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10章 待ち惚け王子
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しおりを挟むライが連れてきてくれたお店は、ギルバート様が連れてきてくださったお店とは別のところだった。
多分、今日のお店の方が全体的にお値段が安い気がする。
私は目を輝かせて、お店の中を見て回った。
「ライ、この服はどうかしら?」
ラベンダー色のワンピースをライに見せると、ライは青いワンピースを私に差し出した。
「こっちの色も着てみてよ。ほら、オレの瞳と同じ色」
悪戯っ子のような表情でそう言うライ。
私は両方を持って試着室に入った。
まず、ラベンダーの方を着て、ライに見せる。
「どお?」
ライは微笑んで「かわいい」とだけ言ってくれた。
次に、ライの選んだ青のワンピースを着る。
青い生地に襟と袖口に白いレースが使われているものだ。
「ライ、見て。こっちもステキなワンピースよね」
試着室のカーテンを開けると、ライは顔を赤くしてこちらに駆け寄ってきた。
「絶対、こっちの方がいいよ!すごくかわいい!すごくいい!」
私はどちらも気に入ったけれど、ライがそこまで勧めてくれるならと、青いワンピースを買うことにした。
お会計をすると、ライの姿が見えなくなっていた。
「ライ?どこ?」
店の中を見回すと、どこからともなくライが現れる。
「ごめん。こんな店、男一人では入らないから珍しくてつい」
「ううん。いいの。付き合ってくれてありがとう。次は、ライの行きたいところに行きましょう」
服屋さんを出てライに言うけれど、ライは行きたいところはないと言う。
「じゃあ、帰りましょうか」
私がそう言うと、ライは慌ててキョロキョロしだした。
「あ、あそこのカフェに入ろう!オレ、喉が渇いた!…ダメ?」
ライは背が高いのに、少し俯いて上目遣いにこちらを見てくる。
「…ダメなわけないでしょう」
そんなライが少し可愛かった。
カフェは初めて入ったけれど、とてもオシャレだった。
ジュディがした飾り付けのような店内。
パルフェと違うのは、テーブルクロスも白いレースでできていて、椅子も白くてとてもステキだった。
メニューを開くと、チョコレートケーキの文字が見える。
「ロッテ、なんでも好きなもの頼んでいいよ」
「ほんと?あの、あのね、チョコレートケーキが食べたいです…」
くすくすと笑うライ。
「チョコレートケーキが好きなの?」
「ええ。チョコレート、滅多に食べられないから…」
ちょっと恥ずかしくて、私の頬が赤くなる。
ライは、うっ、と息を詰まらせ「好きなだけ頼んでいいよ」と言って、右手で鼻と口を覆った。
何故、ライが顔を隠すのか、私にはわからない。
そろそろ辺りが暗くなってきた頃、ライに家に帰ると告げる。
「えっ、まだ夕方じゃないか」
「でも、遅くなると心配するから…」
ライは残念そうに、ふうと息を吐いた。
「ね、今日は家まで送ってもいい?」
乗り合い馬車の乗り場まで歩いている時、ライが私の近くに寄ってきて言う。
「ごめんなさい。家は…知られたくないの」
「アーサー達と住んでるんじゃないんだね」
「ええ。マリーもアーサーも、家にはきたことはないわ」
「それなら、仕方ないな」
残念そうに笑いながら、ライは馬車の乗り場まで送ってくれた。
「ね、ロッテ。また会ってくれる?」
「もちろん!あ、そうだ。これ、ライの分のクッキー。今日はありがとう。チョコレートケーキ、とても美味しかったわ」
私はライに手を振って、馬車に乗ろうと入り口に足を掛けた。
「ロッテ!」
不意にライに手を引かれ、バランスを崩して倒れそうになる。
「っく、」
ライが私をきゅっと抱きしめる。
「ごめん。急に引っ張って。オレ、少ししたらまた遠くの町まで行かなきゃならないんだ。少し先になるけど、また誘ってもいい?」
「え、ええ。もちろんよ」
でも転ぶからいきなり手を引くのはやめて欲しい。
ライは私の髪をそっとなぞった。
頭に少しの感触と、パチンという音。
「これ、今日の記念にオレからプレゼント。よかったら使って」
微笑むライに、頭を触ると何かが付いていた。
髪飾り?
それを取って見ようとしたところで、御者さんがもう馬車を出すと言う。
「ごめんなさい。ライ、ありがとう。またね」
慌ててライに手を振って、私は馬車に乗り込んだ。
馬車の中で見たそれは、青い石のはめ込まれた、綺麗な髪飾りだった。
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