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第7話
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ジノザ視点
ミリスとの婚約を破棄してから2日が経ち、マルク王子は婚約の手続きをしているようだ。
王家の者が屋敷にやって来て、父が対応したらしい。
婚約破棄が正式に決まったことを知り、今日は部屋に公爵令嬢のレドナが来ていた。
レドナは婚約破棄を知り、俺と婚約することについて話したいらしい。
魔法使いとして優秀なレドナは俺の婚約者に相応しく、この時はミリスと婚約破棄できてよかったと考えていた。
2日前の出来事について話すと、椅子に座るレドナは驚いている。
婚約を破棄したことは予定通りだが、マルク王子の行動は予想外だったようだ。
「……まさかマルク様が、ミリスと婚約するとは思わなかったわ」
「俺も同意見だ。何を考えているのかわからない」
ミリスの本来の実力に期待しているようだが、そのことをレドナには話していない。
一学年上のレドナはミリスの発言を聞いていないから、マルク殿下がミリスと婚約した理由が理解できないようだ。
「ルミリカ伯爵家の人は優秀な魔法使いが多いから、今後ジノザがミリスを愛人にすることで関係を持ちたかったけど無理そうね」
「いや、マルクはミリスとの婚約を後悔するだろう。婚約を破棄した後は予定通りにいけそうだ」
「それはどうかしら? マルク様の性格的に、ミリスがどんな人でも婚約を破棄するとは思えないわ」
「うっっ……いや、一生共に過ごすことを想像すれば、マルクでもミリスを嫌になるだろう!」
そうでなければ、ミリスが俺の元に戻ってこない。
――婚約を破棄したいと言ったのは俺の方なのに、なぜかミリスに執着してしまう。
自分自身でも理解ができない感情で、そんな俺を眺めてレドナは笑顔を浮かべた。
「ミリスのことはどうでもいいわ。これでようやく、私はジノザと婚約できる!」
「そうだな……レドナは、俺のどこが好きで婚約するつもりなんだ?」
今はレドナのことを考えたくなり、俺は今まで聞かなかったことを尋ねる。
学園に入学して3ヶ月が経ち、レドナが俺と婚約したいと屋敷にやって来た。
公爵家の令嬢と婚約できることは嬉しかったが、その時の俺はミリスと婚約している。
それなら――ミリスの評判を落としてから婚約を破棄し、俺はレドナと婚約する。
誰とも婚約できないミリスを愛人にすればいいと思いつき、2日前までは目論見通りになっていた。
その目論見はマルク王子のせいでおかしくなり、俺は不安になってしまう。
そんな俺と違い喜ぶレドナを眺めて、婚約の理由を聞きたくなっていた。
そして俺は、リドナの発言に驚くこととなる。
「杖の強化ができるからよ。それ以外に理由はないわ」
「なんだと……公爵家の令嬢なら、杖の強化は職人に頼めばすぐできるだろう!?」
ミリスが強化した杖よりも、職人に作らせた杖の方が優秀だ。
それは両方を試した俺だから理解しているというのに、リドナはミリスの杖が目当てで婚約しようと決めたらしい。
ミリスが強化した杖を使って俺は活躍していたが、そこまで重要なのか?
理解できない俺は焦り、レドナに尋ねる。
「……俺が魔法で強化した杖より、職人が作る杖の方が優れているだろ?」
3ヶ月前に屋敷に来たレドナから杖について聞かれて、俺は自分の魔法によるものと嘘をついている。
秘密にすることで誰にも知られていなかったが、秘密にしたのは本当の俺は杖を強化する魔法が使えないからだ。
まさか婚約の理由が杖を強化する魔法とは思わず、俺は焦ってしまう。
理由を尋ねると、レドナの発言を聞き更に驚くこととなる。
「杖を強化できる人は貴重で、公爵家でも入手に時間がかかるわ。それなのに学園の授業で使い潰し、新しい杖も強化されているのだから婚約したくなるのは当然よ!」
「なっっ!? そんなに、貴重だったのか……」
俺はミリスから何も聞いていないから、魔法が使えるのなら簡単に作れると思っていた。
杖を強化していると察したのは、学園内ではレドナだけだったというのもある。
マルク王子がミリスと婚約した理由を、俺は察することができてしまった。
「……今の俺は杖が作れなくなってしまった。それでも、婚約してくれるのか?」
杖の強化する魔法が本当は使えないと言えば、俺はどんな目に合うかわからない。
それなら今は杖の強化ができなくなったことにしておき、婚約も避けるべきだ。
「今はミリスと別れたことで、心が乱れているだけよ。いずれ元通りに、いいえ、今まで以上に杖の強化ができるわ!」
「……心が乱れていると、杖の強化に影響が出るのか?」
「何も知らないようね。体や物を強化する魔法は、精神状態で性能が変化するのよ。これからジノザは私と婚約して自信を持ち、更なる力を引き出してもらうわ!」
レドナの発言には圧があり、俺は何も言えなくなってしまう。
これからも杖を強化する魔法が出せないと言い張るしかなくて、発言を聞き気になることがある。
……それなら、王子が婚約者になったミリスは、もっと性能がいい杖を作るのではないか?
