封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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90 精霊王を探す

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七日後の昼下がり、ファスターの屋敷の庭である。

あぐらをかいた俺は、森羅と対話を試みる。

すぐに魂が離れ、霊域に召喚される。樹齢何百、何千年という巨木が立ち並ぶうっそうとした森――霊域森羅で、精霊の森羅と対峙した。

「精霊王の居場所? 知らんな」

森羅は感情の乏しい声色で答えた。

「少なくともここ森羅にはいない」

「だろうな……ほかの精霊から伝え聞いてもいないか?」

「ああ。ところで」

「どうした?」

「最近我が剣である《ブーステッド》を雑に扱いすぎてはいないか? 投げたりとか……」

「気のせいだ」

俺は顔をそらしながら答えた。

続いて、霊域グラシアルで精霊スノーフォールと対峙する。

「精霊王? 知らない」

続いて、修復されつつある霊域テンペストフロートで、エアリアルに聞く。

「さあ? 腕の紋章が消えたんなら、もうあきらめた方がいいんじゃないのか?」

俺と契約している精霊が口をそろえて知らないとなると、やはりもう消えてしまっているのか……。

ファスターの屋敷の庭で腰を下ろしながら三振りの精霊剣を眺め、改めて考える。

ゼビカの話では荒野だったグッドフェロウが町になっても、精霊王はそこにいた。
しかし俺と魔王の封印が解けたタイミングで、忽然と姿を消した。

俺は肉体が朽ちないよう精霊王に守られていた。その保護がなくなった。精霊王は力を使い果たして消えてしまった……そう考えるのが自然だろう。

ロイはこのことを予見していたのだろうか。精霊王の力がいずれ消えてなくなることを精霊王自身から聞いていたのなら、それは予言ではなく、予測――俺の知っている合理的な性格のロイが得意とする領域だ。

で、あれば、すべてを俺に託すために、ゼビカにそれを言伝したと。

「……だが、伝えただけか? 焼き尽くされる?」

言葉は短く、曖昧だ。

それに精霊王が守っていたのは俺の体だろう。魔王の体ではない。精霊王がいなくなることと魔王が復活することは、必ずしもイコールじゃないはずだ。
魔王の魔力が尽きた後に精霊王の力がなくなる可能性もあったはずだし、魔王が封印に抗って一人だけ抜け出す可能性もあったはずだ。

「あとは、精霊王がいないのに、何らかの対策は伝えていないのもおかしい」

気になることは、「焼き尽くされる」という予言だけが伝わっていることだ。

「対策がないのか、それとも俺に丸投げしているのか……後者だろうか」

胡坐をかき、腕を組みながらうなっていると、屋敷の主であるファスターが走って来た。

「トントンさん!」

ファスターの後ろから、ゼビカも続いている。何やらのっぴきならない様子である。

「ファスターに、ゼビカか。どうした?」

「レジスタンスから、グッドフェロウに宣戦布告らしき文言が――」

話が全く見えなかった。

「レジスタンスとは何だ? カレーか?」

「あとで翻訳のマナクォーツを最新のものにしますからそのまま聞いてください!」

ゼビカは呆れていた。

……ファスターから話を聞く。

どうやらレジスタンスと呼ばれる魔族の反政府組織が存在し、一週間後グッドフェロウに攻め込むとの宣言があったらしい。

「ずいぶん丁寧だな。数は少ないのだろう? ゲリラ的に攻め込んだ方がいいように思うが」

「それが、『復活された魔王様の御意向で、正面から堂々と取りに行く』と。いたずらの線もありますが、トントンさんの報告もあり、おそらく事実だろうと」

「…………」

魔王か――ここまで早く動くとは。

「奴ならありえるだろう。それだけの力がある」

俺は答えて、立ち上がった。

「では、一週間で迎撃の準備を進めましょう」

「ああ、町の方は頼む」

「『町の方は』?」

俺は聞き返すファスターの肩に手を置いた。

「俺が単身で魔界へ向かう。三日分の水と食料だけ用意してくれ」

言ってから、魔王が戦うことを選んでくれたことに安心している自分に驚いた。

「それは、危険です!」

「威力偵察というやつだ。そこで魔王を討てれば兵を消耗せずに済む」

俺は答えた。

「なるほど、そうなるか」

予見していたようにゼビカは言った。

「止めるか? それとも《竜王旗》の契約を取りやめるか?」

「一度契約した身だ。見届けることはあれど止めはしない。それがお前の選択ならな」

ゼビカは言って、俺を止めようとしているファスターを制止させた。

「俺はここでレジスタンスの迎撃準備をしながらファスターと待っている。いい報を持ち帰ってくれることを期待しているぞ」

「無論だ」

即答して、俺は背を向けた。
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