スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第151話:これで、猫カフェのオーナーとして成功、めでたしめでたし、リーダーの人生も終わりっすね、勝手に終わりにするな

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、今は宿屋の屋根裏に猫と住んでいる。

 朝。

「今日も寒いなあ。俺は体調が良くないぞ」
「いつも調子が悪いじゃないすか。リーダーの人生はいつも調子が悪いまま終わってしまったんすね」

「うるさいぞ。まだ俺の人生は終わってないぞ」
「で、今日も仕事をさぼる気すかね」

「いや、今日は仕事に行くぞ」
「爺さんが無理すると、ろくなことにはなりませんすよ」

「あんまりコタツで寝てばかりだと体に悪い。それに猫缶も買わなくてはいかん」
「猫のためにはやる気が出るんすね。もう猫爺さんのしょぼくれ日記。誰も興味を持ちませんね」
「うるさいぞ」

 さて、手押し車を押しながら、冒険者ギルドに行く。
 で、いつも通りのスライム退治を依頼される。

「同じことばかりで、おもろーないぞ」
「そんなもんすよ、人生は」

 実際、そんなもんなんだよなあ。
 全く、おもろーないぞ、人生は。

 さて、だらだらと目的地まで歩く。
 場所は、また村の近くの林。

 林に入ったところで一匹を倒した。
 しかし、その後は全然見当たらない。

「スライムが全くいないじゃないか」
「スライムもハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの爺さんの顔は見飽きたんじゃないすかね」
「うるさいぞ」

 やれやれ。
 つまらんなあと思っていると、なにやら動物の鳴き声が聞こえてきた。

「お、何かいるぞ」

 俺が林の中へ入っていくと、木箱が置いてある。

「おお、子猫が五匹もいるぞ」

 ニャーニャーと鳴いてる子猫たち。

「誰かが捨てたんでしょうね」
「けしからん。捨てるくらいなら最初から飼うなと言いたいぞ」

「で、どうするんすかね」
「もちろん、屋根裏部屋に連れて行くぞ」

「そんなことして大丈夫すかね。今は子猫っすけど、そのうち大きくなって、気が付くと何匹も増えて収拾がつかなくなりますよ。そういうのを多頭飼育崩壊って言うんすよ」
「いや、里親を探せばいいのだ。もうスライム退治は終わりだ。ミルクを買って帰ろう」

 そんなわけで、子猫を連れて屋根裏部屋に戻る。

「いやあ、かわいいなあ」

 お皿にミルクを入れて、それを飲んでいる子猫たちを見て和む。
 先住の猫も興味深げに見ているぞ。

「かわいいっすけど、こんなに飼えるんすかね」
「ううむ。エサ代のために、もっと働かなくてはいかんなあ」

「いっそのこと、前に俺っちが言っていた猫カフェでも開店したらどうすかね。ギルドから融資してもらって」
「でも、融資してもらう代わりに冒険者を引退しなくてはいかんのだろ」

「そうすね」
「それは嫌なんだなあ」

 俺としてはやはり冒険者稼業は続けていきたいのだ。

……………………………………………………

 次の日。

「おい、今日も寒いなあ」
「寒いっすね」

「しかし、仕事に行くか。猫のエサ代を稼がねばいかん。でも、このままで子猫たちは大丈夫だろうか」
「毛布にくるまってれば大丈夫じゃないすかね」

「うーん、でも、心配だ。仕事はどうせスライム退治。しかも、数匹だろ。さっさと終わらせて帰ろう」
「もう、リーダーは猫のことしか興味がなくなったみたいっすね。引退した爺さんすね、本当に」
「うるさいぞ」

 そんなわけで、冒険者ギルドに行く。

 で、依頼されたのは、またスライム退治だ。
 いつも通りだなと思っていたら、ギルドの主人がニヤニヤ笑いで何やら言ってきた。

「冒険者保険に、新たなオプションを付けることが出来るようになったんだ。ケガした場合には相当額の補償をしてくれるぞ。どうだ、入らないか。あんたもケガばっかりしているだろ」

 冒険者保険って前に入ったことがあるなあ。

「でも、前の時は海岸近くの洞窟で危ないと思ったからなんだが」
「今回も洞窟だぞ」

 冒険者がケガした場合に備えて保険に入るってなんとなく情けないと思ったが、しかし、今の俺には猫が待っているのだ。
 必ず、屋根裏部屋に帰らねばならんのだ。

「じゃあ、今回は入るかな」

……………………………………………………

「また保険なんぞに入るなんて、もう、リーダーはすっかり守りの人生になってますね」
「しょうがないだろ。猫が心配なのだ」

「でも、ケガした場合は保険金が出るけど、死んだ場合は出ませんすよ、これ」
「なんだと。あの性格の悪いギルドの主人の奴、また騙しやがったな」
「まあ、スライム退治程度じゃあ、死なないっすよ」

