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第6章 王都近くのダンジョン編
今度こそ、スノービークに帰るぞ! 1
しおりを挟む翌朝、目が覚めた俺は思わずガバっと起きて辺りを見渡す。
そこはテントの中で、自分はベッドの上で目が覚めたようだ。
ここはどこだろう?と思いつつ、周りのベッドを見るとリリーさんとリッキー、エミリーさんはまだ眠っていたようだ。
空のベッドが3個あるから、スコットさん達は起きてテントの外にいるんだろう。
ふと俺の横を見ると、そこには人型のユーリがスヤスヤと眠っていた。
どうやら俺が勢いよく起きても眠っているくらい、深い睡眠なのだろう。
俺はユーリを起こさないようそっとベッドから降りると、これまた静かにテントを出る。
すると外には案の定、スコットさん、セバス、リーシェさんの3人が焚き火を囲んで座っていた。
「……起きたのか、シエル?腹は減ってないか?」
テントから顔を出した俺に気がついたスコットさんは、手招きしながらそんな事を言う。……うん、お腹ペコペコだよ。
頷いた俺に、スコットさんは自分のマジックバッグからサンドウィッチを1つ取り出して手渡してきた。
俺は「ありがとう!」とお礼を言うとそのサンドウィッチに齧りつく。
それは照焼チキンとレタス、マヨネーズが挟んであるやつで、案外ガッツリ系だったのでお腹がものすごく空いていた俺にはぴったりだった。
「ねぇ、テントとかはどうやって鞄から出したの?」
俺はもっともな事をその場の3人に聞く。
あの鞄は登録者しか出し入れできないのだ。
「あぁ、それはユーリが出してくれたよ。あいつ、お前の鞄から出入り自由だろ?どうやらあいつもあの鞄の『登録者』らしいな。」
……なるほど、確かにユーリはあの鞄の『登録者』だったかな?
俺が納得して頷いていると、思わぬ事をセバスから聞かされた。
「シエル様、あの鞄にフォレストアントの卵がたくさん入っていますが、把握されていましたか?」
「ああ、それは知っている。でも孵化していなかっただろ?」
「……ええ、まだ孵化しておりません。ですが……あの者たちはもうすでに『フォレストアント』とは呼べない者に変質しているようですぞ?」
「……え?」
俺は目を点にしてセバスを見た。
……え?どういう事!?
「あの者たちはあの鞄の中でシエル様の神聖な魔力を吸って育っており、元の種族とはかけ離れた種族へと進化したようでございます。そしてその事実といたしましては、あの者たちはいつの間にかシエル様の従魔となっているということをあらわしております。」
……え?な、なんですとぉ~!?
その場に俺の叫び声がこだまする。
そりゃあ驚くよ!
だって俺、従魔契約してないじゃん!
なんで勝手にそうなるの!?
「シエルくん、その子たちをどうするつもりだい?」
驚いて固まっている俺に向かってリーシェさんはそんな事をのんびりした口調で聞いてくる。
「ど、どうするつもりも何も、従魔契約をした覚えは無いんですが?」
「そうだろうね?でも卵だから何が起きるのかわからないからね。そういうこともあるのかもね?」
「……。」
そんな事があっても困るんですけど!?
戸惑っている俺に、セバスは一つの提案をする。
「あの者たちはもうすでに凶悪なアントではなく、神聖な気を纏った穏やかな種族になっているようですので、一部をエルフの住まうあの森へと住まわせてはいかがでしょう?あそこならば立派に育ってくれれば、良い森の守護者の一角になってくれるやもしれません。流石にフェンリルの一家だけではなかなか危険な状況へとなっていましたからね。ちょうど良いと思われますが。」
……なるほど、それは一理あるかも。
アリ達を一部孵化させて森の守護者たるフェンリルへと預ければ、立派な守護者へと鍛えてくれるかもしれない。
それであの森がさらに平和になれば、その森に面しているスノービークも平和になっていくというものだ。
俺はうんうん頷くと、セバスの考えに賛成した。
「なるほど、そのアント達をあの森の中に、ねぇ。もしそんなに穏やかな種族へと変化したのなら、2、3匹ほどエルフの里にも常駐させてもらえないだろうか?あそこもんかものが少ないからねぇ。どうだろう?」
セバスの考えを聞いて考えていたリーシェさんは、そんな事を俺に提案する。
……なるほど、確かにあそこもなかなか人手不足になっていたようだもんね。考えてみるよ。
そんな事を話しているうちに、みんな起き出してきたようだ。
「……なぁ、さっきシエルの叫び声が聞こえた気がするんだけど?」
リッキーがあくびをしながらこちらへと歩いてくる。
俺が「おはよう!」と声をかけると、3人とも挨拶を返してくれた。……あれ、3人?
「ああ、ユーリはまだ寝てるよ。あいつ、相当疲れているのかなかなか起きないんだな。」
リッキーがチラッとテントを見てそんな事を言う。
昨日はユーリも走ったり、沸き出した魔物の討伐をしたりと活躍したからなぁ。やっぱり疲れたんだろうね。
ユーリはもう少し寝せておくことにし、とりあえず大人組は朝食を簡単に取ることにした。
俺はいつの間にか肩からかけていた鞄の中から菓子パンを取り出してみんなに配る。
久々のクリームパン、楽しみだね!
俺は元日本人チームにはコーヒーを、セバスとリーシェさんには紅茶を入れて出す。
もちろん俺は菓子パンにはコーヒー派だ。
「……ねぇ、シエルくん。その真っ黒い飲み物は何だい?」
リーシェさんは俺以外が飲んでいる物を見て、少しだけ口の端を引き攣らせながらそんなことを聞いてきた。
そうだよね、この世界には無い飲み物だ、気になるよね。
「これはコーヒーと言って、苦いけどとても良い匂いがする飲み物なんですよ。飲み慣れると癖になるんです。」
「でもあれだろ?お前、無糖、飲めないじゃん?それも加糖して牛乳入れてカフェオレにしてるしな。」
俺がリーシェさんにそう説明すると、俺のコーヒーを見てリッキーがからかってきた。
……良いじゃん、カフェオレ、美味しいよ?
するとリーシェさんも少し興味が出てきたらしく、俺と同じ飲み物を頼んできた。
俺は別なコップにカフェオレを作って渡してやると、早速カップに口をつけて飲み始める。
「これ、美味しいねぇ!甘くて苦くないし。これなら私も飲めるよ。」
リーシェさんはそんなことを言ってニコニコと笑顔になった。良かった、気に入ってもらえたんだね!
そうやってみんなで食べていると、やっとユーリが起き出してきた。おはよう、ユーリ!
ユーリは俺たちがパンを食べているのを見て「僕の分は!?」と俺に詰め寄る。
俺はユーリを押し留めると俺の横のテーブルに着席させ、菓子パンと紅茶を出してやる。
それを美味しそうに食べ始めるユーリを見て、俺はほっこりした。うんうん、たんとお食べ。
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