人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
80 / 187
11章 ボナールへ再び

2

しおりを挟む
ディリオンが資料をまとめる。

執務室にはオレたち5人が集まっていた。
「以上が、ここ最近のボナールの動きだ」
ディリオンの説明によれば、国の情勢はあまり良くない。
国王が金を集められるだけ集めている。
しかし、再び戦争をしかけるのはかなり無理がある。
一体、何がしたいのか…。

「ディリちゃん、このままだと、ボナールは転覆しちゃうんじゃないの?」
フレッドが書類に目を通して言う。
「その通りだ。国王のくせに、そんなこともわからんのかと、うちの王太子なら叱り飛ばされているな」
「オレは愚かな王にはならん!」
「まあ、まあ、ふたりとも」

「で、あるから、予定通りフレッドにはボナールへ調査に行って欲しいのだが」
「ん。オッケー。準備はできてるから明日にでも出掛けられるよん」

コンラッドがこちらを見る。
「今度は、どのようにして訪問をする?」
多分、影武者を立てるかどうかを聞いているのだと思うが。
「いや、今回はフレッドが代表ということでいいだろう。ディリオンとコンラッドはランバラルドに残ってくれ。森の中でオレが会った盗賊の方ももう少しでカタがつくんだろ?」

そう。森でオレを襲ったやつらは、奴隷としてオレを売ると言っていた。
我が国では奴隷制度を廃止しているが、我が国の国民を奴隷として他国に売られるのを黙って見ていられない。
ディリオンとコンラッドが、密かに摘発の準備を進めているのだ。

「今回は、フレッドを代表に、オレとジェイミーの3人で行こう。ディリオンには申し訳ないが、ドニーと相談して、来月の夜会の方も準備を進めておいてくれ」
オレが夜会の話を出すと、フレッドが目を輝かせた。
「来月のは大きい夜会だからねー。他国のお姫様も招待してるんだろ?父さん面食いだから、美姫と噂のある国のお姫様は、片っ端っから招待状送ってたもんね」
ディリオンがメガネのツルをクイっと上げる。
「まったく…。親子揃って女好きか」
「いやね、ディリちゃん。可愛い女の子には声をかけるのが男の子ってもんでしょ」
そういえば、ドニーは今は奥方一筋だが昔は遊んでいたと聞いたことがあるな…。血筋か…。

その後、ディリオンは森の盗賊についての調査報告を簡単にし、見張っている者から連絡が入り次第、摘発の予定だと言った。
うまく行けば、オレたちがボナールに行っている間に終わっているかも知れないと。
そして最後に、オレを指差して言った。

「王子、今度はちゃんと馬車を用意して乗って行け。また遭難されたらかなわん」
「はいはい」
オレだってそのつもりだよ。
二度も天使に巡り逢える幸運なんて、そうそうないだろうからな。


数日の準備期間の後、オレとフレッドとジェイミーはボナールへと向けて出発した。

ランバラルドを留守にするのは少し不安だ。
数日会えなくなるが、ロッテはオレのことをたまには思い出してくれるだろうか。
いつ戻るのかもわからないので、次に会う約束はしなかった。

フレッドと一緒に乗っている馬車の中でロッテのことを思い、オレはロッテとのデート(ロッテは違うかもしれないけどオレはそう思ってる!)の後にパルフェに行って買ったロッテのクッキーを出した。
ちなみに、ジェイミーは護衛のため馬車には乗らずに馬でついてきている。

パルフェに行った時、アーサーとマリーにはすごく睨まれた。
ロッテに手は出してないだろうな、と凄んだアーサーは城の騎士団に所属していると言われても疑わないくらいの殺気を出していて、オレは震えあがりながら、ロッテには誠実に向かい合うことを約束させられた。

ふっ、と思わず笑ってしまった。
ジェイミーが婚約者の父親に会う時は緊張すると言っていたが、こんな気分かと思うとおかしかった。

そんなオレにフレッドが気付き、馬車の中で広げていた書類から顔を上げてオレを見た。
「王子なに思い出し笑いなんかしちゃってんの?」
怪訝そうな顔をしてそう言ったあと、オレの手元をじっと見た。

「王子、そのクッキーどうしたの?」
「ああ、これか。今町で人気のクッキーだぞ。なんでも食べると元気になるそうだ。昨日行って買ってきたんだ。フレッドも食うか?」
クッキーを差し出すと、フレッドはじっとクッキーを見て、ゆっくりと一つ摘んだ。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」

千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。 だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。 それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。 しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。 怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。 戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

処理中です...