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力の差
#68 少しだけシリアスdeath
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SIDEシアン
…‥‥ロイヤルさんが連れてきたのは、ファイスと名乗る人物。
見た目的に中性的であり、背中に翼がある事でまず人間ではないという事がうかがえた。
「旅の人…‥‥ですか」
「ええ、詩人として各地を放浪して、ネタ探しをしているのです」
とりあえず、一旦話す場としてワゼが素早く椅子とテーブルを用意し、互に着席して向かい合う。
話によれば、彼‥‥‥いや、良く分からないのでファイスさんでいいか。とにもかくにも、ファイスさんは各地を放浪する詩人だそうで、ありとあらゆる場所のネタを探し詩としてまとめ、歌い、金銭を稼ぐそうだ。
「それって、吟遊詩人ってやつではないですか?」
「ええ、そうとも言いますね」
僕の言葉に対して、コロコロと笑うファイスさん。
その様子は落ち着いたものであり、普通であれば場が和んだのかもしれない。
…‥‥けれども、僕は、いや、ワゼたちも感じているのか、警戒を緩めなかった。
ロイヤルさんが連れてきたとはいえ、ここはハルディアの森。
フェンリルたちが結界をはり、悪しき者たちは来れないようにしているらしいので、普通に入って来たこの人はその悪しき者ではないかもしれないが‥‥‥なんとなく、自然に警戒してしまうのだ。
そこにいるようだけど、本当はそこにいないような、どこか偽物と対峙しているような違和感。
今までにない感覚に戸惑いつつも、警戒を緩めることができなかった。
「ところでファイスさん、何故この森の中へ来たのでしょうか?ネタ探しのため‥‥‥というにしても、わざわざ僕らのところまで来る理由が見当たりませんが」
その疑問を、僕は直接投げかけてみる。
そもそもの話として、仮にネタ探しだとしてもこの森の中にわざわざ入ってくる必要性は見当たらない。
フェンリルが住まう森程度という認識であれば、魔法屋として仕事している時に、聞いてはいる。
ゆえに、フェンリル見たさだとしても精々森の外から見るか、もしくはフェンリル一家とコンタクトを取る程度で済むはずである。
「それなのに、ロイヤルさんに案内され、わざわざ僕らの下へ来た…‥‥となると、ただのネタ探しという理由ではなさそうな気がするんですよね」
ロイヤルさんが僕らの事を話し、興味を持って来たという可能性もないわけではない。
だが、ポチとは違ってロイヤルさんはかなりできるフェンリルであり、不必要な情報を漏らすこともあるまい。
「…‥‥ふふふふ、ここまでの少ない情報で、そこまで深く考えるとは、面白い人ですね」
僕の問いかけに対して、くすりと笑うようにファイスさんはそう口にした。
「ちょっとあなた方の事を小耳にはさみ、興味を持った…‥‥と言っても、信じてもらえそうにもないですね」
ハクロもいる事だし、彼女をネタにして興味を持たれていたのであればまだわかる。
だがしかし、そう言われても信じようがない。
「僕らがこの森に住んでいることを知っているとすれば、この森のフェンリルたちか、あるいはとある商人の人ぐらいなんですよ。ハクロ関係で小耳にはさんだとしても、僕らの住居の特定まではされていないはずなんですよね」
「なるほど、そういう事ならば警戒されても仕方がありませんね。それに…‥‥」
やれやれと肩をすくめる様な仕草をしながら、ファイスさんはちらりと周囲を見た。
ワゼにミニワゼシスターズ、ハクロ、ついでにロイヤルさん。
確かに周囲の面子を考えると、何か行動を起こされる前に取り押さえることもできる。
「‥‥‥下手に動くことはできないな。それに、嘘をつくのもできなさそうだねぇ」
ニマニマと笑うファイスさん。
どことなくその気配はより油断のできないようなものになる。
「ま、なんにしても一つだけは確実に言わせてほしいかな。敵対する気もないし、何かする気もない。ただ単に、今日は興味を持って来ただけなのだからね」
そういうと、席から離れ、歩みだす。
「それじゃ、今日はここいらで帰らせてもらうね。次の機会があれば、そこで色々と話しましょう」
そして、翼を広げ、あっという間にその場から姿を消した。
「…‥‥飛翔とは違いますね。航跡確認不能。瞬間移動に近い者だと思われマス」
ワゼでもわからないような相手、ファイスさん。
色々と隠しているようであったが、少なくとも油断できる相手ではないだろう。
気を許そうにも許させない警戒心を抱かせ、瞬時にこの場を去る能力といい、分からないことだらけだ。
「まるで、ちょっとした嵐が通過したような感覚だな‥‥‥」
