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第二章
熱の持っていき場
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差し込む朝日の眩しさに目を開いてユリウスは驚いた。腕の中にルカがいる。茶色く染めた髪はまだ見慣れないが、ユリウスの腕に頬をのせているのは、紛れもなくルカだ。
ルカを起こさぬよう腕を抜き、半身を起こし、ユリウスは二日酔いで痛む頭をおさえた。
どうしてルカがここにいるんだ。
昨夜はしたたかに酒に酔った。宴席から部屋に戻るとカレルとルカが入ってきて、それで……。
「ああ……」
ユリウスは思い出して額に手を当てた。カレルと戻ろうとしたルカを引き留めたのは自分だった。自分もルカも着衣が乱れていないことに、ほっと息をつく。昨夜の出来事をなぞっても、何らした覚えはない。酔いにまかせてなにかする前に寝入った昨夜の自分を、ユリウスは心底褒めてやりたい気分だった。
がさごそとルカが動いた。起きたのかと思ったが違った。ユリウスが離れたことで寒かったのか。ルカは腕を伸ばして温もりを求め、ユリウスに触れると体を寄せてきた。
ユリウスの大腿にルカの胸があたり、ユリウスははっとしてルカを見た。
ルカの胸はほとんど膨らみがなかったのに、今ユリウスの大腿に触れるそれは柔らかな膨らみを伝えてくる。
ユリウスが拾った当初に比べると、最近のルカは肉づきも良くなって健康的になったと思ってはいた。
改めて寝ているルカを見た。
肩の線や首は心許ないほど細いが、胸はふっくらと膨らみ、くびれた細い腰の下は女性らしい線を描き、夜着から覗く足首はきゅっと引き締まっている。
その胸の膨らみと細い腰、白い肌を見ていると、ユリウスは自分の内に熱が籠もってくるのを感じた。
「……なにをやってるんだ、俺は」
ユリウスはルカから体を離し、寒くないようルカを掛布でしっかりと覆うと浴室に入った。
自身は痛いほど固く張り詰めていて、軽く手で触っただけで欲を吐き出した。それでも目に焼き付いたルカの姿に、二度三度と続けざまに熱を吐き出した。
そんな自分を諌めるように、ユリウスは荒っぽく体や髪を洗い、部屋へ戻った。
部屋へ戻るとルカはベッドの上で心細そうに座っていた。浴室から出てきたユリウスを見ると、頬を緩めた。
「おはようユリウス。体調は大丈夫?」
ルカに心配されるほど酔っていたのかとユリウスは苦笑しつつ、つい今しがた浴室でルカを相手に熱を発散していたことに後ろめたさも感じつつ、曖昧に頷いた。
「昨夜はその、悪かったな。部屋へ戻るのを引き留めて」
「ううん。おかげでよく眠れた。カレルを呼んでくるね」
よく眠れたというのは本当なのだろう。すっきりとした顔をしている。ルカはフード目深に被ると、あっさり部屋を出ていった。
「……しっかりしろ、ユリウス」
部屋を出ていくルカの後ろ姿の細い腰に、またぞろ欲がもたげそうになる。ユリウスは両頬を弾いて自分を諌めた。
「なぁ、ノルデン」
二日目の旅程も順調に進んでいる。一行はいま、街道を離れ、小川で休憩をとっていた。小川で水を補給し、二日酔いの薬を処方してもらいがてら、ユリウスは侍医のノルデンに話しかけた。
「なんでございましょう」
ノルデンは木の根に腰掛けながら背筋をぐっと伸ばす。六十歳となった今でも壮健なノルデンだが、長く馬車に乗っているとあちこち痛むのだろう。
「ルカのことなんだが……」
今朝目にした女性らしい体つきのルカのことが、ユリウスは気になっていた。あのときは浅ましいことに欲情を抱いただけのユリウスだったが、道々冷静になって考えてみるに、ルカの体の変化はあまりに急激なものではなかろうかと気になりだした。
