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幼馴染 浅野智子
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私の具体的な質問によって智子は視線を上に向けると思い出したかのように答えた。完全に頭の中に無かった様子から、イジメが原因じゃないということは間違いなさそうだ。
「なんか絡んで来てめんどくさいなーって思う人らはいたけど、私が思ったのはそのくらいかな。それよりも授業のこととかプログラムのことについて先生に聞きに行って落胆したことの方が大きかったかな。私と大差ないっていうかむしろ私の方が良く知ってて、この学校に三年間通う必要ってあるのかなって」
智子の話は一貫して学校で学べることがないといった内容。本当に学校での生活に対しては何も興味を持っていなかったみたいだった。私が先週から悩んでいたことも智子にとってはどうでも良いことのようで、おそらく先程言った馬鹿じゃない? って言葉も私が気にしていたことが本当にくだらないのだと思って言った言葉だったのだろう。生田先生が言っていたテラフォーミングを思い出す。自らが生活できる環境を作り上げようする――。智子にとって高校という場所は、わざわざ自分が生活するための環境にするべく労力を使うほどの価値がなかったというだけなのだろうか。机に置かれた仕様書や勉強道具、パソコン画面に映し出された仕事の途中経過を見て、私よりもクラスメイトの皆よりも大きな世界で生きているんだと実感させられながらそう思った。
「じゃあ、やっぱり智子はもう学校に来ないの?」
「うーん……」
意外にも智子は少し悩むような仕草をとった。てっきり即答で学校へは行かないというのかと思っていたがそうではないみたいだ。しかし……
「行かない可能性は高いかな。ひとまずこの仕事が終わるまでは行くつもりはないよ。その後は次の仕事とお父さんとお母さんの話次第かなー」
学校に行く可能性はゼロではないにしてもあまり期待はできなさそうだった。それでも長年仲良くしてきた智子と学校にいけない、遊べないと思うと素直に寂しいと感じる。寂しいと感じてくれない智子に対して悲しい気持ちもある。でも、そのどれもが単なる私の我儘。だからこそ口に出して智子に伝えることはできない。智子にどうしようもない葛藤を与えたくない。
「でも学校に行かないってなると卯月と遊ぶ機会も減っちゃうかなー」
智子は椅子に乗ってくるくる回転しながらぽつりとそんなことを言った。まるで私の心を読んだかのようなタイミングのいいセリフに私は目を丸くする。
「あ、そうだ。普通にウチに遊びに来てくれたら良いじゃん。家も近いんだしさ。最近遊んでなかったけど、小学校のときからもっとゲームも増えてるしさ。ずっと仕事してても気分転換したくなるときもあるだろうし、誰かと話したくなるときもあるだろうし」
そこまで言ったところで智子は椅子の回転を止めて私の顔を見つめた。
「だからさ。そんな顔するなって。卯月はずっと私の友達だから。これからも遠慮せずに遊びに来てよ」
「……うん」
よほど私が情けない顔をしていたのか、智子は座ったまま手を伸ばして私の頭をポンポン叩く。智子のその変わらない優しさに触れて、私はつい智子のことを抱きしめてしまった。
「なになに? はいはい。おーよしよし」
「ごめんね智子。学校で嫌なことされてるときに助けに行けなくて」
「だから、どうでもいいってそんなこと。ほら、私元気に好きなことしてたでしょ?」
「うん……」
そしてそのまましばらく私は智子に宥められながら抱き着いていた。
「なんか絡んで来てめんどくさいなーって思う人らはいたけど、私が思ったのはそのくらいかな。それよりも授業のこととかプログラムのことについて先生に聞きに行って落胆したことの方が大きかったかな。私と大差ないっていうかむしろ私の方が良く知ってて、この学校に三年間通う必要ってあるのかなって」
智子の話は一貫して学校で学べることがないといった内容。本当に学校での生活に対しては何も興味を持っていなかったみたいだった。私が先週から悩んでいたことも智子にとってはどうでも良いことのようで、おそらく先程言った馬鹿じゃない? って言葉も私が気にしていたことが本当にくだらないのだと思って言った言葉だったのだろう。生田先生が言っていたテラフォーミングを思い出す。自らが生活できる環境を作り上げようする――。智子にとって高校という場所は、わざわざ自分が生活するための環境にするべく労力を使うほどの価値がなかったというだけなのだろうか。机に置かれた仕様書や勉強道具、パソコン画面に映し出された仕事の途中経過を見て、私よりもクラスメイトの皆よりも大きな世界で生きているんだと実感させられながらそう思った。
「じゃあ、やっぱり智子はもう学校に来ないの?」
「うーん……」
意外にも智子は少し悩むような仕草をとった。てっきり即答で学校へは行かないというのかと思っていたがそうではないみたいだ。しかし……
「行かない可能性は高いかな。ひとまずこの仕事が終わるまでは行くつもりはないよ。その後は次の仕事とお父さんとお母さんの話次第かなー」
学校に行く可能性はゼロではないにしてもあまり期待はできなさそうだった。それでも長年仲良くしてきた智子と学校にいけない、遊べないと思うと素直に寂しいと感じる。寂しいと感じてくれない智子に対して悲しい気持ちもある。でも、そのどれもが単なる私の我儘。だからこそ口に出して智子に伝えることはできない。智子にどうしようもない葛藤を与えたくない。
「でも学校に行かないってなると卯月と遊ぶ機会も減っちゃうかなー」
智子は椅子に乗ってくるくる回転しながらぽつりとそんなことを言った。まるで私の心を読んだかのようなタイミングのいいセリフに私は目を丸くする。
「あ、そうだ。普通にウチに遊びに来てくれたら良いじゃん。家も近いんだしさ。最近遊んでなかったけど、小学校のときからもっとゲームも増えてるしさ。ずっと仕事してても気分転換したくなるときもあるだろうし、誰かと話したくなるときもあるだろうし」
そこまで言ったところで智子は椅子の回転を止めて私の顔を見つめた。
「だからさ。そんな顔するなって。卯月はずっと私の友達だから。これからも遠慮せずに遊びに来てよ」
「……うん」
よほど私が情けない顔をしていたのか、智子は座ったまま手を伸ばして私の頭をポンポン叩く。智子のその変わらない優しさに触れて、私はつい智子のことを抱きしめてしまった。
「なになに? はいはい。おーよしよし」
「ごめんね智子。学校で嫌なことされてるときに助けに行けなくて」
「だから、どうでもいいってそんなこと。ほら、私元気に好きなことしてたでしょ?」
「うん……」
そしてそのまましばらく私は智子に宥められながら抱き着いていた。
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