【完結】桜色の思い出

竹内 晴

文字の大きさ
9 / 12

春の9ページ

しおりを挟む
 由紀が見た光景とは・・・。春斗が薫に抱きしめられている姿だった。由紀はその場から逃げるように走り出した。

 (なんでこんなにムカつくの・・・なんでこんなに悔しくなるの・・・私は、私は春斗のことなんて、春斗は幼なじみでそれ以上でもそれ以下でもないのに・・・なんでこんなに、涙が止まらないの?)

 それは、由紀と玲がいなくなったすぐの話し。春斗の背後から薫が近づいてくる。

 「どうしたの?春斗・・・」

 薫の呼び掛けに振りかえる春斗。

 「いや、なんでもない。大丈夫・・・。」

 春斗は薫に心配をかけないと立ち上がろうとする。その時、春斗の手から血がたれていることに気がついた薫。

 「春斗!何してたの?すごい血が出てるじゃない?手当しないと・・・」

 そう言って春斗の手を掴む薫。春斗は、そんな薫の心配を振り切ろうと「大丈夫だよ」と掴まれた手を振り払う。それでも心配な薫が再び手を取ろうとすると・・・。

 「大丈夫だって言ってんだろ!もうほっといてくれよ!」

 普段いつものメンバーに対して怒ったことのない春斗の姿を見て、薫が何かを悟ったように尋ねた。

 「もしかして・・・由紀となんかあった?」

 その言葉に何も言うことが出来ず黙り込む春斗。確信をついたことに気がついた薫が続けて話す。

 「黙るってことは・・・やっぱりそうなんだね。春斗ほんとわかりやすいから。何があったの?私で良かったら話聞くよ?中学からの付き合いかも知んないけどさ・・・私らの仲じゃん?」

 春斗が薫の顔を見れず振り返ると、そのまま春斗が先程あったことを話し始めた。薫は何も言わず、ただただ春斗の話をうんうんと頷いて聞いていた。

 すると、今までに人前で涙など見せたことの無い春斗が、薫の前で泣き始めた。

 「俺は、また傷つけちまった。なんで・・・なんで俺はこんなに情けねーんだろーな。自分でした約束も守れない。何が守るだよ。ほんと・・・情けなさすぎだろ・・・。」

 薫が春斗の方へ歩き始めると・・・。

 パシン!!

 中庭に響き渡るほどの力で春斗にビンタをする薫。

 「ほんと、どいつもこいつも・・・。私の好きな春斗はそんなこと言わない男だって思ってた。何がよ。嘘も休み休みしなさいよね!今の春斗にはな全くこれっぽっちもときめかない!あんたはいつも由紀のことだけ優先して、一途で、周りになんて流されない、自分をちゃんと持ってた。けど、今の春斗はそうじゃない・・・。」

 薫が、春斗にしがみつくように抱きついた。春斗の背中で今にも溢れそうな声をこらえて・・・。

 その時だった・・・。

 由紀が2人の様子を見て、逃げるように走り出した。背後に薫以外の気配を感じた春斗が振り返ると、一瞬だが走り去る由紀の姿が目に入った。その瞬間、春斗が思わず「由紀!」と叫ぶ。その声に泣いていた薫が頭を上げて「え・・・?」と言葉と涙を失ったように硬直こうちょくした。

 一瞬の出来事に固まっていた2人だったが、すぐに現状を把握して焦り始める。

 「やばいじゃん!今の絶対勘違いされてない?」

 「やべー、あーなったらテコでも動かねーぞ」

 焦る2人。

 「と、とにかく!今やるべき事は誤解を解くこと!春斗は由紀を追いかけて!私は玲に連絡するから」

 「けど、玲とは今・・・」

 「大丈夫!こういう時こそ頼りになるやつなんだから、それよりあんたは由紀を追う!」

 そう言うと、薫が春斗の背中を勢いよく叩いた。春斗が痛がる勢いでそのまま走り出した。

 (いってー・・・、相変わらず暴力女かよ・・・。でもまぁ、最後のは伝わってきたぜ。)

 サンキューな・・・薫。

 「由紀のやつどこまで行ったんだよ・・・。教室にもいねーし・・・。」

 校内を探し回る春斗のポケットが震え始めた。マナーモードにしていたスマホの着信である。

 その相手は・・・。

 屋上の扉が勢いよく開いた。そこには屋上から見える景色を眺めながら泣きじゃくる由紀の姿だった。

 「なんできたの・・・薫とは良かったの?めっちゃいい雰囲気だったじゃん!」

 ひっく、ひっくと涙を堪えながら由紀が春斗に話しかけた。

 「は?何言ってんだよ!」

 春斗の言葉を遮るように由紀が尋ねた。

 「じゃあ何!?あんなの見せつけておいて何よ!熱々のカップルにしか見えなかったわよ!」

 その言葉にいつものように反論しそうになる春斗だったが・・・。

 (落ち着け、ちげーだろ?なんのためにお前はここにいんだよ!繰り返すのか?にどんな顔して戻ればいいんだよ!)

 春斗が自問自答していると、何も言えず黙っている春斗に由紀が追い打ちをかけるように言った。

 「また黙るの!?春斗はいっつもそうだよね!都合が悪くなると直ぐに黙ってさ!てか、なんで私がここにいるってわかったのよ!」

 春斗は深呼吸をした。

 「ここがわかったのは玲のおかげだ。さっき電話があった。」

 そう、電話の相手は玲だったのだ。

 もしもし春斗?由紀見つかった?

 玲さっきはごめん!

 話は後でな、それより由紀は?

 まだ・・・。

 なら屋上行ってみな?

 こうして行き着いたのが屋上だった・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...