スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第153話:あの女の子は冒険者としての才能があったわけだ、それを見抜いた俺はやはり慧眼があるだろう、リーダー本人は才能の欠片もないすけどね

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 冒険者ギルドに相棒と向かう。

「うう、今朝はまた寒いなあ。腰痛やら何やらかんやらと、寒いとよけい辛いぞ」
「つーか、寒かろうが暑かろうが、いつも調子悪いとか言ってませんすかね。ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの爺さんリーダーは」
「うるさいぞ。まだ爺さんではない」

「しかし、その手押し車を押しながら歩いている姿はまさしく爺さんなんすけど」
「この手押し車って、何だか楽なんだよなあ」

「手押し車が楽って、要するに爺さんじゃないすかね。もう冒険者はやめて猫カフェに専念したらどうすかね」
「うるさいぞ。まだ俺は冒険者だ」

 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 そして、副業で猫カフェのオーナーをしている。

 さて、冒険者ギルドに到着。
 そこで掲示板に貼ってある新聞の一面を見て、俺は驚いた。

「おい、ドラゴンを弓矢で倒した美少女冒険者って記事があるけど、ここの村出身のあの娘さんのことだぞ」
「村の美少女コンテスト一位になって、その後、ハゲデブブサイクのリーダーと村の集会場でくだらない寸劇をやらされた後、冒険者にスカウトされた女の子っすね」
「ハゲデブブサイクは余計だろが」

 記事によると、王国簒奪を企んだ一味がいたのだが、そいつらを軍隊が壊滅させた。しかし、その中の魔法使いが操っていたドラゴンが暴走、近くの街を破壊しようとしたところ、偶然その街に滞在していた冒険者パーティーのメンバーである、この村出身の娘さんが弓矢でドラゴンを操っていた首についていた魔石を見事撃ち抜いて、ドラゴンは墜落死。

「うーん、やはり、あの女の子は冒険者としての才能があったわけだ。どうだ、それを見抜いた俺はやはり慧眼があるだろう」
「リーダー本人は才能の欠片もないすけどね」
「うるさいぞ」

 記事には王国首都に呼ばれて、王様から勲章を授与されるとある。

「首都にはこの前行ったなあ。時期が合えば、あの娘さんと会えたかもしれないなあ」
「もう娘さんの方はハゲデブブサイクのリュウマチ持ちのリーダーのことなんて、すっかり忘れてますよ」

「うるさいぞ。しかし、冒険者になったばかりで、ドラゴンの方から寄ってきて、しかも、そいつを見事倒してしまうんだからなあ。まさに、選ばれし者だなあ、あの娘さん」
「リーダーは全く選ばれなかった者っすけどね」
「うるさいぞ」

 しかし、やはり羨ましい。

「俺なんて、冒険者になってから大物モンスターにはほとんど出会ってないぞ。スライムばかりだ」
「良かったじゃないすかね。若い時にいきなりドラゴン相手に戦って、ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの頻尿のリーダーは、ぎっくり腰で倒れて、あっさりと踏みつぶされて人生終了してたんじゃないすかね」
「だから、若い時はハゲてないし、太ってなかったし、リュウマチでも頻尿でもないし、腰も悪くなかったぞ」

「ブサイクは元からすかね」
「そればっかりはしょうがないな。しかし、あの娘さんはまだ十七才くらいだろ、すごいもんだなあ」

「ハゲデブブサイクのリーダーは百歳になっても、スライム退治してそうですね」
「うるさいぞ」

 やれやれ。
 世の中、若い時にすぐに人生が輝く人はいるもんだなあ。

 そんなわけで、例によってスライム退治を依頼される。

 場所も村の近くの畑。
 しかも、ほとんどスライムが見当たらない。

「おい、全然おもろーない。ドラゴンでも急に襲ってこないのか」
「そんなことあるわけないすよ。ドラゴンもリュウマチ持ちで、人生の先が見えているリーダーを襲ったりしませんよ、かわいそうになって」

「うるさいぞ。それにしても、俺の人生は誰にも注目されないまま終わるのだろうか。なんかくやしいんだな」
「でも、他の人もそうじゃないすかね」

 まあ、現実はそうなんだろうが。
 やはり、おもろーない。

……………………………………………………

 スライム退治はあっさり終わらせて、宿屋の屋根裏部屋に戻る。

「ふう、寒い、寒い」

 俺はコタツの中に潜り込む。

「だらしがないすねえ。そんなリーダーにドラゴンが戦いを挑んでくるわけないすよ」
「うるさいぞ。お前だって、すっかりコタツの中に入ってくつろいでるじゃないか」
「まあ、ぬくぬくとして気持ちがいいすからねえ」

 まあ、確かに温かくて気持ちがいい。
 なんだか眠くなってきた。
 コタツでそのまま寝っ転がる。

 おや、妙な足音がする。

「おい、今、変な足音がしなかったか」
「猫じゃないすかね」

「ここで飼っていた猫は、二階の猫カフェに引っ越したぞ」
「じゃあ、ネズミでもいるんじゃないすかね」

「いや、なにか変だ。妙な雰囲気がする。長年冒険者として活躍して、つちかった勘だな」
「全然活躍してないじゃないすかね。妙な雰囲気って、どうせ頻尿のせいじゃないすか」
「うるさいぞ」

 しかし、どうも妙な感じなんだな。
 あれコタツの中で冷たいものにさわった。

「おい、お前の足はずいぶん冷たいな」
「は? リーダーの足にぶつかってないすけど」

 コタツの反対側から相棒の声だけが聞こえる。

「あれ、変ですねえ。俺っちも冷たいものが足をさわりましたっすよ」

 俺はしばし考える。

「ああ、これはモンスターのボガードだなあ」
「何すか、そのモンスターは」

 相棒がサッとコタツから出てナイフをかまえる。
 しかし、俺は余裕だ。

「大したモンスターではないな」
「どんな危害を加えるんすかね」

「夜中に咳をするんだ」
「そんだけすか」

「そんだけだ。後、さわると冷たい。そいつがコタツの中に潜り込んだようだな」
「どうやって退治するんすか」
「退治しなくても、出て行けと言えばそれで終了だ。おい、ボガード、出てけ!」

 俺がそう言うと、すっと冷たい感覚が消えた。
 どうやら、ボガードが去ったらしい。

「何なんすか、このモンスターは。やはり、リーダーはドラゴンなんぞ相手するより、スライムとか、このボガードってしょぼくれたモンスターを一生相手にすることになるんすかねえ。さすが、選ばれなかった者すねえ」
「うるさいぞ」

 しかし、実際のところ、俺にはこういうヘボモンスターしか寄ってこないような気がしてきたなあ。
 おもろーないぞ。

 ああ、もう猫カフェに専念しようか。
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