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10章 待ち惚け王子
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「私、行きたいところがあるの」
私がモジモジと言うと、優しい笑顔でライは首を傾げた。
「ん?どこ?どこにでも連れて行ってあげるよ?」
私は今日、今までのクッキーの売り上げを持ってきている。
今日は、念願の自分の服を買いたいのだ。
「ほら、この前、自分のお金で服を買いたいって言ったでしょう?安い服なら買えるくらい、お金が貯まったから、お洋服屋さんに行きたいの。一人でお店に行ったことがないから、ライに付き合ってもらえたら嬉しいわ」
「もちろん、いくらでも付き合うよ。女の子の服屋かぁ。オレも入ったことはないけど、向こうの方に町の娘がよくいる服屋があったと思う。少し歩くけど、いいかな?」
「うんっ!」
私は、ライに連れられて歩き始めた。
町は賑やかで、とても楽しい。
ライとは他愛ないおしゃべりをして、このところクッキーをたくさん焼いた話とか、マリーはお料理が上手とかそんな話をしていた。
歩きながら話をしていた時に、ふと子どもの泣き声に気がついた。
キョロキョロと辺りを見回すと、小さな子どもがふたり、泣いていた。
「ロッテ、どうした?」
「ん、あの子たちが…」
ライに言って子どもたちを指す。
子ども達に歩み寄ってみると、兄弟のようだった。
弟が転んで泣いてしまって、お兄ちゃんはどうすることもできずに、一緒に泣いてしまっていた。
ふたりとも、4歳前後だろうか。
私はしゃがみ込んで、子ども達に話しかけた。
「転んじゃったの?」
お兄ちゃんらしき子は泣きながら、私に訴える。
「ぼく、ダメだって言ったのに、走ったりするから、お母さん、家で待ってるのに、おつかいに行きたいのに、」
「そっか、おつかいに行く途中で転んじゃったのか」
ライは弟の方を抱き起こしてホコリを払ってあげていた。
「少し擦りむいているけど、そんなにひどい傷にはなっていないから、家に帰ったらお母さんに消毒してもらうといいよ」
ライがふたりに言うけど、なかなか泣き止まない。
私はポケットの中を探す。
「はい。クッキー。3枚しかないけど、ふたりで分けて食べて。このクッキー、食べると元気になるのよ」
行きの乗り合い馬車の中で私が摘んだクッキーの残りがポケットに入っていたのだ。
早速、ふたりは一枚ずつを口にした。
「うん…おいしい…」
ひっくひっくと、またしゃくり上げているけれど、男の子達は泣き止んでくれた。
最後の一枚は半分こにするね、と、最後は笑顔になって、手を振って走って行った。
また転ばなきゃいいけど。
「…ロッテ、きみは…」
ライが私の顔を見つめる。
「なあに?」
「いや、ロッテは優しいね」
「そんなことありませんよ。私は自分にできることをしただけです」
ライは笑いながら首を振る。
「いや、充分優しい」
「ふふ。ありがとう。さ、急ぎましょ。早くお店に行きたいわ」
そうして、また私達は歩き始めた。
私がモジモジと言うと、優しい笑顔でライは首を傾げた。
「ん?どこ?どこにでも連れて行ってあげるよ?」
私は今日、今までのクッキーの売り上げを持ってきている。
今日は、念願の自分の服を買いたいのだ。
「ほら、この前、自分のお金で服を買いたいって言ったでしょう?安い服なら買えるくらい、お金が貯まったから、お洋服屋さんに行きたいの。一人でお店に行ったことがないから、ライに付き合ってもらえたら嬉しいわ」
「もちろん、いくらでも付き合うよ。女の子の服屋かぁ。オレも入ったことはないけど、向こうの方に町の娘がよくいる服屋があったと思う。少し歩くけど、いいかな?」
「うんっ!」
私は、ライに連れられて歩き始めた。
町は賑やかで、とても楽しい。
ライとは他愛ないおしゃべりをして、このところクッキーをたくさん焼いた話とか、マリーはお料理が上手とかそんな話をしていた。
歩きながら話をしていた時に、ふと子どもの泣き声に気がついた。
キョロキョロと辺りを見回すと、小さな子どもがふたり、泣いていた。
「ロッテ、どうした?」
「ん、あの子たちが…」
ライに言って子どもたちを指す。
子ども達に歩み寄ってみると、兄弟のようだった。
弟が転んで泣いてしまって、お兄ちゃんはどうすることもできずに、一緒に泣いてしまっていた。
ふたりとも、4歳前後だろうか。
私はしゃがみ込んで、子ども達に話しかけた。
「転んじゃったの?」
お兄ちゃんらしき子は泣きながら、私に訴える。
「ぼく、ダメだって言ったのに、走ったりするから、お母さん、家で待ってるのに、おつかいに行きたいのに、」
「そっか、おつかいに行く途中で転んじゃったのか」
ライは弟の方を抱き起こしてホコリを払ってあげていた。
「少し擦りむいているけど、そんなにひどい傷にはなっていないから、家に帰ったらお母さんに消毒してもらうといいよ」
ライがふたりに言うけど、なかなか泣き止まない。
私はポケットの中を探す。
「はい。クッキー。3枚しかないけど、ふたりで分けて食べて。このクッキー、食べると元気になるのよ」
行きの乗り合い馬車の中で私が摘んだクッキーの残りがポケットに入っていたのだ。
早速、ふたりは一枚ずつを口にした。
「うん…おいしい…」
ひっくひっくと、またしゃくり上げているけれど、男の子達は泣き止んでくれた。
最後の一枚は半分こにするね、と、最後は笑顔になって、手を振って走って行った。
また転ばなきゃいいけど。
「…ロッテ、きみは…」
ライが私の顔を見つめる。
「なあに?」
「いや、ロッテは優しいね」
「そんなことありませんよ。私は自分にできることをしただけです」
ライは笑いながら首を振る。
「いや、充分優しい」
「ふふ。ありがとう。さ、急ぎましょ。早くお店に行きたいわ」
そうして、また私達は歩き始めた。
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