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11章 ボナールへ再び
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オレはロッテが乗った乗り合い馬車が見えなくなるまで、ずっと馬車を見ていた。
森のあんな危機的状況でロッテに助けてもらい、ロッテが気にならないと言ったら嘘になる。
というか、めちゃくちゃ気になる。
次はいつ会えるんだろう。
ボナールに行く予定があるから来月だろうか。
髪飾り、気に入ってくれるといいけど。
そのまま、オレは歩いて城まで戻ることにした。
ロッテが乗った馬車も、城の方面へ行く馬車だったな。
家はどの辺なんだろう。
いつか家まで送って行きたい。
そういえば、パルフェでは客に食事に誘われていたな。
目を離したら誰かに取られてしまいそうな気がして、胸がザワザワとする。
考え事をしながら歩くと、あっという間に目的地に到着するもので。
気分的にはあっという間だったが、陽はとっくに暮れて辺りは真っ暗になっていた。
顔見知りの門番は、オレの正体を知っているので、咎められることなく、門の中に入る。
自室に戻る前に執務室へ寄ると、まだディリオンは仕事をしていた。
「バカ王子。帰ったのか」
「うるせ。バカで悪かったな。ディリオンはまだ仕事してくのか?」
ディリオンはメガネのツルをクイっと上げてオレを睨んだ。
「これからボナールへ行くというのに、仕事の調整もせずに遊び歩く放蕩王子の世話をせねばならないからな」
「はいはい。ありがとうございます」
オレは執務室中央に置いてあるソファにだらんと腰掛ける。
「もういい加減、平民の振りをして出掛けるのはやめたらどうだ。王太子に何かあったらこの国はどうなる」
「そうだな。この前、森で襲われた時には真剣に後継問題を考えたよ」
ディリオンはペンを置いてこちらに向き直る。
「ほんとによく助かったものだ。運が良かったのだな」
「まあね。森で天使に出会ったからな」
「バカめ。森で出会うのはくまさんぐらいにしておけ」
「いや、天使だったよ」
オレがニマニマと笑うのと反比例して、ディリオンの眉間のシワが濃く刻まれていく。
「天使なわけがないのだよ。そんな森にいたなんて、胡散臭くてしようがない。王子は女に免疫がないから騙されやすい」
ムッとして口を尖らせる。
「騙されてなんかない。あの子はほんとにいい子だよ」
「まあ、いい子だろうが悪い子だろうがオレには関係がないがな。お前にも、だ。行きずりの女がいくらいい女だとしても、それだけだ」
「…わかってる」
オレはひとつため息をついた。
「王子、わかっていると思うが、来月の夜会はすっぽかす事なく出席するように」
「だからわかってるって」
ゴロンとソファに横になる。
ディリオンに言われなくてもわかっている。
自分の役割。自分の責任。
今見てるのは、一時の夢だ。
オレを見てディリオンは深いため息をつき、ペンを置いた。
メガネを外して、布でレンズを磨く。
「好きなことがしたいのなら、お前の地位を盤石なものにしろ。全てはそれからだ」
キラッと反射するメガネをかけ直す。
「そして、そうするためにオレたち側近がいる。オレたちをうまく使え。そして、オレたちを失望させず、世を治めろ」
オレは起き上がってディリオンの顔を見る。
ディリオンの瞳は、まっすぐにオレを見ていた。
「…もちろん、失望なんかさせやしない。まあ、見てろって」
「はっ、お手並み拝見だな」
お互い、ニヤリと笑う。
パタンと書類を閉じ、ペンを片付けてディリオンは言う。
「オレも今日は帰る。明日は5人揃って打ち合わせだ。…ボナールがキナ臭いからな」
「はいよ。未来のオレの頭脳。お前を信じてるよ」
「ふん。当然だ」
自信に満ちた笑いを残して、ディリオンは去って行った。
地位を盤石なものにしたら、夢は叶うのだろうか。
ははっ、
自嘲的な笑いが口から漏れる。
未来のオレの頭脳たちを信じよう。
将来、オレが治める世になった時、宰相になるのはディリオンだ。
現宰相子息のフレッドは、最初から宰相の道は選ばなかった。
自分はどちらかと言えば、諜報能力に長けているのでそちらに回りたいと、本人が言ったのだ。
案外素直なディリオンは、諜報には向かない。
コンラッドは騎士団に所属し、ジェイミーはすでに近衛になるべく精進している。
オレはオレの信じる仲間とこの国を治めて行く。
森のあんな危機的状況でロッテに助けてもらい、ロッテが気にならないと言ったら嘘になる。
というか、めちゃくちゃ気になる。
次はいつ会えるんだろう。
ボナールに行く予定があるから来月だろうか。
髪飾り、気に入ってくれるといいけど。
そのまま、オレは歩いて城まで戻ることにした。
ロッテが乗った馬車も、城の方面へ行く馬車だったな。
家はどの辺なんだろう。
いつか家まで送って行きたい。
そういえば、パルフェでは客に食事に誘われていたな。
目を離したら誰かに取られてしまいそうな気がして、胸がザワザワとする。
考え事をしながら歩くと、あっという間に目的地に到着するもので。
気分的にはあっという間だったが、陽はとっくに暮れて辺りは真っ暗になっていた。
顔見知りの門番は、オレの正体を知っているので、咎められることなく、門の中に入る。
自室に戻る前に執務室へ寄ると、まだディリオンは仕事をしていた。
「バカ王子。帰ったのか」
「うるせ。バカで悪かったな。ディリオンはまだ仕事してくのか?」
ディリオンはメガネのツルをクイっと上げてオレを睨んだ。
「これからボナールへ行くというのに、仕事の調整もせずに遊び歩く放蕩王子の世話をせねばならないからな」
「はいはい。ありがとうございます」
オレは執務室中央に置いてあるソファにだらんと腰掛ける。
「もういい加減、平民の振りをして出掛けるのはやめたらどうだ。王太子に何かあったらこの国はどうなる」
「そうだな。この前、森で襲われた時には真剣に後継問題を考えたよ」
ディリオンはペンを置いてこちらに向き直る。
「ほんとによく助かったものだ。運が良かったのだな」
「まあね。森で天使に出会ったからな」
「バカめ。森で出会うのはくまさんぐらいにしておけ」
「いや、天使だったよ」
オレがニマニマと笑うのと反比例して、ディリオンの眉間のシワが濃く刻まれていく。
「天使なわけがないのだよ。そんな森にいたなんて、胡散臭くてしようがない。王子は女に免疫がないから騙されやすい」
ムッとして口を尖らせる。
「騙されてなんかない。あの子はほんとにいい子だよ」
「まあ、いい子だろうが悪い子だろうがオレには関係がないがな。お前にも、だ。行きずりの女がいくらいい女だとしても、それだけだ」
「…わかってる」
オレはひとつため息をついた。
「王子、わかっていると思うが、来月の夜会はすっぽかす事なく出席するように」
「だからわかってるって」
ゴロンとソファに横になる。
ディリオンに言われなくてもわかっている。
自分の役割。自分の責任。
今見てるのは、一時の夢だ。
オレを見てディリオンは深いため息をつき、ペンを置いた。
メガネを外して、布でレンズを磨く。
「好きなことがしたいのなら、お前の地位を盤石なものにしろ。全てはそれからだ」
キラッと反射するメガネをかけ直す。
「そして、そうするためにオレたち側近がいる。オレたちをうまく使え。そして、オレたちを失望させず、世を治めろ」
オレは起き上がってディリオンの顔を見る。
ディリオンの瞳は、まっすぐにオレを見ていた。
「…もちろん、失望なんかさせやしない。まあ、見てろって」
「はっ、お手並み拝見だな」
お互い、ニヤリと笑う。
パタンと書類を閉じ、ペンを片付けてディリオンは言う。
「オレも今日は帰る。明日は5人揃って打ち合わせだ。…ボナールがキナ臭いからな」
「はいよ。未来のオレの頭脳。お前を信じてるよ」
「ふん。当然だ」
自信に満ちた笑いを残して、ディリオンは去って行った。
地位を盤石なものにしたら、夢は叶うのだろうか。
ははっ、
自嘲的な笑いが口から漏れる。
未来のオレの頭脳たちを信じよう。
将来、オレが治める世になった時、宰相になるのはディリオンだ。
現宰相子息のフレッドは、最初から宰相の道は選ばなかった。
自分はどちらかと言えば、諜報能力に長けているのでそちらに回りたいと、本人が言ったのだ。
案外素直なディリオンは、諜報には向かない。
コンラッドは騎士団に所属し、ジェイミーはすでに近衛になるべく精進している。
オレはオレの信じる仲間とこの国を治めて行く。
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