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198 一応、用意はあったりする

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‥‥‥ダンジョン内に作られていた仮面の組織フェイスマスクの施設。

 王城に報告し、後は城の方で色々と派遣して、崩落前に回収することにしつつ…‥‥

「今はこっちなんだよなぁ…‥‥リザ、どうにかできるか?」
「任せるでありんすよ」

 死屍累々のように、それぞれぐったりと倒れ伏すノインたちを見ながら問いかけると、彼女は自信満々に答えた。

 
 今回の騒動の中で、発覚した意外な弱点というべきか、ガス攻撃。

 毒ではなく媚薬‥‥‥まぁ、要は本能的な部分を攻撃するという、単純ながらも恐ろしい攻撃を喰らい、動けなくなっているのである。

 俺には効いていなかったが、おそらくは前に組織製の怪しい薬を打たれた際に何かしらの耐性が付いていたとかあるようだが…‥‥それはどうでもいいとして、今の彼女達はちょっと動けない状態。

 うずくというべきか、そのせいで行動しづらく、元々治療できる面子の大半だから少しやりようが無いので…‥‥

「直ぐに抜けきらないだろうし、ここはちょっと荒療治でありんすよ」

 そう言うと、リザは彼女達の足元に向かい、施術を行った。

ゴリィッツ!!ギリィッ!!グリィッ!!ゴグリィ!!
「ガッ!?」
「ふわっ!?」
「いぎっ!?」
「へぶっ!?」
「「「「アアアアアア―――ッ!?」」」」

「…‥‥良し、ひとまずはこれで疼きなどは収まるはずでありんす」
「疼きは収まったかもしれないけど、意識もまた奪ってないか、コレ?」

 彼女達の痛覚はそれぞれ異なる部分もあるだろうが‥‥‥どうやら相当痛かったようで、全員びくびくと軽く痙攣して気絶していたのであった。絵面的に結構酷いことになっているなぁ…‥‥


 とにもかくにも、これで運ぶこともできるので、一旦リリスの箱の中に全員を入れ、俺たちは実家の方へ帰還することにした。

 王女の方も早く戻したいのだが、こちらはこちらで出来そうなノインが完全にダウン中なので、まだ先になりそうである。

 なので、王城でとどまっていても良いのだが‥‥‥養生して作れるようにするには家の方の自室が良いと判断したのだ。

「治療というか、薬に関してもできれば見つかると良いんだけどなぁ。それがあれば、それを元にできるって言っていたからな」
「出来るだけ、それの発見をいそがせましゅよ」

 幼女化しながらも、しっかりと王女としての能力はあるのか、そう答える第1王女ミウ

 ついでにうんうんと頷く王子たちもいるが、ふと気が付けば第3王子エルディムの姿が無かった。

「あれ?エルディムは?」
「ん?あの弟なら、さっきの報告後にすぐに向かった。何しろ、この件を掘り返せば、あいつが持ってきた薬が原因とも言えるからな」
「責任感を感じているようだし、結構すぐに見つかると思うよ。まぁ、僕らは僕等でやるべきことはあるんだけどね…‥‥」

…‥‥王子たちがやるべきことは、国と共に崩落前の施設捜索もあるのだが、それとは別件で大公爵家の方に話をしに行くというのがある。

 何しろ、あの大公爵家の子息が入れ替わっていたからな‥‥‥本人は組織の材料にされ、その皮が剥ぎ取られていたというのは、相当強烈すぎる情報だっただろう。

 あと、王子たちにとって叔父にあたる当主だが、この件で心がやられそうなのもあるんだよなぁ‥‥‥だからこそ、血縁者である王子たちが報告しつつ、慰めに向かうようだ。


 色々と後味が悪い部分もありつつ、俺たちは一旦実家へ戻ることにしたのであった…‥‥










‥‥‥実家へ戻った後、直ぐに自室へ向かい、ノインの風邪後に作られた、病人用の部屋へ寝かせていく。

 こういう時には便利だし、何時でも全員倒れ込んでも大丈夫なように備えていたのは良かっただろう。

 ただちょっと気になるとすれば、明らかに今の人数以上に対応できるほどの空間とベッドの数があったが‥‥‥予備だと思いたい。今後増えるとか、予想されている可能性もあるが…‥‥無いと思う。多分。

