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51 告げる過去と真実 後編
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「――それからだ。フランツェスカ、お前の命が狙われだしたのは」
「私の命が狙われ……?」
「お前さえいなければ我が子が、アリーシアが王になれる――そう、リヒター公爵は考えたのだろう。毒を盛り、暗殺者をお前に差し向けた。だが第三騎士団と侍女ヘルマが、お前を守ってくれた」
「アリーシアを王に!?」
「そうだ、リヒター公爵はアリーシアを女王にしたかったんだ。だが私が介入した。そしてレナードを王に据え、アリーシアを王妃にした。それがせめてもの抵抗だった」
「だからレナードに『王にならないか』と、お父様はおっしゃったのですね」
――母は違っても、あの二人は兄妹。
全てを知るリヒター公爵にとってそれは、きっと耐え難い苦痛。
「私は王として、なにもできなかった。そればかりかさらに国を腐らせた。そしてその罪を最後まで清算できぬままここまできてしまった。フランツェスカ、本当にすまない。お前に背負わせることになってしまって……」
「お父様、どうして私に最後までなにもおっしゃってくださらなかったのですか? 数年前ならいざ知らず私は成長しました、もう大人です」
「幼子でなくとも、言えばお前は動くだろう?」
「そんなの当たり前です!」
「そうすれば……確実にお前は殺されていたよ。リヒター公爵の手のものによって」
「それは……!」
クソ親父は苦しげに目を閉じて、震える唇でかすかに呟いた。
「だからお前を外に出す決断をしたんだ、シュヴァルツヴァルト国王に協力してもらってな」
「え、協力?」
「ああ、リヒター公爵がレナードを王にする為、議会に金を配って支持を得るその為に更に金を集めようとしていた。その方法として例の金鉱山にやつは目を付けたんだ。あの金鉱山がある土地は……カトリーナの実家、エーベルバッハ公爵の領地でな。エーベルバッハ公爵とリヒター公爵は手を組んで勝手に戦争を始めたんだ……」
「そんな理由で!?」
あの戦争でどれだけの民が犠牲になったのか。
百や二百では到底収まりきらない。
思い出すだけで、胸が痛む。
「お飾りの王になど許可をとる必要もないと、やつらは思ったのだろう」
「なんてことを……」
「だがこちらもそれをただ見ているわけにもいかない、逆に利用させてもらうことにしたんだ」
「利用……?」
「ああ、暗殺の危険がある王宮にこのままお前を居させるより、他国にやったほうがいいと考えた」
「私を他国に? そんな話聞いたことありませんが……」
そんな話は聞いたこともない。
他国に来たのは今回の輿入れが初めて。
王位継承者だからと他国に外遊することすら今まで一度もさせてもらえなかった。
「当たり前だ。そんなことを表立って言えば確実に邪魔されるし、その前にお前を殺そうと奴らは本気で動くだろう。だからお前を……私は戦地に送った。シュヴァルツヴァルト国王にフランツェスカを捕虜という形で内密に保護してくれと、そしてその護衛として第三騎士団を送るから一緒に……と」
「え、捕虜!? 保護って、え?」
「……な、の、に、お前は! 捕虜になるどころか……形勢を逆転させてしまった。あと少しでエーベルバッハ公爵とリヒター公爵の軍をシュヴァルツヴァルトが討ってくれるはずだったのに……! それで多少なりとも奴らの力が削げるはずだったんだぞ!?」
「え、いや、だって『女王としての覚悟をみせろ』って。お父様が言うから……」
「だからといって、ほぼ負けの状況からあそこまで戦況をひっくり返すやつがいるか!? 物資もわざと送らせぬようにしていたというのに! あれでは裏で急ぎシュヴァルツヴァルトと和平を結んでいなければ……数日後にはモルゲンロートで戦勝パレードだったんだぞ!? なに考えているんだ!」
「確かに状況はあまりよくありませんでしたが、そんな難しくありませんでしたよ? いくつか良さそうな戦術があったので試してみたら意外と簡単に……」
……そう言った直後。
私は……思い出したのです。
隣に座る……フリードの存在を。
フリードには私が戦地にいたことを伝えていない。
それどころか、貴方の敵将でした! とも言っておらず。
ちらりと、隣を見れば。
