英雄の条件

渡辺 佐倉

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奇跡2

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指先が少しだけ冷たくなっている気がする。
けれど、そんなことはどうでも良かった。

 
はたして、レオニードの向った通路の先に劉祜はいた。

けれど彼に相対していた人物をみてレオニードは驚きを隠せなかった。
刺客がいる事は分かっていた。

劉祜は勝手に一人で怪我をするような男ではない。
だからこそ怪我を引き受けているのだ。

「晃《こう》……。」

レオニードが名前を呼んだ瞬間だった、劉祜に対峙している男、晃が舌打ちをした。

それが合図の様なものだった。

先ほどまでふらふらと一歩ずつ歩を進めていたにも関わらず、レオニードは機敏な動きで懐から短刀を取り出す。
そのまま、晃に突っ込むと、晃の振るった剣先を除け肩に切りつける。

晃の剣には血がべっとりとついていた。
ちらりとみた劉祜に具合の悪そうなところは無いが、服は腹のあたりがさけている。

――傷がついてからの身代わりという事か

一度付けたはずの傷が無くなるというありえない状況に晃が動揺したのだろう。
暗殺の為晃が軽装であることを確認したレオニードは、そのまま晃の横腹を蹴る。

ふっとんだ晃を見てレオニードはふらつく。

「何故……。」

その言葉を自分が言ったのか劉祜が言ったのか、レオニードにはよく分からなかった。

レオニードはふらつく足で短刀を晃に向かって投げる。
晃の太ももに短刀がささり、うめき声が聞こえるまでほんの刹那の時間だった。

レオニードの足から力が抜ける。

ずっと呆けた様だった劉祜がレオニードに駆け寄る。
それを眺めてそれからレオニードは劉祜に手を伸ばして、撫でる様に劉祜に触れた。

彼はどこも怪我をしていない様だった。
よかった。最初にレオニードが思ったのはそれだった。

「友達だったのにごめんな。」


そう言って、レオニードはちらりと晃の方を見た。
劉祜にとって晃が大切な人間だと知っている。

だからこそ、劉祜自身が反撃しなかったこともレオニードは分かっている。

彼が何故劉祜を襲ったのかは知らない。
劉祜と彼の因縁はあの地下の少女についてしか、レオニードは聞いていない。

それに、もうそれほど時間は無かった。

「……大丈夫だ。奇跡はおこるよ。」

レオニードの意識が遠のく。
もっと言わなければならない事は沢山ある気がするのに、言葉にならない。

出血量が多すぎるのだろうか。
全部引き受けられた事だけが救いだった。

レオニードの腹を抑える劉祜の表情が歪んでいる事だけが気がかりだった。
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