希少種のことはよくわからないが、普通は体つきというものは徐々に変化していくものなのではないか。ルカがここに来てからまだ三月ほどだ。そんな短期間であれほど体が変化するものなのだろうか。
ルカ自身、自分の体の変化に気がついていない様子でもある。
ユリウスが話を向けると、ノルデンはすぐに「おっしゃりたいことはわかります」と頷いた。
「ご診察したわけではありませんので、しかとはわかりかねますが、ルカ殿の近頃の発育は驚くほどの変化です」
「ノルデンも気になっていたのか?」
「屋敷内の者たちの体調は、私の管轄内ですので。特にルカ殿は、栄養状態も悪く、体つきも細くていらっしゃいましたから気にかけておりました。とはいえ、私は希少種のことには詳しくありません。色々と書物にもあたってみましたが、わからないことも多ございました。今回王都に滞在している間に、希少種のことについて医師仲間から勉強してこようかと考えております」
「そうしてくれると助かる」
「今のところ、ルカ殿はお元気そうですので、体の変化が何か悪影響を及ぼしているご様子はありません。可能ならばご診察させていただければとも思いますが……」
「どうだろうな」
ユリウスはルカの姿をさがして視線を彷徨わせた。休憩でも馬車の外には出ないルカだが、少し体を伸ばしたいと馬車を降りた。二日目ともなるとずっと座っている姿勢が辛くなってくるものだ。
先ほどまで木陰でリサと一緒にいたが、その木陰にルカの姿がない。
「ちょっと見てくる」
ユリウスはノルデンに断って腰を上げた。木陰からもっと奥へと入っていくと、リサが一人でおろおろしている。
「どうした?」
ユリウスが声をかけると、リサは「ユリウス様!」と駆け寄ってきた。
「ルカの姿が見えなくて。すみません、ほんの少し目を離したんです。申し訳ございません」
ユリウスはざっと辺りを見渡した。木々の間にルカの姿が見える。
「大丈夫だ。あそこにいる」
ユリウスはリサに言って、ルカのもとへと足早に向かった。ルカは一人ではなかった。側に誰かいる。
ルカを起こさぬよう腕を抜き、半身を起こし、ユリウスは二日酔いで痛む頭をおさえた。
どうしてルカがここにいるんだ。
昨夜はしたたかに酒に酔った。宴席から部屋に戻るとカレルとルカが入ってきて、それで……。
「ああ……」
ユリウスは思い出して額に手を当てた。カレルと戻ろうとしたルカを引き留めたのは自分だった。自分もルカも着衣が乱れていないことに、ほっと息をつく。昨夜の出来事をなぞっても、何らした覚えはない。酔いにまかせてなにかする前に寝入った昨夜の自分を、ユリウスは心底褒めてやりたい気分だった。
がさごそとルカが動いた。起きたのかと思ったが違った。ユリウスが離れたことで寒かったのか。ルカは腕を伸ばして温もりを求め、ユリウスに触れると体を寄せてきた。
ユリウスの大腿にルカの胸があたり、ユリウスははっとしてルカを見た。
ルカの胸はほとんど膨らみがなかったのに、今ユリウスの大腿に触れるそれは柔らかな膨らみを伝えてくる。
ユリウスが拾った当初に比べると、最近のルカは肉づきも良くなって健康的になったと思ってはいた。
改めて寝ているルカを見た。
肩の線や首は心許ないほど細いが、胸はふっくらと膨らみ、くびれた細い腰の下は女性らしい線を描き、夜着から覗く足首はきゅっと引き締まっている。
その胸の膨らみと細い腰、白い肌を見ていると、ユリウスは自分の内に熱が籠もってくるのを感じた。
「……なにをやってるんだ、俺は」
ユリウスはルカから体を離し、寒くないようルカを掛布でしっかりと覆うと浴室に入った。
自身は痛いほど固く張り詰めていて、軽く手で触っただけで欲を吐き出した。それでも目に焼き付いたルカの姿に、二度三度と続けざまに熱を吐き出した。
