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第10章 国立学校 (後期)
総当たり戦の闘技大会 7
しおりを挟むマール先生の呼びかけで俺と5年生の大将は試合場の中央へと向かう。
その時にチラッと相手を見たが、相手は何だか嬉しそうだ。
そりゃそうか、今まで誰とも戦ってなかったのだとしたら、あのまま終わっていたら仲間の応援だけで学校最後の闘技大会が終わってしまうもんね。
そして俺たちは中央にある白線を挟んで向かい合った。
「この大会の勝敗には関係ないのだが、これから君たち2人に戦ってもらおうと思う。5年生としては最終戦となるので、心残りのないようにとの配慮だ。クリスくん、遠慮なく自分の持てる力を出し切って戦ってくれ。シエルくんには彼の力を引き出せるように、能力制限の魔道具をはずさせてもらう。これなら彼も遠慮はいらないだろう。」
マール先生はそう言うと、俺の手首や足首にはめてある魔道具を取り外した。……おぉ、なんか軽くなった?
それを見た対戦相手のクリスさんは驚いた顔でマール先生を見る。
「何でそんな小さな子に、そんな物騒なものをはめていたんですか!?」
クリスさんのその言葉にマール先生は目をパチクリさせて首を捻ったが、よくよく考えれば……と思ったらしく、苦笑いをした。
「君はこの子の戦うところを見たことがないのかな?以前、この大会で審判をしてくるている2人と戦ったんだけど。」
「ん~……俺は記憶にないですね。そもそも俺は前期の一時期に騎士団の方に研修に行っていたので居なかったんですよ。」
「なるほど、それなら分からないか。この子はね、今日審判してくれている2人と、あと女性の魔法師2人の臨時講師を今年やってくれている4人と冒険者をやっているんだ。チーム名は『スノーホワイト』。君も聞いたことあるだろ?」
マール先生のその言葉に、クリスさんは目を見開いて俺を見た。……そんな驚くことかな?
「本当ですか!?じゃあ『ロック』の騒ぎを鎮めたメンバーにいたってことですか!?えっ、何でそんな人がこの学園に?」
「まぁ……それはいろいろあるようだよ?」
マール先生の苦笑いしながらの言葉に、何となく聞いてはいけないのだと悟ったクリスさんは頷いた。
「まぁそういう事だから、遠慮なく戦いなさい。……彼は相当強いよ?」
マール先生の真剣な顔に、クリスさんは「分かりました」と言って頷く。
そして俺たちは適度に距離を開けた。
「じゃあ2人とも武器を構えて。」
その言葉に俺は片手剣用の木刀を、クリスさんは大剣用の木刀を構える。
互いに戦う前に自前の魔力で魔力コーティングを施す。
戦う準備ができるとマール先生を見る。
それを見たマール先生は頷くと「試合……始め!」と合図を出した。
その途端に俺たちは一気に詰め寄る。
だが俺の方が素早いので、クリスさんがほとんど動かないうちに辿り着く。
それに対してクリスさんは驚いたようだが、俺の一撃目はしっかりと防いだ。
それからは剣の打ち合いの応酬で、俺の方が手数が多いのでクリスさんはなかなかに前に出れずにいる。
しかも体格に見合わないほどの一撃の重さに、クリスさんはたまに顔を顰めることもあった。
そこで俺は一旦距離を取るように、重めの一撃を加えたあとで後ろへと飛んで下がる。
すると彼は俺の方へと肉薄し、鋭く斬りつけてきた。
俺はそれを普通に受け止め、そこからの彼の乱撃を難なくこなしきった。
それを見たクリスさんは剣だけでは俺の相手になれないと悟ったらしく、剣に風魔法をまとわせた。
すると彼の剣捌きが目に見えて素早く鋭くなる。
……なるほど、風魔法にはそんな使い方もあるんだね!
俺は1つ勉強になりながらも、彼との剣の打ち合いで木刀に施した魔力コーティングが剥がれないように、常に魔力を補給し続けた。
そう、意外と風魔法を纏った木刀はとても鋭く、真剣並みの切れ味になっているのだ。
そんな状態をしばらく続けたあと、クリスさんは一旦距離をとった。
距離をとった彼は、体力をかなり消耗しているのか肩で息をしている。
やはり木刀とはいえ、大剣用のものは重いのだろう。
俺は彼に合わせて少しだけ攻撃の手を休めた。
さてこれからどうするかな?と考えていた時、彼は何やら詠唱を始めた。
何をしてくるんだろうと思っていると、彼は巨大な火球を頭上に作り出し、それを徐々に圧縮して小さくしていった。
直径15メートル程あったものが最終的にはサッカーボールほどの大きさまでなった火球は、その圧縮具合から考えると元の火球の何十倍もの威力があるだろう。
それはもしかすると、少しでも触れると大爆発を起こすかもしれない。
俺はそんなことになると大変だと、試合場の周囲に張ってある結界を強化するようにイメージして、もう1枚内側に強固な結界を張った。
どうやら彼はこの修練場に張ってある結界が強化されたことに気づき、少しホッとした顔をした。
それからクリスさんは遠慮なく俺に向かって、そのとても小さな太陽のような火球を飛ばしてきた。
彼はありったけの魔力を込めたらしく、投げた後には前のめりで倒れてしまった。
俺は彼が火球を投げた瞬間に、自分の木刀に風魔法を纏わせた。
万が一のことを考えて俺寄りの場所で爆発するように引きつけた後、剣から圧縮した風魔法を飛ばして火球を何重にも切り裂く。
一瞬で細切れになった火球は、案の定大爆発を引き起こす。
俺は彼の安全を考え、転移魔法で彼の元へと向かい、互いの周囲に結界を張った。
その直後にものすごい爆風がやってくる。
……良かった、間に合ったね!
俺はホッとした顔で彼を見ると、彼はもう寝てしまいそうな顔で「やっぱりすごいな、君は」と掠れた声で言った。
俺はほぼ枯渇している彼に自分の魔力を譲渡しながら、軽い風魔法で周囲の煙を吹き飛ばす。
どうやらこの場全てが結界によって守られていたので、全くといっていいほど先ほどの爆発で破壊されたものはなかった。
そう、全てが無事だったわけではなく、火球の爆発した場所の地面のみ、多少クレーターのように凹んでいたのだ。
一応床にも結界を張っていたのだが、予想よりも火球の威力が高かったのだろう。
そうこうするうちにクリスさんも動ける程度には魔力が回復し、先ほどの爆発で驚いていたマール先生も試合場へと戻ってきた。
「凄いね、クリスくん。そんな奥の手を持っていたなんて、先生驚いたよ。いつそんな事を習ったんだい?」
マール先生は少し顔を引き攣らせながらクリスさんに聞いた。
彼は苦笑いをしながら「騎士団に行っている間に、魔術講師のリーシェさんからやり方を教わりました」と答えた。
なるほど、リーシェさんは学校で授業がない日は王宮の魔法師団の所にいるって言ってたもんね、その時にでも教わったのかもしれない。
それからマール先生は今の対戦の勝利者に俺の名前を言うと、会場には割れんばかりの大歓声が響き渡った。
それを浴びた俺とクリスさんは照れながらも互いに握手を交わす。
こんなに凄い技を持った人が王宮の騎士団に入団するとしたら、とても凄いことかもしれない。
……うかうかしてられないね、ミラー騎士団長!
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