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リヒト
救世主として城に呼ばれる
「でも僕、ちょっと薬の勉強をしてるだけの、普通の学生だよ?」
特別な能力を持っている訳でもないし、特別天才な訳でもない。
まだ学生だから、知識だって、専門家に比べればたいしたことないし。
根拠もなく自惚れられるほど、自信家でもない。
『あの人は、召喚魔法の腕とかはいまいちだけど、占いだけは外したことがないから。貴方は間違いなく、我が国の救世主になる人だ。一緒に城に来て欲しい。貴方の助けが必要だ』
パーシヴァルはきっぱり言い切った。
魔法使いの名前はデュラン、というそうだ。
ずいぶん信頼してるんだな。
『まあ、もし国が滅びても、それはそれでこの国の運命だったってことで。誰も貴方を責めたりはしないから、気楽にしてよ』
へにゃっと笑った。
なんなのその潔さ。
半分、動物だからかな?
だからって、真に受けてお気楽になんてできないけど。
†‡†‡†
もし僕が、力になれるっていうなら。
微力ながらも、どうしかしてあげたいと思う。
「わかりました。まずはお城に行って、王様の話を聞けばいい?」
『ありがとう』
握手をしようと、手を出されたところで。
『待て。俺の大切なツガイに危険な真似はさせられん』
ジャンが、僕を守るように立ちはだかった。
『なら、お前が命がけで守ればいい。強くなったんだろ?』
パーシヴァルがジャンを焚きつけるように言って。
『ああ、クロエは俺が守る』
ジャンは頷いてみせた。
『じゃあ、一緒に城に来て、陛下に挨拶しろよな』
『わかった。行こう』
なんか納得してる。
パーシヴァルにうまく丸め込まれちゃった感じだ。僕もかな?
僕はまだ、ジャンのツガイにされたってことには、納得してないんだけどな。
これから王様の城に行くため。
ジャンは正装をさせられているようだ。
この家にはカミソリがないからって小刀でヒゲを剃ってあげるなんて、パーシヴァルは親切な人だな。
でも、僕もちょっと剃ってみたいかも。
僕の産毛みたいなのと違って、剃りがいがありそうだ……。
†‡†‡†
僕は召喚されたそのままの姿がいいというので。
ここに来た時のままのトレッキングシューズに撥水防風仕様のパーカー、ジャージの上下という散策スタイルだ。
ジャンが回収してくれていた荷物も一緒に持っていく。
着替えとかだいたいの荷物はホテルのクロークに預けちゃったし。
リュックサックには大したものは入ってないけど。
こちらの文明がどの程度かわからないし。
何が役に立つかもわからない。防風ライターとかね。
そういえば、チェックインして荷物だけ預けて出てきたし、ホテルの人に行き先は告げてなかったけど。
調べれば、降りた駅とかはわかるだろう。
僕は、日本アルプスで遭難したことになるんだろうか……。
捜索願いとか出されるだろうな。
山を捜索したら、すごい捜索費用が掛かるんじゃなかったっけ?
お金の問題もそうだけど。
両親や兄たちに、心配をかけるだろうな。
どれくらいの期間で、元の世界に戻れるんだろう?
先に、連絡だけでも出来たらいいんだけど。
せめて、無事な事だけでも伝えたい。
†‡†‡†
『息苦しい……』
ひらひらしたスカーフを首に巻いて。
服が窮屈だとか言いながら。
しかめ面をして、中世の貴族っぽい服を着て出てきた青年は。
……嘘。
まさかこれ、ジャンなの!?
