280 / 529
第6章 王都近くのダンジョン編
頑張れ、2人とも!
しおりを挟む少しだけ飲み物飲んだりして休憩を取った後、このフロアのボス戦の準備に入った。
リッキーは自分で武器に魔力コーティングを施し、俺はスコットさんの剣に魔力コーティングを施す。
ここのフロアボス、かなり物理攻撃の防御力高いそうだからちょっと強めに魔力を入れておこうかなぁ?
俺はスコットさんから武器を受け取ると、武器の柄を持つ。
いつもなら柄と先端を持って施すんだけど、さすがにスコットさんの大剣の先には手が届かないので、柄の方から薄っすらと魔力を伸ばして包み込むイメージを思い浮かべる。
すると俺の魔力はイメージした通りにスコットさんの剣をスルスルと包みこんでいく。
……なんか不安だから、3重に包むか。
それが完了すると、武器をスコットさんに返却する。
スコットさんは受け取った武器を見て、不思議そうな顔をしていた。
「見た目は何も変わってないが、本当にその『魔力コーティング』がされているのか?」
「一応俺としてはちゃんとしてあるんだけど……何かで試し切りする?」
「そうだな、ぶっつけ本番は怖いからな。」
スコットさんはそう言うと、おもむろに近くにある木の幹に向かって剣を袈裟斬りに振り下ろした。
するとかなり太かった幹があっさりと綺麗な切り口でスパッと切れ、斜めに倒れていった。
それを見たスコットさんは口を開けて唖然とする。
「……これは怖いな。あまりにも切れ過ぎじゃないか?」
立ち直ったスコットさんがそんな事を言いながら俺を振り向く。その顔は困惑しているようだ。
「だから言ったろ?めちゃくちゃ切れるって。気をつけろよ?」
「ああ、これは気をつけないと危険だな。」
そんなスコットさんの肩を叩きながらリッキーが苦笑いをする。
返答するスコットさんも真剣な表情だ。
なにはともあれ準備ができたので、2人にはこっそりとボス部屋に入ってもらった。
中を覗いてもいなかったので、どうやらここも中に入らないとフロアボスが出てこないタイプらしい。
しばらくすると部屋の中央に光の玉が出現し、徐々に大きくなっていく。
それの光が弾けた後には、確かにリーシェさんが言ったような『巨大な熊』が立っていた。
……まぁ、ちょっと……いや、かなり巨大だけど。
立った姿はまるで横幅5メートルある3階建ての建物を正面から見ているようだ。
そんな熊を見たスノーホワイトのメンバーは驚きを隠せなかったようで、中には入った2人も同様のようだ。
これは……まずいんじゃないだろうか?
俺はふとそう思って、慌てて2人に結界を張りに向かう。
向かっている途中で、突然その熊が雄叫びをあげた。
それを聞いた2人は怯えすに、逆に意識がしっかりしたようだ。
「行くぞ、リッキー!」
「おうよ!」
そう言って熊に向かった2人。
結局結界を張るのはやめ、俺も参加することにした。
2人に向かって走っていく間に俺も、自分の武器に魔力コーティングを施して準備を整える。
「何だ、シエルも来たのか?……まぁ、お前が来れば百人力だから安心だな!」
俺が途中で2人に追いつくと、リッキーからそんな事を言われた。頑張るよ、俺も!
3人で熊のそばに立つと、目配せでそれぞれ分散して熊を取り囲む。
熊はそんな俺達をくるくる回って見回し、そして俺の目の前で止まった。
もしや俺に標的を定めたのか?
たがそうなると他の2人に背中を向けているので、2人には絶好のチャンスだ。
熊が俺に自前の爪で襲いかかってきたが、俺は刀の棟で爪を振り払う。
俺が熊の意識を引き付けている間に2人は熊に切りかかった。
その時、俺は何となく嫌な予感がして一旦後ろに飛び、距離をとった。
すると次の瞬間、俺のいた所に何故か斜めの細い筋で魔力みたいな物が飛んできた。……離れていて良かったぁ。
それがどうやら熊の体を切ったスコットさんの剣筋だったようで、熊がドロップ品へと変わった後には驚いてスコットさんを見るリッキーと、口を開けて目を見開いて驚いているスコットさんがいた。
早く立ち直ったのはやはりリッキーで、「何がどうしたんだ?」というように俺を見る。
いや、俺を見てもよくわからないよ?どうしたのさ。
「……なぁ、それなんだけどさぁ……さっき熊切った時、魔力飛ばなかったか?」
リッキーがスコットさんの剣を見ながらそう言うと、スコットさんもハッとしたように剣を見る。
「……いや、俺もよく分からないんだ。いつもの様に集中して袈裟斬りをした瞬間に何かが剣から飛んでいったんだ。一体あれは何だったんだろうな……?」
スコットさんは眉間にしわを寄せ、訝しそうにそう言った。
それを聞いて俺は、タラ~っと冷や汗が額から垂れていった。
それって、俺がこの前の大会で使った技みたいなものじゃないのか?
確かあれも自分の魔力を剣先から飛ばすような感じでイメージして使ったような……?
俺かそう思ったのを読まれたのか、リッキーがゆっくりと俺に顔を向ける。
「……お前の仕業か?」
「……え?何のことかなぁ?」
「とぼけやがって!さっき自分で思ったことあんだろ!?お前、スコットの剣に魔力込め過ぎたんじゃねぇのか?」
「……。」
リッキーにそう指摘され、言い返すことができなかった俺。
……確かにそれは否定できない。
スコットさんに何かあると嫌だからと3重に魔力コーティングをしてしまった……。
そう考えたところで、俺はハッとしてスコットさんに駆け寄り、剣を見た。
剣にかけた魔力コーティングが2重に減っている。
と、いうことは……1重分のコーティングが飛んでいったってこと?
これ、あともう一回同じ事ができるってことだよね?
でも、最初に木を切った時は何ともなかったから、何かしらの発動条件はあるのかもしれない。
俺が急に黙って考え込んでしまったので、2人も黙って様子を窺っているようだ。
「ほら、ドロップ品を拾わないの?」
いつの間にか側へと来ていたリリーさんが俺たちに声をかける。……そうだね、まずは拾おうか。
この熊のドロップ品は毛皮と魔石、鋭い爪だった。
魔石と爪はまあ標準?の感じだったが……ただ、毛皮の大きさが半端ない大きさで、全身の姿だから体育館の半分ほどの大きさがある。
「この毛皮、何に使うんだろうね?」
「そりゃあ防具に加工するんじゃね?普通の剣では傷もできないって言っていたろ?まぁ、俺たちはこのダンジョンで得た品は冒険者ギルドに売るから、何に使うかは自由だけどな。」
俺の疑問にそう答えたリッキーは肩を竦める。
……そりゃあ、そうか。
でもこれを全部売ったら相当な事になるだろうね。
とりあえず俺たちは手早くドロップ品を拾い、26階層への階段へと向かう。
多分ここからまたしばらくは石壁に囲まれた通路を進むことになるんだろう。
その先にある最上階の30階層。
そこはどんな場所なんだろう。
俺はそんな事を思いながら、階段を上がった。
311
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる