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197 盲点と言えばそうかもしれない
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「…‥‥つまり、数カ月前から大公爵家のデッドリーから皮を剥ぎ取り、生活していたんだな?」
「そういうことになるのぅ。しかも、当の本人はまだ生きていたようじゃな」
ダンジョンと思われる場所に作られた施設、蟲毒の実験場ともいえる場所にて、俺たちは捕縛した怪物化している者たちから順当に魂を引っこ抜くなどして、情報を集めていた。
あのおっさんからそこら辺の化け物たちが氷結して拘束されていたので、無駄な抵抗も特になく、場合によっては引っこ抜くよりもお話するだけで、べらべら情報を出してくれたから楽だったのだが‥‥その代償というべきか、相当面倒くさくなるような事実まで得てしまった。
情報によれば、まず大公爵家の息子であったデッドリーとの入れ替わりだが、数カ月前から既にやっていたようである。
仮にも王族の血の引く者をどうやって手中に収めたのかと言えば、情けない理由というべきか、当主がデッドリーを更生させようと一生懸命手を尽くす中で、デッドリー自身は非常に嫌気がさし、時折寝付いた頃合いに外にでて娼館などで遊び惚けていたようだ。
で、その情報が娼館の人達から流出し…‥‥最悪な事に、とある組織‥‥‥仮面の組織フェイスマスクに伝わった。
一応、大公爵家の息子という事で、情報を色々得られるかと思って娼館で手の者をいれて懐柔したらしいが‥‥‥いかんせん、デッドリー本人が馬鹿すぎたというか、ろくな情報を得られていなかったらしい。
多少改善して良い息子にすればどうにか重要な情報なども聞き出していけるのかと思い、わざわざその更生に対して手助けもしていたようだ。
けれども、デッドリーの曲がり具合は流石に酷く、組織の方でもここまでのロクデナシはむしろ実験材料にした方が良いんじゃないかという案が出され、採択された。
とはいえ、流石に大公爵家の息子が行方不明になると騒ぎになるので‥‥‥狂気の手段をとった。
それが、デッドリー本人の面の皮というか、全身の皮を剥ぎ取り、特殊な加工を施して着用可能にして、代わりの者に着せるという手段である。
まぁ、単純に言えば、そのままのデッドリーでは重要な情報も手に入れられない立場だろうし、むしろ代わりの人でやってしまえば手に入れらるようになると考えてらしいが…‥‥それが実現して、あのおっさんが中身になって、更生したふりをして過ごしていたようだ。
大公爵家当主は息子が更生したと思って喜ぶだろうし、更生したふりで過ごしていけば、大公爵家ならではの情報も手に入れらるかもしれない、場合によっては他の貴族家でも同様の手口を行い、より組織にとって有益な情報集めを国の内側から行おうという計画が進行していたようなのだ。
なお、中身のデッドリー本人自体は、何処かへ運ばれたらしい‥‥‥‥すでに材料扱いされたか、まだ生きているか‥‥‥どうなんだろうか?
その中でおっさんは、息子のふりをしてある程度時間が経過したところで更生した様子を見せて、当主を喜ばせていたのは良いのだが…‥‥何と言うか、大公爵家という立場は王族の血を引いているので、できれば血を残した方が良いという考え方もある。
なので、更生したとあれば評判も良くなるだろうし、良い貴族家の令嬢との縁談も考えられるという事で、その事に関してもごまかす手段を持ちつつ、ぐふふふっと笑っていたところで…‥‥おそらくは組織の方にとっても頭から抜けていたであろうことがそこで問題になってしまった。
「…‥こやつ、重病じゃったようじゃ」
「重病?見た感じ、既に体が尺取虫になっている以外には、特に病気になっているようには見えないのだが‥‥‥」
「違うのじゃ。性癖の方じゃ」
‥‥‥すでにあの第3王子が色々と問題のある子供好きではあるが、あれはまだ軽度のようだ。
だが、そのおっさんの方は重度だったようで、まともに成長した貴族家の子女は対象外であり、非常に嫌だったようだ。
それをどうにかできないかと考えている中で‥‥‥‥ふと、とある情報が組織の定期連絡の方から入って来た。
「それが、第3王子のダンジョン挑戦と、秘薬入手に関してのものじゃったようじゃな」
「王子たちの動向を探れるようにして、万が一の時に王族を捕らえようとしていた可能性もあったのだろうが…‥‥それを利用したのか」
王子が手に入れたのは、老人を子供にまで若返らせるという秘薬。
組織の方でも実はすでに入手していたようだが、その話しを耳にしておっさんは思いついた。
若返りの秘薬というようだが、本当は違うのではないか、子供にするだけの薬ではないのかと。
それを利用すれば、もしかするとその婚約話に関しても、ちょうどいいことにできるのではないかと。
とはいえ、おっさんの地位は組織内ではそこそこまでしかなく、貴重な秘薬を利用することはできない。
ならば、盗んでしまって、それを使えばいいんだという思考に至ったようだ。
そこから、おっさんの動きは無駄に早かった。
組織にはいつかこの生活はぼろが出る可能性があるので、念のためにごまかせるような道具が無いかと打診し、ならばこれでどうにかごまかせばいいという事で、暗示用の魔道具を融通してもらい、それを利用したのである。
おっさんの地位は微妙ではあったが、その道具は秘薬よりも貴重ではなく、既に旧型だったそうなので問題なく受け取れ、あとは色々と手を回した。新型の方が危険度が高くなるが…‥‥そちらはここら辺の怪物たちの中には情報もないので、今後調べる必要がある。
まずは、更生教育の中で聞いたものや組織から聞いた異なる犯罪組織についての情報を集め、自ら動いて暗示用の魔道具を用いて乗っ取った。
そして、さらにその者たちを利用して王子から薬を奪ったのは良いのだが‥‥‥それの安全性がいまいちわからない。もし、予想通りの子供化ではなく、本当に超若返りの薬であれば入手した意味がないのだ。
どうすればいいのかと考えた挙句…‥‥実験対象として、第1王女を狙ったようだ。
「誰でも実験台に出来そうだったが…‥‥おっさんの理想は、王女様の幼女化した姿だったようデス」
「そんな理由で!?」
子供化させる薬だと仮定するのであれば、その子供化した際にできれば目の保養になるような、可愛らしいというか美しいというか、その両方を兼ね備えた姿を見たかったらしい。
それで色々と厳選しまくって、結論としてこの国の王女を狙う事にして、わざわざ危険を冒して一服盛ったようであった。
無駄に行動力のある馬鹿だったともいえるが…‥‥そんな理由で彼女が子供にされたのは流石に可哀想すぎる。
おっさんの欲望を満たすためだけに、下手すれば亡くなっていたかもしれない薬を盛られるとはなぁ…‥‥
「亡くなっていたらそれはそれでよかったようですネ」
「そのようじゃなぁ。王族に訃報があれば、それこそ嘆き悲しむじゃろうが‥‥‥そのお通夜ムードになっていれば王城に紛れ込みやすかったり、あるいは王位継承権争いを激化させ、よりつけ込みやすい隙を作れるなども考えていたのかもしれないのぅ」
子供化すれば目の保養に、死亡すれば組織の貢献にっと、どっちに転んでも良かったようだ。
下手すればバレて捕縛されるというハイリスクもあったようだが…‥‥人間、何か目的に向かって爆走すると、そんな事すらも頭から抜け落ちるようである。
とにもかくにも実験は成功し、目の保養になり、得はした。
成果としても王城の方で混乱は起きるだろうし、その隙に組織に報告すれば、うまくいけば出世できる可能性もあったようだ。
‥‥‥あの襲撃に意味があったのかという疑問があったが…‥‥捜査されて、万が一にでも自分に疑いがかかりそうなことも考え、更に混乱させる目的で送り込んだららしい。
殺戮できればいいし、できなければ自決するようにもしており、証拠を残すつもりはなかった。
暗示の道具で情報も話せない用にしたし、自分自身の犯行であるとバレないだろうと思っていたようだが…‥‥生憎、その余計なひと手間をかけたせいで、俺たちが疑いの目を向けることができたのである。
まぁ、それはそれで、今回の定期報告で伝え、意気揚々と出世できる可能性も考え、ここに来たそうなのだが…‥‥
「…‥‥どうやら、世の中そう上手くはいかなかったようじゃな。すでにある程度、組織の方で掴まれて‥‥‥」
『そうそう、職権乱用、勝手な行動及び身分バレの可能性など、そのようなことをしたからな。組織としては彼を処分せざるを得なくて、ここで実験台になってもらったんだよ!!』
「「「「!?」」」」
突然響き渡ってきたその声に、俺たちは瞬時に身構える。
よく見渡せば、いつの間にか闘技場の上の方に何やら四角い箱のような物が出現しており、そこから声が伝えられているようだ。
『あー、マイクテス、マイクテス…‥‥うん、伝わっているようだな。そちらの声もばっちり聞こえてきたが、まぁおおむねその通りだといっておこう!!』
「‥‥何者だ?」
『んぅ?何者かと言われて、名乗る事も特にないといいたいけれど、名乗っておこう!自分はこのダンジョンのダンジョンコア‥‥‥ああ、でも正式な名前もないから、このダンジョン名で言うのであれば、「ゲズドラン」だ!!』
こちらの声は聞こえているのか、それともこのダンジョンのコアだからか、直ぐに返答が来た。
「というか、ダンジョンコアって喋れたっけ?」
「意思はあるはずじゃからな‥‥‥でも、普通はそうないとは思うのじゃが‥‥‥」
『その通り!!自分はとある組織の手を借りて、ついに自由にやれるようになったんだよ!!そのために、こーんな場所も用意して見たんだからねー!!』
‥‥‥コアもといゲズドランとやらには問いかけてないのだが…‥‥自己主張激しいようだ。
この場にコアっぽい姿はないのに、あの箱から声がするという事は、何処かから飛ばしている声なのかと推測できる。
あと組織と言ったことや、ココでの情報収集で確定というか‥‥‥フェイスマスク確定。どこでも面倒事を起こすなあの組織。
『まぁまぁ、でもここもそれなりによかったんだけど、主任によれば君たちって組織の害になるような存在であると、連絡にあったようなんだよねー。だからこそ、ここで潰す気になったのさ!!』
仮面の組織にとっては、既に俺たちはその組織製の怪物を何度も討伐したことで、邪魔者と確定しているようだ。
で、その情報が回っているらしく、ココのダンジョンコアも組織に味方する様で、俺たちを討伐する気らしい。
『そんなわけで討伐を決めたんだけど、主任とちょっと軽く話し合いをして、3段階に分けてやってみることにしましたー!!できるだけデータも取りたいし、どうせ逃げられないだろうから、せめて楽しんで亡き者になってくれという配慮に感謝してねー!!』
「誰が感謝するんだそんなもの」
今から命を奪うよと相手に言われつつ、奪い方を楽しめるものにするってどういうことなのか、相手の神経が全然わからない。
いや、本当にダンジョンコアという事であれば、常人のような精神とかもない可能性もあるし‥‥‥一気に来るのではなく、3段階という時点で色々とこちらとしてもやれることはある。
『まず1段階目カモォン!!』
元気はつらつそうに、それでいて想像すると無茶苦茶嫌な笑みを浮かべた相手がそう告げると、ごごっと地面が揺れ動く。
何事かと思い、警戒して見れば…‥‥凍り付いたはずの闘技場の奥の方に、新しく大きな鉄格子の扉が出現し、そこから怪物が出てきた。
【ウゴルッボォォォォォ!!】
激しくドラミングをし、唸り声を上げるゴリラ…‥‥いや、眼球が一つしかなく、鍛え上げられたように見える巨人な姿は、単眼の巨人モンスターサイクロプスなどに近いだろう。
全身が毛でおおわれているようだが…‥‥どうやら、ここで作られたモンスターのようだ。
『ダンジョンの生み出す力に、組織の技術、少々のきったない材料を混ぜ込んだ、混合キメラモンスターだぁ!!正式名称は実験体だけど、面倒なのでキメラだ!!』
【ウゴイルッビボボォン!!】
ダンジョンコアの紹介に答えるように、咆哮を上げて激しくドラミングを行うキメラ。
ゴリラっぽいのに巨体すぎるうえに違う顔のせいで、薄気味悪さを感じさせる。
「うわぁ、醜悪そうな怪物ですわね」
「あれはちょっと、触りたくない」
誰も触りたくはないとは思う。よく見ると、毛の部分とか嫌に艶々としているとか、汗みたいなのも流しているし‥‥‥触れたら最悪そうだ。
『あ、先に言っておくとね、頭脳部分はロクデナシの頭で出来ているからね!さっきから状況を見ると、そのロクデナシの事も探していたようだし、見つかってよかったんじゃない?』
「‥‥‥ロクデナシ?さっきから?‥‥‥まさか!?」
ダンジョンコアのその言葉に、俺たちは気が付く。
言われてみれば、あのデッドリーの中身が組織に運ばれていったという情報は得たが‥‥‥それがどうなったのかはわからない。
けれども、このダンジョンそのものであるダンジョンコアが話を聞いておきながら、わざわざそう告げるってことは…‥‥
【グルゴババォ!!】
『そう、君たちが探しているらしい、デッドリー本人を頭脳に埋め込んだキメラ!!人の頭脳を持つのであれば、それだけ賢く立ち回るために利用できそうだし、やっちゃえキメラぁぁぁ!!』
ダンジョンコアの掛け声と共に、キメラが動き出す。
どすどすと足を踏み鳴らして巨体が接近してくるのは、確かに驚異的には見えるのだが…‥‥‥
「‥‥あれ?もしかして‥‥‥ノイン」
「了解デス」
近くに寄って来る前に、素早くノインが動き、腕を機関銃に変形させる。
「ファイヤ」
かちっと引き金を引く音が聞こえると同時に、機関銃が火を噴く。
ズドドドっと実弾を‥‥‥いや、アップデートとやらで改良されたのか、エネルギー弾というものが大量に打ち出され、一気に弾幕を張った。
【ウゴゲゲゲゲゲゲエブゥ!?】
一気に正面から放たれた弾幕に、キメラが押し流されていく。
体が頑丈なのか防いでいたように見えていたのだが、数秒後には貫通して行き、一気に弾幕がどんどん貫いて後退させ‥‥‥撃つのを辞めさせた時には、既に息絶えていたのであった。
「‥‥‥あのさ、敵だと思うけど言っていいか?」
『どうぞ』
「人の頭脳を持っても、それがロクデナシだとか、使い物にならないような人物の者だったら、ほとんど意味ないんじゃ…‥‥?」
『‥‥‥そうみたいだね。うん、今まで作って来たのって制御し切れないような出来損ないが多すぎて、珍しく言う事を聞いたのが彼だったから、全然気が付かなかったや』
「そこは気が付けよ!?」
‥‥‥互いに何と言うか、微妙な空気が漂う。
自信満々に出された怪物が、まさかの見掛け倒しすぎる…‥‥‥もしや仮面の組織、阿保しかいないのではないか?というか、実験を繰り返したりしていれば普通に気が付きそうな…‥あ、いや、ここもしかしてまだデータとかがそんなに集まっていない、新規の組織の施設とかであろうか?
あ、というかデッドリーが埋め込まれた怪物、つい殺っちゃたけど…‥‥どう報告しようか。
『ま、まぁこれもあくまで第1段階!!自分がこの怪物を動かしたいって案をやっただけだからね!!次の第2段階こそが、君たちを葬り去るための手段なのだ!!』
気まずい空気が流れる中、流石に敵ながらもどうにかしたいとおもったのか、ダンジョンコアがそう叫び、次の手に移りだす。
元デッドリーであったキメラはダンジョンそのものが喰らったのか地面に溶け込むように吸収して片付けられたあと、その仕掛けが動き出した。
ブシュウウウウ!!
「っ、ガスか!?」
『あ、毒じゃないから安心してね』
周囲から突然煙が噴き出し、そのガスに一瞬身構えるも、ダンジョンコアがそう告げる。
とはいえ、敵である相手ならば信用できず、素早くノインに指示を出し、全員にガスマスクを着用させる。
‥‥‥このガスマスク、以前の恐ろしく悪臭を放つ怪物の教訓を活かして作ったやつで、こういう時に役に立つのだが‥‥‥
『ああ、でもそんなもので防げるような類じゃない。毒じゃないけど、君たちにはこれが一番効果が抜群だと思うものでね…‥‥』
「ッ!?」
「んっ!?」
「ぬっ!?」
「ぴっ!?」
「どうした!?」
コアが言い切る前に、急に彼女達がそれぞれ膝をついた。
ノイン、カトレア、ゼネ、アナスタシア‥‥‥今この場に呼んでいる彼女達は全員ガスマスクも着用したし、効果はないと思っていたが‥‥‥
「ちょっと、計算ミスですネ‥‥‥これ、皮膚から吸収されるタイプでしたカ。しかも、ゴーレムにも効果的な‥‥‥」
『そうそう、種族に関係なく、まんべんなく効くようにしていてね。まぁ、本当の使い道はこちらは数を増やすためになんだけど…‥‥どうやら相当効いたね』
何事かと思いつつ、寄ろうとすると、さっとノインたちは手をこちらに向け、近づかないでというようなそぶりをした。
「ちょっと不味いですわね…‥‥害は確かに無いっぽいですけれども…‥‥」
「刺激、されるタイプじゃのぅ…‥‥儂、死体でもあるのになぜ今さら効くのかが気になるのじゃが‥」
「考える暇、ちょっと出来ない」
ぶるぶるっと震え始め、彼女達が膝をつき、動けなくなる。
「何をした!!」
『んー?毒ガスじゃなくて、怪物の製造時に利用する、特殊な薬品だよ。ああ、でも変貌させるとかじゃなくて、刺激を与える奴だけどね。呼吸器官から忍び込むんじゃなくて、皮膚から吸収されるタイプのだよ』
「刺激?」
『欲求に対して‥‥‥大抵の生物が本能的に持つというか、残すために持つようなものを刺激する奴で、繁殖用に使用する超強力な…‥‥媚薬だよ』
‥‥‥今、何と?
「分析上、どうやら可能な類に効かせるようですネ‥‥‥‥ゴーレムでもある私に効果が抜群なのは、流石に想定外でしたガ‥‥‥」
『あ、それ実はこっちも想定外。本当はそれで大半を無力化して、残っても戦力差が付けばいいかなと思っていたんだけどねぇ』
「アップデートが、まさか仇になるとは‥‥‥‥思いませんでシタ」
「‥‥‥ノイン、もしかして、今のガスって…‥‥」
…‥‥効果的な事は効果的なのかもしれないが、すごい嫌な予感しかしない。
というか、俺だけ無事なのはどうも前の薬の時の影響で、結構他の薬への耐性ができているらしいのだが‥‥‥もしかして、彼女達、今触れてはいけない状態?
