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完結後 番外編 元人質姫と忘れんぼ王の結婚式
6. パルフェの今後
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大神殿で行われるボナールの王族の結婚式は、祭壇で待つ神官長の側まで、国王が一人で歩く。
国王が男性であっても、女性であっても、それは変わらない。
それを知らない他国の2人の間で、言い争いが起こった。
「シャーロットの手を引いてバージンロードを歩くのは、帝国の王であるこのわたしだ」
黒髪のたくましい男は、大神殿内へ入ろうと足を向ける。
「何をおっしゃる。いくら帝国の王であってもバージンロードは兄に譲るのが筋だというもの」
ギルバートとジルベールは大神殿の入り口に居た。
式に参列するために正装をしている美丈夫2人が、睨み合いを続けていたのだ。
他の参列者は、それを遠巻きに見るしかできることはない。
護衛の騎士や神官たちも、帝国の王とランバラルドの公爵の睨み合いに口を出せるはずもなく、みなオロオロと様子を見守るばかりだった。
そこへ、ボナールの宰相であるためにあちこち走り回って様子を見ていたフレッドが通りがかり、2人の間に割って入った。
「はいはーい。ボナールではバージンロードを新婦が父親役と必ず歩くという風習はないから、2人とも大人しく着席してくださいね~」
フレッドの言葉に2人が振り向く。
「なにっ! フレッド、何故保護者とバージンロードを歩かないのだ!」
「ちょっと、ギルバート様迫って来ないでよ。ボナールの王族の結婚式は、神事なんだよ。男女どちらが王であっても、神官長の前まで一人で歩くの! これ、決まりなの!」
シャーロットを取り合っていた2人はショボンと肩を落とした。
あんまりにも分かりやすく肩を落とす2人を可哀想に思い、フレッドは声をかけた。
「まあまあ。バージンロードを一緒には歩けないけと、式を楽しみにしててよ。白いドレスのシャーロットちゃん、すごく綺麗だから」
言い終わった瞬間、2人の視線がフレッドを射抜く。
「フレッド、お前まさかもうシャーロットのドレス姿を見たのか?」
「え? 見てませんよ。だって、ボナールでは結婚式前の新婦に家族以外の者は会えないもん」
ジルベールもフレッドに詰め寄る。
「では何故ドレス姿を知っている?」
「怖いですジルベール陛下。殺気を仕舞ってください。わたしはボナールの宰相ですよ? ドレスの業者と打ち合わせしますし、予算やその他の関係で、試着にも立ち合いましたよ」
「……試着? 試着って、立ち会えるのは女性だけではないのか」
「バカですかギルバート様。着替えに立ち合ったのではありません。着替え終わってドレスの全体の様子を見渡す時などに、部屋に入れてもらっただけですよ。ドレスに合わせて、王室から用意する花なども決めますし」
おじいちゃんポジションの2人は、なんでもっと早くボナール入りをして、ドレス選びに立ち合うようにしなかったのだろうと後悔した。
まあ、早くボナール入りをしたところで、完全部外者の2人が、立ち合える可能性は無きに等しいことは、2人の頭から消えていた。
「さあ、ご納得いただけたら、大神殿の中で着席していただけますか?」
ギルバートにそう声を掛けたのは、アーサーだった。
シャーロットの護衛騎士ではあるが、今日はシャーロットの側にいることを許されなかった。
大神殿の中での護衛は、騎士の地位を持つ神官が行なっている。
そのため、軽く帯剣はしているものの、大神殿の周りを見回るくらいしか、やることがなかった。
ギルバートは不満気に、アーサーをじろりと見た。
「なんでわたしだけに言うんだ。ジルベール陛下にも言ってくれ」
「オレの身分でジルベール陛下にはお声掛けできませんよ。畏れ多くて」
「わたしだって高貴な身分だぞ」
「はい。よく存じ上げておりますよ。ですが、ギルバート様ですから……」
ギルバートが諦めたようなため息を吐くと、何故か勝ち誇った笑みを残して、ジルベール陛下はフレッドに先導されて大神殿内へと消えて行った。
