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7.神様は無理を通す
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「気にせずば視えぬ」
面白くなさそうに、神様はふいっと顔を背ける。
「え、だって視えますよ。今日なんて、クラスのみんなの頭の上に矢印がいっぱいで」
「力が発現したばかりだからだ。そのうち落ち着く」
(視たいと思わなければ、あの矢印は視えないってこと?)
とりあえず安心した。
誰かの心の中をのぞくなんて、あまり気持ちのいいものじゃないから。
「でもそれじゃ、縁結びには遠のくかも」
つい口にしてしまった。
「いまごろ気づいたか」
やれやれと大げさに首を振って、神様は琥珀色の目を細める。
こんな表情をされるのは、咲耶子には心外だった。
(町の人がいなくなったら神様、消えてしまうっていうから)
それは嫌だなと思った。
そしたら見透かされたみたいに、変な力をつけられてしまった。
でもだからって、すぐに何かできるわけない。
(そもそも縁結びって何?)
そういうレベルに知識は皆無なんだから。
(そういうのって、年配の女の人がするんじゃないの?)
この町にも、世話好きの女の人はいる。
どこかの息子が嫁を探していると聞きつけては、釣り合う娘を紹介するんだって。
氏子さんの集まりで聞いたことがある。
(それにしたって神様が言ってた豪族? そんなお金持ちの息子なんて、この町にはいないわ)
いるとしたら、父が言ってた五崎家の次男だけだ。
でも彼だって、ちょっと静養に来ているだけ。
言ってみればゲストみたいなもの。
こんな田舎町で妻を探すなんて、ご本人も周りも考えていないはずだ。
「都の豪族なのであろう?」
榊の茎を白い指先でもて遊びながら、神様はさらっと訊いてくる。
神様の前で嘘は通らない。
神様が知りたいと思うなら、いつでも咲耶子の心の中なんて筒抜けなのだ。
「五崎の若君のことなら無理ですよ? 釣り合うお家なんて、日本でも数えるほどよ。片手で足りるくらい。こんな田舎町の娘じゃとても無理」
「わからぬことを言う。その息子にこの娘でなくばと。そう思わせれば良いだけであろう?」
好きだけで一緒になれるわけじゃない。
そういう人もいるんだろうけど、五崎財閥の令息ともなれば違う。
小さい頃から氏子さんの接待をしながら、大人の内輪話をたくさん耳にしてきたのだ。
だてに神社の一人娘はやってない。
「恋愛結婚ってことですよね? それが許されるご身分の方ではないの」
「許されぬ恋ほど燃えあがるものぞ?」
神様は真面目な表情で恥ずかしいことを口になさる。
どうやら本気で思っているらしい。
「それにたやすく結ばれる縁なら、我が力を貸さずとも良い。難しいからこそ、神たる我の力がいるのだろうよ」
(顔が上向きだわ。これって芝居の見栄をきってるみたいな感じ?)
とにかく神様はやる気モードだ。
この無理をなんとか通さなくてはならないらしい。
(どうするか、具体的に考えないとだけど)
のりかかった船だと、咲耶子は覚悟を決めた。
面白くなさそうに、神様はふいっと顔を背ける。
「え、だって視えますよ。今日なんて、クラスのみんなの頭の上に矢印がいっぱいで」
「力が発現したばかりだからだ。そのうち落ち着く」
(視たいと思わなければ、あの矢印は視えないってこと?)
とりあえず安心した。
誰かの心の中をのぞくなんて、あまり気持ちのいいものじゃないから。
「でもそれじゃ、縁結びには遠のくかも」
つい口にしてしまった。
「いまごろ気づいたか」
やれやれと大げさに首を振って、神様は琥珀色の目を細める。
こんな表情をされるのは、咲耶子には心外だった。
(町の人がいなくなったら神様、消えてしまうっていうから)
それは嫌だなと思った。
そしたら見透かされたみたいに、変な力をつけられてしまった。
でもだからって、すぐに何かできるわけない。
(そもそも縁結びって何?)
そういうレベルに知識は皆無なんだから。
(そういうのって、年配の女の人がするんじゃないの?)
この町にも、世話好きの女の人はいる。
どこかの息子が嫁を探していると聞きつけては、釣り合う娘を紹介するんだって。
氏子さんの集まりで聞いたことがある。
(それにしたって神様が言ってた豪族? そんなお金持ちの息子なんて、この町にはいないわ)
いるとしたら、父が言ってた五崎家の次男だけだ。
でも彼だって、ちょっと静養に来ているだけ。
言ってみればゲストみたいなもの。
こんな田舎町で妻を探すなんて、ご本人も周りも考えていないはずだ。
「都の豪族なのであろう?」
榊の茎を白い指先でもて遊びながら、神様はさらっと訊いてくる。
神様の前で嘘は通らない。
神様が知りたいと思うなら、いつでも咲耶子の心の中なんて筒抜けなのだ。
「五崎の若君のことなら無理ですよ? 釣り合うお家なんて、日本でも数えるほどよ。片手で足りるくらい。こんな田舎町の娘じゃとても無理」
「わからぬことを言う。その息子にこの娘でなくばと。そう思わせれば良いだけであろう?」
好きだけで一緒になれるわけじゃない。
そういう人もいるんだろうけど、五崎財閥の令息ともなれば違う。
小さい頃から氏子さんの接待をしながら、大人の内輪話をたくさん耳にしてきたのだ。
だてに神社の一人娘はやってない。
「恋愛結婚ってことですよね? それが許されるご身分の方ではないの」
「許されぬ恋ほど燃えあがるものぞ?」
神様は真面目な表情で恥ずかしいことを口になさる。
どうやら本気で思っているらしい。
「それにたやすく結ばれる縁なら、我が力を貸さずとも良い。難しいからこそ、神たる我の力がいるのだろうよ」
(顔が上向きだわ。これって芝居の見栄をきってるみたいな感じ?)
とにかく神様はやる気モードだ。
この無理をなんとか通さなくてはならないらしい。
(どうするか、具体的に考えないとだけど)
のりかかった船だと、咲耶子は覚悟を決めた。
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