『あはははは!!まさかこれで本当に全員動けなくなるとは思わなかったし、二度目は通じないかもしれないけど、いい方法だねぇ。これ本当は繁殖用の発情薬にもなるんだけど、ここで使えるとはな!!』
げらげらと、腹を抱えて笑っていそうな声にムカッと来るモノがあったが、どうやらそんな場合ではないようだ。
「ぐぬぬぬ…‥‥うるさいですわぁぁ!!」
「この程度、妹に似たような奴を盛られた時に比べればなんともないのじゃぁぁ!!」
「(撃沈)」
約一名、完全に動けなくなったようで地面に倒れているが、カトレアとゼネがぐわっと勢いよく立ち上がり、それぞれ攻撃を放つ。
巨大な蔓と木の根、死の霧が一気に周囲に広がってガスを吹き飛ばし、破壊しつくしていく。
『おおっと!?まさかの勢いで強行突破!?』
「ええ、動けなくなりそうならば、動けるうちにやった方が良いですからネ!!」
コアの驚くような声に対して、ノインはそう返答し、ふらついた足元をなんとか立たせたかと思うと、何やら巨大な砲を持ちだす。
「ついでに今の倒れ込みついでにセンサーで分かりまシタ!!ダンジョンのゲズドラン!!あなたのコアはここで砕きマス!!」
『え?あ、ちょっと、待って!?』
ノインの言葉に身の危険を感じたのか、先ほどまで余裕があったそぶりを失せさせ、ダンジョンコアの焦った声が響き渡る。
そして地面がゴゴっと揺れ動き、また何かをしでかして妨害しようと考えたようだが…‥‥どうやら、割と余裕がない彼女達は待つ気もなかった。
「最新型『魔導砲』エネルギー充填・収束完了!!照準固定!!発射ァァァァ!!」
そう叫んだ次の瞬間、ノインの持っていた巨大な砲の咆哮が輝き、一気に強力なエネルギーが放出された。
その行き先は下の方を向いており、地面を砕いて突き進んでいく。
『え、本当に、正確に、狙ってき、ギャヤアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!?』
直撃したのか、爆風が吹き荒れ、断末魔が響き渡る。
ダンジョンそのものが急に物凄く揺れ動き始め、土埃と共に天井が砕けて落ちてくる。
「‥‥直撃確認。ダンジョンコアの破壊成功」
閃光が消えうせ、揺れが収まると同時に、ぶしゅうううっとものすごい勢いで煙を噴出し終え、淡々とノインがそう口にし‥‥‥そのままばたりと彼女は倒れた。
そして他にも、周囲へ暴力の嵐を吹きまくっていたカトレアとゼネも、力尽きるように垂れ込む。
「お、おい!!大丈夫かお前ら!!」
「大丈夫‥‥‥ではありまセン。ガスの影響と、エネルギーの急速減退でシステムがダウンしまシタ」
「わたくしのほうも‥‥‥理性的な意味で、疲れ果てましたわ‥‥‥」
「儂、単純にちょっとやり過ぎた…‥‥煩悩吹き飛ぶ疲労じゃけど、これ動けぬ…‥‥」
「(すでに撃沈済み)」
‥‥‥どうやら全員凄い疲労感を覚えているらしいが、それでも死ぬようなことはなかったようだ。
ただし、ガスの影響で今俺が触れると不味いようだ。異性に対して何をしでかすのかわからない、暴走状態に近いようだが…‥‥大丈夫なのだろうか?
「えっと、ガスも今はないし…‥‥一応、元凶となり得る奴もふっ飛ばしたが…‥‥」
ダンジョンって確か、コアを破壊すると三日ほどで崩落して無くなるはずである。
なのでまだ、崩落まで時間の猶予はあるだろうが…‥‥さっさと行動しないと、ここにある組織に対する資料もなくなってしまうだろう。
「そう言えば、結局3段階目の奴って何だったんだ?」
先ほどまでの会話のように相手に問いかけるも、返答がないのでやはり絶命したらしい。
とにもかくにも、倒れた彼女達の輸送のためにも、きちんとガスが無い事を確認しつつ、王城にいるはずのティアやルビー、リザを呼び寄せ、彼女達を連れて、あの移動用の陣を利用して帰還することにしたのであった‥‥‥‥
ああ、資料とかも崩落前に王城へ連絡して、そちらの方で回収を進めてもらおう。俺たちの方は何とか出来たのは良いが、この状態だと満足に動けなさそうだからな‥‥‥‥にしても、意外な弱点というか、対策を練られたのは厄介である。
言われてみれば、召喚獣とは言え彼女達もモンスターで生きているからな…‥‥そこを突かれるとは思わなかった。ノインに関して言えばゴーレムだからそれはどうなのかと思ったが、アップデートとやらで変わったらしいし…‥‥今後の課題にしよう。
「ぶはぁっ!!死ぬかと思った!!」
「ま、まさかダンジョンコアがそのままやられるとは‥‥逃亡手段を用意しておいてよかったな」
ディーたちが王城へ帰還し、報告をしている丁度その頃。
そのダンジョンがあった場所とは別の施設内に、なんとか逃れて来た者たちがいた。
「効果的なのは良かったが‥‥‥対策がすぐに練られるだろうし、今後は使えないだろうな」
「もったいないですよねえ。せっかく、我が組織の敵である相手の良い弱点になると思ったのになぁ」
「まぁ、そう言うものだ。一度披露した手は、二度は通じないと思って動かなければ、そもそも組織が成り立たないからな‥‥‥それよりも、重要書類などは持って来ただろうな?」
「ええ、ある程度は。そうしないと、こちらもあのオッサンのように処分されますからねぇ‥‥‥」
あははははっと苦笑しあう仮面の者たちがいたことに、ディーたちは知らない。
ついでに、あの組織のおっさんの本名が、本当にオッサンだったということも知らないだろう。
ただ、彼等にとっても流石に今回のは予想外だったようで、仮面の組織フェイスマスクで今後、利用できそうな無能・欲望を持つ者たちに関する再選別が行われたのは、また別の話である…‥‥‥
「そういうことになるのぅ。しかも、当の本人はまだ生きていたようじゃな」
ダンジョンと思われる場所に作られた施設、蟲毒の実験場ともいえる場所にて、俺たちは捕縛した怪物化している者たちから順当に魂を引っこ抜くなどして、情報を集めていた。
