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リヒト
王様に自己紹介する
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数人の兵士たちを引き連れて、謁見室へ案内された。
お城にはお年寄りか、若い人の両極端しか見当たらない。
何年か前に戦争があったっていうし、その中間の世代の人は戦争で亡くなったからかな?
若いのは出兵しなかったのか、若いのだけ生き残ったのかはわからないけど。
『陛下、救世主をお連れしました』
パーシヴァルが跪いて、王様に敬礼している。
王様も若かった。
プラチナブロンドにアイスブルーの目の、結構なハンサムだ。
その左隣には、黒髪で緑色の目、渋い顔をした青年が立っている。
これもまたイケメンだった。
眉間に刻まれたシワで台無しだけど。
反対側には、ローブを被った人。
あれが、パーシヴァルの言ってた魔術師かな?
王妃様とか、お姫様はいないのかな……?
みんな男ばっかりなんだけど。
†‡†‡†
ジャンは僕の後ろで一礼したようだ。
しまった。
事前に、王様に対する作法とか、聞いておけばよかった。
一番偉い人相手なんだし。僕も跪くべきなんだろうか、と悩んでいたら。
椅子が運ばれてきて。そこに座るように言われた。
僕は跪かなくていいの?
ジャンとパーシヴァルは椅子に座った僕の両脇に来て。立ったまま話をするみたいだ。
疲れない?
『ご苦労だった、騎士長官。その小さい小猿っぽいのが我らが救世主殿か。……ん? そこにいるのは、もしやJ・Jではないか? 見違えたな! 何故お前もいるのだ。珍しく正装などして』
美貌の王様は、楽しそうに笑ってる。
小さい小猿って……。
ピグミーマーモセットみたいな? そんな、小さいを強調しなくても。
確かに、あなた方に比べれば小さいですけどね!
親しい人はJ・Jって呼ぶ、って言ってたな。パーシヴァルも呼んでたし。
王様も親しい人なんだろうか? わりと気安く話してる気がする。
ずいぶんフランクな王様だな。
パーシヴァルが、再び跪いて。
『申し訳ありません! J・Jに救世主捜索の助力を願いに行ったところ、すでに自分の家に連れ込んでおり、噛まれた後でした……』
苦々しげに報告した。
『何だと!?』
『救世主殿をツガイにしたと?』
王様だけでなく、見張りの兵たちまでざわざわしている。
とんでもないことだったようだ。
そりゃそうか。
まさか召喚した救世主を勝手にツガイにしてるとは。誰も予想できないだろう。
†‡†‡†
『言葉も通じるようですし。特に支障はないでしょう』
ローブの男が言った。
え、支障はないって。
誰かのツガイにされても役目は果たせる、ってことだろうか。
言葉が通じるようになったのは良かったけど。それは、ジャンのツガイにされたからなんだよな……。
そりゃそっちにしてみれば、言葉が理解できるような魔法をかける手間が省けた、って感じだろうけど。
なんか釈然としない……。
『そうか。……して、救世主殿の名は?』
王様も、そうか、でスルーしちゃうのか。
まあ当事者じゃないから、僕の私情なんてどうでもいいのか……。
王様と話す機会なんか、通常であれば一生訪れないだろうから、知らなくても仕方ないと思う。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥!
この際、恥をしのんで聞こう。
勿論、常識人っぽいほうに!
「もしかして、平民が直接しゃべっちゃいけない相手だったりする?」
とパーシヴァルにこそっと聞いてみた。
†‡†‡†
気にせずどうぞ、というので普通に自己紹介することにしよう。
そうか。
この国の救世主ってことなら、へりくだる必要はないのか。良かった。
「黒江 理人です。薬について少々学んだだけの学生ですが、僕にできることであればお力になりたいと思います」
無難な挨拶にしておいた。
『クロエか。可愛らしい名だな。小さいのによく話すものだ。薬について学んでいるのか。利発なのだな』
完全に小さな子扱いしてるけど。
たぶん、そんなに年齢変わらないと思うぞ……。下手したら、僕のほうが年上かもしれない。
ぶ厚い眼鏡にぼさぼさ頭だから、大学でも年齢不詳だって言われてたけど。
研究畑じゃ僕みたいなタイプが多いから、そんなに目立たなかったっけ。
……あれ? ジャンもそうだけど。
みんな、クロエの方が名前だと思ってるのかな?