「ところで、アーサー。お前はシャーロットについてランバラルドへ来るのか?」
「はい。そのつもりでいます」
「そうか。ところでパルフェだが、今は休業ということにしてあるが、あそこは外れでも商店街に位置している。店を売って欲しいという話も出ているが、どうだろうか?」
アーサーはすぐに「店を売っていい」と言うことができなかった。
シャーロットの護衛として働くことに後悔はない。
幼い頃から守っているシャーロットのために、命を投げ出す覚悟もできている。
しかし、パン屋としての生活も悪くはなかった。
剣ひとすじで、それまで小麦粉と片栗粉の区別もつかなかった自分が、店に出せるほどのパンを焼けるようになった。
シャーロットがライリーに認められる前までは、本気でパン屋になってもいいと思ってすらいた。
ギルバートは、そんなアーサーの心を盗み見るように言う。
「すぐに決断できないのなら、パルフェは売らないようにする。人を雇って店は再オープンさせて、アーサーは休みの日にでもパルフェで働くようにしたらどうだ。ランバラルドの規約では、騎士は本業に支障が無い限りは、副業を認めているからな。そういえば、パルフェの三軒隣の雑貨屋の娘は、まだ嫁に行っておらんぞ」
「は、はあ……。雑貨屋の娘は、オレは別に……」
アーサーが戸惑うのも無理はない。
よくパンを買いに来てくれる常連客ではあったが、秘密を持つアーサーは、気楽に娘に声を掛けることはできなかった。
ただ、ほんの少しのやり取りが印象深く、かわいいと思った笑顔が忘れられなかっただけなのだ。
「……ギルバート様は若いのになんでもお見通しなんですね」
アーサーが少し笑ってそう言うと、ギルバートは耳を赤くして横を向いた。
「当たり前だ。お前たちのことだからな」
アーサーは口には出せなかったが、これが姫様とジュディが言っていた"ツンデレ"というヤツなんだなと思った。
同じ頃、閉じられた大神殿の中では、シャーロットが悲嘆に暮れていた。
今、大神殿の中には、シャーロットと神官長2人だけがおり、結婚式のための教えを受けている。
王族にのみ、伝えることができる虹の後継者についてだ。
祭壇に立ち、ホールに人が入る前に神官長から教えを受けていたのだが、教え全てを聞いた後、シャーロットは泣きそうだった。
「神官長様。私は虹の後継者たる資格がないのかもしれません」
白いドレスに身を包み、輝くような美しさを持つ女王は、今にも瞳から涙を溢さんとしていた。
「これこれ。これから結婚式だというのに、泣いてはいけませんぞ。第一、シャーロット陛下より虹の後継者に相応しい方はおりません」
「ですが、神官長様。指輪の色が変わらないのです。虹の後継者が伴侶を得るときには、指輪は虹色になり、伴侶となるべき者が虹の後継者を愛して初めて指輪が虹色に輝くのでございましょう?」
シャーロットは、指輪の色があまり変わらなかったことをずっと気にしていた。
詳しい教えを聞いて、更に不安になったのだった。
「どれ。拝見しよう」
白い髭の神官長が差し出す手に、シャーロットはそっと指輪を置いた。
神官長は、じっくりと指輪を見つめる。
「……シャーロット陛下。指輪はちゃんと七色になっておりますが?」
神官長の言う通り、指輪はシャーロットの祈りに応え、うっすらと虹色が浮き出ていた。
「でも、お母様の指輪は、もっとはっきりと七色に輝いておりましたわ」
神官長はシャーロットの手を取り、そこに指輪を乗せた。
「ほーっほっほ。シャーロット陛下は随分と欲張りな。すぐに虹の後継者の自覚が出る訳も、伴侶の自覚が出る訳もありません。先ほど教えの中でも言いましたが、虹の後継者として民を思い虹に祈る。伴侶は生涯をかけてそれを護る。それが積み重なり真の後継者の自覚が得られ、伴侶も虹の後継者の伴侶として天に認められた後、指輪はくっきりと虹色が浮かび上がるのです」
「では、わたしが後継者だったというのが間違いだったわけでも、ライリー陛下が本当は私のことを好きではないと言うわけでもありませんのね?」
神官長はあきれた笑いを漏らす。