あのおっさんからそこら辺の化け物たちが氷結して拘束されていたので、無駄な抵抗も特になく、場合によっては引っこ抜くよりもお話するだけで、べらべら情報を出してくれたから楽だったのだが‥‥その代償というべきか、相当面倒くさくなるような事実まで得てしまった。
情報によれば、まず大公爵家の息子であったデッドリーとの入れ替わりだが、数カ月前から既にやっていたようである。
仮にも王族の血の引く者をどうやって手中に収めたのかと言えば、情けない理由というべきか、当主がデッドリーを更生させようと一生懸命手を尽くす中で、デッドリー自身は非常に嫌気がさし、時折寝付いた頃合いに外にでて娼館などで遊び惚けていたようだ。
で、その情報が娼館の人達から流出し…‥‥最悪な事に、とある組織‥‥‥仮面の組織フェイスマスクに伝わった。
一応、大公爵家の息子という事で、情報を色々得られるかと思って娼館で手の者をいれて懐柔したらしいが‥‥‥いかんせん、デッドリー本人が馬鹿すぎたというか、ろくな情報を得られていなかったらしい。
多少改善して良い息子にすればどうにか重要な情報なども聞き出していけるのかと思い、わざわざその更生に対して手助けもしていたようだ。
けれども、デッドリーの曲がり具合は流石に酷く、組織の方でもここまでのロクデナシはむしろ実験材料にした方が良いんじゃないかという案が出され、採択された。
とはいえ、流石に大公爵家の息子が行方不明になると騒ぎになるので‥‥‥狂気の手段をとった。
それが、デッドリー本人の面の皮というか、全身の皮を剥ぎ取り、特殊な加工を施して着用可能にして、代わりの者に着せるという手段である。
まぁ、単純に言えば、そのままのデッドリーでは重要な情報も手に入れられない立場だろうし、むしろ代わりの人でやってしまえば手に入れらるようになると考えてらしいが…‥‥それが実現して、あのおっさんが中身になって、更生したふりをして過ごしていたようだ。
大公爵家当主は息子が更生したと思って喜ぶだろうし、更生したふりで過ごしていけば、大公爵家ならではの情報も手に入れらるかもしれない、場合によっては他の貴族家でも同様の手口を行い、より組織にとって有益な情報集めを国の内側から行おうという計画が進行していたようなのだ。
なお、中身のデッドリー本人自体は、何処かへ運ばれたらしい‥‥‥‥すでに材料扱いされたか、まだ生きているか‥‥‥どうなんだろうか?
その中でおっさんは、息子のふりをしてある程度時間が経過したところで更生した様子を見せて、当主を喜ばせていたのは良いのだが…‥‥何と言うか、大公爵家という立場は王族の血を引いているので、できれば血を残した方が良いという考え方もある。
なので、更生したとあれば評判も良くなるだろうし、良い貴族家の令嬢との縁談も考えられるという事で、その事に関してもごまかす手段を持ちつつ、ぐふふふっと笑っていたところで…‥‥おそらくは組織の方にとっても頭から抜けていたであろうことがそこで問題になってしまった。
「…‥こやつ、重病じゃったようじゃ」
「重病?見た感じ、既に体が尺取虫になっている以外には、特に病気になっているようには見えないのだが‥‥‥」
「違うのじゃ。性癖の方じゃ」
‥‥‥すでにあの第3王子が色々と問題のある子供好きではあるが、あれはまだ軽度のようだ。
だが、そのおっさんの方は重度だったようで、まともに成長した貴族家の子女は対象外であり、非常に嫌だったようだ。
それをどうにかできないかと考えている中で‥‥‥‥ふと、とある情報が組織の定期連絡の方から入って来た。
「それが、第3王子のダンジョン挑戦と、秘薬入手に関してのものじゃったようじゃな」
「王子たちの動向を探れるようにして、万が一の時に王族を捕らえようとしていた可能性もあったのだろうが…‥‥それを利用したのか」
王子が手に入れたのは、老人を子供にまで若返らせるという秘薬。
組織の方でも実はすでに入手していたようだが、その話しを耳にしておっさんは思いついた。
若返りの秘薬というようだが、本当は違うのではないか、子供にするだけの薬ではないのかと。
それを利用すれば、もしかするとその婚約話に関しても、ちょうどいいことにできるのではないかと。
とはいえ、おっさんの地位は組織内ではそこそこまでしかなく、貴重な秘薬を利用することはできない。
ならば、盗んでしまって、それを使えばいいんだという思考に至ったようだ。
そこから、おっさんの動きは無駄に早かった。
組織にはいつかこの生活はぼろが出る可能性があるので、念のためにごまかせるような道具が無いかと打診し、ならばこれでどうにかごまかせばいいという事で、暗示用の魔道具を融通してもらい、それを利用したのである。
おっさんの地位は微妙ではあったが、その道具は秘薬よりも貴重ではなく、既に旧型だったそうなので問題なく受け取れ、あとは色々と手を回した。新型の方が危険度が高くなるが…‥‥そちらはここら辺の怪物たちの中には情報もないので、今後調べる必要がある。
まずは、更生教育の中で聞いたものや組織から聞いた異なる犯罪組織についての情報を集め、自ら動いて暗示用の魔道具を用いて乗っ取った。
そして、さらにその者たちを利用して王子から薬を奪ったのは良いのだが‥‥‥それの安全性がいまいちわからない。もし、予想通りの子供化ではなく、本当に超若返りの薬であれば入手した意味がないのだ。
どうすればいいのかと考えた挙句…‥‥実験対象として、第1王女を狙ったようだ。
「誰でも実験台に出来そうだったが…‥‥おっさんの理想は、王女様の幼女化した姿だったようデス」
「そんな理由で!?」
子供化させる薬だと仮定するのであれば、その子供化した際にできれば目の保養になるような、可愛らしいというか美しいというか、その両方を兼ね備えた姿を見たかったらしい。
それで色々と厳選しまくって、結論としてこの国の王女を狙う事にして、わざわざ危険を冒して一服盛ったようであった。
