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第8章 国立学校編
国王の決断 4
しおりを挟む「……さて、実はもう1つ皆に言っておかなければならないことがある。」
国王は大きな咳払いをしてその場を鎮め、そう言った。
周囲を見渡して皆が自分に注目していることを確かめ、その場にいるほとんどの人が驚くことを口にした。
「余は、次期国王に第1王子ではなく、第2王子のクロードを指名する。」
国王が宣言すると、辺りは一際ざわついた。
そりゃ、そうだろう。長男じゃなく次男が指名されたのだから。
だが俺達はクロードがあのブレスレットを付けていることで、次期国王に指名されていることは知っていた。……ちょっと疑いの余地はあったけど。
俺はそれを聞いたセインがどう出るのか心配で目を向けると、苦笑いをするセインがいた。
国王はセインと向き合うように、体をそちらに向ける。
「セインよ、よく聞くが良い。セインとローラは『隷属の魔法』でその性格を歪められていた事もあった。だがその時の行動は幾ら操られていたとはいえ、皆の記憶から消え去ることはできない。その点だけでも指名はできないだろう。そして更に今後のクイーナとミラーの2人が結婚し、その子供の事を考えると、やはりセインを指名するのは色々と問題がある。この点でもやはり指名は無理だ。この2点のことがあり、余はセインではなくクロードを指名したのだ。……分かってくれるな?」
国王はセインに向かって真剣な眼差しでしっかりと自分の考えを伝えた。
やはり仲の良い3人の事を考えて、しっかりと説明をしたのだろう。
「ですが、父上っ!」
「クロードよ、余が決めたのだ。異論は認めぬ。」
クロードがセインの方をチラッと見て焦ったように国王にそう言うと、国王は厳しい眼差しでクロードにそう言った。
「良いんだよ、クロード。俺自身もあの魔法から解放されてからは特に王位に興味はなくなった。あの魔法にかかっている時は『何が何でも王になってやる。俺が一番偉いんだ!』っていう考えが頭の中のほとんどを占めていた。だが魔法が解除された瞬間からそんな考えは無くなったんだよ。不思議だよな。それも多分、そう思うように操られていたんだと思う。だから俺のことは気にするな。それに俺はどちらかというと頭を使うより体を使うほうが得意だから、もっと剣技を磨いてミラー騎士団長の後釜になれるよう頑張るつもりだ。俺はそっち方面でお前をサポートしていくよ!」
セインはクロードに向かってそう言うと、ニカッと良い笑顔を向けた。……今までとはやっぱり違うね?
それを聞いたセインは何かを考えるように俯き、大きなため息をつく。
「……分かりました。セインがそういう考えなら、私もその話を受けましょう。これから一生懸命に学業と並行してそちらの勉強も頑張ります。」
クロードは顔を上げると国王に向かってそう言った。
国王はその返事を聞き、にこやかな表情で「頑張りなさい」と言った。
その後国王は何かを思い出したかのように「そういえば……」と呟いた。
「もう1つ皆のものに言っておかなければならないことがあったな。実は我が国に代々伝わるあの『聖剣』なのだが……もうあの剣は聖剣ではなくなったのだ。」
突然の国王のその発言に、その場にいた貴族だけではなく侍従や騎士、魔法師などからもどよめきがあった。
やはり皆からすれば『失われることのない力』だと思っていたからだろう。相当な驚きだったみたい。
「父上!それは一体なにゆえにそのようなことになったのですか!?」
その場のみんなの言葉を代表するかのように、セインが国王に聞いた。
すると国王は眉間にしわを寄せると1つ深いため息をついた。
「お前は分からなんだか?原因はお前だ。」
「えっ!俺ですか!?」
国王からの思いがけない発言に、セインはものすごく驚く。……いや、すっかり忘れたのかい?
「詳しくはここでは言えんが、お前がシエル君に脅しをかけたと報告があった。そのせいで聖剣に宿っていた精霊が聖剣から出ていくことになったのだ。現在その聖剣はただの剣に成り果てている。」
「……。」
セインは国王からのその言葉で、ようやく思い出したようだ。そして呆然とした顔で頭を垂れている。
「ではこの国の『守り』となるものは王国騎士団と魔法師団のみですか?」
国王にそう聞いたのはクロードだ。
国王は彼に向かって首を横に振る。
「いや、聖剣の精霊が解放される時、約束を交わしたのだ。『天界から俺の部下を呼び寄せ、この国……特に王都の守護をさせようと思っている』とな。そして現在、その精霊の配下がこの国全体を守れるように対策を取ってくれている。今回の騒動で被害があまりでなくて済んだのも、その精霊たちのおかげなのだそうだ。」
国王のその返事に、クロードは安心したようで、ホッとした顔をしている。
「では父上、その精霊たちは今後も常にこの国を守護してくれるのですか?」
ホッとしたセインもそう聞いてきた。
それに対して国王は「常にいるわけではないらしい」と答える。
そうだよね、ゆくゆくはライトニングと合流しようと考えていたようだもんね。常にはいないかも?
「なにはともあれ、お前のせいで聖剣はなくなってしまったのだと心に留めておけ。良いな?」
「……わかりました。」
すっかりしょんぼりしたセインが、俺の方を見て拗ねた顔をする。
……いや、そんな顔をされたって、ねぇ?
俺は勇者になる気は全く無い。
そこはいくら言われようとも変わることはないのだ。
それにどうやらこの場にいる貴族たちにもこの『聖剣が聖剣ではなくなった』ということが知れ渡ったようで、少なくても数日で全国にこの話は広まることだろう。
ともかく、今回の騒動に関してはこれでもう落ち着いたかな?
残りの学生生活はみんなとゆっくり過ごしたいよね!
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