転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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3章 学園中等部~

3-30 縁とは何かとあるもので

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「‥‥‥にしても、妹かぁ。前世の僕にいたとはなぁ」
【アルス、まだ言っている、キュル】
「だって、結構驚いたからね」

‥‥‥リリとの話し合いから時間も経過し、風呂にもゆっくり入ってそろそろ寝付こうとする頃合い。

 互いに寝間着に着替えつつ、本日はハクロのサイズはそのままで、彼女の蜘蛛部分の背中に横になりながらそうつぶやいた。

「前世の妹かぁ…‥‥今世も彼女が妹だったら、それはそれでよかったような‥‥‥いや、そうでなくて良かったかもしれない」

 ふと想像してしまったが‥‥‥そんなことにならなかったのは、ある意味良かったのかもしれない。

 なぜならば、彼女が血縁のある妹として生まれていたのであれば、あの酷い家の中で生まれることになり、ひどい扱いを受けていた可能性がある。

 あの父も義母モドキも浮気をしていたようだし、何処かに知らぬ兄弟姉妹がいてもおかしくはないのだが‥‥‥一応、その可能性はない模様。

 まぁ、そっちよりもあの兄モドキたちが手を出していた可能性もなくはないからな…‥‥今さらながら考えて見れば、相当ロクデナシな奴らだっただろう。

【そう言えば彼女、見かけて縁を見つけたって、言ってたよね?アルスの、兄モドキ、まだ生きていたの?】
「そのようなんだよね。まぁ、極刑は免れてはいたけれども…‥‥」


…‥‥義母モドキもとい罪人の子供ではあったが、まだまだ若き身の子供たち。

 その性格などは矯正が不可能に近かったが、それでも命を奪うまでの処分は下されずに、それぞれ何処かの孤児院あたりに出されたはずであった。

 まぁ、処分としては甘い方かもしれないが、血のつながりが無かったとはいえ、仮にも兄扱いしていたからなぁ‥‥‥犯罪者の洗脳教育と言うべきものの影響もあったかもしれないし、ある程度の情状酌量の余地はあったのだ。色々手遅れかもしれないけど。

 とは言え、二度と会いたくもないし、僕が次期当主の座を継ぐとなった以上、逆恨みをして何かをやらかしかねないし、会わなくなるような場所へ出されたとは聞いていたが…‥‥結構経ったはずなのに、また耳にするとは思わなかった。
 
 兄モドキ、本気で存在を忘れかけていたのもあるが‥‥‥うん、元気にやっているのであれば、それはそれで良いのかもしれない。そもそもそんなに干渉し合わなかったからなぁ‥‥‥‥あっちが勝手に自滅街道まっしぐらだったというべきか。

 何にしても、どちらかの生存確認ができたのであれば、もう片方も生きていそうだ。

 あの兄モドキたち、多分黒いG以上に生命力はしぶとそうだし、ひねくり曲がった根性などは多分直りようがないからね‥‥‥その分、生きる事への執着が強そうだ。

 とは言え、今度僕らに害を加えたら、それこそ極刑まっしぐらではある。

 流石に仏の顔は三度までと言う事もなく、二度もない。

 冷徹かもしれないが、あの兄モドキたちに関心が無いだけなんだよなぁ‥‥‥‥


「…‥‥でも、そう考えると、ハクロはハクロで兄弟姉妹が多いようだよね?」
【うん、たくさんいた。皆、色々と凄かったけど…‥‥弟たち、執事になっていたの、一番驚いたかも】

 リリの横で執事をしていた、ハクロの弟たち‥‥‥まとめてベイドゥ。

 彼らは彼らで、人の暮らしにはなじんでいたようだったが、あれはあれで個性的だったかもしれない。

【生きていたの、良かったけど、流石に執事は、予想できなかった】
「まぁ、予想できないよね」

 どこの世界に、生き延びた蜘蛛たちが力を合わせて、執事になるやつがいるのかわからない。

 実際に目にしたとは言え、信じがたくも思えたが‥‥‥‥目の前に、人の姿を持つハクロがいるのを見ると、無いわけではない事実を理解させられるだろう。

 と言うか、彼女の兄弟姉妹って本当にどうなっているんだろうか…‥‥ドマドン所長辺りが聞いたら興味津々だろうな。


「でも、血縁での前世のか‥‥‥今じゃないのは、惜しくもあるな」

 あの酷い環境の中で生まれなくて良かったとは思うけど…‥‥そう考えると、血の繋がった相手がいなくて、自分は孤独なのかもしれない。

 なんとなく物寂しいような感じがした中で…‥‥ふと、ハクロが腰を捻って僕の方へ向き、そっと抱きしめて来た。

【キュル、大丈夫、アルス。私、傍にいるもの】
「‥‥‥それもそうだね」

 人とモンスター、血のつながりが無い間柄とは言え、彼女とは共に過ごした時間も長い。

 いや、時間の長さも関係なく…‥‥彼女がいるからこそ、その寂しさは失われるだろう。

 そっと抱きしめてきた彼女に対して、温かい気持ちを僕は抱く。

 察してくれるその優しさに、どことなく愛おしさも感じる死…‥‥ああ、やっぱり彼女がいないと、今の僕は無かったかもしれないなぁ。

「ありがとう、ハクロ。僕の側にいてくれて」
【キュル、私こそ、アルスに助けられていること多いし、ありがとう。私、アルスとずっと一緒だもの‥‥‥】

 ほんわかと互いに優しい気持ちになりつつ、眠気が襲ってきたので部屋の明かりを消し、眠ることにした。

 温かみと安心感を感じつつ、前世の自分は思い出せずとも、せめて妹の存在に関してはちょっとは思い出すようにしないとなと思いながら、夢の中へといざなわれるのであった…‥‥