そんな自分を諌めるように、ユリウスは荒っぽく体や髪を洗い、部屋へ戻った。
部屋へ戻るとルカはベッドの上で心細そうに座っていた。浴室から出てきたユリウスを見ると、頬を緩めた。
「おはようユリウス。体調は大丈夫?」
ルカに心配されるほど酔っていたのかとユリウスは苦笑しつつ、つい今しがた浴室でルカを相手に熱を発散していたことに後ろめたさも感じつつ、曖昧に頷いた。
「昨夜はその、悪かったな。部屋へ戻るのを引き留めて」
「ううん。おかげでよく眠れた。カレルを呼んでくるね」
よく眠れたというのは本当なのだろう。すっきりとした顔をしている。ルカはフード目深に被ると、あっさり部屋を出ていった。
「……しっかりしろ、ユリウス」
部屋を出ていくルカの後ろ姿の細い腰に、またぞろ欲がもたげそうになる。ユリウスは両頬を弾いて自分を諌めた。
「なぁ、ノルデン」
二日目の旅程も順調に進んでいる。一行はいま、街道を離れ、小川で休憩をとっていた。小川で水を補給し、二日酔いの薬を処方してもらいがてら、ユリウスは侍医のノルデンに話しかけた。
「なんでございましょう」
ノルデンは木の根に腰掛けながら背筋をぐっと伸ばす。六十歳となった今でも壮健なノルデンだが、長く馬車に乗っているとあちこち痛むのだろう。
「ルカのことなんだが……」
今朝目にした女性らしい体つきのルカのことが、ユリウスは気になっていた。あのときは浅ましいことに欲情を抱いただけのユリウスだったが、道々冷静になって考えてみるに、ルカの体の変化はあまりに急激なものではなかろうかと気になりだした。
希少種のことはよくわからないが、普通は体つきというものは徐々に変化していくものなのではないか。ルカがここに来てからまだ三月ほどだ。そんな短期間であれほど体が変化するものなのだろうか。
ルカ自身、自分の体の変化に気がついていない様子でもある。
ユリウスが話を向けると、ノルデンはすぐに「おっしゃりたいことはわかります」と頷いた。
「ご診察したわけではありませんので、しかとはわかりかねますが、ルカ殿の近頃の発育は驚くほどの変化です」
「ノルデンも気になっていたのか?」
「屋敷内の者たちの体調は、私の管轄内ですので。特にルカ殿は、栄養状態も悪く、体つきも細くていらっしゃいましたから気にかけておりました。とはいえ、私は希少種のことには詳しくありません。色々と書物にもあたってみましたが、わからないことも多ございました。今回王都に滞在している間に、希少種のことについて医師仲間から勉強してこようかと考えております」
「そうしてくれると助かる」
「今のところ、ルカ殿はお元気そうですので、体の変化が何か悪影響を及ぼしているご様子はありません。可能ならばご診察させていただければとも思いますが……」
「どうだろうな」
ユリウスはルカの姿をさがして視線を彷徨わせた。休憩でも馬車の外には出ないルカだが、少し体を伸ばしたいと馬車を降りた。二日目ともなるとずっと座っている姿勢が辛くなってくるものだ。
先ほどまで木陰でリサと一緒にいたが、その木陰にルカの姿がない。
「ちょっと見てくる」
ユリウスはノルデンに断って腰を上げた。木陰からもっと奥へと入っていくと、リサが一人でおろおろしている。
「どうした?」
ユリウスが声をかけると、リサは「ユリウス様!」と駆け寄ってきた。
「ルカの姿が見えなくて。すみません、ほんの少し目を離したんです。申し訳ございません」
ユリウスはざっと辺りを見渡した。木々の間にルカの姿が見える。
「大丈夫だ。あそこにいる」
ユリウスはリサに言って、ルカのもとへと足早に向かった。ルカは一人ではなかった。側に誰かいる。
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