6 / 19
第6話
しおりを挟む
ジノザ視点
「クソッッ……まさかマルクが、あんなことを言い出すとは思わなかった!!」
授業が終わり、俺は屋敷に戻り部屋で憤っている。
まさかミリスとの婚約が破棄されるとは、俺は想定していなかったからだ。
「今まで通りミリスを蔑み、評判を落として誰とも関わらなくさせただけなのに……まさかマルクは、ミリスの実力を知っているのか?」
元々ミリスとの婚約を破棄すると決めていたが、それには理由があった。
俺は3ヶ月前から、一学年上の公爵令嬢レドナに婚約したいと提案を受けている。
その時に今の婚約者ミリスは婚約破棄した後、愛人にして構わないと許可を貰っていた。
「俺が嫌いなところを教室で言い続ければ、悪評の広まったミリスは誰とも婚約できない……そこから愛人にするつもりだったのに、こんなことになるとはな……」
現状は最悪だが、まだマルク王子がミリスを捨てる可能性もある。
そもそも王家が伯爵家のミリス如きを婚約者に認めるのかも疑問で、思案しながら今後について呟く。
「これからミリスは、本来の実力を出すだろう。それでも大したことはない」
本来の実力を出したとしても、魔法使いとして優秀なレドナ以下だ。
杖の強化に関しても、優秀な職人に強化してもらった方が性能はいい。
命令したのはただの嫌がらせで、ミリスの苦しむ姿が見たかったからだ。
「マルクはミリスの実力に期待しているようだが、これから後悔するだろう」
この時の俺は、ミリスが全力を出しても結果は出せないと確信する。
捨てられて誰とも婚約できなくなった時に、謝罪させて愛人にすればいいだろう。
今後について考えることで、俺は冷静になろうとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
ミリスとの婚約を破棄した翌日になり、学園は2日間の休日だ。
恐らく今頃マルク王子は婚約の手続きを進めながら、俺とミリスが婚約破棄したことを広めているだろう。
家族に婚約を破棄したことを伝える必要があり、食事を終えた俺が父に報告する。
最初は驚いていたが、これから公爵令嬢のレドナと婚約できると話せば納得してくれた。
「そうか……ミリスは優秀な魔法使いと聞き婚約者に選んだが、ルミリカ伯爵に騙されたようだ」
「はい。マルク殿下がミリスと婚約したいようですが、すぐに後悔するでしょう」
「なんだと!?」
言わなくてもいずれ知られるだろうから昨日の出来事を報告すると、なぜか父が叫び出す。
頭を抱えている父の姿を眺めて、俺は今後の推測を話すことにした。
「ミリスはマルク殿下の婚約者に相応しくありません。婚約破棄された後に、俺の愛人となるでしょう」
「それならよいが……もしミリスが活躍することになれば、お前の評価が下がる。本当に大丈夫だろうな?」
「……父上は心配しすぎです。ミリス如きが活躍するわけありません」
そう言いながらも、俺はミリスが魔法で強化した杖のことを思い返す。
魔法道具である杖に干渉する魔法を使える者は珍しく、本来なら職人に依頼する必要がある。
職人は数が少ないから予約しても強化までに日数がかかり、優秀な職人なら1年以上待つ必要があるらしい。
俺はミリスに杖を強化してもらい、その魔法が使えることを隠すよう命令していた。
伯爵家の令嬢が俺より優れていると思われたくなかったし、実際に俺の方が優れているはずだ。
成績も目立たないよう抑えろと命令したが、抑えていないだろう。
杖の強化で徹夜させたことにより授業を聞けていないのだから、俺の方が成績は上に違いない。
「それもそうか。お前から聞くミリスの実力は大したことがなかったし、マルク殿下から婚約を破棄された後に拾ってやればよい」
「わかりました。1ヶ月も経たずにそうなるでしょう」
これからレドナと婚約して、マルク王子に婚約を破棄されたミリスを従える。
それが無理だということを、この時の俺は知らなかった。
「クソッッ……まさかマルクが、あんなことを言い出すとは思わなかった!!」
授業が終わり、俺は屋敷に戻り部屋で憤っている。
まさかミリスとの婚約が破棄されるとは、俺は想定していなかったからだ。
「今まで通りミリスを蔑み、評判を落として誰とも関わらなくさせただけなのに……まさかマルクは、ミリスの実力を知っているのか?」
元々ミリスとの婚約を破棄すると決めていたが、それには理由があった。
俺は3ヶ月前から、一学年上の公爵令嬢レドナに婚約したいと提案を受けている。
その時に今の婚約者ミリスは婚約破棄した後、愛人にして構わないと許可を貰っていた。
「俺が嫌いなところを教室で言い続ければ、悪評の広まったミリスは誰とも婚約できない……そこから愛人にするつもりだったのに、こんなことになるとはな……」
現状は最悪だが、まだマルク王子がミリスを捨てる可能性もある。
そもそも王家が伯爵家のミリス如きを婚約者に認めるのかも疑問で、思案しながら今後について呟く。
「これからミリスは、本来の実力を出すだろう。それでも大したことはない」
本来の実力を出したとしても、魔法使いとして優秀なレドナ以下だ。
杖の強化に関しても、優秀な職人に強化してもらった方が性能はいい。
命令したのはただの嫌がらせで、ミリスの苦しむ姿が見たかったからだ。
「マルクはミリスの実力に期待しているようだが、これから後悔するだろう」
この時の俺は、ミリスが全力を出しても結果は出せないと確信する。
捨てられて誰とも婚約できなくなった時に、謝罪させて愛人にすればいいだろう。
今後について考えることで、俺は冷静になろうとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
ミリスとの婚約を破棄した翌日になり、学園は2日間の休日だ。
恐らく今頃マルク王子は婚約の手続きを進めながら、俺とミリスが婚約破棄したことを広めているだろう。
家族に婚約を破棄したことを伝える必要があり、食事を終えた俺が父に報告する。
最初は驚いていたが、これから公爵令嬢のレドナと婚約できると話せば納得してくれた。
「そうか……ミリスは優秀な魔法使いと聞き婚約者に選んだが、ルミリカ伯爵に騙されたようだ」
「はい。マルク殿下がミリスと婚約したいようですが、すぐに後悔するでしょう」
「なんだと!?」
言わなくてもいずれ知られるだろうから昨日の出来事を報告すると、なぜか父が叫び出す。
頭を抱えている父の姿を眺めて、俺は今後の推測を話すことにした。
「ミリスはマルク殿下の婚約者に相応しくありません。婚約破棄された後に、俺の愛人となるでしょう」
「それならよいが……もしミリスが活躍することになれば、お前の評価が下がる。本当に大丈夫だろうな?」
「……父上は心配しすぎです。ミリス如きが活躍するわけありません」
そう言いながらも、俺はミリスが魔法で強化した杖のことを思い返す。
魔法道具である杖に干渉する魔法を使える者は珍しく、本来なら職人に依頼する必要がある。
職人は数が少ないから予約しても強化までに日数がかかり、優秀な職人なら1年以上待つ必要があるらしい。
俺はミリスに杖を強化してもらい、その魔法が使えることを隠すよう命令していた。
伯爵家の令嬢が俺より優れていると思われたくなかったし、実際に俺の方が優れているはずだ。
成績も目立たないよう抑えろと命令したが、抑えていないだろう。
杖の強化で徹夜させたことにより授業を聞けていないのだから、俺の方が成績は上に違いない。
「それもそうか。お前から聞くミリスの実力は大したことがなかったし、マルク殿下から婚約を破棄された後に拾ってやればよい」
「わかりました。1ヶ月も経たずにそうなるでしょう」
これからレドナと婚約して、マルク王子に婚約を破棄されたミリスを従える。
それが無理だということを、この時の俺は知らなかった。
668
あなたにおすすめの小説
私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?
睡蓮
恋愛
セレスとクレイは婚約関係にあった。しかし、セレスよりも他の女性に目移りしてしまったクレイは、ためらうこともなくセレスの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたクレイであったものの、後に全く同じ言葉をセレスから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。
※全6話完結です。
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
私が家出をしたことを知って、旦那様は分かりやすく後悔し始めたようです
睡蓮
恋愛
リヒト侯爵様、婚約者である私がいなくなった後で、どうぞお好きなようになさってください。あなたがどれだけ焦ろうとも、もう私には関係のない話ですので。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる