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第6章 王都近くのダンジョン編
よし、最後の仕事だね! 3
しおりを挟む3階層へと上がった俺は、まず最初に殲滅魔法を放って4階層へと続く階段までの通路全部を綺麗にすることにした。
さっきの階層の中間で会った人たちみたいに危険な状態だと悪いからだ。
なので今回は腹に力を入れて身体から魔力を捻り出すように、大量の魔力を消費する。
「……なぁ、そんなに魔力使って魔力切れ起こさないのか?」
リッキーが心配そうな顔で、魔法を放つ直前の俺を見た。
どうやら「込める魔力を減らせ」って事らしい。
だけどもう込めちゃったからなぁ……辛うじて行動できるほどには残してあるから、あとは自然回復を待てばいいだろう。
「リッキー、どうしても心配ならこの魔力回復のためのポーションを飲ませればいい。」
スコットさんがニヤリと笑ってリッキーにそう言った。
……えっ?それ、何かあるの?
そのポーションを見たリッキーも、不思議そうな顔の俺を見てニヤリと笑う。……やっぱり、何かあるの!?
「まぁ、飲んだ事あるから言えるけど、効果は抜群よ?」
エミリーさんも苦笑いをしながらそんな事を言った。
……何で苦笑い?
「……?皆、何でそんな顔してるの?それ、美味しいじゃない。」
そんな事を言うリリーさん。……美味しいの?
そんなリリーさんを見てみんなは真顔になったが……一体どういう事だろう?
「まぁ良いさ、お前が魔力切れ起こしそうになったら飲ませれば良いんだから。飲む事になるのはお前のせいだからな?俺たちのせいじゃない。それだけははっきり言っておくぞ?だから気をつけろよ?」
リッキーから再度念押しをされた。
……き、気をつけようかな。
とりあえず俺はキープしていた魔法を解放して、このフロア全部を隅々まで『綺麗』にした。
魔法を放った瞬間、意外と持っていかれて危なかったが、なんとか堪えきれたようだ。
俺は額の汗を拭い、皆と一緒に走り出す。
このフロアにいる軍人さん達を探す為だ。
俺はさっきの魔法で魔力を大量に使ったから、索敵魔法はリッキーに任せる。
それからはリッキーの案内で次々と軍人さん達のいる場所へ行って回復をすることになった俺は、とうとう中間地点の場所にいた軍人さんを回復した直後に魔力切れを起こしかけてしまった。
「……よし、約束通りにこのポーションを飲んでもらおうか。」
スコットさんからポーションを受け取ったリッキーはそう言って俺にポーションを渡す。……え、どうしても飲むの?
皆が見守る中、俺は渋々とポーションの蓋を開け、匂いを嗅ぐ。……匂いは別になし、だな。
色も確認してみたが特におかしなことはない、透明な琥珀色だ。多分、瓶の色は透明なので液体自身の色がそんな色をしているんだろう。
ポーションの瓶に口をつけて一気に口に入れると、何ともいえないとてもまずい味がし、全身の毛穴から汗が噴き出して身体が勝手に震えだした。
俺は無理やりそれを飲み下すと、その瞬間から一気に魔力が回復していってるのが分かる。
どうやら自然回復の量を増やす薬のようだ。
その点のみでいえばとても優秀な薬なんだろう、こんなにすぐに回復していくのだから。……でも、味が壊滅的だ。
それにしてもこの味を「美味しい」と表現したリリーさんは、一体どんな味覚を持っているんだろう?
俺がそう思った時、頭の中に閃いたことがあった。
……これは一応、確認しておいたほうが良いかもしれない。
「……ねぇ、これを作ったのは、誰?」
するとみんなは苦笑いをしながらリリーさんを見る。
そのリリーさんはケロッとした顔で「私よ?」と言った。
その瞬間、みんなが取った言動を思い出して、すべてを悟った。
……よし、これからは気をつけよう。
俺はそれを心に刻みこむと、1つ頷く。
それを見てリリーさんを除く3人も頷いた。
しばらくして魔力がかなり回復してきた俺は、皆と先を急ぐ。
4階層へと上がった俺は、今度は先ほどから比べるとかなり少ない魔力で魔法をイメージして使う。
索敵魔法を使いながらだから、放った魔法が魔物を駆逐していくのがよく分かった。
よしよし、上手く行ったようだね!
それからこのフロアの軍人さん達のところを回復して回り、俺達は5階層へと上がる階段に座って休憩をすることにした。
このフロアの軍人さん達は3階層の軍人さん達と比べると、そこまで酷い怪我はしていなかった。
やはり出現する魔物が強めになってきていることによって、出てくる数が下の階より少ないのかもしれないね。
そうそう、俺たちはまず助けることを優先していたので、ここに来るまでに昼食はものすごく軽くしか取っておらず、俺はもう腹がペコペコだ。
どうやらそれはみんなも同じらしく、ここで少しゆっくりと食事休憩をとることになった。
俺は鞄から色々なおにぎりを取り出してみんなへと配る。
みんな余程お腹が空いていたのか、いつもより食べる数が多いみたい。
本当は落ち着いてサラダや味噌汁なんかも食べたかったけど、そんな余裕はないかな。
俺達がゆっくりと食休みを取っているうちに、置いてきたリーシェさんが転移魔法を使ってやってきた。
「君たち、進むの早いよ!私が走っても追いつけないから下のフロアも短距離転移の繰り返しで速く進んできたのに、それでもいないなんて驚きだね。このフロアも短距離転移で来たけど、すっかり魔物の姿が無いようだ。ロックさんが言うように何回か殲滅魔法を使ったんだろう?『変換期』はもう落ち着いたんじゃないかな?」
リーシェさんは到着しての開口一番にそんな事を言う。
そうかな?本当に『変換期』は終了したのかな?
「『変換期』が終了したとして、それまでに出ていた魔物はどうなる?」
スコットさんがもっともな疑問をリーシェさんに聞いた。うん、それ俺も聞きたい。
「そのまま残るよ。だから早く倒さなきゃなんだけど、5階層より上は魔導士や騎士団の質も向上するから私達は行かなくても大丈夫だと思うよ。あ、でも外に出るには5階層に行ったほうが近いか。なら、このまま5階層の休憩所で1泊し、翌朝ダンジョンから出ることにしよう。」
リーシェさんはそう言うと、座っていた俺達を促して自ら先頭に立って5階層へと向かった。
俺達は顔を見合わせた後、苦笑いをしてリーシェさんの後を追う。
本当は疲れ果てていたからこの場でテントを張っても良いかな?と思っていたんだけど……ちゃんとした場所のほうが良いのかな?
でもそう考えていた俺はやはり相当疲れていたのか、あまりの眠気に歩きながら転びそうになり、結局は見かねたスコットさんにおんぶをされることになった。
「……今日はゆっくりと眠れよ、シエル。」
スコットさんの背中越しに聞こえる低い声は、昔よく聞いていた兄の声とは似ていないのに何だか懐かしい温かい気持ちにさせて、俺は思わず目を瞑ってそのまま夢の国へと旅立ってしまった。
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−−−−−−
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