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5.想いの色
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「そなた一人では難しかろう」
縁結びなんて、咲耶子には荷が勝ちすぎる。
正直にそう言ったら、神様はなにを当たり前のことをと不思議そうな顔をした。
「そもそもどうやって番わせるのだ? そなたがふらっと行って、相手がまともにとりあうとも思えぬが」
床板の乾拭きをする手が、止まりそうになる。
(とりあってもらえない小娘に頼んだのは神様でしょう)
ネル地の雑巾を裏返して、咲耶子は作業を続けた。
「氏子さんのお家の事情、父は詳しく教えてくれないし。だから私には……」
「我が手を貸してやろう」
無理だと言いかけた咲耶子の言葉に、神様がさらりと重ねる。
「手を貸す?」
「ああ、そなた一人では難しい」
(なら最初からそう言ってほしかったわ)
昨夜悩んだ自分がかわいそうになる。
「でもどうやって?」
この神様は少しズレてる。
何を言い出すことか、ちょっと怖い。
「縁結びを願う者自ら、この社に集まってくれば良いであろう?」
こともなげに神様はおっしゃるけど、お一日とか十五日とかでさえ参拝は減っている。
「でも神様、うちは縁結びのご利益があるわけじゃないから」
「なにを言う。我はこの地の氏神だ。この地に住まう者への加護に死角はないぞ」
地元の人がここへ来て、神様に縁結びを頼んだらなんとかしてやるってことなんだろう。
でもそういう縁結びの祈願って、やっぱり出雲とか有名なお社に行くと思う。
(その方がご利益ありそうじゃない?)
「縁結びの守り袋はなかったな? 急いで作れ」
参拝の方のために用意するお守りに、確かに縁結びのものはない。
家内安全、健康長寿、安産祈願、武運長久の四つ。
そしてここは八幡神社だから、最後の武運長久が一番得意ジャンルだ。
(それに作れって。お裁縫は苦手なのに)
お守り袋は絹地だし、糸も絹を使わなきゃいけない。
それなりに原価がかかる。
慎重にお針を運んだら咲耶子の腕でもなんとかなるけど、できたら避けたい。
「縁結びまでお願いできるって、私だって知らなかったのよ? まず神様の守備範囲が広いって、みんなに知ってもらわないと」
「そなたは本当にものを知らぬな」
琥珀色の目を呆れたように細めて、神様はやれやれと首を振る。
「仕方ない。ではそなたに我の力を少しだけ貸してやろう」
白い狩衣の腕で、神様はすっぽり咲耶子を覆う。
菊のすずしい香気に包まれた。
(なに……。ふわふわする)
いい香りの気が、咲耶子の身体を満たしてゆくのがわかる。
(これが神様の神気なんだわ)
「想い合う者は常盤、想われる者は薄紅、想う者は山吹。人の想いの矢の色が視えるようにしてやった」
神様はちょっと得意そうなドヤ顔をしている。
(人の心が視えるの?)
すぐには信じられなかった。
縁結びなんて、咲耶子には荷が勝ちすぎる。
正直にそう言ったら、神様はなにを当たり前のことをと不思議そうな顔をした。
「そもそもどうやって番わせるのだ? そなたがふらっと行って、相手がまともにとりあうとも思えぬが」
床板の乾拭きをする手が、止まりそうになる。
(とりあってもらえない小娘に頼んだのは神様でしょう)
ネル地の雑巾を裏返して、咲耶子は作業を続けた。
「氏子さんのお家の事情、父は詳しく教えてくれないし。だから私には……」
「我が手を貸してやろう」
無理だと言いかけた咲耶子の言葉に、神様がさらりと重ねる。
「手を貸す?」
「ああ、そなた一人では難しい」
(なら最初からそう言ってほしかったわ)
昨夜悩んだ自分がかわいそうになる。
「でもどうやって?」
この神様は少しズレてる。
何を言い出すことか、ちょっと怖い。
「縁結びを願う者自ら、この社に集まってくれば良いであろう?」
こともなげに神様はおっしゃるけど、お一日とか十五日とかでさえ参拝は減っている。
「でも神様、うちは縁結びのご利益があるわけじゃないから」
「なにを言う。我はこの地の氏神だ。この地に住まう者への加護に死角はないぞ」
地元の人がここへ来て、神様に縁結びを頼んだらなんとかしてやるってことなんだろう。
でもそういう縁結びの祈願って、やっぱり出雲とか有名なお社に行くと思う。
(その方がご利益ありそうじゃない?)
「縁結びの守り袋はなかったな? 急いで作れ」
参拝の方のために用意するお守りに、確かに縁結びのものはない。
家内安全、健康長寿、安産祈願、武運長久の四つ。
そしてここは八幡神社だから、最後の武運長久が一番得意ジャンルだ。
(それに作れって。お裁縫は苦手なのに)
お守り袋は絹地だし、糸も絹を使わなきゃいけない。
それなりに原価がかかる。
慎重にお針を運んだら咲耶子の腕でもなんとかなるけど、できたら避けたい。
「縁結びまでお願いできるって、私だって知らなかったのよ? まず神様の守備範囲が広いって、みんなに知ってもらわないと」
「そなたは本当にものを知らぬな」
琥珀色の目を呆れたように細めて、神様はやれやれと首を振る。
「仕方ない。ではそなたに我の力を少しだけ貸してやろう」
白い狩衣の腕で、神様はすっぽり咲耶子を覆う。
菊のすずしい香気に包まれた。
(なに……。ふわふわする)
いい香りの気が、咲耶子の身体を満たしてゆくのがわかる。
(これが神様の神気なんだわ)
「想い合う者は常盤、想われる者は薄紅、想う者は山吹。人の想いの矢の色が視えるようにしてやった」
神様はちょっと得意そうなドヤ顔をしている。
(人の心が視えるの?)
すぐには信じられなかった。
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