンはその問い掛けに対して、自らが殿を務めてもいいとのたまっていた。
それが男らしさの芽生えであれば、アビーも少しは考慮したかもしれないが、ただただ楽しそうだからと話す彼の姿に、彼女もただただもう何も言うなと迫るだけだ。
そんな彼女の迫力に押しやられれば、エヴァンももはや了承を告げるしかない。
その自然と僅かに紅潮している頬を青く染めたエヴァンは、消え入るような声で彼女の言葉を受け入れていた。
「もういいかー?」
「はい、問題ありません。お待たせして申し訳ありません、皆様方」
ただの配置決めにもかかわらず、軽く揉めては時間を消費しているエヴァンとアビーに、エルトンは退屈そうにまだ時間が掛かるのかと問いかけている。
彼の問い掛けにエヴァンはまだ何かを言いたそうにしていたが、それもアビーに先に返事を返されてしまえば、もはや口を挟む訳にもいかない。
「へっ、こんぐらいどうってことねぇよ。こっからは魔物も出てくるからな、くれぐれも慎重に動いてくれよ」
「わ、分かったのだ!」
どうって事のないトラブルに対して、丁寧すぎるほどに頭を下げて謝罪するアビーの姿に、どこか気まずさを誤魔化すようにエルトンは鼻を鳴らしている。
彼がそんな振る舞いの照れ隠しに続けたダンジョンでの注意に、エヴァンは両手を握ると決して忘れはしないと宣言していた。
彼のその決意は紛れもない本物であろうが、誰も彼にそれを求めてはいないだろう。
ここに集まった彼以外の面々は全て、彼を守り接待するためにここへとやってきたのだ。
そんな彼らからすればエヴァンのその決意はありがたくはあったが、そんな事よりもこの冒険を満喫する事に集中して欲しいというのが本音であった。
「いえ、レイモンド様はその・・・そういった事は気にされずに―――」
「はははっ!そんなに力んでちゃ、この先持ちやしないぜ勇者の坊ちゃんよぉ!!リラックスしな、リラックス!!」
「っ!?げほっ、げほっ!!そ、そうだな。アーネットの言う通りだ、先はまだまだ長いのだからな」
自らも役に立って見せると張り切る少年に、そんなことなど気にせずに冒険を楽しんでくれとは言い難い。
そんなしがらみにケネスが苦しんでは言葉を濁していると、そんな事を気にしてもいないエルトンがそれを解決してみせていた。
豪快な笑い声を上げながらエヴァンの背中を叩いたエルトンが、その過剰なまでの緊張を解している。
彼の強すぎる力に激しく咳き込んだエヴァンも、それが収まる頃には先ほどまでよりもずっと、肩の力が抜けたようだった。
「その通りその通り!ま、安心して俺達に任せてくれよな!そんじゃ、行くぜー」
先ほどよりはリラックスした様子のエヴァンの姿を見ては、満足げに頷いたエルトンは気楽な様子で先へと進む号令を告げる。
彼はその言葉と共に軽く腕を振ると、さっさと先に進み始めてしまうが、それについて進もうとするものは一人もいない。
それもその筈で、この一行の中心はエヴァンなのだ。
その彼がその場を動いていなければ本来、誰も前に進まないのが当然の事であった。
「うむ!では皆の者、我に・・・ではなかった、アーネットに続くのだ!」
エルトンの言葉に力強く頷いたエヴァンは、そのまま高らかに号令を上げようとしていた。
その言葉が途中で詰まってしまったのは、いつもの習慣で自らについて来るように皆に宣言しようとしていたからか。
先頭を歩き、後ろの者など気にしていない様子で前へと進むエルトンの姿を捉えたエヴァンは、彼の後へと続くように号令の内容を修正する。
その言葉に周りの者達は静かに頷き、ゆっくりとその足を進め始めていた。
(よし、よし!ここまでは順調だぞ!しかし油断するなよ、カイ・リンデンバウム!ここから先はヴェロニカ達が考えた、恐ろしい計画が待ち受けている筈だからな!正直それどころじゃなくて、全然聞いてなかったけど・・・あいつらの事だ、きっととんでもない計画の筈に違いない!用心しなければ・・・)
先へと進み始めた一行の中で一人、カイだけがまったく別の事を考えては気合を滾らせていた。