とにもかくにも、全員精神的に疲れただけであった…‥‥次の機会と言っていたが、できればその機会が来ないでほしいなぁ…‥‥
「しかし、あの翼って意味があったのか?」
「転送用のマジックアイテムとか言うものの可能性もありマス」
――――――――――――――――
SIDEファイス
…‥‥森から消え、わたしは元の場所へ戻って来た。
この義体を解除するために神殿の中に入り、義体用のカプセルに身体を入れる。
そして目を閉じ、次の瞬間には元の身体にわたしは戻っていた。
「あ、預言者様、ご帰還されたようですね」
管理していた巫女たちが疲れたような顔をしつつ、出迎えてくれた。
そのまま彼女達に後の始末を頼みつつ、またいつもの部屋にわたしは入る。
「ふぅ‥‥‥初めて会ってみたけれども、中々面白い様子だったな」
義体を使い、何があろうとも安全な場所から確認したが‥‥‥ある意味、想像通りだっただろう。
警戒心を抱かせてしまったが、少なくともあの様子からして野心を抱えている様子も、悪行を行うような心もないだろう。
「でも、周囲にいた子たちは注意が必要だね」
フェンリルの方はどうでもいいとして、他にいた少女たちの姿をわたしは思い出す。
アラクネであそこまで綺麗なものがいるとは流石に予想外であったが、それも別にいい。
肝心なのは、彼についていたメイドたち……あの小さい3つ子のような者はさておき、大きい方、オリジナルとも言って良いような、メイドに一番警戒すべきなのかもしれない。
「にしても、あの構造とかバレないように確認したけれども…‥‥あの義体と似たようなものがあったね。とは言え、性能が比べ物にならないほど上のようだし…‥‥もしかして、あの人が生きていて、彼女を新しく作ったのかな?」
あのメイドはゴーレムである事を理解していたが、その製作者にわたしはなんとなく思い当たるふしがあった。
義体に似た構造を持ちながらも、性能は格段に上で有り、そんな事が可能な人物は1人ぐらいしか思い当たらない。
「とは言え、その人物であればむやみやたらに他人に譲るわけでもないし……いろいろと調べて見る方が良いかもね」
そう思いつつ、わたしは神殿内の諜報部隊を動かすことにした。
あの森で見つけた彼らにバレないように密かに動かし、あのメイドの素性などを調べてみる。
もし、そこから製作者へつながる道がみえたら、会う機会を設けよう。
何にしても、今回の義体での冒険とも言うべき件は、面白かった。
おかげで新たな予言をする気になり、再び愚者を求める食欲を刺激させたのであった‥‥‥‥
…‥‥ロイヤルさんが連れてきたのは、ファイスと名乗る人物。
見た目的に中性的であり、背中に翼がある事でまず人間ではないという事がうかがえた。
「旅の人…‥‥ですか」
「ええ、詩人として各地を放浪して、ネタ探しをしているのです」
とりあえず、一旦話す場としてワゼが素早く椅子とテーブルを用意し、互に着席して向かい合う。
話によれば、彼‥‥‥いや、良く分からないのでファイスさんでいいか。とにもかくにも、ファイスさんは各地を放浪する詩人だそうで、ありとあらゆる場所のネタを探し詩としてまとめ、歌い、金銭を稼ぐそうだ。
「それって、吟遊詩人ってやつではないですか?」
「ええ、そうとも言いますね」
僕の言葉に対して、コロコロと笑うファイスさん。
その様子は落ち着いたものであり、普通であれば場が和んだのかもしれない。
…‥‥けれども、僕は、いや、ワゼたちも感じているのか、警戒を緩めなかった。
ロイヤルさんが連れてきたとはいえ、ここはハルディアの森。
フェンリルたちが結界をはり、悪しき者たちは来れないようにしているらしいので、普通に入って来たこの人はその悪しき者ではないかもしれないが‥‥‥なんとなく、自然に警戒してしまうのだ。
そこにいるようだけど、本当はそこにいないような、どこか偽物と対峙しているような違和感。
今までにない感覚に戸惑いつつも、警戒を緩めることができなかった。
「ところでファイスさん、何故この森の中へ来たのでしょうか?ネタ探しのため‥‥‥というにしても、わざわざ僕らのところまで来る理由が見当たりませんが」
その疑問を、僕は直接投げかけてみる。
そもそもの話として、仮にネタ探しだとしてもこの森の中にわざわざ入ってくる必要性は見当たらない。
フェンリルが住まう森程度という認識であれば、魔法屋として仕事している時に、聞いてはいる。
ゆえに、フェンリル見たさだとしても精々森の外から見るか、もしくはフェンリル一家とコンタクトを取る程度で済むはずである。
「それなのに、ロイヤルさんに案内され、わざわざ僕らの下へ来た…‥‥となると、ただのネタ探しという理由ではなさそうな気がするんですよね」
ロイヤルさんが僕らの事を話し、興味を持って来たという可能性もないわけではない。
