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めでたし、めでたしのその後で1
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暴虐王と呼ばれた、悪の皇帝は打倒されました。世界に平和がおとずれました。
めでたしめでたし。
世界がそうなることを劉祜が望んでいたのをを、レオニードはよく知っていた。
魔獣を操っていた数人を倒した時の、劉祜の表情が忘れられない。
安堵したように見えたその表情は、打倒《うちたお》した男の最期の科白で硬直した。
「私たちの他にも、この世界を変えようとしているものはいる。」
断末魔の戯言かもしれない。
実際今のところ魔獣と人間たちの接触は今まで比べて格段に少なくなっている。
晃が壮健であることは噂として耳に入ってくる。
だから、……という訳にもいかない事はレオニードにも分かっていた。
「まずは、生活基盤を整えるところからだろうな。」
雇った傭兵たちに賃金を払って別れた後、レオニードは劉祜にそう言った。
悪逆非道の妾妃であるレオニードが浪費をしたという体で作られた軍資金はまだかなり余裕がある。
「あいつが言ったことが本当か探るにしても、それ以外に何をするにしてもまずは普通の生活を普通に始めるべきだろう。」
レオニードの言葉に劉祜は頷く。
他に倒さねばならぬ者がいるのであれば表立って晃達に連絡を取るべきではない。
あの言葉が嘘でも本当でも、今劉祜達がしなければならない事はそれほど変わりは無い。
すると約束したことは成された訳で、レオニード達にできることはもうそれほど多くない。
そうなる様に劉祜を表舞台から引きずり下ろしたのは、他でもないレオニードなのだ。
馬を使って、帝国が平定した交易都市に行く。
黒い髪の劉祜と銀髪のレオニード二人で居て悪目立ちしない場所は限られている。
流通の要所は、様々な人間が行きかう。
この街であれば変に勘繰られることも無いだろう。
ひとまず宿をとって住むための場所を探す。
二人きりの生活は初めてのため、そわそわとした気持ちになってしまう。
大人になってからこんな気持ちになったことはなかった気がする。
レオニードは劉祜を見る。劉祜も照れたように笑う。
少しの間だけ、王だったという事も、国の事も忘れてしまっていいのではないかとレオニードは思った。
それは国というものの重責を、いまだにほとんど感じる事さえできない所為なのかもしれない。
それでも別によかった。
◆
体を清め、レオニードは寝間着を着てそのまま寝台へ向かう。
劉祜は寝台に腰を下ろして、書簡の様なものを読んでいた。
劉祜はレオニードが戻ってきたことに気が付くと、書簡を寝台の隣にある棚の上に置く。
劉祜はレオニードと揃いの寝間着を着ている。それが王様らしくなくて少しだけ愉快な気分になって寝台の真ん中で腰を下ろしている劉祜の元まで行って、彼の太ももの間に跨る様に向き合う。
吐息が聞こえる距離、唇同士がもう後少しで触れてしまいそうな距離。
その距離でレオニードはふわりと笑う。
無骨な印象のあるその顔立ちに似合わない穏やかな笑みを浮かべる。
「どうした?」
劉祜がレオニードの短くなった髪をなでながら聞く。
本当の二人きりになれたのは久しぶりだった。
「どうもしないけど、ただ――」
あなたに触れたい。
ただそれだけなのにどう伝えたらいいのか分からない。
視線の先の劉祜も多分きっと分かっている。
返事の代わりに口付けをされる。
二度ほどやさしく唇同士が触れ合う。
それから一番近い場所で劉祜とレオニードの視線が絡む。
そのまま二人は目を閉じてもう一度唇を合わせる。
舌を絡めるときに出てしまった熱い吐息は、この後の行為を期待している証だ。
レオニードは自分が過去に抱いた女性の事がこういう時どうしていたかを思い出そうとしてやめる。
比較できるようなものではない気がするし、比較すること自体劉祜にも女性にも失礼だと思った。
めでたしめでたし。
世界がそうなることを劉祜が望んでいたのをを、レオニードはよく知っていた。
魔獣を操っていた数人を倒した時の、劉祜の表情が忘れられない。
安堵したように見えたその表情は、打倒《うちたお》した男の最期の科白で硬直した。
「私たちの他にも、この世界を変えようとしているものはいる。」
断末魔の戯言かもしれない。
実際今のところ魔獣と人間たちの接触は今まで比べて格段に少なくなっている。
晃が壮健であることは噂として耳に入ってくる。
だから、……という訳にもいかない事はレオニードにも分かっていた。
「まずは、生活基盤を整えるところからだろうな。」
雇った傭兵たちに賃金を払って別れた後、レオニードは劉祜にそう言った。
悪逆非道の妾妃であるレオニードが浪費をしたという体で作られた軍資金はまだかなり余裕がある。
「あいつが言ったことが本当か探るにしても、それ以外に何をするにしてもまずは普通の生活を普通に始めるべきだろう。」
レオニードの言葉に劉祜は頷く。
他に倒さねばならぬ者がいるのであれば表立って晃達に連絡を取るべきではない。
あの言葉が嘘でも本当でも、今劉祜達がしなければならない事はそれほど変わりは無い。
すると約束したことは成された訳で、レオニード達にできることはもうそれほど多くない。
そうなる様に劉祜を表舞台から引きずり下ろしたのは、他でもないレオニードなのだ。
馬を使って、帝国が平定した交易都市に行く。
黒い髪の劉祜と銀髪のレオニード二人で居て悪目立ちしない場所は限られている。
流通の要所は、様々な人間が行きかう。
この街であれば変に勘繰られることも無いだろう。
ひとまず宿をとって住むための場所を探す。
二人きりの生活は初めてのため、そわそわとした気持ちになってしまう。
大人になってからこんな気持ちになったことはなかった気がする。
レオニードは劉祜を見る。劉祜も照れたように笑う。
少しの間だけ、王だったという事も、国の事も忘れてしまっていいのではないかとレオニードは思った。
それは国というものの重責を、いまだにほとんど感じる事さえできない所為なのかもしれない。
それでも別によかった。
◆
体を清め、レオニードは寝間着を着てそのまま寝台へ向かう。
劉祜は寝台に腰を下ろして、書簡の様なものを読んでいた。
劉祜はレオニードが戻ってきたことに気が付くと、書簡を寝台の隣にある棚の上に置く。
劉祜はレオニードと揃いの寝間着を着ている。それが王様らしくなくて少しだけ愉快な気分になって寝台の真ん中で腰を下ろしている劉祜の元まで行って、彼の太ももの間に跨る様に向き合う。
吐息が聞こえる距離、唇同士がもう後少しで触れてしまいそうな距離。
その距離でレオニードはふわりと笑う。
無骨な印象のあるその顔立ちに似合わない穏やかな笑みを浮かべる。
「どうした?」
劉祜がレオニードの短くなった髪をなでながら聞く。
本当の二人きりになれたのは久しぶりだった。
「どうもしないけど、ただ――」
あなたに触れたい。
ただそれだけなのにどう伝えたらいいのか分からない。
視線の先の劉祜も多分きっと分かっている。
返事の代わりに口付けをされる。
二度ほどやさしく唇同士が触れ合う。
それから一番近い場所で劉祜とレオニードの視線が絡む。
そのまま二人は目を閉じてもう一度唇を合わせる。
舌を絡めるときに出てしまった熱い吐息は、この後の行為を期待している証だ。
レオニードは自分が過去に抱いた女性の事がこういう時どうしていたかを思い出そうとしてやめる。
比較できるようなものではない気がするし、比較すること自体劉祜にも女性にも失礼だと思った。
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