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12章 告白への道のり
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私は食材を入れたワゴンを押して、急いで離宮に戻った。
お菓子は、パウンドケーキを焼いて寝かせておいたのが、いい感じに生地が落ち着いている頃だと思う。
あとは、いつものクッキー…はジュディにパルフェに持って行ってもらっちゃったからあんまり残っていないわ。
ギルバート様用に取っておいた分から少しいただいちゃおう。
あ、試作品のココアババロアが少しだけあるからあれも持って行こう。
それと、疲れているからとおっしゃっていたから、ハーブティーも持って行っておこうかしら。
ご不要なら持って帰ればいいし。
これだけあれば、ご満足いただけるかしら?
って言ってもこれしかないんだけど…。
急いでバスケットに全部入れて、本宮に取って返した。
初めて入る中央棟は、私たちがいつも出入りしている北棟と比べて、荘厳な雰囲気だわ。
入口から何人もいる衛兵に、行き先を何度も聞かれて、何度もディリオン様のポケットチーフを見せる。
そうして、やっと辿り着いた王太子の執務室は、ドアも豪華で、ノックするのも躊躇ってしまう。
ん?ちょっと待って。
王太子の執務室ということは、すごく久しぶりに王太子様にお会いするのよね?
…もう顔も覚えていないけれど。
そして、王太子様は私の旦那様なのよね?
…もう顔も覚えていないけれど。
なんか、メイド姿ではまずい気がするわ。
でも、ディリオン様も私の顔は覚えていなかったようだし、メイド服着ているし、他人の振りをすれば大丈夫かしら?
フレッド様がいらしたらアウトだけれど。
コンコン。
「入れ」
ノックをすると、すぐに返事が来た。
おそるおそるドアを開けると、雑然と書類が詰まれる机が4つと、中央に応接セットが置かれていた。
その机の一つに、ディリオン様は座って、眉と眉の間に深いシワを刻みながら書き仕事をなさっていた。
「アヴェーヌ閣下、お菓子をお持ちしました」
「うむ。そちらにミニキッチンがある。お茶を入れて机ではなくソファのところに置け」
「かしこまりました」
バスケットを持って、部屋の端のミニキッチンに行く。
ドアの前でドキドキしたけど、ディリオン様お一人でよかったわ。
キッチンに置いてあった紅茶を手に取る。
ダージリン一種類しか置いていないわ。
まあ、ダージリンは何にでも合うからいいけれど。
「アヴェーヌ閣下、紅茶の他にハーブティーがございますが、紅茶の方がよろしいですか?」
ディリオン様は書類から顔を上げた。
「ハーブティー?そんなものはここにはないが?」
「北棟よりお持ちしました。リラックスできる効果があります。ただ、苦味がありますので、はちみつを少し入れますが」
「わかった。それをもらおう」
「かしこまりました」
お湯を沸かしてハーブティーを入れる。
パウンドケーキを切り分けて、1人分の量にしてお皿に入れ、ギルバート様用クッキー2枚を横に添える。
あとは、小さな透明なガラスの器に、ババロアを入れる。お一人で良かったわ。量もちょうど良い。
「アヴェーヌ閣下、お茶が入りました」
ディリオン様は軽く頷くと、ソファまでやってきて、真ん中に座った。
「ハーブティーというのは、変わった匂いだな」
「そうですね。紅茶とは違いますね」
コクリと飲み下す。
「味も変わった味だが、暖まるな」
「そうですね。リラックス作用がありますから、寝る前などにお飲みいただいてもいいですよ。熟睡できれば疲れも取れます」
「そうか。こっちの黒いクリームはなんだ」
「ココアのババロアです。冷んやりしていて美味しいですよ」
ディリオン様はスプーンですくって、一口で食べてしまった。
「ほお、これは美味いな。甘味もほど良い。もっとないのか?」
「申し訳ありません。最後のひとさじでした」
だって、あんなに大きな口で頬張るお菓子じゃないはずなのに…。
次にパウンドケーキをフォークで切り、口に運ぶ。
「これも美味いな。素朴な味で、いつも城で食う菓子とは違う趣きだが悪くない」
「アヴェーヌ閣下のお口に合ってよかったです」
「…嫡男ではあるが、まだ家督は継いでおらん。オレを呼ぶ時はディリオンでいい」
「はい。ディリオン様。お疲れは取れましたか?」
ディリオン様はちらっと私を見て、ため息をついた。
私はお盆を両腕で抱き抱えて、身を縮こませた。
「バカが、ただでさえ忙しいのに、平民の女に入れあげてな。夜会で婚約者を決めないと言い出しだのだ」
バカが誰を指すのかわからないので、曖昧に笑ってみる。
「捕縛作戦をした賊には逃げられるし、一体オレが何をしたって言うんだ。万全の体制で臨んだのに、裏目にばかり出る」
「はぁ、お疲れ様です」
くっと、ハーブティーを飲み干して、ディリオン様はカップを私に差し出した。
はいはい。おかわりですね。
カップをいただいて、おかわりを注ぐ。
「だから、出会うのはくまさんぐらいにしておけと言ったのに」
?
くまさん?