無駄に行動力のある馬鹿だったともいえるが…‥‥そんな理由で彼女が子供にされたのは流石に可哀想すぎる。
おっさんの欲望を満たすためだけに、下手すれば亡くなっていたかもしれない薬を盛られるとはなぁ…‥‥
「亡くなっていたらそれはそれでよかったようですネ」
「そのようじゃなぁ。王族に訃報があれば、それこそ嘆き悲しむじゃろうが‥‥‥そのお通夜ムードになっていれば王城に紛れ込みやすかったり、あるいは王位継承権争いを激化させ、よりつけ込みやすい隙を作れるなども考えていたのかもしれないのぅ」
子供化すれば目の保養に、死亡すれば組織の貢献にっと、どっちに転んでも良かったようだ。
下手すればバレて捕縛されるというハイリスクもあったようだが…‥‥人間、何か目的に向かって爆走すると、そんな事すらも頭から抜け落ちるようである。
とにもかくにも実験は成功し、目の保養になり、得はした。
成果としても王城の方で混乱は起きるだろうし、その隙に組織に報告すれば、うまくいけば出世できる可能性もあったようだ。
‥‥‥あの襲撃に意味があったのかという疑問があったが…‥‥捜査されて、万が一にでも自分に疑いがかかりそうなことも考え、更に混乱させる目的で送り込んだららしい。
殺戮できればいいし、できなければ自決するようにもしており、証拠を残すつもりはなかった。
暗示の道具で情報も話せない用にしたし、自分自身の犯行であるとバレないだろうと思っていたようだが…‥‥生憎、その余計なひと手間をかけたせいで、俺たちが疑いの目を向けることができたのである。
まぁ、それはそれで、今回の定期報告で伝え、意気揚々と出世できる可能性も考え、ここに来たそうなのだが…‥‥
「…‥‥どうやら、世の中そう上手くはいかなかったようじゃな。すでにある程度、組織の方で掴まれて‥‥‥」
『そうそう、職権乱用、勝手な行動及び身分バレの可能性など、そのようなことをしたからな。組織としては彼を処分せざるを得なくて、ここで実験台になってもらったんだよ!!』
「「「「!?」」」」
突然響き渡ってきたその声に、俺たちは瞬時に身構える。
よく見渡せば、いつの間にか闘技場の上の方に何やら四角い箱のような物が出現しており、そこから声が伝えられているようだ。
『あー、マイクテス、マイクテス…‥‥うん、伝わっているようだな。そちらの声もばっちり聞こえてきたが、まぁおおむねその通りだといっておこう!!』
「‥‥何者だ?」
『んぅ?何者かと言われて、名乗る事も特にないといいたいけれど、名乗っておこう!自分はこのダンジョンのダンジョンコア‥‥‥ああ、でも正式な名前もないから、このダンジョン名で言うのであれば、「ゲズドラン」だ!!』
こちらの声は聞こえているのか、それともこのダンジョンのコアだからか、直ぐに返答が来た。
「というか、ダンジョンコアって喋れたっけ?」
「意思はあるはずじゃからな‥‥‥でも、普通はそうないとは思うのじゃが‥‥‥」
『その通り!!自分はとある組織の手を借りて、ついに自由にやれるようになったんだよ!!そのために、こーんな場所も用意して見たんだからねー!!』
‥‥‥コアもといゲズドランとやらには問いかけてないのだが…‥‥自己主張激しいようだ。
この場にコアっぽい姿はないのに、あの箱から声がするという事は、何処かから飛ばしている声なのかと推測できる。
あと組織と言ったことや、ココでの情報収集で確定というか‥‥‥フェイスマスク確定。どこでも面倒事を起こすなあの組織。
『まぁまぁ、でもここもそれなりによかったんだけど、主任によれば君たちって組織の害になるような存在であると、連絡にあったようなんだよねー。だからこそ、ここで潰す気になったのさ!!』
仮面の組織にとっては、既に俺たちはその組織製の怪物を何度も討伐したことで、邪魔者と確定しているようだ。
で、その情報が回っているらしく、ココのダンジョンコアも組織に味方する様で、俺たちを討伐する気らしい。
『そんなわけで討伐を決めたんだけど、主任とちょっと軽く話し合いをして、3段階に分けてやってみることにしましたー!!できるだけデータも取りたいし、どうせ逃げられないだろうから、せめて楽しんで亡き者になってくれという配慮に感謝してねー!!』
「誰が感謝するんだそんなもの」
今から命を奪うよと相手に言われつつ、奪い方を楽しめるものにするってどういうことなのか、相手の神経が全然わからない。
いや、本当にダンジョンコアという事であれば、常人のような精神とかもない可能性もあるし‥‥‥一気に来るのではなく、3段階という時点で色々とこちらとしてもやれることはある。
『まず1段階目カモォン!!』
元気はつらつそうに、それでいて想像すると無茶苦茶嫌な笑みを浮かべた相手がそう告げると、ごごっと地面が揺れ動く。
何事かと思い、警戒して見れば…‥‥凍り付いたはずの闘技場の奥の方に、新しく大きな鉄格子の扉が出現し、そこから怪物が出てきた。
【ウゴルッボォォォォォ!!】
激しくドラミングをし、唸り声を上げるゴリラ…‥‥いや、眼球が一つしかなく、鍛え上げられたように見える巨人な姿は、単眼の巨人モンスターサイクロプスなどに近いだろう。
全身が毛でおおわれているようだが…‥‥どうやら、ここで作られたモンスターのようだ。
『ダンジョンの生み出す力に、組織の技術、少々のきったない材料を混ぜ込んだ、混合キメラモンスターだぁ!!正式名称は実験体だけど、面倒なのでキメラだ!!』
【ウゴイルッビボボォン!!】
ダンジョンコアの紹介に答えるように、咆哮を上げて激しくドラミングを行うキメラ。
ゴリラっぽいのに巨体すぎるうえに違う顔のせいで、薄気味悪さを感じさせる。
「うわぁ、醜悪そうな怪物ですわね」
「あれはちょっと、触りたくない」
誰も触りたくはないとは思う。よく見ると、毛の部分とか嫌に艶々としているとか、汗みたいなのも流しているし‥‥‥触れたら最悪そうだ。
