4 / 84
第一章 旦那様と仲良くなりたい
記憶のない初夜
しおりを挟む
それからの私は、死に物狂いで頑張った。
本来なら何年もかけて習う筈の淑女教育(最上級)を、たった半年という期間でこなし、公爵夫人として最低限必要とされる知識とマナーを無理矢理頭と身体に叩き込むことで、なんとか体裁だけは取り繕うことに成功した。
それでも初めのうちは口を開くとボロが出そうで、婚約者同士の務めでもあるお茶会の際などは、ほぼ会話をせず、お互いひたすら紅茶を飲んで時間を過ごしたが。
幸いにも、お姉様を失った後のヘマタイト公爵令息様は、まるで魂が抜けてしまったかのように無気力無関心なお人となってしまったため、それでも特に問題はなかった。
話の内容やら言葉遣いなどの習得が追いつかず、取り敢えず紅茶を美しく飲む所作を優先して学んだ結果がそれであっただけなのだが、ヘマタイト公爵令息様改めリーゲル様は傷心のため動く人形と化していたから、寧ろお互いにとって好都合だったように思う。
私としては、できることなら婚姻前に少しでもリーゲル様とお近付きになっておきたかったけれど、教育が行き届かぬまま淑女らしくない発言をして嫌われる──などという憂き目には遭いたくなかったから。
それぐらいならお茶会は無言でやり過ごしてでも、めでたく夫婦となった後に距離を詰めればいい、という方向へ転換していた。
婚約者同伴での出席が条件とされる夜会などは、それこそ心無い噂話や妬み、蔑み、憐れみといった、ありとあらゆる視線、やっかみを受けまくったけれども、そんなものは全然、まったく、なんともなかった。
そもそも私は、小さい頃からずっとアンジェラお姉様と比較され、揶揄われたり虐められたりしてきたのだ。
今更他の悪意ある感情や行為が追加されたところで、言われる嫌味もされる嫌がらせも内容は以前からのものとほぼ変わらない。
寧ろ逆に (もっと違うレパートリーはないものなのかしら?) と思ってしまった程だ。
この内面の強さが、少しでも表──主に顔──に出てくれないものかと思い、鏡に映る自分の顔を細部まで食い入るように日々何度も確認し、その兆候が少しもないことに落胆を繰り返す毎日を過ごしたりもしたが。
「性格は顔に出るなんて誰が言ったんだろう……。それが本当なら、今頃私は人類最強の顔をしていそうなのに」
言ってから、人類最強は怖すぎるから流石にそこまでは顔に出なくてもいいかな、と思った。
そんなこんなで結婚式の準備も──ほぼリーゲル様抜きで──滞りなく進め、沢山の人達──公爵家との付き合いのため、義理や義務で出席してくれた人達が大半だった──に見つめられながら、初恋の人との結婚式を幸せいっぱいで終わらせた私だったのだけれど。
まさか、まさか新婚初夜のベッドの上で、お決まりの科白を吐かれることになろうとは。夢にも思って……いなかったわけじゃない。
正直な話、言われるだろうな、言われるかもしれない、言われなかったらいいな、ぐらいには思っていた。
でも、お姉様がいなくなってからというもの、私との結婚式の最中ですらリーゲル様は動く人形のままだったから、初夜もそのままの状態で終わるのかなぁ? とか、もしかしてこの人一生このままなのでは? とか、そもそも気持ちのない人形に初夜なんてできるのか? なんて不敬ともとれる失礼な事を考えていたのも事実だ。
それなのに、彼の口から出た言葉があれだったなんて。
衝撃だった。
あまりにも衝撃的すぎて、逆に物凄く冷静な声で返答してしまった記憶がある。
自分の全ての希望的観測を木っ端微塵に打ち砕かれた私の頭の中は、動揺を通り越して真っ白だったから、その後自分がリーゲル様に何を言って、何を言われたのか全く覚えていない。
ただ、朝目が覚めたら夫婦の寝室のベッドにいたから、そのままそこで眠ってしまったことだけは間違いないだろう。
ではリーゲル様は? 彼は一体どこで寝たんだろう?
きっと自室のベッドだろうけど、それだと初夜を済ませなかったことが使用人達にバレるから、昨日だけは我慢して隣で寝たのかもしれない。
公爵家嫡男が白い結婚で許される程、世の中甘くないから。
まぁどっちにしろ私が先に寝てしまったのでは、その答えは知りようもないし、確かめようもないけれど。
もしもリーゲル様が私と同じベッドで寝ていたら、寝顔だけでも拝めたかもしれない。リーゲル様大好きな私は、それだけで一生生きていけたかもしれないのに! と思うと悔しさが込み上げてくる。
でも、流石にそれは大袈裟か。寝顔だけで一生は無理。……笑顔ならいけるかもしれないけど。
寝起きのわりに意外と冷静な判断をくだした私は、そこでえいやっと起き上がった。
そろそろ横になっているのも飽きてきたし、なによりお腹が空いた。
恐らく今日は初夜の次の日ということで気を遣って誰も起こしにはこないだろうから、自分で人を呼ばなければご飯も食べられない。
本当に昨日リーゲル様と初夜を済ませることができていたなら、今頃はきっと胸がいっぱいでご飯なんて食べられなかったかもしれないけど、残念なことに私のお腹は今、激しく空腹を訴えていた。
ベッドサイドに置いてある時計で時間を確認し、そこに置いてあるベルを鳴らして侍女を呼ぶ。
初夜の次の日にしては起きるのが早すぎる気もするが、実際のところ何もなかったのだから仕方がない。
昨日リーゲル様にお決まりの科白を言われた後に、今後の結婚生活のことを質問しておけば良かった。
……というか確か『政略結婚という名の契約結婚』って言ってたよね?
