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1章
こぼれ話.炎の中で
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辿り着いたそこは、燃え盛る炎の海。
黒煙が暗い空へと舞い上がり、まるで地獄の業火に焼き尽くされているかのようだった。
「……クソっ、アオ!!」
周囲を見渡すも、そこには近所の人間達が心配そうに見守るだけで彼の姿は見当たらず、名前を叫んでも返ってくる声はない。
「お、おい、アンタ! やめろって……」
隣に立っていた男が、建物内へと走り出す俺にそう声を掛けたが、そんなものに構いもせず一目散に獄炎の中へと飛び込んだ。
「おい、アオ! どこに居る!!」
焼け付くような空気が喉を刺す。口元を押え、火に囲まれた1階を見回す。
並んで座り、窓から見える空を眺めた待合室も、初めて言葉を交わした診察室も、
『んぁ、……たすけ、て……イーサン……』
初めてお前と情慾を分かち合った診察台も、全てが変わり果てた姿になっていた。
「2階か?」
いつも使っていた階段は、火が回ってはいるが登れない事は無い。
「……ちっ、クソ……鬱陶しい……」
己の衣類に纏わり付く火の粉を払い除け、上の階へと急ぐ。
「これを鎮火出来るほどの水魔法は、生憎持ち合わせていない……」
魔法適性の低い自分の能力を呪いながら、燃え盛る彼の部屋へと辿り着く。
「っ……アオ……アオ!!」
半分程焼けたドアの向こうに、うつ伏せで倒れている彼の姿が目に飛び込んできた。
「おい、アオ! 大丈夫か!!」
バァン!と音を立ててドアを蹴破り、慌てて駆け寄るとぐったりと力ない身体を抱き上げる。きめ細やかなな肌には煤が張り付き、驚くほど熱い片腕が、だらんと俺の身体から零れ落ちた。
「……っっ! 嘘、だろ」
その瞬間、心臓が凍り付いた。
止めてくれ……俺はまだ、お前を失いたくはない。そんな現実、受け止められる訳がない。
愕然と打ち震える手を、おそるおそる細い首筋へと充てる。
指先に「トクン」と生命の呼吸を感じ取ると、じわっと鼻の辺りに熱いものが込み上げて来た。
「生きているな……良かった。良かった……アオ……」
愛おしくて仕方ないその顔を撫でると、微かだが「すう……」と呼吸音が聞こえる。
思わず安堵の息を吐き、力ない身体を強く強く抱くと、彼の熱い額に自分の額を擦り合わせた。
「待ってろ、直ぐに連れ出してやる」
アオの頬に落ちた1滴の雫を乱暴に拭い、彼を抱え元来た道を戻ろうとした時だった。
ゴォンッという嫌な轟音が耳に入り、次の瞬間、真っ赤に燃え上がる壁がこちらに向かって崩れ落ちてくるのが目に入る。
「くっそが……っ、くぁ……」
「絶対この綺麗な肌に傷なんて付けるものか」と、灼熱のそれを背中で受け止めれば、刺し込むような猛烈な痛みが背後に走った。
「アオは……怪我してないな……」
白い肌に傷1つ無いことを確認すると、再び彼を抱き上げ1階へ向けて駆け抜ける。
ドクンドクンと背中は脈打つような痛みを感じ続けているが、アオが無事ならばそんなものどうでもいい。
間一髪、建物が崩れ落ちる前に外への脱出は成功した。
「団長ー!! 大丈夫ですか!!」
「おい、イーサン! 無事か!!」
「怪我はないですか!?」
アオを抱えたまま「はぁ、はぁ」と炎の前で息を整えていると、遠くの方からこちらへ駆け寄ってくる3つの影が視界に映る。
「お前ら……」
いつもの奴らが、これまでに見た事も無いほど焦った表情で俺の周りを囲った。
「アオさんは無事ですか!?」
珍しくジェイスが先陣を切り、腕の中で脱力しているアオの顔を覗き込む。
「あぁ。気を失ってはいるが、外傷は無い」
「良かった。宿舎に戻るだろ? 軍医の手配はしておく」
通信機を片手に持ったギルバートの言葉に、俺は強く頷く。
「悪いな。……おいキーファ、建物の鎮火出来るか?」
「もちろんそのつもりっす! ……あ、そこに居る聖獣使ってください。多分1番足速い子召喚したっす!!」
既に燃え盛る建物に向かい手を翳していたキーファが、俺の向こうに目線を送る。そこには1匹の、青白い狼の姿があった。
「流石だな。じゃぁ、俺はこのまま宿舎に戻る」
「……っっ! だ、団長……背中……」
身体を翻した俺の背中が目に入ったのだろう、ジェイスの息を呑む声が聞こえる。
「あ? あぁ、大した問題じゃないこんなもの。それよりアオだ」
「いや、お前もちゃんと軍医に診て貰え。……わかったな」
狼の背に乗った俺の肩を、ギルバートがいつも以上に強く掴む。
「生憎俺の身体は、アオ以外に診させるつもりはない」
「おま……バカな事言ってんじゃねぇよ!!」