『あ、先に言っておくとね、頭脳部分はロクデナシの頭で出来ているからね!さっきから状況を見ると、そのロクデナシの事も探していたようだし、見つかってよかったんじゃない?』
「‥‥‥ロクデナシ?さっきから?‥‥‥まさか!?」
ダンジョンコアのその言葉に、俺たちは気が付く。
言われてみれば、あのデッドリーの中身が組織に運ばれていったという情報は得たが‥‥‥それがどうなったのかはわからない。
けれども、このダンジョンそのものであるダンジョンコアが話を聞いておきながら、わざわざそう告げるってことは…‥‥
【グルゴババォ!!】
『そう、君たちが探しているらしい、デッドリー本人を頭脳に埋め込んだキメラ!!人の頭脳を持つのであれば、それだけ賢く立ち回るために利用できそうだし、やっちゃえキメラぁぁぁ!!』
ダンジョンコアの掛け声と共に、キメラが動き出す。
どすどすと足を踏み鳴らして巨体が接近してくるのは、確かに驚異的には見えるのだが…‥‥‥
「‥‥あれ?もしかして‥‥‥ノイン」
「了解デス」
近くに寄って来る前に、素早くノインが動き、腕を機関銃に変形させる。
「ファイヤ」
かちっと引き金を引く音が聞こえると同時に、機関銃が火を噴く。
ズドドドっと実弾を‥‥‥いや、アップデートとやらで改良されたのか、エネルギー弾というものが大量に打ち出され、一気に弾幕を張った。
【ウゴゲゲゲゲゲゲエブゥ!?】
一気に正面から放たれた弾幕に、キメラが押し流されていく。
体が頑丈なのか防いでいたように見えていたのだが、数秒後には貫通して行き、一気に弾幕がどんどん貫いて後退させ‥‥‥撃つのを辞めさせた時には、既に息絶えていたのであった。
「‥‥‥あのさ、敵だと思うけど言っていいか?」
『どうぞ』
「人の頭脳を持っても、それがロクデナシだとか、使い物にならないような人物の者だったら、ほとんど意味ないんじゃ…‥‥?」
『‥‥‥そうみたいだね。うん、今まで作って来たのって制御し切れないような出来損ないが多すぎて、珍しく言う事を聞いたのが彼だったから、全然気が付かなかったや』
「そこは気が付けよ!?」
‥‥‥互いに何と言うか、微妙な空気が漂う。
自信満々に出された怪物が、まさかの見掛け倒しすぎる…‥‥‥もしや仮面の組織、阿保しかいないのではないか?というか、実験を繰り返したりしていれば普通に気が付きそうな…‥あ、いや、ここもしかしてまだデータとかがそんなに集まっていない、新規の組織の施設とかであろうか?
あ、というかデッドリーが埋め込まれた怪物、つい殺っちゃたけど…‥‥どう報告しようか。
『ま、まぁこれもあくまで第1段階!!自分がこの怪物を動かしたいって案をやっただけだからね!!次の第2段階こそが、君たちを葬り去るための手段なのだ!!』
気まずい空気が流れる中、流石に敵ながらもどうにかしたいとおもったのか、ダンジョンコアがそう叫び、次の手に移りだす。
元デッドリーであったキメラはダンジョンそのものが喰らったのか地面に溶け込むように吸収して片付けられたあと、その仕掛けが動き出した。
ブシュウウウウ!!
「っ、ガスか!?」
『あ、毒じゃないから安心してね』
周囲から突然煙が噴き出し、そのガスに一瞬身構えるも、ダンジョンコアがそう告げる。
とはいえ、敵である相手ならば信用できず、素早くノインに指示を出し、全員にガスマスクを着用させる。
‥‥‥このガスマスク、以前の恐ろしく悪臭を放つ怪物の教訓を活かして作ったやつで、こういう時に役に立つのだが‥‥‥
『ああ、でもそんなもので防げるような類じゃない。毒じゃないけど、君たちにはこれが一番効果が抜群だと思うものでね…‥‥』
「ッ!?」
「んっ!?」
「ぬっ!?」
「ぴっ!?」
「どうした!?」
コアが言い切る前に、急に彼女達がそれぞれ膝をついた。
ノイン、カトレア、ゼネ、アナスタシア‥‥‥今この場に呼んでいる彼女達は全員ガスマスクも着用したし、効果はないと思っていたが‥‥‥
「ちょっと、計算ミスですネ‥‥‥これ、皮膚から吸収されるタイプでしたカ。しかも、ゴーレムにも効果的な‥‥‥」
『そうそう、種族に関係なく、まんべんなく効くようにしていてね。まぁ、本当の使い道はこちらは数を増やすためになんだけど…‥‥どうやら相当効いたね』
何事かと思いつつ、寄ろうとすると、さっとノインたちは手をこちらに向け、近づかないでというようなそぶりをした。
「ちょっと不味いですわね…‥‥害は確かに無いっぽいですけれども…‥‥」
「刺激、されるタイプじゃのぅ…‥‥儂、死体でもあるのになぜ今さら効くのかが気になるのじゃが‥」
「考える暇、ちょっと出来ない」
ぶるぶるっと震え始め、彼女達が膝をつき、動けなくなる。
「何をした!!」
『んー?毒ガスじゃなくて、怪物の製造時に利用する、特殊な薬品だよ。ああ、でも変貌させるとかじゃなくて、刺激を与える奴だけどね。呼吸器官から忍び込むんじゃなくて、皮膚から吸収されるタイプのだよ』
「刺激?」
『欲求に対して‥‥‥大抵の生物が本能的に持つというか、残すために持つようなものを刺激する奴で、繁殖用に使用する超強力な…‥‥媚薬だよ』
‥‥‥今、何と?
「分析上、どうやら可能な類に効かせるようですネ‥‥‥‥ゴーレムでもある私に効果が抜群なのは、流石に想定外でしたガ‥‥‥」
『あ、それ実はこっちも想定外。本当はそれで大半を無力化して、残っても戦力差が付けばいいかなと思っていたんだけどねぇ』
「アップデートが、まさか仇になるとは‥‥‥‥思いませんでシタ」
「‥‥‥ノイン、もしかして、今のガスって…‥‥」
…‥‥効果的な事は効果的なのかもしれないが、すごい嫌な予感しかしない。
というか、俺だけ無事なのはどうも前の薬の時の影響で、結構他の薬への耐性ができているらしいのだが‥‥‥もしかして、彼女達、今触れてはいけない状態?
