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第39話 選ばれた未来
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第39話 選ばれた未来
その書類は、
最後まで、
驚くほど静かだった。
――帝国より正式通達。
> ローゼリア王国の内政改革を尊重し、
今後は干渉を行わない。
形式ばった文面。
感情の欠片もない。
だが、
それは――
勝利宣言に等しかった。
「……終わりましたわね」
アヴェンタドールは、
書類を閉じ、
小さく息を吐いた。
宰相府には、
珍しく静寂が満ちている。
「お疲れさまでした」
ガーラが、
深く頭を下げた。
王太子妃だった頃の
おっとりした仕草とは違う。
今の彼女は、
明確な“責任者”の顔をしていた。
「この国は、
あなたがいなければ――」
「そこまでです」
アヴェンタドールは、
やさしく遮る。
「私は、
必要な時に、
必要なことをしただけ」
一拍。
「それ以上でも、
それ以下でもありません」
ガーラは、
腹部に手を当てた。
「……それでも」
声が、
少し震える。
「この子が生まれる国を、
あなたが守ってくれたことは
事実です」
沈黙。
アヴェンタドールは、
しばらく考え――
静かに口を開いた。
「陛下」
もう、
“王太子妃”ではない。
「お願いがあります」
ガーラは、
まっすぐに頷く。
「何でしょう?」
「――宰相を、
辞任させてください」
一瞬。
空気が、
止まった。
「……え?」
「改革は、
軌道に乗りました」
「制度も、
人材も、
今は揃っています」
一拍。
「これ以上、
私が前に立つ必要はありません」
ガーラは、
言葉を失う。
「で、ですが……
あなたほどの方が――」
「だからこそ、
です」
アヴェンタドールは、
微笑んだ。
「私は、
便利すぎました」
「便利な人間は、
いずれ――
使い潰されます」
その言葉は、
重かった。
ガーラは、
ゆっくりと息を吸う。
「……行き先は?」
「決めていますわ」
アヴェンタドールは、
少しだけ、
肩の力を抜いた。
「学び舎を」
「官僚と、
商人と、
次の宰相候補を育てる
学校を」
「ここで得たものを、
私一人で抱え込む気は
ありません」
沈黙。
やがて。
ガーラは、
静かに微笑んだ。
「……ずるいですわね」
「国を救って、
責任を未来に残して、
自分は一歩引くなんて」
「褒め言葉として
受け取りますわ」
ふふ、と
小さく笑う。
「ですが、
条件があります」
「条件?」
「この国に、
何かあった時」
一拍。
「あなたは、
必ず助言してください」
アヴェンタドールは、
少し考え――
頷いた。
「その程度なら」
その瞬間。
彼女は理解した。
――もう、
この国は
彼女一人の肩に
乗っていない。
それで、
十分だった。
窓の外。
港には、
新しい船が並んでいる。
未来は、
確実に動いていた。
「……さて」
アヴェンタドールは、
椅子から立ち上がる。
「これでようやく、
“自分の人生”を
始められそうですわ」
それは、
逃避ではない。
選択だった。
その書類は、
最後まで、
驚くほど静かだった。
――帝国より正式通達。
> ローゼリア王国の内政改革を尊重し、
今後は干渉を行わない。
形式ばった文面。
感情の欠片もない。
だが、
それは――
勝利宣言に等しかった。
「……終わりましたわね」
アヴェンタドールは、
書類を閉じ、
小さく息を吐いた。
宰相府には、
珍しく静寂が満ちている。
「お疲れさまでした」
ガーラが、
深く頭を下げた。
王太子妃だった頃の
おっとりした仕草とは違う。
今の彼女は、
明確な“責任者”の顔をしていた。
「この国は、
あなたがいなければ――」
「そこまでです」
アヴェンタドールは、
やさしく遮る。
「私は、
必要な時に、
必要なことをしただけ」
一拍。
「それ以上でも、
それ以下でもありません」
ガーラは、
腹部に手を当てた。
「……それでも」
声が、
少し震える。
「この子が生まれる国を、
あなたが守ってくれたことは
事実です」
沈黙。
アヴェンタドールは、
しばらく考え――
静かに口を開いた。
「陛下」
もう、
“王太子妃”ではない。
「お願いがあります」
ガーラは、
まっすぐに頷く。
「何でしょう?」
「――宰相を、
辞任させてください」
一瞬。
空気が、
止まった。
「……え?」
「改革は、
軌道に乗りました」
「制度も、
人材も、
今は揃っています」
一拍。
「これ以上、
私が前に立つ必要はありません」
ガーラは、
言葉を失う。
「で、ですが……
あなたほどの方が――」
「だからこそ、
です」
アヴェンタドールは、
微笑んだ。
「私は、
便利すぎました」
「便利な人間は、
いずれ――
使い潰されます」
その言葉は、
重かった。
ガーラは、
ゆっくりと息を吸う。
「……行き先は?」
「決めていますわ」
アヴェンタドールは、
少しだけ、
肩の力を抜いた。
「学び舎を」
「官僚と、
商人と、
次の宰相候補を育てる
学校を」
「ここで得たものを、
私一人で抱え込む気は
ありません」
沈黙。
やがて。
ガーラは、
静かに微笑んだ。
「……ずるいですわね」
「国を救って、
責任を未来に残して、
自分は一歩引くなんて」
「褒め言葉として
受け取りますわ」
ふふ、と
小さく笑う。
「ですが、
条件があります」
「条件?」
「この国に、
何かあった時」
一拍。
「あなたは、
必ず助言してください」
アヴェンタドールは、
少し考え――
頷いた。
「その程度なら」
その瞬間。
彼女は理解した。
――もう、
この国は
彼女一人の肩に
乗っていない。
それで、
十分だった。
窓の外。
港には、
新しい船が並んでいる。
未来は、
確実に動いていた。
「……さて」
アヴェンタドールは、
椅子から立ち上がる。
「これでようやく、
“自分の人生”を
始められそうですわ」
それは、
逃避ではない。
選択だった。
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