ギルバートの怒鳴り声を無言で返し、狼に「行け」と命じると、俺の言葉を理解した獣は空へと勢いよく飛び出した。
黒煙が暗い空へと舞い上がり、まるで地獄の業火に焼き尽くされているかのようだった。
「……クソっ、アオ!!」
周囲を見渡すも、そこには近所の人間達が心配そうに見守るだけで彼の姿は見当たらず、名前を叫んでも返ってくる声はない。
「お、おい、アンタ! やめろって……」
隣に立っていた男が、建物内へと走り出す俺にそう声を掛けたが、そんなものに構いもせず一目散に獄炎の中へと飛び込んだ。
「おい、アオ! どこに居る!!」
焼け付くような空気が喉を刺す。口元を押え、火に囲まれた1階を見回す。
並んで座り、窓から見える空を眺めた待合室も、初めて言葉を交わした診察室も、
『んぁ、……たすけ、て……イーサン……』
初めてお前と情慾を分かち合った診察台も、全てが変わり果てた姿になっていた。
「2階か?」
いつも使っていた階段は、火が回ってはいるが登れない事は無い。
「……ちっ、クソ……鬱陶しい……」
己の衣類に纏わり付く火の粉を払い除け、上の階へと急ぐ。
「これを鎮火出来るほどの水魔法は、生憎持ち合わせていない……」
魔法適性の低い自分の能力を呪いながら、燃え盛る彼の部屋へと辿り着く。
「っ……アオ……アオ!!」
半分程焼けたドアの向こうに、うつ伏せで倒れている彼の姿が目に飛び込んできた。
「おい、アオ! 大丈夫か!!」
バァン!と音を立ててドアを蹴破り、慌てて駆け寄るとぐったりと力ない身体を抱き上げる。きめ細やかなな肌には煤が張り付き、驚くほど熱い片腕が、だらんと俺の身体から零れ落ちた。
「……っっ! 嘘、だろ」
その瞬間、心臓が凍り付いた。
止めてくれ……俺はまだ、お前を失いたくはない。そんな現実、受け止められる訳がない。
愕然と打ち震える手を、おそるおそる細い首筋へと充てる。
指先に「トクン」と生命の呼吸を感じ取ると、じわっと鼻の辺りに熱いものが込み上げて来た。
「生きているな……良かった。良かった……アオ……」
愛おしくて仕方ないその顔を撫でると、微かだが「すう……」と呼吸音が聞こえる。
思わず安堵の息を吐き、力ない身体を強く強く抱くと、彼の熱い額に自分の額を擦り合わせた。
「待ってろ、直ぐに連れ出してやる」
アオの頬に落ちた1滴の雫を乱暴に拭い、彼を抱え元来た道を戻ろうとした時だった。
ゴォンッという嫌な轟音が耳に入り、次の瞬間、真っ赤に燃え上がる壁がこちらに向かって崩れ落ちてくるのが目に入る。
「くっそが……っ、くぁ……」
「絶対この綺麗な肌に傷なんて付けるものか」と、灼熱のそれを背中で受け止めれば、刺し込むような猛烈な痛みが背後に走った。
「アオは……怪我してないな……」
白い肌に傷1つ無いことを確認すると、再び彼を抱き上げ1階へ向けて駆け抜ける。
ドクンドクンと背中は脈打つような痛みを感じ続けているが、アオが無事ならばそんなものどうでもいい。
間一髪、建物が崩れ落ちる前に外への脱出は成功した。
「団長ー!! 大丈夫ですか!!」
「おい、イーサン! 無事か!!」
「怪我はないですか!?」
アオを抱えたまま「はぁ、はぁ」と炎の前で息を整えていると、遠くの方からこちらへ駆け寄ってくる3つの影が視界に映る。
「お前ら……」
いつもの奴らが、これまでに見た事も無いほど焦った表情で俺の周りを囲った。
「アオさんは無事ですか!?」
珍しくジェイスが先陣を切り、腕の中で脱力しているアオの顔を覗き込む。
「あぁ。気を失ってはいるが、外傷は無い」
「良かった。宿舎に戻るだろ? 軍医の手配はしておく」
通信機を片手に持ったギルバートの言葉に、俺は強く頷く。
「悪いな。……おいキーファ、建物の鎮火出来るか?」
「もちろんそのつもりっす! ……あ、そこに居る聖獣使ってください。多分1番足速い子召喚したっす!!」
既に燃え盛る建物に向かい手を翳していたキーファが、俺の向こうに目線を送る。そこには1匹の、青白い狼の姿があった。
「流石だな。じゃぁ、俺はこのまま宿舎に戻る」
「……っっ! だ、団長……背中……」
身体を翻した俺の背中が目に入ったのだろう、ジェイスの息を呑む声が聞こえる。
「あ? あぁ、大した問題じゃないこんなもの。それよりアオだ」
「いや、お前もちゃんと軍医に診て貰え。……わかったな」
狼の背に乗った俺の肩を、ギルバートがいつも以上に強く掴む。
「生憎俺の身体は、アオ以外に診させるつもりはない」
「おま……バカな事言ってんじゃねぇよ!!」
ギルバートの怒鳴り声を無言で返し、狼に「行け」と命じると、俺の言葉を理解した獣は空へと勢いよく飛び出した。
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