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第2話
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私はパーティ会場を出るため、待機していた馬車に乗ろうとしていた。
周囲からは蔑まれて、私はあの場にいたくない。
とにかく今日の出来事を、家族に報告しよう。
そう考えていた時――追いかけてきたようで、後ろから聖女ベネサの声が聞こえた。
「ルクル様、お待ちください」
「……ベネサ様、どうしてあんな嘘をついたのですか?」
廊下で私は足を止めて、ベネサを眺める。
周囲には誰もいないから、私は尋ねることにした。
――エドガーの様子がおかしくなったのは、ベネサが迫ってからだ。
今まで異性と関わらなかった聖女なのに、急にエドガーと関わるようになっている。
そして私よりも、聖女のベネサを妻にしたいと考えるようになってしまった。
私の発言に対して、ベネサは笑みを浮かべて返答する。
「それは、ルクル様が邪魔だったからです」
「……えっ?」
「ようやく私は、ルクル様からエドガー殿下を奪うことができました」
やっぱり今日の婚約破棄は、ベネサが仕組んでいたようだ。
私が唖然としていると、ベネサの話が続く。
「エドガー殿下は、私の言うことをなんでも聞いてくれます。今回の計画を話した時も、拒むことなく即断してくれましたよ」
「……言うことを聞いてくれる王子が、ベネサ様にとって有益だと思ったのですね」
「その通り。更に言うなら聖女の私が妻になるのですから、エドガー殿下はこれから国王になるでしょう」
そしてベネサは聖女の立場で、国王の妻となる。
エドガーは言うことを聞いてくれるようだから、実質ベネサがギアノ国のトップとなりそうだ。
それでも嘘の理由で私を貶めたのは、許せない。
「……エドガー殿下が決めたことなら、私は従うしかありません。失礼します」
これから無実を証明するために動こうと、私は考えている。
ベネサは笑みを浮かべて、私の考えを見抜いているようだ。
「私とエドガー殿下の評判を落とさないためにも、ルクル様が悪くなければなりません」
「……ベネサ様は、何が言いたいのですか?」
「さあ? 屋敷に戻れば、わかるかもしれませんね」
そう言って、私の元からベネサが離れていく。
私は屋敷に帰って――発言の意味を、知ることとなる。
■◇■◇■◇■◇■
屋敷に戻り、パーティは終わった頃だ。
家族に今日の出来事を報告すると、お父様が溜息を吐く。
「ルクルが世界的に禁止されている、魅了魔法を使う魔法道具を作った。か……」
「私はそんな物を作っていません。調べてもらえばわかることです!」
その魔法道具は破棄していると言われたけど、調べれば何も破棄していないことがわかる。
そうすればエドガーとベネサが嘘をついていると判明して、慰謝料をとれるはず。
とにかく私は、調べてもらうために提案する。
それなのに……お父様とお母様は、聖女と王子の言い分を信じていた。
「ルクルよ、貴様はエドガー殿下とベネサ様を疑えというのか!」
「ルクルが魔法道具に熱中して、世界的に禁止されている物を作ったに決まっているわ!」
「……えっ?」
叫び声を聞いて、私は動揺するしかない。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を、家族は信じているようだ。
「俺達は前から、ルクルの悪事をベネサ様から聞いていた」
「今日のパーティ会場で話すことは、前から知っていたのよ」
「家の評判が悪くなるから――ルクルとは家族の縁を切り、明日には追い出すようにと言われている!」
どうやら話はついていたようで、私は家族から勘当を言い渡されてしまう。
明日の朝にはもう、私は平民となるようだ。
「お父様は娘の私ではなく、聖女のベネサ様を信じるのですか?」
「当然だ! 貴様とは明日から家族ではない、出て行ってもらうぞ!!」
家族を説得するのは無理だと、発言からわかってしまった。
もう外は暗いから、明日の朝に私は家を出て行く。
「……わかり、ました」