「あなた様の他に虹の後継者になれる者はおりません。相応しい方もおりません。自信をお持ちになってください」
「……はいっ!」
シャーロットは輝くばかりの笑顔を浮かべた。
そして、いよいよ式が始まる。
国王が男性であっても、女性であっても、それは変わらない。
それを知らない他国の2人の間で、言い争いが起こった。
「シャーロットの手を引いてバージンロードを歩くのは、帝国の王であるこのわたしだ」
黒髪のたくましい男は、大神殿内へ入ろうと足を向ける。
「何をおっしゃる。いくら帝国の王であってもバージンロードは兄に譲るのが筋だというもの」
ギルバートとジルベールは大神殿の入り口に居た。
式に参列するために正装をしている美丈夫2人が、睨み合いを続けていたのだ。
他の参列者は、それを遠巻きに見るしかできることはない。
護衛の騎士や神官たちも、帝国の王とランバラルドの公爵の睨み合いに口を出せるはずもなく、みなオロオロと様子を見守るばかりだった。
そこへ、ボナールの宰相であるためにあちこち走り回って様子を見ていたフレッドが通りがかり、2人の間に割って入った。
「はいはーい。ボナールではバージンロードを新婦が父親役と必ず歩くという風習はないから、2人とも大人しく着席してくださいね~」
フレッドの言葉に2人が振り向く。
「なにっ! フレッド、何故保護者とバージンロードを歩かないのだ!」
「ちょっと、ギルバート様迫って来ないでよ。ボナールの王族の結婚式は、神事なんだよ。男女どちらが王であっても、神官長の前まで一人で歩くの! これ、決まりなの!」
シャーロットを取り合っていた2人はショボンと肩を落とした。
あんまりにも分かりやすく肩を落とす2人を可哀想に思い、フレッドは声をかけた。
「まあまあ。バージンロードを一緒には歩けないけと、式を楽しみにしててよ。白いドレスのシャーロットちゃん、すごく綺麗だから」
言い終わった瞬間、2人の視線がフレッドを射抜く。
「フレッド、お前まさかもうシャーロットのドレス姿を見たのか?」
「え? 見てませんよ。だって、ボナールでは結婚式前の新婦に家族以外の者は会えないもん」
ジルベールもフレッドに詰め寄る。
「では何故ドレス姿を知っている?」
「怖いですジルベール陛下。殺気を仕舞ってください。わたしはボナールの宰相ですよ? ドレスの業者と打ち合わせしますし、予算やその他の関係で、試着にも立ち合いましたよ」
「……試着? 試着って、立ち会えるのは女性だけではないのか」
「バカですかギルバート様。着替えに立ち合ったのではありません。着替え終わってドレスの全体の様子を見渡す時などに、部屋に入れてもらっただけですよ。ドレスに合わせて、王室から用意する花なども決めますし」
おじいちゃんポジションの2人は、なんでもっと早くボナール入りをして、ドレス選びに立ち合うようにしなかったのだろうと後悔した。
まあ、早くボナール入りをしたところで、完全部外者の2人が、立ち合える可能性は無きに等しいことは、2人の頭から消えていた。
「さあ、ご納得いただけたら、大神殿の中で着席していただけますか?」
ギルバートにそう声を掛けたのは、アーサーだった。
シャーロットの護衛騎士ではあるが、今日はシャーロットの側にいることを許されなかった。
大神殿の中での護衛は、騎士の地位を持つ神官が行なっている。
そのため、軽く帯剣はしているものの、大神殿の周りを見回るくらいしか、やることがなかった。
ギルバートは不満気に、アーサーをじろりと見た。
「なんでわたしだけに言うんだ。ジルベール陛下にも言ってくれ」
「オレの身分でジルベール陛下にはお声掛けできませんよ。畏れ多くて」
「わたしだって高貴な身分だぞ」
「はい。よく存じ上げておりますよ。ですが、ギルバート様ですから……」
ギルバートが諦めたようなため息を吐くと、何故か勝ち誇った笑みを残して、ジルベール陛下はフレッドに先導されて大神殿内へと消えて行った。
「ところで、アーサー。お前はシャーロットについてランバラルドへ来るのか?」
「はい。そのつもりでいます」