勇者に張り付いてダンジョンに潜るという当初の目的の達成に喜んだ彼も、これから待ち受ける試練を考えれば浮かれている訳にもいかない。
ヴェロニカとダミアンという明晰な頭脳を持つ二人が、本気で勇者を抹殺するためだけに立てた計画がこの先に待ち受けているのだ。
彼らとの思惑の違いにショックを受け、混乱してしまっていたカイはその計画を聞き逃してしまっていたが、それが恐ろしいものである事だけは確信していた。
その計画から勇者を守るためには、この身を張る事も覚悟しなければならないだろう。
その時、勇者を必ず守りきると決意するカイの背中に、どこかで感じた事のある寒気が奔っていた。
「ん?何だこれ、どこかで・・・武者震いか?」
背中に奔った悪寒は身体を震わせ、カイの心をも振動させる。
しかしそのタイミングが悪ければ、勘違いもさせるというものだろう。
丁度、決意を固めた時に訪れた身体の震えに、カイはそれが武者震いなのだと解釈してしまっていた。
「どうしたのだ、キルヒマン?置いていくぞ?」
「ああっ、すみません!少しボーっとしてしまって!」
思考に没頭している、カイの歩みは遅い。
一行の丁度真ん中辺りを歩いていた彼は、気付けば後方を歩いていたエヴァン達にも追い抜かれてしまっていた。
背中に感じた寒気に、もはやその場に立ち尽くすようになってしまっていたカイに、エヴァンは心配そうに声を掛けてくる。
カイはその声に慌てて取り繕うと、急ぎ足で元のポジションへと駆け戻っていく。
「危ない、危ない・・・折角ここまでうまく取り入ったのに、ここで疑われたら元も子もないからな。まだ始まったばかりだって言うのに、気をつけないと・・・」
勇者を守るという、彼の任務は今ようやく始まったばかりだ。
こんな所で変に疑われて、それを台無しにする訳にはいかないと、カイは一人反省の言葉を漏らす。
そう彼が言う通り、勇者の冒険は今まさに始まったばかりであった。
「よろしい、ですね」
「う、うむ。分かったのだ・・・」
アビーがエヴァンへと問題ないかと尋ねたのは、主従としての形式的なものであろう。
しかしエヴァンはその問い掛けに対して、自らが殿を務めてもいいとのたまっていた。
それが男らしさの芽生えであれば、アビーも少しは考慮したかもしれないが、ただただ楽しそうだからと話す彼の姿に、彼女もただただもう何も言うなと迫るだけだ。
そんな彼女の迫力に押しやられれば、エヴァンももはや了承を告げるしかない。
その自然と僅かに紅潮している頬を青く染めたエヴァンは、消え入るような声で彼女の言葉を受け入れていた。
「もういいかー?」
「はい、問題ありません。お待たせして申し訳ありません、皆様方」
ただの配置決めにもかかわらず、軽く揉めては時間を消費しているエヴァンとアビーに、エルトンは退屈そうにまだ時間が掛かるのかと問いかけている。
彼の問い掛けにエヴァンはまだ何かを言いたそうにしていたが、それもアビーに先に返事を返されてしまえば、もはや口を挟む訳にもいかない。
「へっ、こんぐらいどうってことねぇよ。こっからは魔物も出てくるからな、くれぐれも慎重に動いてくれよ」
「わ、分かったのだ!」
どうって事のないトラブルに対して、丁寧すぎるほどに頭を下げて謝罪するアビーの姿に、どこか気まずさを誤魔化すようにエルトンは鼻を鳴らしている。
彼がそんな振る舞いの照れ隠しに続けたダンジョンでの注意に、エヴァンは両手を握ると決して忘れはしないと宣言していた。
彼のその決意は紛れもない本物であろうが、誰も彼にそれを求めてはいないだろう。
ここに集まった彼以外の面々は全て、彼を守り接待するためにここへとやってきたのだ。
そんな彼らからすればエヴァンのその決意はありがたくはあったが、そんな事よりもこの冒険を満喫する事に集中して欲しいというのが本音であった。
「いえ、レイモンド様はその・・・そういった事は気にされずに―――」
「はははっ!そんなに力んでちゃ、この先持ちやしないぜ勇者の坊ちゃんよぉ!!リラックスしな、リラックス!!」
「っ!?げほっ、げほっ!!そ、そうだな。アーネットの言う通りだ、先はまだまだ長いのだからな」