『あはははは!!まさかこれで本当に全員動けなくなるとは思わなかったし、二度目は通じないかもしれないけど、いい方法だねぇ。これ本当は繁殖用の発情薬にもなるんだけど、ここで使えるとはな!!』
げらげらと、腹を抱えて笑っていそうな声にムカッと来るモノがあったが、どうやらそんな場合ではないようだ。
「ぐぬぬぬ…‥‥うるさいですわぁぁ!!」
「この程度、妹に似たような奴を盛られた時に比べればなんともないのじゃぁぁ!!」
「(撃沈)」
約一名、完全に動けなくなったようで地面に倒れているが、カトレアとゼネがぐわっと勢いよく立ち上がり、それぞれ攻撃を放つ。
巨大な蔓と木の根、死の霧が一気に周囲に広がってガスを吹き飛ばし、破壊しつくしていく。
『おおっと!?まさかの勢いで強行突破!?』
「ええ、動けなくなりそうならば、動けるうちにやった方が良いですからネ!!」
コアの驚くような声に対して、ノインはそう返答し、ふらついた足元をなんとか立たせたかと思うと、何やら巨大な砲を持ちだす。
「ついでに今の倒れ込みついでにセンサーで分かりまシタ!!ダンジョンのゲズドラン!!あなたのコアはここで砕きマス!!」
『え?あ、ちょっと、待って!?』
ノインの言葉に身の危険を感じたのか、先ほどまで余裕があったそぶりを失せさせ、ダンジョンコアの焦った声が響き渡る。
そして地面がゴゴっと揺れ動き、また何かをしでかして妨害しようと考えたようだが…‥‥どうやら、割と余裕がない彼女達は待つ気もなかった。
「最新型『魔導砲』エネルギー充填・収束完了!!照準固定!!発射ァァァァ!!」
そう叫んだ次の瞬間、ノインの持っていた巨大な砲の咆哮が輝き、一気に強力なエネルギーが放出された。
その行き先は下の方を向いており、地面を砕いて突き進んでいく。
『え、本当に、正確に、狙ってき、ギャヤアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!?』
直撃したのか、爆風が吹き荒れ、断末魔が響き渡る。
ダンジョンそのものが急に物凄く揺れ動き始め、土埃と共に天井が砕けて落ちてくる。
「‥‥直撃確認。ダンジョンコアの破壊成功」
閃光が消えうせ、揺れが収まると同時に、ぶしゅうううっとものすごい勢いで煙を噴出し終え、淡々とノインがそう口にし‥‥‥そのままばたりと彼女は倒れた。
そして他にも、周囲へ暴力の嵐を吹きまくっていたカトレアとゼネも、力尽きるように垂れ込む。
「お、おい!!大丈夫かお前ら!!」
「大丈夫‥‥‥ではありまセン。ガスの影響と、エネルギーの急速減退でシステムがダウンしまシタ」
「わたくしのほうも‥‥‥理性的な意味で、疲れ果てましたわ‥‥‥」
「儂、単純にちょっとやり過ぎた…‥‥煩悩吹き飛ぶ疲労じゃけど、これ動けぬ…‥‥」
「(すでに撃沈済み)」
‥‥‥どうやら全員凄い疲労感を覚えているらしいが、それでも死ぬようなことはなかったようだ。
ただし、ガスの影響で今俺が触れると不味いようだ。異性に対して何をしでかすのかわからない、暴走状態に近いようだが…‥‥大丈夫なのだろうか?
「えっと、ガスも今はないし…‥‥一応、元凶となり得る奴もふっ飛ばしたが…‥‥」
ダンジョンって確か、コアを破壊すると三日ほどで崩落して無くなるはずである。
なのでまだ、崩落まで時間の猶予はあるだろうが…‥‥さっさと行動しないと、ここにある組織に対する資料もなくなってしまうだろう。
「そう言えば、結局3段階目の奴って何だったんだ?」
先ほどまでの会話のように相手に問いかけるも、返答がないのでやはり絶命したらしい。
とにもかくにも、倒れた彼女達の輸送のためにも、きちんとガスが無い事を確認しつつ、王城にいるはずのティアやルビー、リザを呼び寄せ、彼女達を連れて、あの移動用の陣を利用して帰還することにしたのであった‥‥‥‥
ああ、資料とかも崩落前に王城へ連絡して、そちらの方で回収を進めてもらおう。俺たちの方は何とか出来たのは良いが、この状態だと満足に動けなさそうだからな‥‥‥‥にしても、意外な弱点というか、対策を練られたのは厄介である。
言われてみれば、召喚獣とは言え彼女達もモンスターで生きているからな…‥‥そこを突かれるとは思わなかった。ノインに関して言えばゴーレムだからそれはどうなのかと思ったが、アップデートとやらで変わったらしいし…‥‥今後の課題にしよう。
「ぶはぁっ!!死ぬかと思った!!」
「ま、まさかダンジョンコアがそのままやられるとは‥‥逃亡手段を用意しておいてよかったな」
ディーたちが王城へ帰還し、報告をしている丁度その頃。
そのダンジョンがあった場所とは別の施設内に、なんとか逃れて来た者たちがいた。
「効果的なのは良かったが‥‥‥対策がすぐに練られるだろうし、今後は使えないだろうな」
「もったいないですよねえ。せっかく、我が組織の敵である相手の良い弱点になると思ったのになぁ」
「まぁ、そう言うものだ。一度披露した手は、二度は通じないと思って動かなければ、そもそも組織が成り立たないからな‥‥‥それよりも、重要書類などは持って来ただろうな?」
「ええ、ある程度は。そうしないと、こちらもあのオッサンのように処分されますからねぇ‥‥‥」
あははははっと苦笑しあう仮面の者たちがいたことに、ディーたちは知らない。
ついでに、あの組織のおっさんの本名が、本当にオッサンだったということも知らないだろう。
ただ、彼等にとっても流石に今回のは予想外だったようで、仮面の組織フェイスマスクで今後、利用できそうな無能・欲望を持つ者たちに関する再選別が行われたのは、また別の話である…‥‥‥
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