「そうか。ところでパルフェだが、今は休業ということにしてあるが、あそこは外れでも商店街に位置している。店を売って欲しいという話も出ているが、どうだろうか?」
アーサーはすぐに「店を売っていい」と言うことができなかった。
シャーロットの護衛として働くことに後悔はない。
幼い頃から守っているシャーロットのために、命を投げ出す覚悟もできている。
しかし、パン屋としての生活も悪くはなかった。
剣ひとすじで、それまで小麦粉と片栗粉の区別もつかなかった自分が、店に出せるほどのパンを焼けるようになった。
シャーロットがライリーに認められる前までは、本気でパン屋になってもいいと思ってすらいた。
ギルバートは、そんなアーサーの心を盗み見るように言う。
「すぐに決断できないのなら、パルフェは売らないようにする。人を雇って店は再オープンさせて、アーサーは休みの日にでもパルフェで働くようにしたらどうだ。ランバラルドの規約では、騎士は本業に支障が無い限りは、副業を認めているからな。そういえば、パルフェの三軒隣の雑貨屋の娘は、まだ嫁に行っておらんぞ」
「は、はあ……。雑貨屋の娘は、オレは別に……」
アーサーが戸惑うのも無理はない。
よくパンを買いに来てくれる常連客ではあったが、秘密を持つアーサーは、気楽に娘に声を掛けることはできなかった。
ただ、ほんの少しのやり取りが印象深く、かわいいと思った笑顔が忘れられなかっただけなのだ。
「……ギルバート様は若いのになんでもお見通しなんですね」
アーサーが少し笑ってそう言うと、ギルバートは耳を赤くして横を向いた。
「当たり前だ。お前たちのことだからな」
アーサーは口には出せなかったが、これが姫様とジュディが言っていた"ツンデレ"というヤツなんだなと思った。
同じ頃、閉じられた大神殿の中では、シャーロットが悲嘆に暮れていた。
今、大神殿の中には、シャーロットと神官長2人だけがおり、結婚式のための教えを受けている。
王族にのみ、伝えることができる虹の後継者についてだ。
祭壇に立ち、ホールに人が入る前に神官長から教えを受けていたのだが、教え全てを聞いた後、シャーロットは泣きそうだった。
「神官長様。私は虹の後継者たる資格がないのかもしれません」
白いドレスに身を包み、輝くような美しさを持つ女王は、今にも瞳から涙を溢さんとしていた。
「これこれ。これから結婚式だというのに、泣いてはいけませんぞ。第一、シャーロット陛下より虹の後継者に相応しい方はおりません」
「ですが、神官長様。指輪の色が変わらないのです。虹の後継者が伴侶を得るときには、指輪は虹色になり、伴侶となるべき者が虹の後継者を愛して初めて指輪が虹色に輝くのでございましょう?」
シャーロットは、指輪の色があまり変わらなかったことをずっと気にしていた。
詳しい教えを聞いて、更に不安になったのだった。
「どれ。拝見しよう」
白い髭の神官長が差し出す手に、シャーロットはそっと指輪を置いた。
神官長は、じっくりと指輪を見つめる。
「……シャーロット陛下。指輪はちゃんと七色になっておりますが?」
神官長の言う通り、指輪はシャーロットの祈りに応え、うっすらと虹色が浮き出ていた。
「でも、お母様の指輪は、もっとはっきりと七色に輝いておりましたわ」
神官長はシャーロットの手を取り、そこに指輪を乗せた。
「ほーっほっほ。シャーロット陛下は随分と欲張りな。すぐに虹の後継者の自覚が出る訳も、伴侶の自覚が出る訳もありません。先ほど教えの中でも言いましたが、虹の後継者として民を思い虹に祈る。伴侶は生涯をかけてそれを護る。それが積み重なり真の後継者の自覚が得られ、伴侶も虹の後継者の伴侶として天に認められた後、指輪はくっきりと虹色が浮かび上がるのです」
「では、わたしが後継者だったというのが間違いだったわけでも、ライリー陛下が本当は私のことを好きではないと言うわけでもありませんのね?」
神官長はあきれた笑いを漏らす。
「あなた様の他に虹の後継者になれる者はおりません。相応しい方もおりません。自信をお持ちになってください」
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