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10.ご縁がつながる
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「咲耶子、ちょうどおまえの話をしていたところだ。ここへ来なさい」
何も言わない父とは反対に、上機嫌らしい伯父が手招きをする。
(私の話?)
ちょっとだけ不安になった。
夏にちらっとだけど言われたことを思い出したから。
「来年卒業したら、しかるべき家から婿をとらないと」
咲耶子は一人娘だから仕方ないとは諦めている。
でもできたら、そんなお話はもう少し先にしてほしい。
(あのお話だったらどうしよう)
「明日は私と一緒に出掛けるから、学校は休みなさい」
女学校への連絡はしてあるとまで言われて、余計に不安になった。
「伯父様、どちらへ参りますの?」
おそるおそる聞いた。
(料亭なんて言われたら、もうお見合い確定だわ)
「五崎様の別荘だ。ご挨拶に伺うから、ついてきなさい」
「い……五崎様……ですか?」
さらりと告げられた名前に、咲耶子の不安は吹っ飛んだ。
(お見合いはないわね)
家格も財力も、なにもかもが違い過ぎる。
(行儀見習いならあるかもしれないけど)
それにしても学校を休んでまで、挨拶に行く必要はあるんだろうか。
五崎財閥なんて咲耶子には雲の上の存在で、関わることなんかないと思っていたのに。
「あちらの奥様と家内は同窓でな。そのご縁で私も何度か、東京のお屋敷に伺った」
初めて聞いた。
確かに亡き母の実家竹田家は、瀬戸内の広川県内でも五本の指に入る大地主だ。
でも日本で指折りの財閥五崎と付き合いがあるなんて。
ちょっとどころじゃない。
かなり驚いた。
「すご……」
こほんと、父が咳払いをした。
(あ、品がないって。お父様、そうおっしゃりたいのね)
「驚くのも無理はない。なにしろあの五崎だ。私も初めてお屋敷に伺った時には、かなり緊張したものだ」
伯父は笑って許してくださる。
「先月伺った際にな、ご子息がこちらへおいでになることを聞いた。よろしく頼むと、奥様から頭を下げられたよ。この町なら吉田とは目と鼻の先だ。知らん顔はできないだろう」
なるほど。
それなら伯父の言うとおりだと思う。
(でも目と鼻の先というには、少し無理があるな)
吉田町から咲耶子の住む忠山町まで、直線距離なら五キロそこそこだ。
けど間に山を挟むから、道は海沿いに走っている。
馬車だとだいたい四時間くらい。
だから伯父は、吉田の港まで出て船で来る。
その方がずっと速いから。
「家内がご挨拶に伺うのが本当だが、吉田の里で手が離せなくてな。咲耶子に代わりを務めてもらいたい」
そうっと父の顔を伺った。
相変わらず、ご機嫌は悪そうだ。
「義兄上のおっしゃるようにしなさい。粗相のないようにね」
それでも許可はくれた。
「わかりました。お供いたします」
できるだけ真面目な表情を作ったけど、唇の端が緩むのはどうしようもない。
(だって五崎よ? 神様がなんとかしろっておっしゃったあの五崎の若君に、こんなに早くお目にかかれるなんて)
手が空いたら、すぐに神様に報告に行こう。
どんな反応をしてくれるだろうか。
わくわくした。
何も言わない父とは反対に、上機嫌らしい伯父が手招きをする。
(私の話?)
ちょっとだけ不安になった。
夏にちらっとだけど言われたことを思い出したから。
「来年卒業したら、しかるべき家から婿をとらないと」
咲耶子は一人娘だから仕方ないとは諦めている。
でもできたら、そんなお話はもう少し先にしてほしい。
(あのお話だったらどうしよう)
「明日は私と一緒に出掛けるから、学校は休みなさい」
女学校への連絡はしてあるとまで言われて、余計に不安になった。
「伯父様、どちらへ参りますの?」
おそるおそる聞いた。
(料亭なんて言われたら、もうお見合い確定だわ)
「五崎様の別荘だ。ご挨拶に伺うから、ついてきなさい」
「い……五崎様……ですか?」
さらりと告げられた名前に、咲耶子の不安は吹っ飛んだ。
(お見合いはないわね)
家格も財力も、なにもかもが違い過ぎる。
(行儀見習いならあるかもしれないけど)
それにしても学校を休んでまで、挨拶に行く必要はあるんだろうか。
五崎財閥なんて咲耶子には雲の上の存在で、関わることなんかないと思っていたのに。
「あちらの奥様と家内は同窓でな。そのご縁で私も何度か、東京のお屋敷に伺った」
初めて聞いた。
確かに亡き母の実家竹田家は、瀬戸内の広川県内でも五本の指に入る大地主だ。
でも日本で指折りの財閥五崎と付き合いがあるなんて。
ちょっとどころじゃない。
かなり驚いた。
「すご……」
こほんと、父が咳払いをした。
(あ、品がないって。お父様、そうおっしゃりたいのね)
「驚くのも無理はない。なにしろあの五崎だ。私も初めてお屋敷に伺った時には、かなり緊張したものだ」
伯父は笑って許してくださる。
「先月伺った際にな、ご子息がこちらへおいでになることを聞いた。よろしく頼むと、奥様から頭を下げられたよ。この町なら吉田とは目と鼻の先だ。知らん顔はできないだろう」
なるほど。
それなら伯父の言うとおりだと思う。
(でも目と鼻の先というには、少し無理があるな)
吉田町から咲耶子の住む忠山町まで、直線距離なら五キロそこそこだ。
けど間に山を挟むから、道は海沿いに走っている。
馬車だとだいたい四時間くらい。
だから伯父は、吉田の港まで出て船で来る。
その方がずっと速いから。
「家内がご挨拶に伺うのが本当だが、吉田の里で手が離せなくてな。咲耶子に代わりを務めてもらいたい」
そうっと父の顔を伺った。
相変わらず、ご機嫌は悪そうだ。
「義兄上のおっしゃるようにしなさい。粗相のないようにね」
それでも許可はくれた。
「わかりました。お供いたします」
できるだけ真面目な表情を作ったけど、唇の端が緩むのはどうしようもない。
(だって五崎よ? 神様がなんとかしろっておっしゃったあの五崎の若君に、こんなに早くお目にかかれるなんて)
手が空いたら、すぐに神様に報告に行こう。
どんな反応をしてくれるだろうか。
わくわくした。
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