封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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91 急ぎ死に場所へ

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次の日の朝早くに、俺はグッドフェロウを出発した。

角を頭につけて魔族に変装して、瘴気漂う魔界へと入る。
人間は生身で入れば一週間と持たずに瘴気にやられる。魔界の環境に適応できずに健康を害して死んでいくのだ。五百年前はネルの魔法で守られていたが、今はない。

だが、それでもしばらくは動ける。三日分の水と食料は、片道分である。

「しかし……瘴気は薄くなったような気がするな」

空気を吸って思った。五百年前は、もっと瘴気は濃かったような気がする。これなら一週間よりもう少し長く活動できるだろう。

魔王が魔界に帰ってからまだ日も浅い。それに宣戦布告したなら、反乱の準備で動けないはず。グッドフェロウ近くの集落に潜伏している可能性が高い。三日もあれば上等だ。

「……町か?」

森を抜けると、遠目に町のようなものがあることに気づく。そこまで人口が密集している場所はなかったはずだが……人間側の物資で魔界も豊かになったのか。

「ならば、生活しているのは悪逆非道の一族ではなく……グッドフェロウにいるような、人間と共存可能な者なのだろうか」

考えると決意が揺らぐようで、俺は顔を振った。

「――!」

町に入る直前、町の前に三百ほどの魔族が集団で固まっていた。五百年前の血に飢えた魔族の印象そのままの者どもである。

おそらく、ファスターの話にあった「レジスタンス」だろう。人間と共存する現状の方針を否定し、人間と敵対し奪う昔の方針に世論を戻そうとする者ども。

魔族の集団は、俺を見ると納得したように笑い、

「いたぞ!」

「あれだ!」

「やはり、魔王様のおっしゃったとおりだ!」

口々に叫んだ。

「どうやら読まれていたようだな」

宣戦布告を俺の耳にも届く前提でグッドフェロウに届け、俺が単身魔界に突入するのを待っていたか。

「まあ、そちらの方が都合がいい」

探す手間が省けた。見えないが、あの集団に守られて、魔王がいるに違いない。

俺は精霊剣《ブーステッド》を召喚すると、歩み寄っていく。

それを見た魔族たちは、

「五百年前の宿敵だ!」

「殺せ!」

口々に叫び、雄たけびを上げながら俺のもとへ集団で駆けてきた。

「やはり、こちらの方が幾分もやりやすい!」

俺はやって来た魔族をブーステッドで切り捨てていく。

前方を見やると、集団に守られるようにして、魔王が腕組みして立っていた。

魔王はこちらを見ると、得心言ったように笑った。
魔王は何やら、自分の身の丈ほどもありそうな大剣を持っている。魔界で手に入れたものがあるらしいが、関係ない。

「やはりそこにいたか、魔王」

俺は魔族を切りながら、魔王に笑い返す。

――精霊王の剣なしでも、殺しきってみせる。

「来てやったぞ魔王! 決着をつける!」

三百の魔族に囲まれながら、俺は四本目の精霊剣《竜王旗》を召喚した。
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