魔法道具の研究施設を失うのは辛いけど、知識は私の中にある。
これからはその知識を生かして、新しい生活を送ろう。
周囲からは蔑まれて、私はあの場にいたくない。
とにかく今日の出来事を、家族に報告しよう。
そう考えていた時――追いかけてきたようで、後ろから聖女ベネサの声が聞こえた。
「ルクル様、お待ちください」
「……ベネサ様、どうしてあんな嘘をついたのですか?」
廊下で私は足を止めて、ベネサを眺める。
周囲には誰もいないから、私は尋ねることにした。
――エドガーの様子がおかしくなったのは、ベネサが迫ってからだ。
今まで異性と関わらなかった聖女なのに、急にエドガーと関わるようになっている。
そして私よりも、聖女のベネサを妻にしたいと考えるようになってしまった。
私の発言に対して、ベネサは笑みを浮かべて返答する。
「それは、ルクル様が邪魔だったからです」
「……えっ?」
「ようやく私は、ルクル様からエドガー殿下を奪うことができました」
やっぱり今日の婚約破棄は、ベネサが仕組んでいたようだ。
私が唖然としていると、ベネサの話が続く。
「エドガー殿下は、私の言うことをなんでも聞いてくれます。今回の計画を話した時も、拒むことなく即断してくれましたよ」
「……言うことを聞いてくれる王子が、ベネサ様にとって有益だと思ったのですね」
「その通り。更に言うなら聖女の私が妻になるのですから、エドガー殿下はこれから国王になるでしょう」
そしてベネサは聖女の立場で、国王の妻となる。
エドガーは言うことを聞いてくれるようだから、実質ベネサがギアノ国のトップとなりそうだ。
それでも嘘の理由で私を貶めたのは、許せない。
「……エドガー殿下が決めたことなら、私は従うしかありません。失礼します」
これから無実を証明するために動こうと、私は考えている。
ベネサは笑みを浮かべて、私の考えを見抜いているようだ。
「私とエドガー殿下の評判を落とさないためにも、ルクル様が悪くなければなりません」
「……ベネサ様は、何が言いたいのですか?」
「さあ? 屋敷に戻れば、わかるかもしれませんね」
そう言って、私の元からベネサが離れていく。
私は屋敷に帰って――発言の意味を、知ることとなる。
■◇■◇■◇■◇■
屋敷に戻り、パーティは終わった頃だ。
家族に今日の出来事を報告すると、お父様が溜息を吐く。
「ルクルが世界的に禁止されている、魅了魔法を使う魔法道具を作った。か……」
「私はそんな物を作っていません。調べてもらえばわかることです!」
その魔法道具は破棄していると言われたけど、調べれば何も破棄していないことがわかる。
そうすればエドガーとベネサが嘘をついていると判明して、慰謝料をとれるはず。
とにかく私は、調べてもらうために提案する。
それなのに……お父様とお母様は、聖女と王子の言い分を信じていた。
「ルクルよ、貴様はエドガー殿下とベネサ様を疑えというのか!」
「ルクルが魔法道具に熱中して、世界的に禁止されている物を作ったに決まっているわ!」
「……えっ?」
叫び声を聞いて、私は動揺するしかない。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を、家族は信じているようだ。
「俺達は前から、ルクルの悪事をベネサ様から聞いていた」
「今日のパーティ会場で話すことは、前から知っていたのよ」
「家の評判が悪くなるから――ルクルとは家族の縁を切り、明日には追い出すようにと言われている!」
どうやら話はついていたようで、私は家族から勘当を言い渡されてしまう。
明日の朝にはもう、私は平民となるようだ。
「お父様は娘の私ではなく、聖女のベネサ様を信じるのですか?」
「当然だ! 貴様とは明日から家族ではない、出て行ってもらうぞ!!」
家族を説得するのは無理だと、発言からわかってしまった。
もう外は暗いから、明日の朝に私は家を出て行く。
「……わかり、ました」
魔法道具の研究施設を失うのは辛いけど、知識は私の中にある。
これからはその知識を生かして、新しい生活を送ろう。
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