驚いたように目を大きく見開いて、フリードは私の事を見ていたのです。
「――それからだ。フランツェスカ、お前の命が狙われだしたのは」
「私の命が狙われ……?」
「お前さえいなければ我が子が、アリーシアが王になれる――そう、リヒター公爵は考えたのだろう。毒を盛り、暗殺者をお前に差し向けた。だが第三騎士団と侍女ヘルマが、お前を守ってくれた」
「アリーシアを王に!?」
「そうだ、リヒター公爵はアリーシアを女王にしたかったんだ。だが私が介入した。そしてレナードを王に据え、アリーシアを王妃にした。それがせめてもの抵抗だった」
「だからレナードに『王にならないか』と、お父様はおっしゃったのですね」
――母は違っても、あの二人は兄妹。
全てを知るリヒター公爵にとってそれは、きっと耐え難い苦痛。
「私は王として、なにもできなかった。そればかりかさらに国を腐らせた。そしてその罪を最後まで清算できぬままここまできてしまった。フランツェスカ、本当にすまない。お前に背負わせることになってしまって……」
「お父様、どうして私に最後までなにもおっしゃってくださらなかったのですか? 数年前ならいざ知らず私は成長しました、もう大人です」
「幼子でなくとも、言えばお前は動くだろう?」
「そんなの当たり前です!」
「そうすれば……確実にお前は殺されていたよ。リヒター公爵の手のものによって」
「それは……!」
クソ親父は苦しげに目を閉じて、震える唇でかすかに呟いた。
「だからお前を外に出す決断をしたんだ、シュヴァルツヴァルト国王に協力してもらってな」
「え、協力?」
「ああ、リヒター公爵がレナードを王にする為、議会に金を配って支持を得るその為に更に金を集めようとしていた。その方法として例の金鉱山にやつは目を付けたんだ。あの金鉱山がある土地は……カトリーナの実家、エーベルバッハ公爵の領地でな。エーベルバッハ公爵とリヒター公爵は手を組んで勝手に戦争を始めたんだ……」
「そんな理由で!?」
あの戦争でどれだけの民が犠牲になったのか。
百や二百では到底収まりきらない。
思い出すだけで、胸が痛む。
「お飾りの王になど許可をとる必要もないと、やつらは思ったのだろう」
「なんてことを……」
「だがこちらもそれをただ見ているわけにもいかない、逆に利用させてもらうことにしたんだ」
「利用……?」
「ああ、暗殺の危険がある王宮にこのままお前を居させるより、他国にやったほうがいいと考えた」
「私を他国に? そんな話聞いたことありませんが……」
そんな話は聞いたこともない。
他国に来たのは今回の輿入れが初めて。
王位継承者だからと他国に外遊することすら今まで一度もさせてもらえなかった。
「当たり前だ。そんなことを表立って言えば確実に邪魔されるし、その前にお前を殺そうと奴らは本気で動くだろう。だからお前を……私は戦地に送った。シュヴァルツヴァルト国王にフランツェスカを捕虜という形で内密に保護してくれと、そしてその護衛として第三騎士団を送るから一緒に……と」
「え、捕虜!? 保護って、え?」
「……な、の、に、お前は! 捕虜になるどころか……形勢を逆転させてしまった。あと少しでエーベルバッハ公爵とリヒター公爵の軍をシュヴァルツヴァルトが討ってくれるはずだったのに……! それで多少なりとも奴らの力が削げるはずだったんだぞ!?」
「え、いや、だって『女王としての覚悟をみせろ』って。お父様が言うから……」
「だからといって、ほぼ負けの状況からあそこまで戦況をひっくり返すやつがいるか!? 物資もわざと送らせぬようにしていたというのに! あれでは裏で急ぎシュヴァルツヴァルトと和平を結んでいなければ……数日後にはモルゲンロートで戦勝パレードだったんだぞ!? なに考えているんだ!」
「確かに状況はあまりよくありませんでしたが、そんな難しくありませんでしたよ? いくつか良さそうな戦術があったので試してみたら意外と簡単に……」
……そう言った直後。
私は……思い出したのです。
隣に座る……フリードの存在を。
フリードには私が戦地にいたことを伝えていない。
それどころか、貴方の敵将でした! とも言っておらず。
ちらりと、隣を見れば。
驚いたように目を大きく見開いて、フリードは私の事を見ていたのです。
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