「クマが人間になった……」
『あはは、確かに』
あんなにヒゲモジャじゃ、どっちがクマの姿だかわからないよね、とパーシヴァルが笑って言った。
ヒゲを剃った顔を見たら、やっぱり若かった。
20から24歳くらいかな? しかも、けっこう男前で驚いた。
ガタイが良すぎて、恋愛モノにはちょっと向かないかもしれないけど。
アクションとか、ワイルド系俳優ならいけそう。筋骨逞しいし。
ファンタジー映画の俳優みたいなのが二人並んでいるわけで。
その間にいる僕は浮きまくりだ。
パーシヴァルが繰る馬車に乗って、お城に向かった。
ジャンの家に馬車を置かせてもらって、馬で森を探索しようと思ってたんだ、と言われた。
探し人がすぐに見つかって良かったね……。
そういえば、パーシヴァルは何の獣人なのかと訊いてみたけど。
ウインクしながら秘密、って言われてしまった……。
獣人のルールか何かで、簡単に正体を明かしてはいけないのだろうか。
ジャンは見たまんま、クマだったけど。
†‡†‡†
城へ向かう道は、静かなもので。
行けども行けども森が続いている。針葉樹林が多い。
気候的に涼しい地方に生える植物が多い感じだ。
植物の生え方が地球と同じだと仮定するなら、の話だけど。
村とか民家とかは見当たらなかった。
しばらくして、森を抜けて。
城が見えてきた。
かなり立派な、西洋風のお城だ。
全体的に石造りっぽい。
ジャンやパーシヴァルの服装からして、中世ヨーロッパみたいな雰囲気だ。
異世界でも、環境が似てれば文明も似るのかもしれない。
城壁、新しく修繕したっぽいところと古いところが見てわかるくらいだ。
あれも、戦争で壊れたのかな?
城門が開いて、馬車が中に入る。
中は石畳だ。庭は整えられていて、緑がいっぱいだ。
噴水のある広場を抜け、お城の前で止まった。
パーシヴァルが、扉の前にいた兵士に声を掛けて。
大きな扉が開いていく。
さっきまでとは違って、パーシヴァルはビシッとしている。
ジャンの家では普通の兄ちゃんっぽかったけど、仕事中はちゃんとした騎士に見える。
騎士長官だっけ? 偉い人なんだ。
若いのに、凄いなあ。
おお、と見ていたら。
ジャンに目を覆われた。
え、妬いたの? 別に惚れたりしないよ?
だって、パーシヴァルは男じゃないか。
惚れるわけないじゃないか。
あ、そうか。
ジャンは男の僕に一目惚れして、ツガイにしたんだったっけ?
自分が一目惚れされるなんて、いまいち信じられないけど。
特別な能力を持っている訳でもないし、特別天才な訳でもない。
まだ学生だから、知識だって、専門家に比べればたいしたことないし。
根拠もなく自惚れられるほど、自信家でもない。
『あの人は、召喚魔法の腕とかはいまいちだけど、占いだけは外したことがないから。貴方は間違いなく、我が国の救世主になる人だ。一緒に城に来て欲しい。貴方の助けが必要だ』
パーシヴァルはきっぱり言い切った。
魔法使いの名前はデュラン、というそうだ。
ずいぶん信頼してるんだな。
『まあ、もし国が滅びても、それはそれでこの国の運命だったってことで。誰も貴方を責めたりはしないから、気楽にしてよ』
へにゃっと笑った。
なんなのその潔さ。
半分、動物だからかな?
だからって、真に受けてお気楽になんてできないけど。
†‡†‡†
もし僕が、力になれるっていうなら。
微力ながらも、どうしかしてあげたいと思う。
「わかりました。まずはお城に行って、王様の話を聞けばいい?」
『ありがとう』
握手をしようと、手を出されたところで。
『待て。俺の大切なツガイに危険な真似はさせられん』
ジャンが、僕を守るように立ちはだかった。
『なら、お前が命がけで守ればいい。強くなったんだろ?』
パーシヴァルがジャンを焚きつけるように言って。
『ああ、クロエは俺が守る』
ジャンは頷いてみせた。
『じゃあ、一緒に城に来て、陛下に挨拶しろよな』
『わかった。行こう』
なんか納得してる。
パーシヴァルにうまく丸め込まれちゃった感じだ。僕もかな?