 指定された場所に相棒と一緒に行く。
 村から少し離れた山の麓にある小さい洞窟だ。

「ここは、確か『かたつむりの洞窟』って呼ばれてたなあ。入ったことがあるぞ。ぐるぐると渦巻き状になっていて、最終地点には小部屋があるだけ。要するに一本道だ。何ともつまらぬ洞窟だったなあ。モンスターも出なかったぞ」
「今は、『地獄の穴』って名称が変わりましたっすね」

「おいおい、また村役場の陰謀かよ。例のドラゴンテーマパーク関連だろ。いい加減にしろって言いたくなるぞ。マンネリにもほどがある。どうせ、最終地点に地獄の絵でも飾ってあるんだろ」
「行けばわかりますよ」

 俺は手押し車を押しながら、中に入っていく。
 ごくたまにスライムに遭遇。

 バシッ!

 簡単に倒す。

「これは保険料は無駄だったんじゃないか」
「猫のためとか言って、入ったのはリーダーじゃないすかね」
「まあ、そうなんだがなあ」

 さて、あっという間に最終地点に到達。
 昔、入った時は単なる行き止まりだったのだが。

「ウォ! すごい穴が開いているじゃないか。おい、かなり深いぞ。地の底までありそうだ」

 しかし、相棒はヘラヘラしている。

「場所を変えて、横から見てくださいっすよ」

 俺が場所を移動すると、穴が平面状になる。

「何じゃこりゃ、思い出したぞ。ドラゴントリックアート展の警備やったことがあるが、あれだろ。目の錯覚を利用して、いかにも大きな穴が地面に開いているように見せてるだけだろ」
「そうすね。そして、あの展示会場で本物の階段をトリックアートと間違えて、リーダーは不様にスッ転んでましたっすね」
「うるさいぞ。しかし、こんな絵で観光客を騙そうなんて、村役場の連中はいつか天罰がくだるぞ。くだらん絵を描いて『地獄の穴』とはふざけてる」

 俺はその平面に描かれた大穴の上に立つ。

「ウォ!」

 その時、突然、絵の表面が割れた。
 そのまま、墜落してしまう。
 地面が陥没したぞ。

「ウワー!」
「大丈夫すか!」

 相棒が叫ぶ。
 しかし、大した陥没ではなかった。

 俺の背の高さくらいだな。
 でも、俺は立つことが出来ない。

「うーん、腰をしたたか打ってしまった。動けないぞ」
「しょうがないっすね」

 相棒になんとか助け出されて、そのまま手押し車に乗せられて運び出されてしまった。
 何とも情けない。

……………………………………………………

 屋根裏部屋で松葉杖をついて歩いている俺。

「腰を捻挫してしまった。歩けないこともないが、これでは、当分、冒険には出れないなあ」
「そもそも最近は、冒険らしい冒険はしていなかったじゃないすかね」
「うるさいぞ」

 でも、相棒の言うとおりである。
 しかし、今回は思わぬ収入があった。

「負傷したおかげで、けっこうな保険金が下りたぞ」
「もともと腰痛持ちだったのに、ある意味インチキじゃないすかね」
「うるさいぞ。身をもって村役場のインチキ絵画の危険性を確かめたのだ。それくらい貰っていいだろ。さて、便所に行ってくる」

 腰が痛いので、ゆっくりと屋根裏部屋から二階に降りる。
 便所までの廊下を松葉杖を使って歩いていると、宿屋の主人が業者に指示を出しているのが見えた。

「あれ、これは俺たちが前に使っていた狭い部屋ですね」
「そうです。ちょっと狭いので、改修して一人部屋にしようかと思いましてね」

 そこで、俺は思いついた。
 保険金がおりて懐は温かいのだ。

「主人、この部屋で猫カフェを開店しませんかね」

……………………………………………………

 宿屋の主人と共同出資した猫カフェ。
 なかなか評判が良くて、行列が並んでいる。

 単に、猫が部屋の中にいるだけなんだけどな。
 
「リーダーにしては、珍しくうまくいってますね」
「うむ」

「これで、猫カフェのオーナーとして成功。めでたしめでたしでリーダーの人生も終わりっすね」
「勝手に終わりにするな。この猫カフェをチェーン店にして、各地に店を出す。いつかは首都に猫パークを作る……つもりは全然ないぞ」

「あれ、いつもは妄想ばっかりしているのに」
「単に珍しいから今は客は入っているが、猫なんてそこら中いるだろが。この店で十分だろ」

「いつになく冷静っすね」
「俺は猫を守りたかっただけだ。冒険者をやめるつもりはないぞ。いつかはドラゴンを倒すのだ」

「やっぱり、リーダーは妄想からは逃れられないすねえ。猫カフェのオーナーしてればいいのに」
「うるさいぞ」

 まあ、いつでも猫と和めるので、俺としては満足である。
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