そういえば、クロエもリヒトも、どちらも外国人でも通るような名前だった。
黒江は名字で、理人の方が名前だと説明したけど。
クロエのほうが可愛いからそっちで呼ぶ、と言われた。
何という自由人……。
王様だからか。なら仕方ない。
この国では、クロエって可愛い響きの名前なのか。
まさか、こっちじゃ女の子の名前とかだったりしないよな……?
それにしても。今のところ城にも女の人の姿がないのは何でだろう。
後宮にいるとか?
まさか、戦争の時に攫われたとか全滅したとかじゃないだろうな。
それで、ジャンも男をツガイに選んだんだったりして。
ははは。……まさかね?
†‡†‡†
どうやら王様は異世界から来た”小さい小猿”に興味津々のようだ。
じろじろと、遠慮なく見られている。
注目されるのには慣れてないから、困るな。
『異世界にも眼鏡はあるのだな。初めて見る形状だが。どれ、見せてくれぬか』
カモン、みたいな手つきで言われた。
あ、こっちにも眼鏡があるのか。
どんな形なんだろう?
ここには眼鏡を掛けてる人はいないようだけど。
モノクルみたいな感じなのかな?
王様の隣りにいた渋い顔の人が眼鏡を受け取りに来たので、外して。
ポケットに入れてたクロスで綺麗に拭いてから渡した。
「はい、どうぞ」
『……おや、』
『なるほど、J・Jが焦って噛んだのも理解できよう』
「?」
王様たちが、将来が楽しみだな、とか言ってるけど。
何の話だろうか。
もしかして、ニョキニョキ伸びそうに見える?
でも、僕の成長期なら、とっくに終わってると思うよ。
お城にはお年寄りか、若い人の両極端しか見当たらない。
何年か前に戦争があったっていうし、その中間の世代の人は戦争で亡くなったからかな?
若いのは出兵しなかったのか、若いのだけ生き残ったのかはわからないけど。
『陛下、救世主をお連れしました』
パーシヴァルが跪いて、王様に敬礼している。
王様も若かった。
プラチナブロンドにアイスブルーの目の、結構なハンサムだ。
その左隣には、黒髪で緑色の目、渋い顔をした青年が立っている。
これもまたイケメンだった。
眉間に刻まれたシワで台無しだけど。
反対側には、ローブを被った人。
あれが、パーシヴァルの言ってた魔術師かな?
王妃様とか、お姫様はいないのかな……?
みんな男ばっかりなんだけど。
†‡†‡†
ジャンは僕の後ろで一礼したようだ。
しまった。
事前に、王様に対する作法とか、聞いておけばよかった。
一番偉い人相手なんだし。僕も跪くべきなんだろうか、と悩んでいたら。
椅子が運ばれてきて。そこに座るように言われた。
僕は跪かなくていいの?
ジャンとパーシヴァルは椅子に座った僕の両脇に来て。立ったまま話をするみたいだ。
疲れない?
『ご苦労だった、騎士長官。その小さい小猿っぽいのが我らが救世主殿か。……ん? そこにいるのは、もしやJ・Jではないか? 見違えたな! 何故お前もいるのだ。珍しく正装などして』
美貌の王様は、楽しそうに笑ってる。
小さい小猿って……。
ピグミーマーモセットみたいな? そんな、小さいを強調しなくても。
確かに、あなた方に比べれば小さいですけどね!
