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奇跡1
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朝食はこの部屋で食べようかと劉祜に言われる。
別にどこでもいいと言いかけて、腰がきしんでいる事実を思い出す。
それは、甘やかな痛みだ。
愛おしい痛みを感じながら「じゃあ、ここで二人で食べるのがいい」と答えた。
この屋敷には誰もいないと劉祜は言っていた。
彼が用意してくれるのだろうか。
暴虐王と呼ばれている男の行動には思えなくて、少し笑える。
「すぐに戻るから。」
そう言うと劉祜はレオニードの元を離れた。
ぼんやりとしながらも、昨日の事をレオニードは頭の中で反芻しなおす。
きっと宮殿に戻ったら、また今までと同じような日々になるのだろう。
劉祜は忙しい。
二人きりを楽しめる事なんかめったにないだろう。
だけど、時々こうやって二人で過ごしたい。劉祜本人に言うつもりは無いけれど、レオニードはそう強く思った。
◆
奇跡は起こるなんてあの時は軽々しく言えなかった。
あの、地下の少女を見た後、実父に確認の連絡は入れた。
一応帝国に嫁いだ王族ということで丁寧な返事をもらってはいた。
大分前に途切れてしまったおとぎ話の様だった。
書簡の内容を事前にチェックされたのかは知らない。
封蝋を開けられた気配は無かったが、その辺を上手くやる方法はいくらでもあるだろう。
実際に奇跡を試してみる気も無かった。
というより、昨日までは試しようも無かった。
けれど、突然痛み出す腹を見て、それはすぐに分かった。
先ほどまでの甘やかな痛みと程遠い痛みに襲われてレオニードは腹を確認する。
すぐにジワリと赤いものが絹の寝間着にシミを作る。
まずい。
ふらつく足でそれでもレオニードは一歩一歩部屋の外へと進む。
奇跡というものが、一体どれくらいのものを代わりに引き受けられるのかは結局分からなかった。
出来ればすべてであって欲しいとレオニードは願う。
指先が冷たくなっている気がするがそんなことはどうでも良かった。
昨日屋敷の中を風呂を案内されるついでに説明してもらっていて良かった。
恐らく朝食の準備をしにいったであろう場所に一歩一歩進んでいく。
腹のあたりが血で滑《ぬめ》っている気がしたが、それよりも早く劉祜の状態が知りたかった。
別にどこでもいいと言いかけて、腰がきしんでいる事実を思い出す。
それは、甘やかな痛みだ。
愛おしい痛みを感じながら「じゃあ、ここで二人で食べるのがいい」と答えた。
この屋敷には誰もいないと劉祜は言っていた。
彼が用意してくれるのだろうか。
暴虐王と呼ばれている男の行動には思えなくて、少し笑える。
「すぐに戻るから。」
そう言うと劉祜はレオニードの元を離れた。
ぼんやりとしながらも、昨日の事をレオニードは頭の中で反芻しなおす。
きっと宮殿に戻ったら、また今までと同じような日々になるのだろう。
劉祜は忙しい。
二人きりを楽しめる事なんかめったにないだろう。
だけど、時々こうやって二人で過ごしたい。劉祜本人に言うつもりは無いけれど、レオニードはそう強く思った。
◆
奇跡は起こるなんてあの時は軽々しく言えなかった。
あの、地下の少女を見た後、実父に確認の連絡は入れた。
一応帝国に嫁いだ王族ということで丁寧な返事をもらってはいた。
大分前に途切れてしまったおとぎ話の様だった。
書簡の内容を事前にチェックされたのかは知らない。
封蝋を開けられた気配は無かったが、その辺を上手くやる方法はいくらでもあるだろう。
実際に奇跡を試してみる気も無かった。
というより、昨日までは試しようも無かった。
けれど、突然痛み出す腹を見て、それはすぐに分かった。
先ほどまでの甘やかな痛みと程遠い痛みに襲われてレオニードは腹を確認する。
すぐにジワリと赤いものが絹の寝間着にシミを作る。
まずい。
ふらつく足でそれでもレオニードは一歩一歩部屋の外へと進む。
奇跡というものが、一体どれくらいのものを代わりに引き受けられるのかは結局分からなかった。
出来ればすべてであって欲しいとレオニードは願う。
指先が冷たくなっている気がするがそんなことはどうでも良かった。
昨日屋敷の中を風呂を案内されるついでに説明してもらっていて良かった。
恐らく朝食の準備をしにいったであろう場所に一歩一歩進んでいく。
腹のあたりが血で滑《ぬめ》っている気がしたが、それよりも早く劉祜の状態が知りたかった。
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