不安になりながらも、それはありえないと考える。
そして――翌日の学園で、俺にとって最悪の事態が起ころうとしていた。
ミリスとの婚約を破棄してから2日が経ち、マルク王子は婚約の手続きをしているようだ。
王家の者が屋敷にやって来て、父が対応したらしい。
婚約破棄が正式に決まったことを知り、今日は部屋に公爵令嬢のレドナが来ていた。
レドナは婚約破棄を知り、俺と婚約することについて話したいらしい。
魔法使いとして優秀なレドナは俺の婚約者に相応しく、この時はミリスと婚約破棄できてよかったと考えていた。
2日前の出来事について話すと、椅子に座るレドナは驚いている。
婚約を破棄したことは予定通りだが、マルク王子の行動は予想外だったようだ。
「……まさかマルク様が、ミリスと婚約するとは思わなかったわ」
「俺も同意見だ。何を考えているのかわからない」
ミリスの本来の実力に期待しているようだが、そのことをレドナには話していない。
一学年上のレドナはミリスの発言を聞いていないから、マルク殿下がミリスと婚約した理由が理解できないようだ。
「ルミリカ伯爵家の人は優秀な魔法使いが多いから、今後ジノザがミリスを愛人にすることで関係を持ちたかったけど無理そうね」
「いや、マルクはミリスとの婚約を後悔するだろう。婚約を破棄した後は予定通りにいけそうだ」
「それはどうかしら? マルク様の性格的に、ミリスがどんな人でも婚約を破棄するとは思えないわ」
「うっっ……いや、一生共に過ごすことを想像すれば、マルクでもミリスを嫌になるだろう!」
そうでなければ、ミリスが俺の元に戻ってこない。
――婚約を破棄したいと言ったのは俺の方なのに、なぜかミリスに執着してしまう。
自分自身でも理解ができない感情で、そんな俺を眺めてレドナは笑顔を浮かべた。
「ミリスのことはどうでもいいわ。これでようやく、私はジノザと婚約できる!」
「そうだな……レドナは、俺のどこが好きで婚約するつもりなんだ?」
今はレドナのことを考えたくなり、俺は今まで聞かなかったことを尋ねる。
学園に入学して3ヶ月が経ち、レドナが俺と婚約したいと屋敷にやって来た。
公爵家の令嬢と婚約できることは嬉しかったが、その時の俺はミリスと婚約している。
それなら――ミリスの評判を落としてから婚約を破棄し、俺はレドナと婚約する。
誰とも婚約できないミリスを愛人にすればいいと思いつき、2日前までは目論見通りになっていた。
その目論見はマルク王子のせいでおかしくなり、俺は不安になってしまう。
そんな俺と違い喜ぶレドナを眺めて、婚約の理由を聞きたくなっていた。
そして俺は、リドナの発言に驚くこととなる。
「杖の強化ができるからよ。それ以外に理由はないわ」
「なんだと……公爵家の令嬢なら、杖の強化は職人に頼めばすぐできるだろう!?」
ミリスが強化した杖よりも、職人に作らせた杖の方が優秀だ。
それは両方を試した俺だから理解しているというのに、リドナはミリスの杖が目当てで婚約しようと決めたらしい。
ミリスが強化した杖を使って俺は活躍していたが、そこまで重要なのか?
理解できない俺は焦り、レドナに尋ねる。
「……俺が魔法で強化した杖より、職人が作る杖の方が優れているだろ?」
3ヶ月前に屋敷に来たレドナから杖について聞かれて、俺は自分の魔法によるものと嘘をついている。
秘密にすることで誰にも知られていなかったが、秘密にしたのは本当の俺は杖を強化する魔法が使えないからだ。
まさか婚約の理由が杖を強化する魔法とは思わず、俺は焦ってしまう。
理由を尋ねると、レドナの発言を聞き更に驚くこととなる。
「杖を強化できる人は貴重で、公爵家でも入手に時間がかかるわ。それなのに学園の授業で使い潰し、新しい杖も強化されているのだから婚約したくなるのは当然よ!」
「なっっ!? そんなに、貴重だったのか……」
俺はミリスから何も聞いていないから、魔法が使えるのなら簡単に作れると思っていた。
杖を強化していると察したのは、学園内ではレドナだけだったというのもある。
マルク王子がミリスと婚約した理由を、俺は察することができてしまった。
「……今の俺は杖が作れなくなってしまった。それでも、婚約してくれるのか?」
杖の強化する魔法が本当は使えないと言えば、俺はどんな目に合うかわからない。
それなら今は杖の強化ができなくなったことにしておき、婚約も避けるべきだ。
「今はミリスと別れたことで、心が乱れているだけよ。いずれ元通りに、いいえ、今まで以上に杖の強化ができるわ!」
「……心が乱れていると、杖の強化に影響が出るのか?」
「何も知らないようね。体や物を強化する魔法は、精神状態で性能が変化するのよ。これからジノザは私と婚約して自信を持ち、更なる力を引き出してもらうわ!」
レドナの発言には圧があり、俺は何も言えなくなってしまう。
これからも杖を強化する魔法が出せないと言い張るしかなくて、発言を聞き気になることがある。
……それなら、王子が婚約者になったミリスは、もっと性能がいい杖を作るのではないか?
不安になりながらも、それはありえないと考える。
そして――翌日の学園で、俺にとって最悪の事態が起ころうとしていた。
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