僕はまだ、ジャンのツガイにされたってことには、納得してないんだけどな。
これから王様の城に行くため。
ジャンは正装をさせられているようだ。
この家にはカミソリがないからって小刀でヒゲを剃ってあげるなんて、パーシヴァルは親切な人だな。
でも、僕もちょっと剃ってみたいかも。
僕の産毛みたいなのと違って、剃りがいがありそうだ……。
†‡†‡†
僕は召喚されたそのままの姿がいいというので。
ここに来た時のままのトレッキングシューズに撥水防風仕様のパーカー、ジャージの上下という散策スタイルだ。
ジャンが回収してくれていた荷物も一緒に持っていく。
着替えとかだいたいの荷物はホテルのクロークに預けちゃったし。
リュックサックには大したものは入ってないけど。
こちらの文明がどの程度かわからないし。
何が役に立つかもわからない。防風ライターとかね。
そういえば、チェックインして荷物だけ預けて出てきたし、ホテルの人に行き先は告げてなかったけど。
調べれば、降りた駅とかはわかるだろう。
僕は、日本アルプスで遭難したことになるんだろうか……。
捜索願いとか出されるだろうな。
山を捜索したら、すごい捜索費用が掛かるんじゃなかったっけ?
お金の問題もそうだけど。
両親や兄たちに、心配をかけるだろうな。
どれくらいの期間で、元の世界に戻れるんだろう?
先に、連絡だけでも出来たらいいんだけど。
せめて、無事な事だけでも伝えたい。
†‡†‡†
『息苦しい……』
ひらひらしたスカーフを首に巻いて。
服が窮屈だとか言いながら。
しかめ面をして、中世の貴族っぽい服を着て出てきた青年は。
……嘘。
まさかこれ、ジャンなの!?
「クマが人間になった……」
『あはは、確かに』
あんなにヒゲモジャじゃ、どっちがクマの姿だかわからないよね、とパーシヴァルが笑って言った。
ヒゲを剃った顔を見たら、やっぱり若かった。
20から24歳くらいかな? しかも、けっこう男前で驚いた。
ガタイが良すぎて、恋愛モノにはちょっと向かないかもしれないけど。
アクションとか、ワイルド系俳優ならいけそう。筋骨逞しいし。
ファンタジー映画の俳優みたいなのが二人並んでいるわけで。
その間にいる僕は浮きまくりだ。
パーシヴァルが繰る馬車に乗って、お城に向かった。
ジャンの家に馬車を置かせてもらって、馬で森を探索しようと思ってたんだ、と言われた。
探し人がすぐに見つかって良かったね……。
そういえば、パーシヴァルは何の獣人なのかと訊いてみたけど。
ウインクしながら秘密、って言われてしまった……。
獣人のルールか何かで、簡単に正体を明かしてはいけないのだろうか。
ジャンは見たまんま、クマだったけど。
†‡†‡†
城へ向かう道は、静かなもので。
行けども行けども森が続いている。針葉樹林が多い。
気候的に涼しい地方に生える植物が多い感じだ。
植物の生え方が地球と同じだと仮定するなら、の話だけど。
村とか民家とかは見当たらなかった。
しばらくして、森を抜けて。
城が見えてきた。
かなり立派な、西洋風のお城だ。
全体的に石造りっぽい。
ジャンやパーシヴァルの服装からして、中世ヨーロッパみたいな雰囲気だ。
異世界でも、環境が似てれば文明も似るのかもしれない。
城壁、新しく修繕したっぽいところと古いところが見てわかるくらいだ。
あれも、戦争で壊れたのかな?
城門が開いて、馬車が中に入る。
中は石畳だ。庭は整えられていて、緑がいっぱいだ。
噴水のある広場を抜け、お城の前で止まった。
パーシヴァルが、扉の前にいた兵士に声を掛けて。
大きな扉が開いていく。
さっきまでとは違って、パーシヴァルはビシッとしている。
ジャンの家では普通の兄ちゃんっぽかったけど、仕事中はちゃんとした騎士に見える。
騎士長官だっけ? 偉い人なんだ。
若いのに、凄いなあ。
おお、と見ていたら。
ジャンに目を覆われた。
え、妬いたの? 別に惚れたりしないよ?
だって、パーシヴァルは男じゃないか。
惚れるわけないじゃないか。
あ、そうか。
ジャンは男の僕に一目惚れして、ツガイにしたんだったっけ?
自分が一目惚れされるなんて、いまいち信じられないけど。
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