封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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89 魔王は魔族のチンピラを屈服させる

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魔族のチンピラを半殺しにした魔王は、ねぐらにしている場所に案内させ、そこでチンピラに尋問をしていた。

廃墟になっている酒場の中で、魔王はカウンターの上に腰を下ろし、膝をついておとなしくしている魔族の男四人を見下ろした。

「なるほど、グッドフェロウは魔族と人間が共生する独立都市のようになっていると」

魔族の男たちはうなずく。

「では魔界の奥の方は? このように治安はいいのか?」

「治安が悪い地域もある……あります。だが、都市のようになっている場所の治安はそれなりに守られています」

「食料も足りているようだな?」

「グッドフェロウとの交易がありますんで」

「ふむ」

魔王は考える。
魔界がこのように豊かになったのは、人間側からの物資の支援があったからだろう。代わりに魔法技術や魔界でしか取れない資源でも提供したか?

「て、てめえなんか、フォルノアさんが帰ってきたら瞬殺なんだよ」

考えていると、仲間の一人が吐き捨てた。

「おいバカ!」

と、もう一人が焦ったような顔をする。

「……フォルノア?」

「あの五百年前の人間との戦を生き抜いたっていうとんでもねえ方だ。生きる伝説だ」

「なるほど。そいつを呼び出せ」

魔王はすぐに言った。

「《念送》を使えるものは?」

遠く離れた場所に言葉を届ける魔法である。魔族の男は首を振った。

「必要ねえ。もうすぐ様子を見に来てくださる予定だからな」

話していると、酒場のドアが開いた。

「何事か?」

全身にうろこを持つ長髪の魔族の男が入ってくる。

「フォルノアさん!」

魔王の前に膝をつく魔族の男たちはそれを見て表情を明るくする。

「誰だ? どこのお嬢さんか――」

「落ちぶれたなフォルノア。まあ落ちぶれたのは我も同じだが」

「!」

カウンターの上で足を組みふんぞり返る魔王を見て、フォルノアは即座に膝をついた。

「えっ……?」

「フォルノアさん?」

膝をつく魔族の男たちはその光景に唖然とする。

「ご無礼をいたしました! ご帰還されていたとは思いもよらず……」

フォルノアは頭を下げながら言った。

「よい。普通にせよ」

「この者たちが何か粗相を?」

「それももうよい。魔王軍の将軍だった男が、なぜこんなところでチンピラの親玉なんぞしている?」

「お話いたします」

フォルノアは五百年で魔界に起こった出来事をかいつまんで話した。

なんでも魔界は人間と講和を結んだらしい。

それから、人間側から食料などの支援を受けるようになり、魔界のレアメタルなどと取引をするようになった。

魔界に入ってきたのは、物資だけではなかった。

人間の価値観やシステムを積極的に取り入れていった結果、治安は格段によくなったのだという。

「しかし人間の文化が浸透していくにつれ、魔族特有の文化は失われつつあります」

フォルノアは言った。

「これでは人間なのか魔族なのかわかったものではない。魔族は、友好関係や物資の提供を餌に、文化的な侵略を受けているのです。ゆえに、私はレジスタンスとして活動するに至りました」

「ふむ?」

それでうまく生存できているのなら、その結果もまたよい気がするが。

魔王が人間側に進軍したのも種族が滅びないためだった。だから、結果的に滅びていないのならそれでいいのではないだろうか。

「戦闘とその結果が至高であったはずの我々が牙を抜かれ、友好などと……」

「まあ、一方的に依存するのと、戦闘力をないがしろにするのはよくないな。国力の低下につながる」

「そうでしょう!」

「しかしな――」

「しかし魔王様が来たならばもう憂う必要はございませんな! 魔界中に散っているレジスタンスをここに集めましょう!」

高揚したフォルノアは魔王の話を聞かずに話を進める。

「魔剣アノドスをご用意しております。ぜひお手に取っていただければと」

「なんだと!?」

魔王が腰を浮かせた。

魔王が魔剣鍛冶に依頼していた剣だったが、魔王がいたときまでに完成することがなかった剣だった。

「あれが、ついに完成したのか……」

「ええ」

これがあればトントンを殺せる。

考えて、魔王は考えを改めた。今人間の世界は、魔族との友好を結んでいるのだ。で、あればもはや殺す必要性がないのではないだろうか。

「…………」

考えたとき、魔王は何か大切なものが胸の奥から抜け落ちたような感覚に襲われた。

もしトントン……いやゼノンが友好を望んでいるのなら、自分はどうするべきだろうか?

「いや、相手はこちらを殺そうとしているはずだ……」

魔王はつぶやいて、思い直した。

ならば、殺さなければならない。決着はつけねばならない。

であれば、そのレジスタンスとやらを最大限使ってやろうではないか。
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