契約? 契約ってなに?
そこら辺の内容全然覚えてないんですけど……。
というか、それについての説明を聞いた記憶が全くない。
なんで? どうして? 何故に私は昨日のことをほぼ何も覚えていないの? いくら結婚式で疲れていたとはいえ、ついでに初夜のベッドの上で言われた言葉がショックだったからって、こんなの怖すぎる……!
思わず眉間に皺を寄せたタイミングで扉がノックされ、我に返る。
返事をすると、可愛らしい侍女が姿を現した。
「おはようございます奥様。私は本日より奥様付きの侍女を任ぜられましたポルテと申します。誠心誠意お仕えさせていただきますので、今後ともよろしくお願い致します」
「丁寧な挨拶どうもありがとう。こちらこそよろしくね」
見たところ年齢も私と然程変わらない、素直そうな女の子だ。
くりっとした大きい目が可愛らしく、昔の侍女風におさげにされた茶色の髪が、お辞儀とともに跳ねるのが愛らしい。
政略結婚ということで結婚後は冷遇される心配もしていたけれど、この侍女を見る限りそっちの心配は必要なさそうで安心する。
私はほっと息を吐くと、支度をするためベッドから足を下ろした。
本来なら何年もかけて習う筈の淑女教育(最上級)を、たった半年という期間でこなし、公爵夫人として最低限必要とされる知識とマナーを無理矢理頭と身体に叩き込むことで、なんとか体裁だけは取り繕うことに成功した。
それでも初めのうちは口を開くとボロが出そうで、婚約者同士の務めでもあるお茶会の際などは、ほぼ会話をせず、お互いひたすら紅茶を飲んで時間を過ごしたが。
幸いにも、お姉様を失った後のヘマタイト公爵令息様は、まるで魂が抜けてしまったかのように無気力無関心なお人となってしまったため、それでも特に問題はなかった。
話の内容やら言葉遣いなどの習得が追いつかず、取り敢えず紅茶を美しく飲む所作を優先して学んだ結果がそれであっただけなのだが、ヘマタイト公爵令息様改めリーゲル様は傷心のため動く人形と化していたから、寧ろお互いにとって好都合だったように思う。
私としては、できることなら婚姻前に少しでもリーゲル様とお近付きになっておきたかったけれど、教育が行き届かぬまま淑女らしくない発言をして嫌われる──などという憂き目には遭いたくなかったから。
それぐらいならお茶会は無言でやり過ごしてでも、めでたく夫婦となった後に距離を詰めればいい、という方向へ転換していた。
婚約者同伴での出席が条件とされる夜会などは、それこそ心無い噂話や妬み、蔑み、憐れみといった、ありとあらゆる視線、やっかみを受けまくったけれども、そんなものは全然、まったく、なんともなかった。
そもそも私は、小さい頃からずっとアンジェラお姉様と比較され、揶揄われたり虐められたりしてきたのだ。
今更他の悪意ある感情や行為が追加されたところで、言われる嫌味もされる嫌がらせも内容は以前からのものとほぼ変わらない。
寧ろ逆に (もっと違うレパートリーはないものなのかしら?) と思ってしまった程だ。
この内面の強さが、少しでも表──主に顔──に出てくれないものかと思い、鏡に映る自分の顔を細部まで食い入るように日々何度も確認し、その兆候が少しもないことに落胆を繰り返す毎日を過ごしたりもしたが。
「性格は顔に出るなんて誰が言ったんだろう……。それが本当なら、今頃私は人類最強の顔をしていそうなのに」
言ってから、人類最強は怖すぎるから流石にそこまでは顔に出なくてもいいかな、と思った。
そんなこんなで結婚式の準備も──ほぼリーゲル様抜きで──滞りなく進め、沢山の人達──公爵家との付き合いのため、義理や義務で出席してくれた人達が大半だった──に見つめられながら、初恋の人との結婚式を幸せいっぱいで終わらせた私だったのだけれど。
まさか、まさか新婚初夜のベッドの上で、お決まりの科白を吐かれることになろうとは。夢にも思って……いなかったわけじゃない。
正直な話、言われるだろうな、言われるかもしれない、言われなかったらいいな、ぐらいには思っていた。
でも、お姉様がいなくなってからというもの、私との結婚式の最中ですらリーゲル様は動く人形のままだったから、初夜もそのままの状態で終わるのかなぁ? とか、もしかしてこの人一生このままなのでは? とか、そもそも気持ちのない人形に初夜なんてできるのか? なんて不敬ともとれる失礼な事を考えていたのも事実だ。
それなのに、彼の口から出た言葉があれだったなんて。
衝撃だった。
あまりにも衝撃的すぎて、逆に物凄く冷静な声で返答してしまった記憶がある。
自分の全ての希望的観測を木っ端微塵に打ち砕かれた私の頭の中は、動揺を通り越して真っ白だったから、その後自分がリーゲル様に何を言って、何を言われたのか全く覚えていない。
ただ、朝目が覚めたら夫婦の寝室のベッドにいたから、そのままそこで眠ってしまったことだけは間違いないだろう。
ではリーゲル様は? 彼は一体どこで寝たんだろう?