「というか、未だに軽く痙攣して気絶ってのもどうなんだろうか」
「結構強力なツボを押したでありんすからね。薬品だろうと何だろうと、これで一晩休めば大丈夫なはずでありんすよ」

 まぁ、これで薬とかも大丈夫そうだが…‥‥今回の件で気になる事もあった。

 騒動原因の組織は、おなじみになってほしくなかった仮面の組織フェイスマスクではあったが、あの施設内にあったものを見ると、どうもおかしく思えるところがある。

 メイドゴーレムであるノインに効いたガスや、元々怪物を作っていたりするのに、蟲毒のような方法で怪物製造を行っていたが‥‥‥技術が進む速度が妙である。

 最初の遭遇のような、あの怪物はまだ人型も保てないようなというか、ぐじゅっとした者ではあったが、人を怪物に仕立て上げるような薬というのは、早く作れるものなのだろうか?

 キメラとか、他の怪物の集合体とかであれば、あれはまだ混ぜ合わせるだけで済むとは思うが…‥‥


「少なくとも、前よりは優れているような…?」

 俺が攫われ、打たれた時の薬。

 あれも怪物になるような薬だったらしいが、自我を食いつぶすような危険な代物。

 だが、今回見た怪物たちは自我を失った者もいたのだが、驚くべきことに人であった意識を持つ者たちもいたのだ。

 意識を食いつぶさずに、残すような怪物化…‥‥そこまで、技術って早く進歩するものなのだろうか?

「あとは遠距離からの声を届ける手法や、ノインに効いたガスなど‥‥‥色々妙だよなぁ」

 とはいえ、考えたところで俺にわかるわけもない。

 ノインのような、おかしい技術力を考え付く頭があれば理解できただろうが…‥‥あいにくながら、そうでもないからな。

「その件もきちんと考えないとなぁ…‥‥」

 とにもかくにも、今優先すべきことは彼女達の回復を願うのみであろう。

 まだちょっと軽く痙攣しているが、一晩経てば治るらしいし‥‥‥それまでは離れておくのが吉かもしれない。


‥‥‥まぁ、離れずに看病したほうが良いかもしれないが、あのガスってコアの話しぶりからすると、元々は繁殖用に使われる物だろうし‥‥‥薬が原因で、無理やり襲うようなことはあってほしくないからな。

 本人たちの気持ちに反して、流されるままってのもダメだからなぁ‥‥‥それもあって、彼女達は根性で抵抗して相手を壊滅させたんだろうし、その気持ちを考えないといけない。

「まぁ、流石にあの状況で致すような真似をしてはいけないってモラルを優先しただけだろうしな」

 一番当り前の方を彼女達は実行したともいえるし、その頑張りも褒めてあげたいところ。

 苦労も多かっただろうし‥‥‥今はゆっくりと寝かせてあげるのが良いだろう。

 っと、ふと俺の方にも眠気がやって来た。

 無事に帰ってこられたのもあるし、ようやく終えたというような感じで気が抜けたというか‥‥‥欠伸がでる。


「‥‥‥ついでにちょっと、眠ってもいいよな?」

 この部屋広いし、ベッドも予備があるし…‥‥一つぐらい借りて熟睡しても良いだろう。

 彼女達も気絶しながらも寝ているようだし、問題ないはず。

 そう考えつつ、ベッドを用意してもらい、俺もそこで寝かせてもらうことにしたのであった‥‥‥

「主殿、拙者たちもベッドの寝心地を確認するために寝てもいいでござるか?」
「まぁ、全員分はあるからな‥‥‥今後使用することも多いだろうし、今のうちに全員で確認しておくか‥‥‥」

 雑魚寝というか、全員で一部屋で寝るってのもそうそうないからな。卒業後はあるかもしれんが、今は寄り合えず気にせずに寝よう…‥‥風呂の時よりも安心できるし。




‥‥だが、その考えは甘かったことを俺は後で身をもって思い知らされるのだが、その事を今は知る事もなく、眠りにつくのであった。
 
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