婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波

文字の大きさ
3 / 7

その頃パスタリアンは失ったものに気が付く

しおりを挟む
‥‥‥パスタリアン王国は現在、悲しみに包まれていたはずであった。

 国王が急死し、その葬儀で本来は国中が喪に服して、1ヶ月ほどは痛むはずなのである。


 
 だがしかし、その葬儀は1ヶ月も絶たず、たった3日で終わり、新しく国王になった者を讃えよとかいう馬鹿げたことに変わってしまった。


 その原因が、新国王ズービク・フォン・パスタリン…‥いや、なぜか改名して「天才的たる神秘の神から愛される娘でありつつ(以下略)」の長い名前になった馬鹿である。

 余りにも長い名前に改名した上に、省略して馬鹿王とされた者がその名前を言うたびに、毎回変わっていることからおそらく覚えきれていないからごまかしているのだろうというのが、周囲の見解であった。



 崩御した前国王にはその馬鹿王しか息子がおらず、自動的に彼が国王になったとはいえ‥‥‥その死には不審点しか見つからなかった。


 まず、前国王は少々メタボリック気味だったとはいえ、健康に今すぐ異常が出るほどのものではなく、そんな急に死ぬなんて考えられないほどタフだったらしいこと。

 そして、死因が全く伝えられておらず、国民の前に葬儀で出たのは、棺桶に入っており、まるで中身が見せられないかのようなことになっていたのである。



 あまりにも怪しすぎる突然の前国王の死に、疑問を抱く者は少なくなかった。

 ただ、真相を究明しようとした者たちがいたのだが‥‥‥なぜか皆、行方不明になったりして、迂闊に踏み込めないような問題となったのである。






 とにもかくにも、国王が代替わりして、その馬鹿王が政治を取ったのだが‥‥‥酷い有様であった。

 全く真面目に政治を行う気がない。

 賄賂?買収?貢物?なんでもありますぜぇダンナ様の汚職まみれ。

 贅沢に溺れ、色欲に溺れ、食欲に溺れ、たまに城下街を歩いているときに、新たに王妃になったらしいズーバッレ・フォン・アーチビィ改め馬鹿王と同じように長い名前に改名しているので皆には腐れ王妃と呼ばれている女が、宝石店から宝石を買い占め、厚化粧をして似合わないほど着飾り捲る。



 もうはっきり言って、悲惨というか、歯止めが効いていない、誰も止めようがないほどの悲惨さである。



 しかも、どうやら馬鹿王が王座に就くと同時に、責任を感じたのか、それとも使える意味もないと見限ったのか、憤怒の将軍デストロイ、叡智の宰相ケジャン、豊穣の財務大臣スビーエ、爆炎氷結の魔導士オーチャンなど、この国にとって有能で必要な人たちが去っていき、その代わりの座に馬鹿王の学生時代からの取りまきたちが居座った。

‥‥‥ただし、その取りまきにいたはずの魔導士ギースだけは、父親のオーチャンと共に去っていたので、その座にはまた別の予備軍とも言える取りまきが座ったようである。


 有能な人が次々に出て行き、代わりに無能でおべっかで、馬鹿王に媚びる者たちが次々と重要な役職についてしまい、もはや国の機能は半壊しているも同然であった。


 歴史上、類を見ないほどの荒れ果てまくったその光景に、近隣諸国からも呆れの声しか出ないのである。




 馬鹿王たちが贅沢をするために、税金が引き上げられたりして、都市部からも離れた農業地域も大打撃を受けていた。



‥‥‥そんな中、まだまともであった貴族のうち、誰かがふと思い出した。

 あんな馬鹿王がついたら国が崩壊するのではないかと、学生時代から言われていた。

 その為、ストッパーとしてある令嬢がいたはずなのだが‥‥‥卒業式会場の場で、断罪され国外追放となったことを。

 

 改めて、馬鹿王の所業にあきれ果てた者たちは、そのことについて調べ始めた。


 すると、その婚約破棄及び国外追放された令嬢の冤罪を示す証拠が山のようにあふれ出たのである。



 杜撰すぎるし、少し調べればむしろ馬鹿王たちの所業もまとめて出てきてしまっていた。




 あまりのひどさに、調べた者たちはあきれ果てた。


 そして、そのうちある事が次々に判明していった。

 まず、そのいなくなった令嬢だが、どうも隣国にいるらしく、そこで喫茶店を営んだり、スラムや孤児院で教育を施したりして、皆に慕われているらしいという事。

 その行為はどうやらパスタリアン王国内でも同様の事を行っていたようで、国内にあった孤児院では突然いなくなったその令嬢のことを悲しんでいるらしいという事。



 馬鹿王は学生時代色々と成績をごまかしたりしていて、実際の学力は全校生徒で最下位であったこと。

 そのセットの腐れ王妃は、今いる取りまきたちと肉体関係を持っていて、学生時代から爛れていた生活を送っていた事。

 そして、その本来の容姿はどうやらごまかしであり、国際的に禁止されているはずの違法な魔道具マジックアイテムによって変化した姿であり、その真の姿はおぞましい事。

‥‥‥そして何よりも、そのおぞましい腐れ王妃、実は準男爵家の娘でもなんでもなく、どうやら他人に成りすましていた人物だったという事である。

 準男爵家自体はあったのだが、どうやら元々娘とかはいなかったようだ。


 そこに、いつの頃かその腐れ王妃がはいり込み‥‥‥準男爵家の令嬢に成りすましていたようなのだ。



 考えてみれば明らかに不自然なのに、誰も疑問に思っていなかったその不振さ。

 そもそも、そんな人物が禁止されているような魔道具マジックアイテムを持っていること自体がおかしいのである。


 
 そのあまりの怪しさに、調べていく者たち。

 国王の死の真相を探ろうとしたら、なぜか皆行方不明になったりするので、そうならないように注意しつつ、真実を求めていく。




‥‥‥そして、その腐れ王妃に関しての真実が判明した時、皆慌てて国外へと逃げた。

 その真実のおぞましさに、犠牲になるのを恐れて国から出て行き、どんどん国は荒れ果てていく。


 一方、その現実を見ないまま、なぜか金が滞って来たので何とかしようと馬鹿王は考え、そして大馬鹿をやらかす。


 隣国であるミストリアンに宣戦布告したのは、まともな者たちが何とか全員逃げ延びた頃であった‥‥‥

 

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

王子、婚約破棄してくださいね《完結》

アーエル
恋愛
望まぬ王子との婚約 色々と我慢してきたけどもはや限界です 「……何が理由だ。私が直せることなら」 まだやり直せると思っているのだろうか? 「王子。…………もう何もかも手遅れです」 7話完結 他社でも同時公開します

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

処理中です...