親しい人はJ・Jって呼ぶ、って言ってたな。パーシヴァルも呼んでたし。
王様も親しい人なんだろうか? わりと気安く話してる気がする。
ずいぶんフランクな王様だな。
パーシヴァルが、再び跪いて。
『申し訳ありません! J・Jに救世主捜索の助力を願いに行ったところ、すでに自分の家に連れ込んでおり、噛まれた後でした……』
苦々しげに報告した。
『何だと!?』
『救世主殿をツガイにしたと?』
王様だけでなく、見張りの兵たちまでざわざわしている。
とんでもないことだったようだ。
そりゃそうか。
まさか召喚した救世主を勝手にツガイにしてるとは。誰も予想できないだろう。
†‡†‡†
『言葉も通じるようですし。特に支障はないでしょう』
ローブの男が言った。
え、支障はないって。
誰かのツガイにされても役目は果たせる、ってことだろうか。
言葉が通じるようになったのは良かったけど。それは、ジャンのツガイにされたからなんだよな……。
そりゃそっちにしてみれば、言葉が理解できるような魔法をかける手間が省けた、って感じだろうけど。
なんか釈然としない……。
『そうか。……して、救世主殿の名は?』
王様も、そうか、でスルーしちゃうのか。
まあ当事者じゃないから、僕の私情なんてどうでもいいのか……。
王様と話す機会なんか、通常であれば一生訪れないだろうから、知らなくても仕方ないと思う。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥!
この際、恥をしのんで聞こう。
勿論、常識人っぽいほうに!
「もしかして、平民が直接しゃべっちゃいけない相手だったりする?」
とパーシヴァルにこそっと聞いてみた。
†‡†‡†
気にせずどうぞ、というので普通に自己紹介することにしよう。
そうか。
この国の救世主ってことなら、へりくだる必要はないのか。良かった。
「黒江 理人です。薬について少々学んだだけの学生ですが、僕にできることであればお力になりたいと思います」
無難な挨拶にしておいた。
『クロエか。可愛らしい名だな。小さいのによく話すものだ。薬について学んでいるのか。利発なのだな』
完全に小さな子扱いしてるけど。
たぶん、そんなに年齢変わらないと思うぞ……。下手したら、僕のほうが年上かもしれない。
ぶ厚い眼鏡にぼさぼさ頭だから、大学でも年齢不詳だって言われてたけど。
研究畑じゃ僕みたいなタイプが多いから、そんなに目立たなかったっけ。
……あれ? ジャンもそうだけど。
みんな、クロエの方が名前だと思ってるのかな?
そういえば、クロエもリヒトも、どちらも外国人でも通るような名前だった。
黒江は名字で、理人の方が名前だと説明したけど。
クロエのほうが可愛いからそっちで呼ぶ、と言われた。
何という自由人……。
王様だからか。なら仕方ない。
この国では、クロエって可愛い響きの名前なのか。
まさか、こっちじゃ女の子の名前とかだったりしないよな……?
それにしても。今のところ城にも女の人の姿がないのは何でだろう。
後宮にいるとか?
まさか、戦争の時に攫われたとか全滅したとかじゃないだろうな。
それで、ジャンも男をツガイに選んだんだったりして。
ははは。……まさかね?
†‡†‡†
どうやら王様は異世界から来た”小さい小猿”に興味津々のようだ。
じろじろと、遠慮なく見られている。
注目されるのには慣れてないから、困るな。
『異世界にも眼鏡はあるのだな。初めて見る形状だが。どれ、見せてくれぬか』
カモン、みたいな手つきで言われた。
あ、こっちにも眼鏡があるのか。
どんな形なんだろう?
ここには眼鏡を掛けてる人はいないようだけど。
モノクルみたいな感じなのかな?
王様の隣りにいた渋い顔の人が眼鏡を受け取りに来たので、外して。
ポケットに入れてたクロスで綺麗に拭いてから渡した。
「はい、どうぞ」
『……おや、』
『なるほど、J・Jが焦って噛んだのも理解できよう』
「?」
王様たちが、将来が楽しみだな、とか言ってるけど。
何の話だろうか。
もしかして、ニョキニョキ伸びそうに見える?
でも、僕の成長期なら、とっくに終わってると思うよ。
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