410 / 529
第9章 ネシアのダンジョン編
久しぶりのローランの街
しおりを挟む俺たちはダンジョンの外へと出ると、一気にローランの街へと転移することになった。
例の女性を冒険者ギルドへと連れて行くためだ。
この段階で、気を失っていた獣人3人組も意識を取り戻したので行き先を告げて一緒に来てもらうことになった。
ローランの門番にはもう顔パスな俺達だったが、グリーさん達が新しく加わった為、入り口で犯罪歴がないかの確認をされる。
ついでに……と、腕輪から例の女性を取り出すと、門番に驚かれた。驚かせてごめんね?
そしてその女性の手を玉に翳すと赤に光る。
その途端、門番の優しかった顔が厳しい表情へと変わる。
「その人はどういった経緯で連れて来たんだ?」
門番の1人が訝しそうな顔で問いかけてきた。
それで俺達は『ブレイズ』で起こった出来事をかいつまんで話す。
……もちろん『あの人』の事は言わなかったよ!
「なるほど……この人はダンジョンで色々な犯罪を犯していたんだな?確かに冒険者だと門ではギルドカードの提示だけで済むし、ギルドにさえ品物を卸さなければ殺人などの犯罪が露呈することもない。あそこなら証拠が残ることはないし、とても危険な状況か……。1度領主様に話を通したほうがよさそうだ。報告感謝する。この女性はこちらで引き取ってもいいか?」
「ああ。そうしてくれればわざわざギルドに顔を出さなくて済むから助かる。」
「ん?ギルドには寄らないのか?ルーシェさんが寂しがるぞ?」
女性を門番の人に引き渡したスコットさんに、門番の1人はそう言った。
どうやらこの前俺たちの行きつけの宿屋で顔を合わせたらしい。
「女将さんたちも今度はいつ来るかなって言っていたし、久々なんだから馴染みの所には顔出してやれよ~?」
「あぁ、そうするよ。」
スコットさんはそう言うと片手を上げて別れを告げ、俺たちを連れて街の中へと入った。
久々に来た街はあまり変化はないようで、それはこの街か平和だったことの証だ。
俺たちは勝手知った歩きで進むが、獣人3人組は物珍しそうに眺めている。
……おや、パニアさんは少し違うのかな?
「もしかしてパニアさんはこの街に来たことありました?」
俺はキョロキョロしてはいても、なんだか懐かしそうな顔で見ているパニアさんに声をかけた。
パニアさんはニッコリとした顔で「ああ、来たことがあるよ」と答えた。
「この街は、俺たちが初めてネシアから護衛した商人と一緒に立ち寄った街なんだ。彼らもこの街で少し商売をした後、また移動したんだが……その間、数日だけだがこの街に滞在したことがあるんだ。懐かしいな……と思って見てしまったよ。街並みも、ほとんど変わってない。」
そういったパニアさんの顔は、とても嬉しそうだった。
そんなパニアさんを見て、クーガーも思うことがあったようで、もともと口数の少ない彼は黙ってしまった。
「へぇ~……ここがローランの街かぁ。あいつ、この街でしばらくの間保護されていたんだって言っていたな。こんな平和な街で過ごしていたのか……。」
ヒューザは弟がこの街で保護されていたことを聞いていたらしく、「弟への土産話にちょうどいい」と言って眺めていた。
それから俺達はまず宿を確保するためにいつもの宿へと向かった。
扉をくぐると、目の前のカウンターにいつものように女将さんが座っていた。
女将さんは俺たちの顔を見るなり破顔して、「お帰り、みんな揃っていて安心したよぉ!」と再会を喜んてくれた。
俺たちも揃ってくるの楽しみだったんだよね!
そして女将さんは俺たちの後ろに3人の獣人がいることに気づき、「そちらは?」と聞いてきた。
「彼らは今回の旅の同行者で、俺たちの友人なんだ。俺たちが3部屋、彼らは……1部屋?全部で4部屋空いているかい?」
スコットさんはそう言って聞くと、宿帳を見た女将さんは頷き、「今日はまだ大丈夫だよ」と笑顔で言った。
なので俺達はそれぞれの荷物を置きに部屋へと行く。
……俺達だけは別にそんなに荷物ないんだけどね!
