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第5話
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ジノザから婚約を破棄したいと言われて、私は賛同した。
そしてクラスメイトのマルク王子が私と婚約すると宣言した後、授業が終わり私は屋敷に戻っている。
手続きはマルク王子がすると言ってくれたから、私はなにもしなくていいようだ。
私がジノザとの婚約を破棄すると意思表示したことは、教室にいる生徒達が目撃している。
これからジノザが何を言ったとしても、婚約を破棄したいと先に言ったのがジノザなのは間違いない。
それがわかっているから、教室でジノザは取り乱していた。
「先月マルク様から聞いていましたけど……本当に、私がマルク様の婚約者でいいのでしょうか?」
これは先月、私がマルク様に尋ねたことでもある。
ジノザとの婚約が解消されるのは嬉しいけど、その後は王子の婚約者だ。
不安になってしまうけど、マルク王子は心配することはないと言ってくれる。
あの時の会話を――私は、1ヶ月前の出来事を思い返そうとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
時間は、1ヶ月前の放課後まで遡る。
帰宅前に私はマルク様から手紙を受け取り、校舎裏まで来ている。
今までもジノザの言動から心配してくれたけど、この日のマルク様は様子が違った。
緊張している様子だけど、王子のマルク様が伯爵令嬢の私に緊張する理由がわからない。
困惑していると、私はマルク様の発言に驚くこととなる。
「次にジノザが婚約を破棄したいと言い出したら、ミリスが賛同するのはどうだろうか?」
「そんなことをすれば、ジノザ様は権力で私を脅してきます」
「私も同じことを考えていた――ミリスがよければ、私と婚約して欲しい」
「……えっ?」
確かにマルク様の提案なら、ジノザが権力で脅すことはできない。
それでも……婚約して欲しいと言われて、私は驚いてしまう。
「今までミリスが本来の実力を隠して学園生活を送っていることはわかっている。ジノザの命令によるもので、ミリスが優秀と知られたくないのだろう」
「……どうして、そう考えるのですか?」
今まで誰にも言えなかったけど、マルク様は私の実力を把握できている。
ジノザの命令で実力を抑えていることまでわかっていることが気になり、尋ねることにした。
「ジノザには目論見がありそうだが、それはまだ確証できないから言わないでおこう。自分が立場が下の婚約者より劣っていると思われたくないのも、理由の一つだ」
「それは、そうですね……」
私が推測している理由を話してくれたけど、マルク様は他にも目論見があると思っていそう。
それがなんなのかわからないでいると、マルク様が私を眺めて言う。
「……私としては、ミリスの返答が聞きたい」
どうやら理由を聞いたことで、婚約を断られるのではないかと不安にさせてしまったようだ。
先に気になったことを聞いただけで、マルク王子が婚約者になるのは私としても嬉しい。
それでも……不安なことがあり、私は尋ねる。
「マルク様の婚約者として、私は相応しくなれるでしょうか?」
「そこは気にしなくて構わない。今までと違い実力を抑えなくていいから大丈夫だ」
「それは――」
「――私が気にしているのは、ミリスの気持ちだ」
不安なことばかり口に出てしまう私に対して、マルク様が言う。
入学してから今まで、マルク様は私のことを心配してくれた。
親同士が決めた婚約だからかジノザは私のことが好きではないようで、気遣うことはない。
婚約したいと言ってくれた時の気持ちを、私は話す。
「私も――マルク様と婚約したいと思っています」
■◇■◇■◇■◇■
先月の出来事を思い返した後、部屋で私は呟く。
「これでようやく、私は自由になれそうです」
ジノザがいつも通り婚約を破棄したいと言ってきたから、予定通りマルク様との婚約が決まる。
後はマルク王子の婚約者に相応しくないと思われないよう、私は全力を出すだけだ。
「今まではジノザ様の無茶苦茶な命令で、あまり眠れていませんでした……今日からは、ぐっすり眠れそうです」
まずは睡眠不足をなんとかしたくて、私は眠ることにした。
