スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第152話:今、背筋がゾクッとしたぞ、長年冒険者をやってきた俺の勘だ、何かいるぞ、例の頻尿じゃないすかね

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、副業で猫カフェのオーナーをしている。

「ニャー」
「ニャー、ニャー、ニャー、ニャー、ニャー」

 宿屋の二階の猫カフェルームでなごむ俺。
 エサをあげると、猫が俺の体に這い上がったりしてくる。

「いやあ、猫はかわいいなあ。それが五匹もいるぞ。天国だなあ」
「リーダー、何をやってるんすかね。怖い顔したハゲデブブサイクのリュウマチ持ちのおっさんが部屋の中央に居座っていると、他の客が逃げちゃいますよ」

「うるさいぞ。だいたいリュウマチは関係ないだろ。つーか、わかってるよ。午前九時の開店前には退散するつもりだ」
「そんで、今日も腰が痛くてさぼるんすかね」

「いや、そろそろ、活動再開だ。屋根裏部屋で寝ているのも飽きた。冒険だ、冒険」
「もう、この猫カフェで給仕でもしている方がいいんじゃないすかね」

「うるさいぞ。それに俺はオーナーだぞ」
「オーナー自ら働いている店はいくらでもありますけどね」

「まあ、この猫カフェは副業だ。俺はあくまでも冒険者なのだ」
「そのわりには屋根裏部屋でいびきかいて寝てばかりでしたね」
「うるさいぞ。しょうがないだろ、腰を痛めていたんだから。じゃあ、出発だ」

 俺と相棒は宿屋を出て、冒険者ギルドを目指す。
 手押し車を押しながら歩く。

「しかし、腰痛持ちの歯抜けの爺さんに仕事をくれますかね、ギルドは」
「まあ、今回は清掃や警備員でもいいや」

「あれ、冒険するんじゃなかったんすかね」
「まだ完全に腰が治ったわけではないし、猫カフェの副収入があるから、今のところ余裕なのだ」

「リーダーの人生そのものはもう余裕は全然ないすね。明日にも死にそうすからねえ」
「うるさいぞ」

 さて、下らない会話を相棒としながら冒険者ギルドに到着。
 すると、今回は清掃でも警備でもなく、偵察を依頼された。
 
……………………………………………………

 偵察と言っても、村の近くの林。
 少し霧が出てきた。

「何だか、冒険者ギルドに通報があったらしいぞ。でも、それが、『不気味な声が聞こえた。背筋がゾクッとした』って、おいおい、それだけでビビッて通報してくるなんて、しょうがない村人だなあ」
「まあ、何にも起きないんじゃないすかね。楽な仕事じゃないすかね」

「おい、楽することばかり考えるな。若い頃は買ってでも苦労しろって言うぞ」
「でも、苦労ばっかりしたあげくに墓の下に逝ってしまったリーダーのようにはなりたくないすね」

「うるさいぞ。勝手に殺すなって。しかし、またコボルトの連中の可能性もあるなあ」
「でも、コボルトって不気味な感じはしませんすよね」

 確かに、こん棒を振り回すだけの単細胞的な行動しか出来ないコボルトたちが原因とは考えられんなあ。

「まあ、背筋がゾクッとしたってのも単なる体調不良じゃないか……おっと、おかしいぞ」
「どうしたんすか、リーダー」

「今、背筋がゾクッとしたぞ。うむ、長年冒険者をやってきた俺の勘だ。何かいるぞ」
「例の頻尿じゃないすかね」

「うるさいぞ。頻尿はゾクッとしないぞ。焦燥感は感じるがな。うむ、何か気配がある」
「頻尿爺さんの勘すかね」
「うるさいぞ」

 そして、霧がますます濃くなってきた。

「あれ、全く周りが見えなくなったすね」
「うむ、これは何かいるな」

「ホントすかね。前に霧が深くて、案山子をファハンってモンスターに間違えたりしましたっすけどね」
「いや、待て。動くな。これはミスト・イーターかもしれんぞ」

「何すかね、そのモンスターは」
「霧の中で人を迷わせて、疲労したところで襲いかかってくる正体不明のモンスターだ。つまり、動かないほうがいい。体力を消耗させるのがこのミスト・イーターの目的だ」

 俺は林の中で仁王立ちになる。
 手押し車に支えられながらだが。

 しかし、何も起きない。
 相棒がつまんなそうに言った。

「ホントにミスト・イーターなるモンスターが出たんすかね。こんな小さい林の中で。ちょっくら林の外に出てみますよ」
「おい、離れるな。迷ったら体力を消耗して、食われちまうぞ」
「大丈夫すよ。ロープを持ってくれますかね。とにかく目的は偵察なんすから。こんな突っ立ったままのほうが疲れますって」

 相棒が俺から離れていく。
 大丈夫だろうか。

 その時、妙な奇声が聞こえた。
 まさか、ミスト・イーターが出現したのでは。

 しかし、すぐに相棒がロープを辿って戻ってきた。

「リーダー、すぐに林の中から村道に出られましたよ。何もいないんじゃないすかね」
「いや、そうやって、霧の中で油断させるのがミスト・イーターの手段なのだ。今、妙な奇声も聞こえてきたぞって……ありゃ、霧がはれていくな」

 あっさりと霧が無くなって、元のつまらぬ林になった。
 あれ、よく見ると一本の大きな枝が折れてぶら下がっている。

 風に吹かれて、キイキイと音を出しているぞ。

「不気味な声の正体はこれっすね。頻尿爺さんのリーダーの勘も当てにはなりませんすね」
「うるさいぞ……おっと、また背筋がゾクッと……いや、なんかかゆいな。そういえば、今朝、猫カフェで猫と遊んでいるとき、子猫が俺の背中に入ったなあ。そん時の猫の毛のせいかな」

「なんなんすか。しょうもないすね。やっぱり猫カフェで働いていた方がいいんじゃないすかね、頻尿爺さんは。便所も近くにあることだし」
「うるさいぞ。でも、催してきた。ちょっと用を足してくる」

「いいんすか。離れたらミスト・イーターにやられますよ」
「うるさいぞ。今回の任務は終了、原因は木が折れていただけだ。用を足したら帰るぞ」

 しかし、毎回、ろくにモンスターも出ない冒険者物語。
 誰が興味をもってくれるのだろうか。

 心配である。
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