【完結】桜色の思い出

竹内 晴

文字の大きさ
10 / 12

春の10ページ

しおりを挟む
 春斗は玲の助けもあり、何とか由紀を見つけ出すことに成功した。しかし、案の定由紀は困惑し、誤解をして怒りをぶつけてきた。

 「多分、がいたから、今ここに立ってると思う。俺一人じゃ、素直になれなくて、きっと由紀のことだって見つけらんなかったかもしれねー。だからさ、由紀が怒ってる理由も、なんとなくだけど分かる。ここでさ、俺が由紀に対していくら誤解だって言っても信じて貰えないかもしれねー。だから、一言だけ言わせて欲しい。」

 そう言うと、春斗が由紀に向かって頭を下げた。

 「ごめん!何もかも中途半端で、高校になってからちゃんと由紀のこと見れてなかった。」

 春斗のいつもと違う少し成長した姿を見て言葉を失う由紀。罵倒ばとうされることを覚悟していた春斗だったが、何も言われないことに違和感を感じて頭をあげる。さっきまで怒りをむき出しにしていた由紀が、今は動揺しているように見えた。

 由紀との距離が遠く、ちゃんと姿を認識できない春斗が由紀に近寄る。

 そこには、戸惑いを隠しきれない由紀の姿があった。由紀の中に怒りとは別に、先程まで子供のような幼なじみが、自分のために成長する姿を見て動揺していたのだ。

 しかし、いつまでたっても鈍感な春斗は、そんな由紀の心情を理解することは難しく。

 「どうしたんだよ?由紀・・・」

 その言葉で我に返った由紀は・・・。

 「どうしたもこうしたもない!なんでいきなり謝るのよ!いつもみたく反論なりなんなりしてきなさいよ!」

 由紀が動揺のあまり、意味の分からない言動を発してしまう。いつもの調子を取り戻したことを悟った春斗が由紀に反撃を仕掛ける。

 「は?それってつまり、由紀は俺にいじめてもらいたくてここまで走ってきて1人で泣いてたってことか?由紀って・・・案外M?」

 しかし、言われっぱなしの由紀ではなかった。

 「うるさいわね!そんなわけないでしょ!辛かったのはほんとだし、何も信じられなくなってたこともほんとよ!でも、春斗が!」

 由紀が何か言いかけたところで止まった。それを聞き逃さなかった春斗。

 「何?俺がどうかした?」

 意地悪に聞いてくる春斗に由紀が照れ隠しに春斗の胸元をポカポカと叩く。その攻撃は、春斗に1ミリも効くことはなく。

 「ほんと、悪かった・・・」

 言葉とは裏腹に、春斗が由紀を強く抱き締めた。

 その様子を見つめる2つの人影が、屋上の入口扉から覗いていた。

 「なーんだ。心配して見に来たのにさ~。いいムードじゃん?」

 「ホントな、ここまではだったけどね」

 そう、2つの人影の正体とは・・・。

 2人を心配して追いかけてきていた玲と薫であった。そして、今回の1件の首謀者である。

 「けど、まさか本気で泣くなんて思わなかったけどね」

 玲が小さく笑った。

 「う、うるさいわね!だってしよーがないでしょ?春斗があんな風になるなんて思わなかったんだから・・・」

 照れ隠しとも言える反論を玲にする。時は遡り、玲と薫が2人と別行動をしたあの日の放課後・・・。

 「私らもなんだかんだ小学校からの幼なじみじゃん?なんとなくだけどさ、あんたの考えてることわかっちゃった・・・。」

 薫が玲ににっこりと笑いかける。

 「あんたの覚悟に免じて私も今回は協力してあげる」

 予想外の回答に驚く玲。

 「いいのか?俺のやろうとしてることは完全にヒールな役回りだぞ?」

 その言葉に小さく頷く薫。こうして2人の計画が実行された。それが、今日の一連の出来事である。

 こうして、2人の思惑通りにことが進んだかに思われたが・・・。

 「春斗、どうだったの?」

 1人戻ってくる春斗に心配の様子で駆け寄る薫。

 「あぁ、2人のおかげでできたよ」

 薫が安心する素振りを見せる。しかし、薫には1つだけ引っかかっていることがあった。

 一方、屋上に1人残った由紀は・・・。

 「ちゃんと気持ち伝えたの?」

 玲が屋上の入口から声をかける。その声に少し驚くも、玲であることを認識すると・・・。

 「うん!玲のおかげでできたよ!ありがと~」

 由紀が嬉しそうに笑った。

 「そっか・・・良かった」

 由紀に笑いかける玲。しかし、玲にも気になることがあった。

 2人が気にしていることとは・・・

 「それで?その後は?」

 2人が別々の相手に尋ねると・・・。

 「え?いつも通り話しただけだけど?」

 2人が不思議そうな顔をして応える。

 -数分前-

 「それじゃー、俺は先戻るわ。ちゃんと顔拭いとけよー。」

 春斗は由紀にハンカチを渡すと、そのまま階段の方に向かって行った。階段から降りてくる春斗を教室の影から観察していた玲が、薫に電話で指示を出した。

 こうして先程の対面になった訳だが・・・

 相変わらずの2人に悩まされることを確証した2人は、お互いに頭を抱えていた・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...