オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

文字の大きさ
7 / 74
リヒト

新しい人生と言われても

の部分の材質は何かね? 陶器でも金属でも無いようだが。初めて見るものだ』
「フレームは強化プラスチック、レンズはガラスです。あまり曲げたら壊れますから、お手柔らかに」

度がきつすぎて、ガラスじゃないと駄目なのだ。
これがないと怖くて歩けない。慣れた自宅なら何とか大丈夫だけど。


『強い、何だ? プラスチック……? ほう、異世界の技術か……』

ガラスに言及しないあたり、ガラスはあるっぽい。
プラスチックは無いんだ。

陶器や金属もあるし、甲冑もあった。

ここ、中世くらいの文化レベルはあるのかな?
移動は馬車だし。


魔法がある分、科学の発展が遅れてたりして。

眼鏡が無いからよく見えないけど。
どうやら王様は自分で眼鏡をかけてみて、確かめたようだ。白っぽいのが、ゆらゆらしてる。
眩暈がしたのかな?


『うう、これはきつい。頭が痛くなってくるな。……クロエよ、これが何本か見えるか?』
指を立てて、ひらひら動かしているようだ。

視力が低いって言うと、だいたいみんな、これやるよな……。
見えないのが面白いのかね?

もう少し近くなら、指くらいは見えるんだけど。
王座遠い。


「まったくわかりません」

『うわ、目つき悪っ』
パーシヴァルが引いてた。

だって眼鏡がないと、ぼんやりとしか見えないんだもん。
「眼鏡、返して……」


†‡†‡†


眼鏡を返してもらって。
そういえば、名乗るのを忘れていたな、と王様が言った。

王様の名前は、ルロイ・オーレリアン・エルネスト・シルヴェストルというそうだ。
長い。

ロイと呼んでもいいぞ、と言われたけど。
とんでもない。王様を気安く愛称で呼ぶとか、そんな度胸、僕にはないよ。ジャンはありそうだけど。


隣りにいた黒髪の人は、なんと王様の弟だった。名前はアンリ・オーギュスト・シルヴェストル。
王佐。つまり王様の補佐をしているそうだ。

髪や目の色も違うし、全然似てない兄弟だな。どっちかが父親似とか、隔世遺伝だったりしするのかな?


魔法使いの名前は、デュラン。
名字とかはなくて、ただのデュランだって。

占いの腕はいいけど、普通の魔法はイマイチだとか。もうそれ、占い師でよくない?
こっちに召喚する魔法も位置を間違えたみたいだし。


僕、ちゃんと元の世界に戻れるんだろうか……。

アメリカとかに飛ばされたらどうしよう。
植物とかの学名を読むのにラテン語は勉強したけど、会話まではできないし。

英語すら、挨拶程度しか話せない。
それ以外は壊滅的だ。

大使館、助けて、くらいは色々な外国語で覚えておくべきだったか……。


†‡†‡†


しばらく……というか。

国の危機が収まるまでの間、お城の客室に留まることになった。
なんと、国賓扱いだ。


案内された客室は、思ったよりシンプルだった。
でも、あまりに華美過ぎても戸惑うし、ちょうど良かった。

一見質素に見えるけど、調度品や寝具の質はかなり良さそうだ。

金を使うべき場所を心得ているというか、派手好みでないところに好感が持てる。
金ピカ趣味とか、引いちゃうもんな。


「お城に滞在することになるなんて、びっくりだ」

びっくりなのは、異世界に来てしまったこともだけど。
まさか、自分が救世主として召喚されて。

こんな、国賓として特別扱いされる身分だなんて。
何だか申し訳ない。

大学ではオタク眼鏡呼ばわりされてるド底辺ですよ?