自らも役に立って見せると張り切る少年に、そんなことなど気にせずに冒険を楽しんでくれとは言い難い。
そんなしがらみにケネスが苦しんでは言葉を濁していると、そんな事を気にしてもいないエルトンがそれを解決してみせていた。
豪快な笑い声を上げながらエヴァンの背中を叩いたエルトンが、その過剰なまでの緊張を解している。
彼の強すぎる力に激しく咳き込んだエヴァンも、それが収まる頃には先ほどまでよりもずっと、肩の力が抜けたようだった。
「その通りその通り!ま、安心して俺達に任せてくれよな!そんじゃ、行くぜー」
先ほどよりはリラックスした様子のエヴァンの姿を見ては、満足げに頷いたエルトンは気楽な様子で先へと進む号令を告げる。
彼はその言葉と共に軽く腕を振ると、さっさと先に進み始めてしまうが、それについて進もうとするものは一人もいない。
それもその筈で、この一行の中心はエヴァンなのだ。
その彼がその場を動いていなければ本来、誰も前に進まないのが当然の事であった。
「うむ!では皆の者、我に・・・ではなかった、アーネットに続くのだ!」
エルトンの言葉に力強く頷いたエヴァンは、そのまま高らかに号令を上げようとしていた。
その言葉が途中で詰まってしまったのは、いつもの習慣で自らについて来るように皆に宣言しようとしていたからか。
先頭を歩き、後ろの者など気にしていない様子で前へと進むエルトンの姿を捉えたエヴァンは、彼の後へと続くように号令の内容を修正する。
その言葉に周りの者達は静かに頷き、ゆっくりとその足を進め始めていた。
(よし、よし!ここまでは順調だぞ!しかし油断するなよ、カイ・リンデンバウム!ここから先はヴェロニカ達が考えた、恐ろしい計画が待ち受けている筈だからな!正直それどころじゃなくて、全然聞いてなかったけど・・・あいつらの事だ、きっととんでもない計画の筈に違いない!用心しなければ・・・)
先へと進み始めた一行の中で一人、カイだけがまったく別の事を考えては気合を滾らせていた。
勇者に張り付いてダンジョンに潜るという当初の目的の達成に喜んだ彼も、これから待ち受ける試練を考えれば浮かれている訳にもいかない。
ヴェロニカとダミアンという明晰な頭脳を持つ二人が、本気で勇者を抹殺するためだけに立てた計画がこの先に待ち受けているのだ。
彼らとの思惑の違いにショックを受け、混乱してしまっていたカイはその計画を聞き逃してしまっていたが、それが恐ろしいものである事だけは確信していた。
その計画から勇者を守るためには、この身を張る事も覚悟しなければならないだろう。
その時、勇者を必ず守りきると決意するカイの背中に、どこかで感じた事のある寒気が奔っていた。
「ん?何だこれ、どこかで・・・武者震いか?」
背中に奔った悪寒は身体を震わせ、カイの心をも振動させる。
しかしそのタイミングが悪ければ、勘違いもさせるというものだろう。
丁度、決意を固めた時に訪れた身体の震えに、カイはそれが武者震いなのだと解釈してしまっていた。
「どうしたのだ、キルヒマン?置いていくぞ?」
「ああっ、すみません!少しボーっとしてしまって!」
思考に没頭している、カイの歩みは遅い。
一行の丁度真ん中辺りを歩いていた彼は、気付けば後方を歩いていたエヴァン達にも追い抜かれてしまっていた。
背中に感じた寒気に、もはやその場に立ち尽くすようになってしまっていたカイに、エヴァンは心配そうに声を掛けてくる。
カイはその声に慌てて取り繕うと、急ぎ足で元のポジションへと駆け戻っていく。
「危ない、危ない・・・折角ここまでうまく取り入ったのに、ここで疑われたら元も子もないからな。まだ始まったばかりだって言うのに、気をつけないと・・・」
勇者を守るという、彼の任務は今ようやく始まったばかりだ。
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そう彼が言う通り、勇者の冒険は今まさに始まったばかりであった。
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