そしてまた玄関前で落ち合うと、女将さんに少し出かけてくるが夕飯を宿で食べることを告げる。
女将さんはにこにこ顔で「腕によりをかけて作っておくよ!旦那がさ!」と送り出してくれた。
それから俺達はこの街の冒険者ギルドへと向かう。
門番さんにルーシェさんに顔出しするといいと言われたのもあるが、『ブレイズ』のダンジョンのことも相談しようと思ったからだ。
あのダンジョンは生まれ変わったとはいえ、やって来る冒険者はまだ今まで通りの、いわゆる『たちの悪い人』がやってくるだろう。
そうなった時、せっかく浄化して新しくなったのにまた穢れてしまう。それでは駄目だ。
だからそれの対策を相談しに行こうという話になったんだ。
冒険者ギルドの中に入ると、カウンターにいた受付の人が俺たちを見て笑顔になり、カウンターの端を持ち上げて「中へどうぞ」と通してくれた。
それを見てパニアさんは驚き、ヒューザ達は目をパチクリとさせる。
俺たちは受付の人に軽く挨拶をしてそのまま2階のギルドマスターの部屋へと向かう。
ためらわずに向かう足取りに、パニアさんは「よく来るのか?」と聞いてきた。
「あぁ、俺たちはここのギルドマスターと友人でね。よく何かあると相談したりしに来ているんだ。」
「なるほど……だからすぐにギルドマスターに相談しに行こうって言ったわけだ。友人なら相談しやすいからな。」
「まぁ……そういう事だ。」
ちょうど話が途切れたタイミングで、ルーシェさんの部屋をノックする。
中からは聞き慣れたルーシェさんの声がした。
中へ入るとルーシェさんにソファーを勧められ、みんなで席に着く。
ルーシェさんも書類仕事が一段落ついていたからなのか、すぐにソファーの方へとやってきた。
「よく来たねぇ!シエルくんとはちょくちょく会っていたけど、皆とは久しぶりだね!ネシアにいた時以来かな?」
みんなの顔を見渡して、ニコニコした顔でルーシェさんはそう言った。
「ところで……今日はどういった用件で来たんだい?僕にただ会いに来たってわけじゃないんだろう?」
「……何でもお見通しなんだな?」
スコットさんのその問いに、ルーシェさんは苦笑いをする。
「まぁ種明かしをすると、君たちが来る前にうちのギルドに門番が1人の冒険者を連れてきたんだ。その女性だが、所持していた冒険者カードを調べてみると、これがまた色々な記録が出てきてね。彼女、『ブレイズ』で相当犯罪を犯しているようだね。彼女のカードの記録には『魔物を討伐した記録』よりも『人を討伐した記録』のほうが多いくらいだ。今回彼女を連れてきたのは君たちなんだろう?つまり、君たちは『ブレイズ』にいたってことで、その2つから考えられるのは今回僕に会いに来たのは今後の『ブレイズ』の事だろう?」
おぉ~、やっぱり『お見通し』だね!
「そこまで分かっているなら、今後あのダンジョンをどうするば良いかの相談は乗ってくれるんだろう?」
「そうだねぇ……君たちとの話を領主に伝え、そしてついでに魔法師団長にも連絡するくらいはできるかな?……君たちの方でも何かやれることはないのかい?」
スコットさんからの問いにそう答えると、ルーシェさんは獣人3人組へと目を向けてそう問いかける。
それに対してパニアさんは1つ頷くと、俺たちに話して聞かせた構想をルーシェさんにも聞かせた。
「……なるほど、ネシアはそんな問題を抱えているんだね。あそこは強力な能力を持つ王族が国を守っているし、神から遣わされたっていう『巫女』もいる国だから今までは問題なかったんだろうね。まぁ……これからもそんなに変化はない気もするけど、君たちの国には『ブレイズ』よりも近い場所にダンジョンがあるそうじゃないか。ならば何が起きるかわからないかもだし、対策をしておくに越したことはないよね。」
ルーシェさんはうんうんと頷いて、パニアさんの話に同調する。
「じゃあどうしたらいいかな。やっぱり魔法師団長に連絡を取るか?ネシアの軍隊が治安を維持するのも兼ねてダンジョンを利用して戦力強化を図るなら、変な誤解のないように前もって話しておく必要もあるだろうしね。でも何より、一番近くにあるこの街の領主には話を通しておくのが先決か?」
ルーシェさんはう~んと唸ってブツブツと言いながら考え込むと、部屋の中をウロウロと歩き回りだした。
とりあえず俺たちは黙って様子を伺いながら、お茶を飲んだりして時間を過ごし、ルーシェさんの考えがまとまるのを待った。
「ごめん、待たせたね!やはりこれは一番最初に領主へ話を通し、次は魔法師団長である父に話を通しておくよ。父から国王へと話は行くだろうし、そうなったら僕の方からシエルくんに連絡を入れるね。」
ルーシェさんは改めてソファーに座ると、俺たちに向かってそう言った。
パニアさんも頷き、「国に帰ったらこちらも国王へと話を通しておきます。」と言ったので、『ブレイズ』は共同で管理をすることになるのかもしれない。
それによってあのダンジョンも『変換期』前の状態に戻り、正常化すると良いんだけどね!
168
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる