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1章 いらないお姫様
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塔の中の私の部屋には、舞踏会に来て行けるような鮮やかなドレスはない。
私はジュディを従えて、いつものように城の衣装部屋へと向かった。
お母様やお姉様のドレスは、それぞれの部屋で管理されているが、お二人が飽きてしまったドレスは衣装部屋に放置されているのだ。
いつも私はそこから適当なドレスを選び、アレンジして着ている。
ジュディは色とりどりのドレスを見て、私の髪色にも映える薄い水色のドレスを選んだ。
「こんなにたくさんドレスがあるのに、またドレスを新調なさってました。そんなにお金が余っているなら、姫様にも買ってくださればいいのに」
誰が聞いているかわからないため、ジュディは小さな声で言った。
「声を小さくしても、塔を出たらやたらなことを言ってはだめよ。私はいいの。ドレスがあっても、着ていく機会もないし」
私がドレスを着る機会など、新年の祝賀会で王族揃って挨拶する時くらいだ。
歳の近いお姉様のおかげで、お下がりには事欠かないし。
ジュディは水色のドレスと、それに似合うアクセサリーを数点選んで、私と共にパウダールームへと移動した。
鏡に向かい、まずドレスを着てみる。
「やっぱりセリーヌ様のドレスはゴテゴテしていてうちの姫様には合わないですね」
ジュディはハサミと糸を手に、ウエスト部分に付いていたバラの造花を取り外した。
そして、白い大判の細かいレースを腰から下に掛け、端と端をうまくまとめて大きなリボンのようにして左ウエスト部分に縫い付けた。
次に薄い水色のストールを取り出して肩に掛ける。
大きめの銀の細工のブローチを胸の前で留め、ストールの余りをまるで飾りの一部分のフリルに見えるように織り込んでいく。
胸がかなり開いていたドレスも、これでデコルテ部分を残し、素肌はあまり見えなくなった。
「何度見てもジュディの手は魔法の手ね。」
ジュディは私をドレッサーに向かわせ、腰掛けさせた。
「そんなことはございません。セリーヌ様のドレスは姫様には似合わないものばかりで。もっと、姫様に似合うものをオーダーメイドできれば、うちの姫様がこの国で一番美しいと、誰もが断言できるように仕上げる自信がありますわ」
優しく髪をとかしながらジュディは笑う。
腰まである少し癖のある髪を、ジュディは器用に編み込んで夜会巻きにしていく。
もちろん、ただ巻くだけではなく、一部を編み込みにして華やかになるよう、演出している。
髪が終わると私に目を閉じるように言い、化粧を施していく。
「今日は母さんがいないけど、私のお化粧も結構いいでしょ?母さんの化粧の技術はすごいけど、若向けではないのよね」
私を着飾らせるとき、ふたりはドレスコーディネートとヘアメイクに分担して私を仕上げてくれるのだ。
今日はマリーはどうしたかと言うと、月に一度の定期報告会があり、そちらに出向いている。
ジュディの兄で、マリーの息子のアーサーは第二騎士団の副団長を務めており、現在隣国ランバラルドへ戦争に行っている。
月に一度、戦況や怪我人の情報等を戦地の連絡係が来て、家族が戦争に行っている者たちに報告をする会があるのだ。
先月は当方ボナール王国優勢と言っていたけれど…。ランバラルドは豊かな国ではないが、中央はまとまっており、強国と聞いている。
うちは充分に豊かな国なのだから、領土を増やしたりせずとも暮らしていけるのに…。
お父様は、そんなに領土やお金が大事なのかな。
うっかり出たため息の向こうには、キラキラした衣装を見に纏う私がいた。
私はジュディを従えて、いつものように城の衣装部屋へと向かった。
お母様やお姉様のドレスは、それぞれの部屋で管理されているが、お二人が飽きてしまったドレスは衣装部屋に放置されているのだ。
いつも私はそこから適当なドレスを選び、アレンジして着ている。
ジュディは色とりどりのドレスを見て、私の髪色にも映える薄い水色のドレスを選んだ。
「こんなにたくさんドレスがあるのに、またドレスを新調なさってました。そんなにお金が余っているなら、姫様にも買ってくださればいいのに」
誰が聞いているかわからないため、ジュディは小さな声で言った。
「声を小さくしても、塔を出たらやたらなことを言ってはだめよ。私はいいの。ドレスがあっても、着ていく機会もないし」
私がドレスを着る機会など、新年の祝賀会で王族揃って挨拶する時くらいだ。
歳の近いお姉様のおかげで、お下がりには事欠かないし。
ジュディは水色のドレスと、それに似合うアクセサリーを数点選んで、私と共にパウダールームへと移動した。
鏡に向かい、まずドレスを着てみる。
「やっぱりセリーヌ様のドレスはゴテゴテしていてうちの姫様には合わないですね」
ジュディはハサミと糸を手に、ウエスト部分に付いていたバラの造花を取り外した。
そして、白い大判の細かいレースを腰から下に掛け、端と端をうまくまとめて大きなリボンのようにして左ウエスト部分に縫い付けた。
次に薄い水色のストールを取り出して肩に掛ける。
大きめの銀の細工のブローチを胸の前で留め、ストールの余りをまるで飾りの一部分のフリルに見えるように織り込んでいく。
胸がかなり開いていたドレスも、これでデコルテ部分を残し、素肌はあまり見えなくなった。
「何度見てもジュディの手は魔法の手ね。」
ジュディは私をドレッサーに向かわせ、腰掛けさせた。
「そんなことはございません。セリーヌ様のドレスは姫様には似合わないものばかりで。もっと、姫様に似合うものをオーダーメイドできれば、うちの姫様がこの国で一番美しいと、誰もが断言できるように仕上げる自信がありますわ」
優しく髪をとかしながらジュディは笑う。
腰まである少し癖のある髪を、ジュディは器用に編み込んで夜会巻きにしていく。
もちろん、ただ巻くだけではなく、一部を編み込みにして華やかになるよう、演出している。
髪が終わると私に目を閉じるように言い、化粧を施していく。
「今日は母さんがいないけど、私のお化粧も結構いいでしょ?母さんの化粧の技術はすごいけど、若向けではないのよね」
私を着飾らせるとき、ふたりはドレスコーディネートとヘアメイクに分担して私を仕上げてくれるのだ。
今日はマリーはどうしたかと言うと、月に一度の定期報告会があり、そちらに出向いている。
ジュディの兄で、マリーの息子のアーサーは第二騎士団の副団長を務めており、現在隣国ランバラルドへ戦争に行っている。
月に一度、戦況や怪我人の情報等を戦地の連絡係が来て、家族が戦争に行っている者たちに報告をする会があるのだ。
先月は当方ボナール王国優勢と言っていたけれど…。ランバラルドは豊かな国ではないが、中央はまとまっており、強国と聞いている。
うちは充分に豊かな国なのだから、領土を増やしたりせずとも暮らしていけるのに…。
お父様は、そんなに領土やお金が大事なのかな。
うっかり出たため息の向こうには、キラキラした衣装を見に纏う私がいた。
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