なんか、段々酔っ払いみたいになっていた。
ハーブティーだから、ブランデーを落としたりはしていないのに…。
「王子のやつめ!夜会にはなんとしてでも出席をさせ、婚約者をあてがってやる!!」
あぁ、バカというのは王太子様のことだったのね。
平民に入れあげているというのも、王太子様だったのね…。
お菓子は、パウンドケーキを焼いて寝かせておいたのが、いい感じに生地が落ち着いている頃だと思う。
あとは、いつものクッキー…はジュディにパルフェに持って行ってもらっちゃったからあんまり残っていないわ。
ギルバート様用に取っておいた分から少しいただいちゃおう。
あ、試作品のココアババロアが少しだけあるからあれも持って行こう。
それと、疲れているからとおっしゃっていたから、ハーブティーも持って行っておこうかしら。
ご不要なら持って帰ればいいし。
これだけあれば、ご満足いただけるかしら?
って言ってもこれしかないんだけど…。
急いでバスケットに全部入れて、本宮に取って返した。
初めて入る中央棟は、私たちがいつも出入りしている北棟と比べて、荘厳な雰囲気だわ。
入口から何人もいる衛兵に、行き先を何度も聞かれて、何度もディリオン様のポケットチーフを見せる。
そうして、やっと辿り着いた王太子の執務室は、ドアも豪華で、ノックするのも躊躇ってしまう。
ん?ちょっと待って。
王太子の執務室ということは、すごく久しぶりに王太子様にお会いするのよね?
…もう顔も覚えていないけれど。
そして、王太子様は私の旦那様なのよね?
…もう顔も覚えていないけれど。
なんか、メイド姿ではまずい気がするわ。
でも、ディリオン様も私の顔は覚えていなかったようだし、メイド服着ているし、他人の振りをすれば大丈夫かしら?
フレッド様がいらしたらアウトだけれど。
コンコン。
「入れ」
ノックをすると、すぐに返事が来た。
おそるおそるドアを開けると、雑然と書類が詰まれる机が4つと、中央に応接セットが置かれていた。
その机の一つに、ディリオン様は座って、眉と眉の間に深いシワを刻みながら書き仕事をなさっていた。
「アヴェーヌ閣下、お菓子をお持ちしました」
「うむ。そちらにミニキッチンがある。お茶を入れて机ではなくソファのところに置け」
「かしこまりました」
バスケットを持って、部屋の端のミニキッチンに行く。
ドアの前でドキドキしたけど、ディリオン様お一人でよかったわ。
キッチンに置いてあった紅茶を手に取る。
ダージリン一種類しか置いていないわ。
まあ、ダージリンは何にでも合うからいいけれど。
「アヴェーヌ閣下、紅茶の他にハーブティーがございますが、紅茶の方がよろしいですか?」
ディリオン様は書類から顔を上げた。
「ハーブティー?そんなものはここにはないが?」
「北棟よりお持ちしました。リラックスできる効果があります。ただ、苦味がありますので、はちみつを少し入れますが」
「わかった。それをもらおう」
「かしこまりました」
お湯を沸かしてハーブティーを入れる。
パウンドケーキを切り分けて、1人分の量にしてお皿に入れ、ギルバート様用クッキー2枚を横に添える。
あとは、小さな透明なガラスの器に、ババロアを入れる。お一人で良かったわ。量もちょうど良い。
「アヴェーヌ閣下、お茶が入りました」
ディリオン様は軽く頷くと、ソファまでやってきて、真ん中に座った。
「ハーブティーというのは、変わった匂いだな」
「そうですね。紅茶とは違いますね」
コクリと飲み下す。
「味も変わった味だが、暖まるな」
「そうですね。リラックス作用がありますから、寝る前などにお飲みいただいてもいいですよ。熟睡できれば疲れも取れます」
「そうか。こっちの黒いクリームはなんだ」
「ココアのババロアです。冷んやりしていて美味しいですよ」
ディリオン様はスプーンですくって、一口で食べてしまった。
「ほお、これは美味いな。甘味もほど良い。もっとないのか?」
「申し訳ありません。最後のひとさじでした」
だって、あんなに大きな口で頬張るお菓子じゃないはずなのに…。
次にパウンドケーキをフォークで切り、口に運ぶ。
「これも美味いな。素朴な味で、いつも城で食う菓子とは違う趣きだが悪くない」
「アヴェーヌ閣下のお口に合ってよかったです」
「…嫡男ではあるが、まだ家督は継いでおらん。オレを呼ぶ時はディリオンでいい」
「はい。ディリオン様。お疲れは取れましたか?」
ディリオン様はちらっと私を見て、ため息をついた。
私はお盆を両腕で抱き抱えて、身を縮こませた。
「バカが、ただでさえ忙しいのに、平民の女に入れあげてな。夜会で婚約者を決めないと言い出しだのだ」
バカが誰を指すのかわからないので、曖昧に笑ってみる。
「捕縛作戦をした賊には逃げられるし、一体オレが何をしたって言うんだ。万全の体制で臨んだのに、裏目にばかり出る」
「はぁ、お疲れ様です」
くっと、ハーブティーを飲み干して、ディリオン様はカップを私に差し出した。
はいはい。おかわりですね。
カップをいただいて、おかわりを注ぐ。
「だから、出会うのはくまさんぐらいにしておけと言ったのに」
?
くまさん?
なんか、段々酔っ払いみたいになっていた。
ハーブティーだから、ブランデーを落としたりはしていないのに…。
「王子のやつめ!夜会にはなんとしてでも出席をさせ、婚約者をあてがってやる!!」
あぁ、バカというのは王太子様のことだったのね。
平民に入れあげているというのも、王太子様だったのね…。
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