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1章 いらないお姫様
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謁見の間に行くと、すでにお父様、お母様、お姉様が並び腰掛けていた。
数段高くなっている王座に近づいて、段の下に跪く。
段に並んだ椅子は三つ。
そこに私の居場所はない。
護衛の者とジュディは部屋の中、扉の前で待機だ。
「お父様、ご機嫌麗しく。この度はお声掛けいただき、ありがとうございます」
「シャーロット、顔を上げなさい」
お父様の声がかかり、私は顔を上げた。
お父様は国王として威厳があると言うか何というか。少し肉付きがいい方で、お母様は反対にとても細くていらっしゃる。
お二人とも髪はブロンドだけど、3人並ぶとやっぱりお姉様の髪が一番美しかった。
「今、城では舞踏会が開かれている。今回参加している貴族は、みな地位が高く財を多く持つ者たちばかりだ。この舞踏会はセレーネの発案によるものだが、舞踏会に合わせてそなたの見合いをとり行おうと思う」
今、おかしな言葉が聞こえた気がする。
見合い?私の?
「お父様、お見合いというのはどういうことでしょうか?今まで、塔の上で過ごし、民はおろか貴族たちの前にも姿をあまり見せなかった私に、縁談でもあるのでしょうか?」
一生を塔の上で終えるのかと思うほど、お父様からもお母様からも存在を忘れられたかのような私。
もし、縁談があって、お城の外に嫁いでいけるなら嬉しい。
何故かお父様からもお母様からも可愛がられない私は、縁あって嫁いだ先で、旦那様に可愛がっていただけるならここにいるよりもいいかもしれない。
そんな私の期待を粉々にするよう、有無を言わせぬ圧力でお父様は私に言った。
「実は、ランバラルドとの戦争が思ったより長引いており、王宮は財政難なのだ。先日もセレーネに強請られ、海の向こうの国から買った宝石が国庫を目減りさせるような値段でな。なんの取り柄もない第二王女の務めとして、財のある貴族に嫁ぎ、王宮に支援金を納めることができるよう取り計らえ。役にも立たず、ただ血税を減らし暮らしているお前に、国家の役に立てる務めを用意してやったのだ。有り難く務めを果たせ」
私は何を言われているのかわからず、ただ、お父様の顔を見つめた。
いや、言葉の意味はわかっている。
ただ、お姉様の宝石のために私が嫁ぐということが理解できなかった。
お父様は続けて言う。
「すでに、数人に打診をしてあり、色良い返事をもらっておる。セルジオ侯爵、ハートランド伯爵、ユニシア公爵。どの者も充分な財をもっておる。いずれの者かに見染められ、役目を果たすように心しておくように」
候補の名前を聞いた途端、ジュディが遠くで息を飲むかすかな音が聞こえた。
扉からここまで3メートル以上離れているのに聞こえるなんて、ジュディはよっぽど驚いたんだわ。
私も、顔には出さないが動揺している。
セルジオ侯爵といえば、御年60歳のおじいちゃんだ。
昨年、年の離れた若い奥方様を亡くされたばかりのはず。
ハートランド伯爵の方は30代働き盛りの伯爵様ではあるものの、すでに4人の奥方様がおられ、他にも婚姻に至らない愛妾が何人もいらっしゃるという噂。
最後にお名前の上がったユニシア公爵はハートランド伯爵ほどお若くない40代。
そのお年になるまで一度もご結婚されておらず独身。
地位も財もある公爵様がどうしてご結婚されないのかというと、お相手に断られて婚姻まで辿り着かないのだとか。
その…変な性癖があって、お相手のご令嬢が泣き出すほどのことだとか。
みなさま、本当のところはどうだかわからないけれど…。
私の知識は貴族年鑑に載っていたことと、ジュディが面白おかしく聞かせる噂話だから。
けれど、第二王女の初婚の話としては有り得ない。
表情には出していないつもりだが、内心パニックだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、お姉様が私に話しかける。
「シャーロットも良い縁談に恵まれてよかったわね。塔の上からあまり出て来ないから心配していたの。良い旦那様に恵まれて、幸せに過ごしてくださいね」
このまま舞踏会に出席なさるのだろうお姉様は、今日は真っ赤なドレスに身を包み、宝石のたくさん埋め込まれたティアラを光らせて微笑んだ。
私の頭上にもティアラがあるが、真ん中に一つブルートパーズが埋め込まれただけのシンプルなもの。
装飾品一つとってもこんなにもお姉様と私は違う。
「…お、お父様、お母様。私はまだ15歳で成人の儀も終えておりません。お姉様はすでに16歳におなりあそばして、成人された身。なのに、何故嫁ぐのは私なのでしょうか?」
今まで反抗らしい反抗もしたことがなかった。
それでも、この理不尽さに、思わず言葉が出てしまったのだ。
数段高くなっている王座に近づいて、段の下に跪く。
段に並んだ椅子は三つ。
そこに私の居場所はない。
護衛の者とジュディは部屋の中、扉の前で待機だ。
「お父様、ご機嫌麗しく。この度はお声掛けいただき、ありがとうございます」
「シャーロット、顔を上げなさい」
お父様の声がかかり、私は顔を上げた。
お父様は国王として威厳があると言うか何というか。少し肉付きがいい方で、お母様は反対にとても細くていらっしゃる。
お二人とも髪はブロンドだけど、3人並ぶとやっぱりお姉様の髪が一番美しかった。
「今、城では舞踏会が開かれている。今回参加している貴族は、みな地位が高く財を多く持つ者たちばかりだ。この舞踏会はセレーネの発案によるものだが、舞踏会に合わせてそなたの見合いをとり行おうと思う」
今、おかしな言葉が聞こえた気がする。
見合い?私の?
「お父様、お見合いというのはどういうことでしょうか?今まで、塔の上で過ごし、民はおろか貴族たちの前にも姿をあまり見せなかった私に、縁談でもあるのでしょうか?」
一生を塔の上で終えるのかと思うほど、お父様からもお母様からも存在を忘れられたかのような私。
もし、縁談があって、お城の外に嫁いでいけるなら嬉しい。
何故かお父様からもお母様からも可愛がられない私は、縁あって嫁いだ先で、旦那様に可愛がっていただけるならここにいるよりもいいかもしれない。
そんな私の期待を粉々にするよう、有無を言わせぬ圧力でお父様は私に言った。
「実は、ランバラルドとの戦争が思ったより長引いており、王宮は財政難なのだ。先日もセレーネに強請られ、海の向こうの国から買った宝石が国庫を目減りさせるような値段でな。なんの取り柄もない第二王女の務めとして、財のある貴族に嫁ぎ、王宮に支援金を納めることができるよう取り計らえ。役にも立たず、ただ血税を減らし暮らしているお前に、国家の役に立てる務めを用意してやったのだ。有り難く務めを果たせ」
私は何を言われているのかわからず、ただ、お父様の顔を見つめた。
いや、言葉の意味はわかっている。
ただ、お姉様の宝石のために私が嫁ぐということが理解できなかった。
お父様は続けて言う。
「すでに、数人に打診をしてあり、色良い返事をもらっておる。セルジオ侯爵、ハートランド伯爵、ユニシア公爵。どの者も充分な財をもっておる。いずれの者かに見染められ、役目を果たすように心しておくように」
候補の名前を聞いた途端、ジュディが遠くで息を飲むかすかな音が聞こえた。
扉からここまで3メートル以上離れているのに聞こえるなんて、ジュディはよっぽど驚いたんだわ。
私も、顔には出さないが動揺している。
セルジオ侯爵といえば、御年60歳のおじいちゃんだ。
昨年、年の離れた若い奥方様を亡くされたばかりのはず。
ハートランド伯爵の方は30代働き盛りの伯爵様ではあるものの、すでに4人の奥方様がおられ、他にも婚姻に至らない愛妾が何人もいらっしゃるという噂。
最後にお名前の上がったユニシア公爵はハートランド伯爵ほどお若くない40代。
そのお年になるまで一度もご結婚されておらず独身。
地位も財もある公爵様がどうしてご結婚されないのかというと、お相手に断られて婚姻まで辿り着かないのだとか。
その…変な性癖があって、お相手のご令嬢が泣き出すほどのことだとか。
みなさま、本当のところはどうだかわからないけれど…。
私の知識は貴族年鑑に載っていたことと、ジュディが面白おかしく聞かせる噂話だから。
けれど、第二王女の初婚の話としては有り得ない。
表情には出していないつもりだが、内心パニックだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、お姉様が私に話しかける。
「シャーロットも良い縁談に恵まれてよかったわね。塔の上からあまり出て来ないから心配していたの。良い旦那様に恵まれて、幸せに過ごしてくださいね」
このまま舞踏会に出席なさるのだろうお姉様は、今日は真っ赤なドレスに身を包み、宝石のたくさん埋め込まれたティアラを光らせて微笑んだ。
私の頭上にもティアラがあるが、真ん中に一つブルートパーズが埋め込まれただけのシンプルなもの。
装飾品一つとってもこんなにもお姉様と私は違う。
「…お、お父様、お母様。私はまだ15歳で成人の儀も終えておりません。お姉様はすでに16歳におなりあそばして、成人された身。なのに、何故嫁ぐのは私なのでしょうか?」
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