「‥‥‥いいなぁ、ハクロちゃんベッド」
「羨ましいが、この映像も記録せねばな…‥‥しかし、驚くべき情報が多かったな」
「ええ、今日一日だけでも、多く出ましたね」

 すやすやとアルスとハクロが仲良く寝息を立てはじめたころ、その天井裏ではファンクラブの者たちが集まって、本日の情報交換を行っていた。

 今日の一日の行動すべてに関して監視はしていたのだが…‥‥彼らにとっても、今日得られた情報が多すぎて、色々と整理すべきものが多かったのである。

「しかし、正妃様情報からも得たが、彼が転生者とは言え…‥‥前世の血縁者と思わしき者が、他国の令嬢から出るとはな」
「そのうえ、執事に蜘蛛のモンスターが…‥‥兄妹って似るのかな?」
「偶然だとは思うが…‥‥その事に関しては、また後でどうとでもなるが、それ以外でも気になることがあったね」
「ああ、ダンジョンで、群れの襲撃情報か…‥‥」

‥‥‥今日の話の中で、彼らも耳を立て、記録して、目にも焼きつけながらしっかりと情報を収集する中で出てきた、ハクロの故郷の話。

 前々から候補ではあったが、今回の件でダンジョン内で彼女が産まれたらしいということがほぼ確定事項となったのだが…‥‥

「…‥‥ガス系の道具、もしくは魔道具の無許可使用の話は出てないな」
「ああ、皇女様の件で調べはしたが…‥‥その襲撃云々に関しては、出ていなかったな」

 情報伝達はが素早く行われ、ベイドゥとやらが話していた内容の正誤を確認したところ、誤りはなかった。

 しかし、そうなってくると…‥‥ハクロとベイドゥがかつていた群れの襲撃に関しての話で、おかしい点が出てくるのである。

「冒険者の無許可侵入無し。目撃情報があれども出てきたのはどれも違う者であり‥‥‥駄目だな、これ以上深く掘り下げられない」
「そもそも、タラテクト系の群れに大人数で襲ったとはいえ、それだけの人数の情報が出ないのも妙だ」
「何かと隠されているというか、何処かで工作された可能性があるな…‥‥見つかると、都合が悪い輩がいるな」

 何か悪い企みが合って工作されて痕跡を消したようだが、痕跡の消し具合が綺麗過ぎてむしろ疑うべきところが多くなってくる。

 そもそも、その群れを襲った目的が何なのか…‥‥糸を採取するだけならばまだわかるが、焼き払っての証拠隠滅などはやり過ぎな印象もあるのだ。

「まぁ、アンデッド化の可能性を考えると、焼却処分は正しいが…‥‥それでも、ここまで情報を得られないのはおかしいだろう」
「ファンクラブ会員内で情報を交換して見たが、どうやらどこの間諜や密偵などに所属しているようなものはいないようだ」
「何処かの貴族家が強制介入…‥‥いや、それにしては大きすぎるし、これは国そのものが関わっていると見て良い案件だろう」

 何かと怪しいものが出てきているが、その正体はつかめていない。

 とは言え、このまま放置するわけにもいかないだろうし…‥‥‥

「…‥‥細かい情報を集める限り、そいつらがいたからこそ我々が彼女に出会えたのだが…‥‥大怪我を負わせているのは万死に値するだろう」
「そもそも、あの姿になる前であったとは言え、彼女の心に傷を負わせたその罪は許されるものではない」
「この裏の業界に通じて似たようなことをやったこともあるが…‥‥それでも、奪われる側の気持ちを考えなかったことは無く、ここで贖罪するつもりではないが、相手を必ずあぶりださねばな…‥‥」


…‥‥何かと蠢くような業界にいる中で、見つけた一筋の温かい光。

 純粋で眩しくて、自分達が良くないことに染めている時もあったが、彼女にそんなものを触れさせたくはない。

 それなのに、かつて彼女へ手を出し、その心に傷をつけたという大罪を犯した輩を…‥‥ファンクラブの者たちは、絶対に放置することはない。

「せっかく、出身地が分かったんだ。そこからさらに、手を広げよう」
「ああ、こちらの雇い主は近々そちらへ出店する予定だし、情報ならば集めやすいはずだ」
「過去にそこに所属していたのも、伝手を辿ってより詳細に得られるだろうな」
「「「そして、彼女の心の憂いとなる輩を滅すべきだ」」」

 優しくて純粋であり、あふれる光のようなハクロ。

 彼女に対して、大きな蜘蛛時代での事らしいとは言え、それでも体・精神両方に傷を負わせた輩に対して、ファンクラブの者たちは彼女の代わりに復讐心を抱き、必ず見つけだしてあげようと誓いあう。
 
 その心は伝播していき、そろそろファンクラブも拡大の時を見せるのであった。



 なお、前から拡大していないかと言うツッコミは、ツッコミ役不在のために誰も入れないのであった。

「にしても、本当に気持ち良さそうだよなぁ…‥‥ハクロちゃんの、あのモフモフな蜘蛛の背中に寝るのは贅沢の極みだよ」
「贅沢と言うか、そもそも金で出来ぬことだが…‥‥現在、再現を頑張ってやろうとしている者たちもいたはずだな」
「ああ、寝るのは至福だが、寄り添いあいたいものだ‥‥‥‥」


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