薬学部の院生だけど。研究所や薬局に勤めるつもりはないし。
ただの穀つぶしだ。


『わざわざ森まで俺達を呼びに来るのも面倒だし、ここに置いたほうが何かと都合がいいのだろう』
ジャンは襟元を緩めている。

僕も森に一緒に帰るのが当然みたいな感じだ。
元々、こっちに呼ばれるはずが、手違いで森に出現しちゃったんだけど。

「ジャンさんは、何で森に帰らないの?」
『ツガイは常に一緒にいるのが当たり前だ。だから俺もここに泊まる』


「……当たり前?」
どういうこっちゃと困惑してたら。


†‡†‡†


客間ここまで案内するためについてきてくれたパーシヴァルが教えてくれた。

獣人のツガイは常に傍にいるのが当たり前で。距離が離れた状態でいると、体調を崩してしまう。
最悪の場合、衰弱して死ぬとか。

二人とも!?
一蓮托生なの!?

そういうの、何で先に教えておいてくれないかな!

と、いうことは。
元の世界に帰る場合、ジャンも連れて行かないと、二人とも死んじゃうってこと? クーリングオフできないの?


「そりゃないよ。合意も無く勝手に噛まれてツガイにされちゃったのに!」

いきなりツガイになれって言われても、困るし。
ツガイって。要するに、結婚相手ってことだろ?

今日初めて会ったばかりで、よく知らない相手だし。

ヒゲモジャではなくなったけど、灰色熊だし。
そもそも、男だし。


『目と目が合って、求愛した。抵抗はなく、お前は目を閉じた。だから噛んだ』
「???」


†‡†‡†


獣人の求愛は、目と目を合わせてから、キスをする。
で、相手が目を閉じて受け入れたらOK、ということになるらしい。

キス……?
べろべろ舐められはしたけど。


がそうだったの!?

それだと、近所のワンコからも求愛されたことになって。
しかも、OKしたことになるんですけど!?


「いや、そんな異世界のルール知らないし! クマに喰われるかと思って、怖くて目を閉じただけだよ!?」

『では、喰われたと思え。これからは新しい人生だと考えろ』
ジャンは淡々と言った。


無茶苦茶だ!
僕にだって。家族とか、色々あるんだ。

新しい人生って。


……そんな。
簡単に割り切れる訳ないだろ!?
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生した新人獣医師オメガは獣人国王に愛される

こたま
BL
北の大地で牧場主の次男として産まれた陽翔。生き物がいる日常が当たり前の環境で育ち動物好きだ。兄が牧場を継ぐため自分は獣医師になろう。学業が実り獣医になったばかりのある日、厩舎に突然光が差し嵐が訪れた。気付くとそこは獣人王国。普段美形人型で獣型に変身出来るライオン獣人王アルファ×異世界転移してオメガになった美人日本人獣医師のハッピーエンドオメガバースです。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

邪神の嫁として勝手に異世界召喚されたけど、邪神がもろタイプだったので満更でもないです

我利我利亡者
BL
椎葉 譲(しいば ゆずる)は突然異世界に召喚された。折角就活頑張って内定もらえてこれからって時に、冗談じゃない! しかも、召喚理由は邪神とやらの神子……という名の嫁にする為だとか。こっちの世界の人間が皆嫌がるから、異世界から神子を召喚した? ふざけんな! そんなの俺も嫌だわ! 怒り狂って元の世界に戻すよう主張する譲だったが、騒ぎを聞き付けて現れた邪神を一目見て、おもわず大声で叫ぶ。「きゃわいい!」。なんと邪神は猫の獣人で、何を隠そう譲は重度のケモナーだった。邪神は周囲からあまりいい扱いを受けていないせいかすっかり性格が捻くれていたが、そんな事は一切気にせず熱烈にラブコールする譲。「大好き! 結婚しよ!」「早く元の世界に帰れ!」。今日もそんな遣り取りが繰り返される。果たして譲は、邪神とフォーリンラブできるのか!? 孤独な邪神でもある黒猫獣人×重度のケモナーでもあるおチャラけ根明

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。