だが、ポチとは違ってロイヤルさんはかなりできるフェンリルであり、不必要な情報を漏らすこともあるまい。
「…‥‥ふふふふ、ここまでの少ない情報で、そこまで深く考えるとは、面白い人ですね」
僕の問いかけに対して、くすりと笑うようにファイスさんはそう口にした。
「ちょっとあなた方の事を小耳にはさみ、興味を持った…‥‥と言っても、信じてもらえそうにもないですね」
ハクロもいる事だし、彼女をネタにして興味を持たれていたのであればまだわかる。
だがしかし、そう言われても信じようがない。
「僕らがこの森に住んでいることを知っているとすれば、この森のフェンリルたちか、あるいはとある商人の人ぐらいなんですよ。ハクロ関係で小耳にはさんだとしても、僕らの住居の特定まではされていないはずなんですよね」
「なるほど、そういう事ならば警戒されても仕方がありませんね。それに…‥‥」
やれやれと肩をすくめる様な仕草をしながら、ファイスさんはちらりと周囲を見た。
ワゼにミニワゼシスターズ、ハクロ、ついでにロイヤルさん。
確かに周囲の面子を考えると、何か行動を起こされる前に取り押さえることもできる。
「‥‥‥下手に動くことはできないな。それに、嘘をつくのもできなさそうだねぇ」
ニマニマと笑うファイスさん。
どことなくその気配はより油断のできないようなものになる。
「ま、なんにしても一つだけは確実に言わせてほしいかな。敵対する気もないし、何かする気もない。ただ単に、今日は興味を持って来ただけなのだからね」
そういうと、席から離れ、歩みだす。
「それじゃ、今日はここいらで帰らせてもらうね。次の機会があれば、そこで色々と話しましょう」
そして、翼を広げ、あっという間にその場から姿を消した。
「…‥‥飛翔とは違いますね。航跡確認不能。瞬間移動に近い者だと思われマス」
ワゼでもわからないような相手、ファイスさん。
色々と隠しているようであったが、少なくとも油断できる相手ではないだろう。
気を許そうにも許させない警戒心を抱かせ、瞬時にこの場を去る能力といい、分からないことだらけだ。
「まるで、ちょっとした嵐が通過したような感覚だな‥‥‥」
とにもかくにも、全員精神的に疲れただけであった…‥‥次の機会と言っていたが、できればその機会が来ないでほしいなぁ…‥‥
「しかし、あの翼って意味があったのか?」
「転送用のマジックアイテムとか言うものの可能性もありマス」
――――――――――――――――
SIDEファイス
…‥‥森から消え、わたしは元の場所へ戻って来た。
この義体を解除するために神殿の中に入り、義体用のカプセルに身体を入れる。
そして目を閉じ、次の瞬間には元の身体にわたしは戻っていた。
「あ、預言者様、ご帰還されたようですね」
管理していた巫女たちが疲れたような顔をしつつ、出迎えてくれた。
そのまま彼女達に後の始末を頼みつつ、またいつもの部屋にわたしは入る。
「ふぅ‥‥‥初めて会ってみたけれども、中々面白い様子だったな」
義体を使い、何があろうとも安全な場所から確認したが‥‥‥ある意味、想像通りだっただろう。
警戒心を抱かせてしまったが、少なくともあの様子からして野心を抱えている様子も、悪行を行うような心もないだろう。
「でも、周囲にいた子たちは注意が必要だね」
フェンリルの方はどうでもいいとして、他にいた少女たちの姿をわたしは思い出す。
アラクネであそこまで綺麗なものがいるとは流石に予想外であったが、それも別にいい。
肝心なのは、彼についていたメイドたち……あの小さい3つ子のような者はさておき、大きい方、オリジナルとも言って良いような、メイドに一番警戒すべきなのかもしれない。
「にしても、あの構造とかバレないように確認したけれども…‥‥あの義体と似たようなものがあったね。とは言え、性能が比べ物にならないほど上のようだし…‥‥もしかして、あの人が生きていて、彼女を新しく作ったのかな?」
あのメイドはゴーレムである事を理解していたが、その製作者にわたしはなんとなく思い当たるふしがあった。
義体に似た構造を持ちながらも、性能は格段に上で有り、そんな事が可能な人物は1人ぐらいしか思い当たらない。
「とは言え、その人物であればむやみやたらに他人に譲るわけでもないし……いろいろと調べて見る方が良いかもね」
そう思いつつ、わたしは神殿内の諜報部隊を動かすことにした。
あの森で見つけた彼らにバレないように密かに動かし、あのメイドの素性などを調べてみる。
もし、そこから製作者へつながる道がみえたら、会う機会を設けよう。
何にしても、今回の義体での冒険とも言うべき件は、面白かった。
おかげで新たな予言をする気になり、再び愚者を求める食欲を刺激させたのであった‥‥‥‥
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