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第10章 国立学校 (後期)
総当たり戦の闘技大会 6
5年生とのここまでの試合はお互いに2勝2敗だ。
残るはお互い3人。
流石最終学年の5年生はかなり強い。
いろいろな事を学んできているので、確実に普通の冒険者よりも強いんじゃないかな。
そして次の試合はミストさんと、先ほどクロードを倒した剣士との戦いだ。
昨日はミストさん、剣士との戦いはかなり優位で勝てたので、今日もそれでいけると良いなと思っている。
現在、ミストさんと先程の対戦者が中央で構えている。
対戦相手はミストさんの昨日の試合を見ていたからなのか、ミストさんをジ~ッと見て動向をうかがっている。
そんな相手を知ってか知らずか、堂々と影に潜るミストさん。
相手は自分の影を注意して身構えているが……残念、そこからじゃなかったようだ。
ミストさんは試合場の上にできた建物からの影を利用して出現し、そっと音もなく忍び寄り、相手に斬りつけようとする。
だが相手も微かなミストさんの気配で防いで振り向くと、そこにはもうミストさんはいない。
相手はチッ!と舌打ちをして周りを見渡し、影のある場所を見回す。
……だが、今度は足元の影からスッと出ると、首筋に短剣用の木刀を当てる。
対戦相手はビクッとして、条件反射なのか分からないが、持っていた木刀の柄でミストさんの鳩尾辺りを思い切り突く。
それによってミストさんは肘を折り、蹲ってしまった。
その瞬間、ミストさんと戦っていた選手の身体が光だし、辺りを照らし出す。
それを見て慌てだしたのは相手選手だ。
自分の体を見て、なんで光りだしたのかと周りをキョロキョロしている。
「おいっ!この光はなんだ!?おおかたあそこにいるチビがなんかしたんだろっ!なんとかしろよっ!」
対戦相手はそんな事を言って、俺の方を睨みつける。
……いや、俺、何もしてないんだけど?
俺が不思議そうな顔をした時、試合場の外にいたマール先生がその選手の近くへと歩いて行った。
「君、すっかり忘れているようだが、この大会が始まる時に宣誓しただろう?あれは試合中に問題行動をとった場合に、こうやって体が光って分かりやすくする様に宣誓しているんだ。まさか君は、ただ言っているだけだと思っていたんじゃないだろうね?君は先ほど、この子の武器が首筋に当たっているにも関わらず攻撃を加えた。もし彼の武器が本物の短剣であったなら……更に言うと、『とどめを刺して良い』というルールだったなら、君は死んでいたわけだ。だからこそ、致命傷になる場所への武器当ては『勝ち』と認められる。たとえ先ほどの行為が反射的なものだとしても、反則は反則だ。それに今の行為で対戦相手がダウンしてしまっても、君の『負け』は覆ることはないよ。」
ミストさんの対戦相手はマール先生のその言葉を聞いて俯いてしまった。
……えっ?もしかしてあれはわざとだった?
ああ、だから『光った』んだね。
それから対戦相手は自分の陣地へ、ミストさんは俺が治療したので、とりあえずはうちの陣地へ帰ってきている。
そしてその間に次の試合が準備され、試合場の中央でアンドリューと対戦相手が立っている。
アンドリューはどうやら剣術で戦うらしく、彼は大剣用の巨大な木刀を構えている。
対して対戦相手は魔法師らしく、杖を構えている。
そんな彼らがマール先生の合図で動き出す。
まず動いたのは対戦相手の方で、クロードのようにアンドリューに向かって大量の魔力弾を飛ばしてきた。
それをアンドリューは平然と大きな木刀で切って霧散させてしまう。
どうやらアンドリューも木刀に魔力コーティングを施してあるようだ。
それを見た対戦相手は苦い顔をすると、攻撃スタイルを変える。
ウォーターボールを2つほど作り、それをアンドリューへ向かって投げてきたのだ。
もちろんアンドリューはそんなものには当たることもなく避けた。
避けたのだが、そのウォーターボールはぐるりと方向転換してまたアンドリューへと向かってくる。
そんな事をもう1回繰り返すと分かるのだが、どうやら対戦相手が放ったウォーターボールは追跡機能がついているようで、どこまでもアンドリューを追いかけていく。
しかも対戦相手は次々とそんな物を作り出していくので、あっという間にかなりの数のウォーターボールがアンドリューを追いかけることになった。
ため息をついたアンドリューは試合場の中央へ向かい、その場に立つ。
するとアンドリューに向かってウォーターボールが次々と当たり、彼は巨大なウォーターボールの中に閉じ込められてしまった。
そこで対戦相手はすぐそばに寄り、「降参をするならすぐ解除するよ」と声をかける。
だがアンドリューは平然とした顔で対戦相手を見ると、一気に『竜化』する。
それを見た対戦相手は驚いて後退りをしてから走り去ってしまった。
会場が少しざわつく中、アンドリューはウォーターボールの中で風魔法のサイクロンを唱えた。
すると周りの水がとても細かい粒子となり、全て霧と化して一瞬対戦相手とアンドリューの姿が見えなくなる。
すると急に、どこかで対戦相手の悲鳴が聞こえた。
次の瞬間、風魔法で全ての霧が晴れた。
そしてそこには対戦相手がアンドリューに木刀を突きつけられて床に伸びている……えっ?
これって……状況から考えて斬りつけられたよね?
試合的には大丈夫なの!?
俺はハラハラして見守っていたが、アンドリューの体が光っていないところを見るといわゆる『セーフ』なのだろう。
マール先生はすぐにやって来て、どういう状況なのかを確認する。
どうやらアンドリューの話では、木刀で斬りつけたのではなく、襟首を持ち上げて至近距離で睨んだところ、悲鳴をあげて気絶されたのだとか。
で、これでは判定勝ちにならないので、床に置いて木刀を突きつけていたとの事。
……これは……相手の度胸が足りない……のか?
アンドリューの顔が怖かったっていうより、あんな濃霧でいきなり襟首を持ち上げられた事が怖かったのかもしれない。
俺がうんうんと頷いていると、マール先生によってアンドリューの勝ちが告げられた。
これにより、俺たち1年生が5年生を下して優勝を勝ち取った事になる。
「先ほどの試合により、今大会の優勝学年は1年生となりました!1年生の代表、おめでとうございます!」
マール先生の宣言により、俺たちの優勝は決まった。
最終学年である5年生の大将は今大会では俺と同じく出番はなかったようで、なんだかしょんぼりしているように見える。
マール先生はそんな彼の事を見て苦笑いをすると、もう1つ宣言した。
「さて、大会の結果は決定しましたが……もう1試合、残っています。……シエルくん、クリスくん、2人とも私の前に来てください。」
マール先生になぜか俺と、クリスという名の生徒……どうやら5年生の大将の名前らしいのだが……とにかく俺達2人が呼ばれた。
……えっ?
もう1試合って……もしかして、俺と彼が戦うの!?
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