きっと自室のベッドだろうけど、それだと初夜を済ませなかったことが使用人達にバレるから、昨日だけは我慢して隣で寝たのかもしれない。
公爵家嫡男が白い結婚で許される程、世の中甘くないから。
まぁどっちにしろ私が先に寝てしまったのでは、その答えは知りようもないし、確かめようもないけれど。
もしもリーゲル様が私と同じベッドで寝ていたら、寝顔だけでも拝めたかもしれない。リーゲル様大好きな私は、それだけで一生生きていけたかもしれないのに! と思うと悔しさが込み上げてくる。
でも、流石にそれは大袈裟か。寝顔だけで一生は無理。……笑顔ならいけるかもしれないけど。
寝起きのわりに意外と冷静な判断をくだした私は、そこでえいやっと起き上がった。
そろそろ横になっているのも飽きてきたし、なによりお腹が空いた。
恐らく今日は初夜の次の日ということで気を遣って誰も起こしにはこないだろうから、自分で人を呼ばなければご飯も食べられない。
本当に昨日リーゲル様と初夜を済ませることができていたなら、今頃はきっと胸がいっぱいでご飯なんて食べられなかったかもしれないけど、残念なことに私のお腹は今、激しく空腹を訴えていた。
ベッドサイドに置いてある時計で時間を確認し、そこに置いてあるベルを鳴らして侍女を呼ぶ。
初夜の次の日にしては起きるのが早すぎる気もするが、実際のところ何もなかったのだから仕方がない。
昨日リーゲル様にお決まりの科白を言われた後に、今後の結婚生活のことを質問しておけば良かった。
……というか確か『政略結婚という名の契約結婚』って言ってたよね?
契約? 契約ってなに?
そこら辺の内容全然覚えてないんですけど……。
というか、それについての説明を聞いた記憶が全くない。
なんで? どうして? 何故に私は昨日のことをほぼ何も覚えていないの? いくら結婚式で疲れていたとはいえ、ついでに初夜のベッドの上で言われた言葉がショックだったからって、こんなの怖すぎる……!
思わず眉間に皺を寄せたタイミングで扉がノックされ、我に返る。
返事をすると、可愛らしい侍女が姿を現した。
「おはようございます奥様。私は本日より奥様付きの侍女を任ぜられましたポルテと申します。誠心誠意お仕えさせていただきますので、今後ともよろしくお願い致します」
「丁寧な挨拶どうもありがとう。こちらこそよろしくね」
見たところ年齢も私と然程変わらない、素直そうな女の子だ。
くりっとした大きい目が可愛らしく、昔の侍女風におさげにされた茶色の髪が、お辞儀とともに跳ねるのが愛らしい。
政略結婚ということで結婚後は冷遇される心配もしていたけれど、この侍女を見る限りそっちの心配は必要なさそうで安心する。
私はほっと息を吐くと、支度をするためベッドから足を下ろした。
237
あなたにおすすめの小説
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】もう一度あなたと結婚するくらいなら、初恋の騎士様を選びます。
紺
恋愛
「価値のない君を愛してあげられるのは僕だけだよ?」
気弱な伯爵令嬢カトレアは両親や親友に勧められるまま幼なじみと結婚する。しかし彼は束縛や暴言で彼女をコントロールするモラハラ男だった。
ある日カトレアは夫の愛人である親友に毒殺されてしまう。裏切られた彼女が目を覚ますと、そこは婚約を結ぶきっかけとなった8年前に逆行していた。
このままではまた地獄の生活が始まってしまう……!
焦ったカトレアの前に現れたのは、当時少しだけ恋心を抱いていたコワモテの騎士だった。
もし人生やり直しが出来るなら、諦めた初恋の騎士様を選んでもいいの……よね?
逆行したヒロインが初恋の騎士と人生リスタートするお話。
ざまぁ必須、基本ヒロイン愛されています。
※誤字脱字にご注意ください。
※作者は更新頻度にムラがあります。どうぞ寛大なお心でお楽しみ下さい。
※ご都合主義のファンタジー要素あり。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる