人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
78 / 187
10章 待ち惚け王子

12

しおりを挟む

ライが連れてきてくれたお店は、ギルバート様が連れてきてくださったお店とは別のところだった。
多分、今日のお店の方が全体的にお値段が安い気がする。
私は目を輝かせて、お店の中を見て回った。
「ライ、この服はどうかしら?」
ラベンダー色のワンピースをライに見せると、ライは青いワンピースを私に差し出した。
「こっちの色も着てみてよ。ほら、オレの瞳と同じ色」
悪戯っ子のような表情でそう言うライ。
私は両方を持って試着室に入った。

まず、ラベンダーの方を着て、ライに見せる。
「どお?」
ライは微笑んで「かわいい」とだけ言ってくれた。
次に、ライの選んだ青のワンピースを着る。
青い生地に襟と袖口に白いレースが使われているものだ。
「ライ、見て。こっちもステキなワンピースよね」
試着室のカーテンを開けると、ライは顔を赤くしてこちらに駆け寄ってきた。
「絶対、こっちの方がいいよ!すごくかわいい!すごくいい!」
私はどちらも気に入ったけれど、ライがそこまで勧めてくれるならと、青いワンピースを買うことにした。

お会計をすると、ライの姿が見えなくなっていた。
「ライ?どこ?」
店の中を見回すと、どこからともなくライが現れる。
「ごめん。こんな店、男一人では入らないから珍しくてつい」
「ううん。いいの。付き合ってくれてありがとう。次は、ライの行きたいところに行きましょう」
服屋さんを出てライに言うけれど、ライは行きたいところはないと言う。

「じゃあ、帰りましょうか」
私がそう言うと、ライは慌ててキョロキョロしだした。
「あ、あそこのカフェに入ろう!オレ、喉が渇いた!…ダメ?」
ライは背が高いのに、少し俯いて上目遣いにこちらを見てくる。
「…ダメなわけないでしょう」
そんなライが少し可愛かった。

カフェは初めて入ったけれど、とてもオシャレだった。
ジュディがした飾り付けのような店内。
パルフェと違うのは、テーブルクロスも白いレースでできていて、椅子も白くてとてもステキだった。
メニューを開くと、チョコレートケーキの文字が見える。
「ロッテ、なんでも好きなもの頼んでいいよ」
「ほんと?あの、あのね、チョコレートケーキが食べたいです…」
くすくすと笑うライ。

「チョコレートケーキが好きなの?」
「ええ。チョコレート、滅多に食べられないから…」
ちょっと恥ずかしくて、私の頬が赤くなる。
ライは、うっ、と息を詰まらせ「好きなだけ頼んでいいよ」と言って、右手で鼻と口を覆った。
何故、ライが顔を隠すのか、私にはわからない。


そろそろ辺りが暗くなってきた頃、ライに家に帰ると告げる。
「えっ、まだ夕方じゃないか」
「でも、遅くなると心配するから…」
ライは残念そうに、ふうと息を吐いた。
「ね、今日は家まで送ってもいい?」
乗り合い馬車の乗り場まで歩いている時、ライが私の近くに寄ってきて言う。
「ごめんなさい。家は…知られたくないの」
「アーサー達と住んでるんじゃないんだね」
「ええ。マリーもアーサーも、家にはきたことはないわ」
「それなら、仕方ないな」
残念そうに笑いながら、ライは馬車の乗り場まで送ってくれた。

「ね、ロッテ。また会ってくれる?」
「もちろん!あ、そうだ。これ、ライの分のクッキー。今日はありがとう。チョコレートケーキ、とても美味しかったわ」

私はライに手を振って、馬車に乗ろうと入り口に足を掛けた。
「ロッテ!」
不意にライに手を引かれ、バランスを崩して倒れそうになる。

「っく、」
ライが私をきゅっと抱きしめる。
「ごめん。急に引っ張って。オレ、少ししたらまた遠くの町まで行かなきゃならないんだ。少し先になるけど、また誘ってもいい?」
「え、ええ。もちろんよ」
でも転ぶからいきなり手を引くのはやめて欲しい。

ライは私の髪をそっとなぞった。
頭に少しの感触と、パチンという音。
「これ、今日の記念にオレからプレゼント。よかったら使って」
微笑むライに、頭を触ると何かが付いていた。

髪飾り?
それを取って見ようとしたところで、御者さんがもう馬車を出すと言う。
「ごめんなさい。ライ、ありがとう。またね」
慌ててライに手を振って、私は馬車に乗り込んだ。

馬車の中で見たそれは、青い石のはめ込まれた、綺麗な髪飾りだった。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」

千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。 だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。 それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。 しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。 怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。 戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

処理中です...