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第9章 ネシアのダンジョン編
ダンジョンの再生への道
しおりを挟む「にぃに、今ね、言われたんだ。」
途方に暮れていた俺の袖を、ユーリがくいくいと引っ張ってそう言った。……いつの間に来たんだい?
ハッとして結界の中にいる仲間の方を見ると、結界の中では蜘蛛と同化していた女性がしっかりと取り押さえられていた。
彼女は俺たちが相手では分が悪かったようだけど、ヒューザやクーガーが怪我をしていたところを見ると、普通の冒険者相手なら勝てたのかもしれない。
とりあえず仲間の無事を確認するとユーリに顔を戻す。
「それで……何を言われたんだ?」
俺はあえて『誰に』とは聞かない。聞いてはいけない。……聞かせようとしたら耳を塞ぐぞ?
そんな俺に対して、ユーリは素直に1つ頷くと話しだす。
「あのね、ダンジョンを浄化するならダンジョンマスターを浄化するのが早いんだって!その後、あそこにいるダンジョンマスターに休憩所まで送ってもらって、5階層ごとににぃにの魔力で『清らかな水が常に溢れる水場』を作ればいいそうだよ?」
なるほど……メインはダンジョンマスターなんだね?
ダンジョンって、ダンジョンマスターと一体だって聞いたことあったような気がする。
だからダンジョンが吸い取った物がダンジョンマスターにも影響するんだね。
つまり、それの逆もいえるのだ。
ダンジョンマスターの穢れが無くなれば、徐々にでもダンジョンは再生していくって事。
ならばダンジョンマスターをなんとかしなければ。
俺とユーリの話を聞いていた彼は、「そうか、あの人がそんな事を……」と言ったが最後、黙っている。
それにしてもダンジョンマスターの浄化はどうイメージをするかな。
まぁ神聖魔法を使うのは間違いないんだが、『穢れ』とかいう目に見えないものを何とかするにはどうすれば良いのか。
俺がう~ん……と唸っていると、またもやユーリが袖をくいくい引いた。
「どうする?にぃにがやる?それとも僕が体を貸す?」
……体を貸す?
一体何に?
『例の人』にか?
それは……ユーリの体に影響はないのか?
なんとなく俺の不安がユーリにも分かったのか、「元々僕は分身だから大丈夫なはず!」とユーリはニッコリと笑って言った。
それならば良いんだけど……だけどね、『例の人』の分身だっていう話は初耳なんだよね。……それ、本当かい?
「じゃあにぃにも了解してくれたことだし、少しだけ体を貸してあげるよ。」
ユーリは何もない上空を見上げる。
すると雲1つない空から一筋の光がユーリに向かって降ってきた。
ユーリはそれを全身で受け止めると、急に身体が竜化した。
そして顔をダンジョンマスターへと向けると口を開く。
『久しいな、元気……はしてないようだな。だいぶ変質してしまっているようだ。』
「ええ、あなたが私を作り出した時からみればもうかなりの時間が経っていますからね。そりゃあ変化もしますよ。」
『いや、その穢れからくる変質は年月からくるものとは違うのだよ。……君は、どうしたい?』
ユーリとは違う『何か』がダンジョンマスターへと声をかけると、彼はそう言い返す。
そして『何か』は彼にそう問う。
ダンジョンマスターはしばらく目を瞑って考えていたが、目を開くとひと言「もう、疲れたかな」と言った。
『ならば代替わりをするかい?』
その『何か』はそう言った。
ダンジョンマスターには代替わりなんてものが存在するんだね?
俺はスコットさんたちの方をチラッと見ると、リッキーが首を横に振る。
ならば、もしかして初なのかな?
「代替わり、なんてものができるのかい?」
『ああ、できるよ。素材は彼の腕輪の中で眠っている。そろそろ成熟してきている頃だと思うんだ。』
『何か』はユーリの体を借りて、俺の腕輪を指差す。
すると腕輪から勝手に何かが取り出され、地面へと出現した。
その出現した物は……10数個の2リットルペットボトル大の白い卵のようなものだった。
……卵?あんな卵なんてあったっけ?
俺の内心をよそに、その『何か』はその卵を、まるで魔石で魔道具を作るかのように一つに融合し、1つのでかい卵へと変化させた。
『さあ、生まれておいで。』
『何か』がそう呟くと、中から一匹の巨大な白い蟻が生まれた。……えっ、もしかして!?
『さあ、お前はもう人化ができるだろう?これからはお前がこのダンジョンのダンジョンマスターとなるのだ。』
その『何か』がその蟻に向かって語りかけると、蟻は頷き、人の姿へと変化する。
その姿は色は違えども、まるで今のダンジョンマスターとそっくりだ。
『さあ、これで準備ができた。君の方は心の準備はできてるかい?』
「……ああ。この長い生に疲れ果てているんだ。いつでも良いよ。」
ダンジョンマスターがそう言うと、『何か』は彼の頭の上に手を翳し、何かを唱える。
するとダンジョンマスターの身体は一瞬光り、その身を光の球へと変化させた。
そしてその光を新しくダンジョンマスターになる者へと融合させると、その『何か』は頷く。
『これでこのダンジョンは君の管理化になった。だが、まだまだこのダンジョンは穢れを溜め込んているようだ。本来ならこの後は彼に任せようかと思っていたのだが……これは新しいダンジョンマスターとなった君へのお祝いとしようか。』
ユーリの体を借りているその『何か』はユーリの体を出ていった後、目も開けていられないような凄まじい光と圧倒的な威圧感を一気に感じさせて消えた。
それはまるで、このフロアを中心に地上と地下へ広がって圧倒的な力で浄化していく……そんな感じの光だった。
『やぁ……さすがに疲れたかな。にぃに、抱っこ……。』
子竜の姿へと変化したユーリは、そう言って俺の胸に抱きつく。そしてすぐさま寝てしまった。
俺はユーリの頭を撫でながら、新しくダンジョンマスターになった者を見る。
彼は少し辺りをキョロキョロしていたが、俺と目が合うとニッコリと笑った。
「マスター、初めまして。私はマスター達が倒したフォレストアントクイーンの腹にいた卵の一部です。マスターとはその腕輪の中に入れられたことによって自動で従魔登録されていました。ですので、私がこのダンジョンの支配者となるのであれば、このダンジョンはマスターのものです。」
彼はそんな事を言いだす。
えっ……えぇっ!?
その理屈は通らないと思うんだけど!?
そしていつの間に作り出していたのか、掌大の石を呆然としている俺の手に握らせた。
「それはこのダンジョンの転移石で、それ1つでどこへでも、何人でも転移できますよ。これは5階層ごとじゃなくても行けますから、便利だと思います。今後のダンジョン攻略に使ってくださいね!」
そんな事を彼は言っているが、しばらくはこのダンジョンの続きを攻略する気は今のところ無い。
……とりあえずダンジョンから出るのには使おうか。
そんな混乱状態の俺の側に、結界の中にいたはずの仲間がやって来る。
しかもアースさんとグリーさんが獣人3人組を、アクアさんが例の女性を担いでやってきたのだ。
……あれ?誰も出てこれないように張った結界は?
俺は結界のある方を見ると、既に結界は跡形もなくなっていた。
なるほど……先ほどの『浄化』によって、俺の作っていた結界は消滅したようだ。
もしかすると他の階層でも同じ現象が起こっているかもしれない。……まぁ、良いけどね?
とりあえず何があったのかは見ていてなんとなくわかっている彼らだが、一応顛末を話してやる。
「……なるほど、先ほどの光が『創造神』だった……っていうんだな。」
スコットさんがそんな事を言って頷いている。
彼らは『例の人』に会ったことはないらしいから、真偽はリッキーとユーリにしかわからないのかもしれない。……俺はお婆さんだったから知らないぞ!
「とりあえずこのダンジョンからは出ようよ。この女も冒険者ギルドに突き出さないとならないしね。」
アクアさんはそう言うと、先ほどの光で昏倒してしまった彼女を担いだまま肩をすくめた。あ、その人収納するよ!
すべての準備が整った後、俺達は新しいダンジョンマスターに帰還の挨拶をする。
「また遊びに来てくださいね!今度来る時には過ごしやすい環境を作っておきますので、よろしくお願いしますね!」
彼はニコニコとしながら俺を見る。
すると彼は「そういえば……」と言った。
「私の名前、つけてくれませんか?」
「……えっ?」
「だって私もマスターの従魔の1人ですから。お願いします。」
彼はそんな事を俺に言う。……困ったなぁ。
「にぃに、このダンジョンってなんて呼ばれていたっけ?」
困っていた俺に、ユーリが助け舟を出してくれた。
そうだよ、『アース』さんもダンジョンの名前だったじゃないか。
ならばこの人は『ブレイズ』だね!
俺が彼にそう告げると、彼はとても嬉しそうに自分の名前を何回も呟いている。
「じゃあ俺たちは行く。今度来る時はもっと下の階層を攻略しに来るな!」
リッキーが良い笑顔でブレイズと握手をする。
そして揃って転移陣へと向かった。
「では、お元気で!」
ブレイズはいつまでも手を振ってくれている。
俺たちも手を振り返し、1階層の転移陣へと転移した。
今回のダンジョン攻略、途中どうなることかと思ったけど、みんな無事に帰還できて良かったよ。
……若干、『無事』とは行かなかった奴もいたけど、まぁ良しとしよう!
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