マルク様の期待に応えたい私は、これから活躍してみせよう。
決意した私は結果を出していき――元婚約者のジノザは、これから後悔することとなる。
そしてクラスメイトのマルク王子が私と婚約すると宣言した後、授業が終わり私は屋敷に戻っている。
手続きはマルク王子がすると言ってくれたから、私はなにもしなくていいようだ。
私がジノザとの婚約を破棄すると意思表示したことは、教室にいる生徒達が目撃している。
これからジノザが何を言ったとしても、婚約を破棄したいと先に言ったのがジノザなのは間違いない。
それがわかっているから、教室でジノザは取り乱していた。
「先月マルク様から聞いていましたけど……本当に、私がマルク様の婚約者でいいのでしょうか?」
これは先月、私がマルク様に尋ねたことでもある。
ジノザとの婚約が解消されるのは嬉しいけど、その後は王子の婚約者だ。
不安になってしまうけど、マルク王子は心配することはないと言ってくれる。
あの時の会話を――私は、1ヶ月前の出来事を思い返そうとしていた。
■◇■◇■◇■◇■
時間は、1ヶ月前の放課後まで遡る。
帰宅前に私はマルク様から手紙を受け取り、校舎裏まで来ている。
今までもジノザの言動から心配してくれたけど、この日のマルク様は様子が違った。
緊張している様子だけど、王子のマルク様が伯爵令嬢の私に緊張する理由がわからない。
困惑していると、私はマルク様の発言に驚くこととなる。
「次にジノザが婚約を破棄したいと言い出したら、ミリスが賛同するのはどうだろうか?」
「そんなことをすれば、ジノザ様は権力で私を脅してきます」
「私も同じことを考えていた――ミリスがよければ、私と婚約して欲しい」
「……えっ?」
確かにマルク様の提案なら、ジノザが権力で脅すことはできない。
それでも……婚約して欲しいと言われて、私は驚いてしまう。
「今までミリスが本来の実力を隠して学園生活を送っていることはわかっている。ジノザの命令によるもので、ミリスが優秀と知られたくないのだろう」
「……どうして、そう考えるのですか?」
今まで誰にも言えなかったけど、マルク様は私の実力を把握できている。
ジノザの命令で実力を抑えていることまでわかっていることが気になり、尋ねることにした。
「ジノザには目論見がありそうだが、それはまだ確証できないから言わないでおこう。自分が立場が下の婚約者より劣っていると思われたくないのも、理由の一つだ」
「それは、そうですね……」
私が推測している理由を話してくれたけど、マルク様は他にも目論見があると思っていそう。
それがなんなのかわからないでいると、マルク様が私を眺めて言う。
「……私としては、ミリスの返答が聞きたい」
どうやら理由を聞いたことで、婚約を断られるのではないかと不安にさせてしまったようだ。
先に気になったことを聞いただけで、マルク王子が婚約者になるのは私としても嬉しい。
それでも……不安なことがあり、私は尋ねる。
「マルク様の婚約者として、私は相応しくなれるでしょうか?」
「そこは気にしなくて構わない。今までと違い実力を抑えなくていいから大丈夫だ」
「それは――」
「――私が気にしているのは、ミリスの気持ちだ」
不安なことばかり口に出てしまう私に対して、マルク様が言う。
入学してから今まで、マルク様は私のことを心配してくれた。
親同士が決めた婚約だからかジノザは私のことが好きではないようで、気遣うことはない。
婚約したいと言ってくれた時の気持ちを、私は話す。
「私も――マルク様と婚約したいと思っています」
■◇■◇■◇■◇■
先月の出来事を思い返した後、部屋で私は呟く。
「これでようやく、私は自由になれそうです」
ジノザがいつも通り婚約を破棄したいと言ってきたから、予定通りマルク様との婚約が決まる。
後はマルク王子の婚約者に相応しくないと思われないよう、私は全力を出すだけだ。
「今まではジノザ様の無茶苦茶な命令で、あまり眠れていませんでした……今日からは、ぐっすり眠れそうです」
まずは睡眠不足をなんとかしたくて、私は眠ることにした。
マルク様の期待に応えたい私は、これから活躍してみせよう。
決意した私は結果を出していき――元婚約者のジノザは、これから後悔することとなる。
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